■定義 |
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プリオン病は正常プリオン蛋白が何らかの理由で伝播性を有する異常プリオン蛋白に変化し、主に中枢神経内に蓄積することにより急速に神経細胞変性をおこす稀な致死性疾患である。プリオン病の代表的なタイプである孤発性クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)は1年間に100万人に1人程度の割合で発症することが知られている。ヒトのプリオン病は病因により、原因不明の特発性(孤発性CJD; sporadic CJD (sCJD))、プリオン蛋白遺伝子変異による遺伝性(家族性CJD; Gerstman-Straussler-Scheinker病 (GSS); 致死性家族性不眠症 (fetal familial insomnia: FFI))、他のプリオン病からの感染による獲得性(environmentally aquired; クールー、医原性、変異型(variant: vCJD))の3種類に分類される。 伝播性を有する異常プリオン蛋白は感染因子となるため、人畜共通感染症であり、伝達性海綿状脳症(transmissible spongiform encephalopathy; TSE)としてヒト以外では羊や山羊のスクレピー(Scrapie)、牛の牛海綿状脳症(bovine spongiform encephalopathy; BSE)、鹿の慢性消耗病(chronic wasted disease; CWD)などが知られている。我が国では2003年から五類感染症に分類されており、医師は診断後7日以内に保健所へ報告することが義務づけられている。 |
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■疫学 |
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本疾患の有病率は100万人に1人前後であり、その8割は孤発性症例で、地域分布に大差はない。男女差はなく、発病は50~70 歳代が多い。わが国のサーベイランス調査では孤発性が77.2%、遺伝性(GSSとFFIを含む)が16.7%、獲得性(変異型を含む)が6.1%である (2009年9月現在)。英国で発生した牛海綿状脳症(BSE“狂牛病”)がヒトに感染したとされる変異型CJDが、2005年2月に我が国でも1例確認された。我が国では乾燥脳硬膜製品(確認されているものは全てLyodura)の移植により感染した医原性クロイツフェルト・ヤコブ病が他国に比較して多いのが特徴的で全世界のおよそ2/3がわが国の発症者である。 |
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■病因 |
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プリオン蛋白(PrP)は正常の人でも脳に発現しているが、その機能に関しては諸説があり、まだ解っていない。正常PrPは PrPcと称されており蛋白分解酵素で消化される。一方、プリオン病の脳内に見られる異常なPrPはPrPscと呼ばれ、蛋白分解酵素で消化されにくい。 PrPscはPrPcに比べアミノ酸配列は同一であるが立体構造が異なっており、βシート構造がより豊富なため不溶性となり、凝集しやすいというアミロイ ドの性質を有している。 |
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■症状 |
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<孤発性CJD> |
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プリオン病のほぼ8割を占め、プリオン蛋白遺伝子の変異はなく、代表的な病型である孤発性古典型と呼ばれている病型 (Parchi分類のMM1やMV1)では急速に進行する認知症症状とミオクローヌスを特徴としている。罹患率は100万人に1人で、平均年齢が 67.1±9.7歳である。脳波上のperiodic synchronous discharge(PSD)や脳MRI拡散強調画像の皮質・基底核の高信号、髄液14-3-3蛋白やタウ蛋白の高値などの所見が知られている。まれに視床型と呼ばれる病型や、緩徐進行性の病型もあるので注意が必要である。 |
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1 臨床症状 |
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古典型CJDの臨床病期は一般に3期に分けられる。 |
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2 検査所見 |
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(1) 脳波 |
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3 プリオン蛋白遺伝子コドン129番の多型と異常プリオン蛋白タイプによる孤発性CJDの臨床分類 |
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異常プリオン蛋白は,プロテアーゼ処理後のウェスタンブロット法による泳動パターンの違いからタイプ1とタイプ2に分類される。 この異常プリオン蛋白タイプとプリオン蛋白遺伝子のコドン129番の多型(MetまたはVal)がCJDの臨床像に影響を与えていることが明らかとなり、 この2つの組み合わせにより患者は6つのサブグループに分類されるようになった。それぞれのサブグループの臨床像を表1にまとめた。 |
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4 鑑別診断 |
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アルツハイマー病,脳血管障害,パーキンソン認知症症候群,脊髄小脳変性症,認知症を伴う運動ニューロン疾患,脳炎,脳腫瘍,梅毒,代謝性脳症等 |
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5 診断基準 |
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簡便な検査によるスクリーニングや発症前診断は孤発性CJDでは現在のところ確立していない。遺伝性であっても一見孤発性のように見える例があり、正確な診断にはプリオン蛋白遺伝子の検索が必要である。 |
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表1:プリオン蛋白遺伝子コドン129番の多型と異常プリオン蛋白タイプによる臨床分類 |
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<遺伝性JCD> |
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孤発性CJDよりも発病年齢は早いことが多く、プリオン蛋白遺伝子の変異に応じて症状,経過,病理所見が異なるため診断が困難なことがある。わが国で認められる頻度の高い病型について下記を参照にしていただきたい。欧米と比較すると、わが国では特有とされている変異が半数以上を占めているのが特徴的で、その中でも特にV180Iの変異が40%近くを占めている。V180Iは経過が緩徐であるためアルツハイマー病や慢性硬膜下血腫と誤診されていることがある。 |
