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先天性グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)(指定難病320)

せんてんせいぐりこしるほすふぁちじるいのしとーる(じーぴーあい)けっそんしょう

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

1.先天性グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)欠損症とは

先天性GPI欠損症(英語名Inherited GPI deficiencyを略してIGDと呼んでいます。)は知的障害、運動発達遅滞と多くはてんかんを伴う遺伝子の病気です。また手指の先端が短い、爪の低形成、難聴、他の臓器の奇形などを伴うことがあります。グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカーとは細胞表面に存在する、様々な機能を持つタンパク質を細胞膜につなぎ止める錨(アンカー)の役割をしている糖脂質です。このような構造のタンパク質の一群をGPIアンカー型タンパク質と呼び、多くの遺伝子が関与する複雑な反応で作られます(図)。それらの遺伝子の一つに変異があるとGPIアンカーが十分に作られないので重要な機能を持つタンパク質が膜表面に存在することが出来ず、分泌されたり細胞内で壊れてしまいます。その結果、神経細胞の働きや内臓の形成過程に異常を生じるため、上記のような症状を来します。

2.この病気の患者さんはどのくらいいるのですか

2006年にイギリスで初めて2家系がみつかり、その後 2010年から、遺伝子を解析する技術が進んだことから、次々と見つかっています。現在国内で約30人、世界中で約200人の患者さんがいます。この疾患は最近発見された新しい疾患で、これから診断のガイドラインに沿って患者さんのスクリーニングを進めることにより、多くの患者さんが見つかると考えています。

3.この病気はどのような人に多いのですか

乳幼児期からてんかん発作や知的発達・運動発達の遅れを呈する症例に多いと考えています。

4.この病気の原因はわかっているのですか

細胞膜上に存在するタンパク質の中にはGPIアンカー型タンパク質とよばれる共通の構造を持つタンパク質の一群があり、アルカリホスファターゼ(ALP)等の酵素をはじめ150種以上知られており、重要な働きを担っています。 GPIアンカーとは、これらのタンパク質の細胞膜への結合に用いられている糖脂質のことを言い、細胞内でアンカー部分とタンパク質部分が別々に合成され、結合して細胞表面で働きます。そのGPIアンカーの合成と修飾に27個の遺伝子が必要であることがわかっています。これらの遺伝子異常でGPIアンカーが欠損すると、150種類以上のGPIアンカー型タンパク質が細胞表面に発現できなくなるので、完全欠損は胎内で死亡します。先天性GPI欠損症はこれらの27個の遺伝子のうちの一つの遺伝子の変異により活性が低下して、細胞表面で重要な働きをするGPIアンカー型タンパク質が減少することによって発症します。現在までに27個の遺伝子のうち16個のIGDが報告されています。

5.この病気は遺伝するのですか

GPIアンカーの生合成と修飾に関与する27個の遺伝子のいずれかの変異により発症する疾患です。通常は、母親と父親から異常な遺伝子を受け継いで、1対ある遺伝子の両方に変異があると発症する病気です。これらの遺伝子のうち、PIGAのみがX染色体上にあり、女性は1対ありますが男性は母親由来の1本しか持っていないので、母親から異常なPIGA遺伝子を受け継いだ、男性のみが罹患します。

6.この病気ではどのような症状がおきますか

主な症状はてんかんと知的障害、運動発達遅滞で、時に特徴的な顔貌、高アルカリホスファターゼ(ALP)血症、手指の末節骨や爪の低形成、難聴、ヒルシュスプルング病といった腸の異常や腎低形成等種々の奇形を呈します。遺伝子によってはてんかんを来さない場合もあり、変異を起こした遺伝子の種類や変異の影響の程度により症状が異なります。高アルカリホスファターゼ(ALP)血症を伴う知的障害、運動発達障害はIGDである可能性が高いですが正常ALPの場合も低ALPになる場合もあります。

7.この病気にはどのような治療法がありますか

最近発見された疾患で、遺伝子の変異による病気なので、今のところ根本的な治療法はわかっていません。しかしGPIアンカー型タンパク質の1つのアルカリホスファターゼの低下により、十分なビタミンB6を神経細胞の中に取り込めない事により、けいれん発作がおこることがわかってきました。そのため特殊なビタミンB6(ピリドキシン)の投与がけいれん発作に著効する症例があります。今後も患者さんの病態の解析により、種々の補充療法とともに根本的な治療薬の開発を目指します。発症後も症状が進むので早期診断をして早期に治療を開始すれば症状を軽減することができると考えています。

8.この病気はどういう経過をたどるのですか

27個の遺伝子のうちどの遺伝子の変異か、その変異によってどの程度その機能が影響を受けるかによって、重症度が様々です。寝たきりで、様々な奇形を伴い、てんかん発作のコントロールが難しい症例もあれば、けいれん発作もなく、軽い知的障害のみという症例もあります。多くの重症の症例では生後小脳萎縮が進行します。そのような進行を押さえる為に、治療法の開発が早急に必要です。

9.この病気は日常生活でどのような注意が必要ですか

特に食事や運動の制限は無く、他の難治性けいれんを呈する症例や精神運動発達の遅れを来す症例と同様に、発作による溺水事故や転倒事故に注意します。知的発達を伸ばすために療育施設での指導を受けましょう。生活全般の支援を受けられるように福祉窓口で相談し、様々な福祉資源の利用が望まれます。

10.この病気に関する資料・リンク

http://igd.biken.osaka-u.ac.jp/

用語解説

染色体
ヒトの体は約60兆個の細胞からできていて,細胞の中には核があります。その核の中には23対計46本の染色体があります。23対のそれぞれの1本はお父さんから、もう1本はお母さんから受け継いでいます。このうち1対が性染色体といって男性はお母さんからX染色体とお父さんからY染色体を受け継ぎ、XYとなり女性はお母さんとお父さんから1本ずつのX染色体を受け継ぎXXとなります。

遺伝子
ひとつひとつの染色体をほどいていくとひも状の螺旋構造をしたDNAがあります。DNAは糖、リン酸、塩基という物質から成り立っており、A(アデニン)・G(グアニン)・C(シトシン)・T(チミン)の4種類の塩基が対になって