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(a) プリオン蛋白遺伝子変異V180Iによる家族性CJD |
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1 概念・疫学 |
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2 臨床症状 |
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3 検査所見 |
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4 鑑別診断 |
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5 診断 |
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(b) プリオン蛋白遺伝子変異E200Kによる家族性CJD |
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1 概念・疫学 |
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2 臨床症状 |
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3 検査所見 |
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4 鑑別診断 |
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5 診断 |
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(c)その他の遺伝性プリオン病 |
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わが国に多い病型としてはM232R変異による家族性CJDがあげられる。ほとんどの例が我が国で報告されており、家族内発症が確認された報告はない。診断にはプリオン病遺伝子検索が必須である。平均発症年齢が66.6歳、平均罹病期間は1.3年であり、古典型孤発性CJDと同様の臨床経過、検査所見を呈する例が大半である。その他、多数の家族性CJDを来す遺伝子変異が知られているが稀である。 |
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<感染性CJD> |
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(a)変異型CJD(variantCJD) |
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1 概念・疫学 |
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2 臨床症状 |
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3 検査所見 |
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4 鑑別診断 |
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5 診断基準 WHOによる2001年度版の診断基準を示した。ただし、前述のように進行すると脳波でPSDが見られたり、MRIで視床枕サインがはっきりしなくなり、DWIで大脳皮質や基底核の高信号変化が認められることがあり、注意が必要である。
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(b)脳硬膜移植後CJD |
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1 概念・疫学 |
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2 臨床症状 |
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3 診断基準 |
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■治療 |
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特異的な治療法は未確立であるが、いくつかの候補となる薬剤の治験が進められている。 |
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■予後 |
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孤発性症例では進行が速く1~2年で死亡する。遺伝性CJDや一部の孤発性CJDは進行が遅く数年に及ぶものもある。 |
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関連ホームページのご紹介 |
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「ガイドライン」のページに2008年に作成された「プリオン病感染予防ガイドライン」が掲載されています。(医療従事者向け) |
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診療マニュアル |
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クロイツフェルト・ヤコブ病 診療マニュアル
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診療マニュアル(改訂版)(ファイルサイズ 約:1.6MB) このマニュアルは、クロイツフェルト・ヤコブ病をはじめとしたプリオン病の治療、検査、感染因子の滅菌法、感染防御等について、現在把握し得る最大限の情報を基に構成されています。(医療従事者向け) |
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プリオン病及び遅発性ウイルス感染症に関する調査研究班から |
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プリオン病 研究成果(pdf 26KB) |
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プリオン病(1) クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)(公費対象)
ぷりおんびょう1 くろいつふぇるとやこぶびょう(CJD)
| 研究班名 | プリオン病及び遅発性ウィルス感染症に関する調査研究班 |
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| 情報見直し日 | 平成23年8月3日 |




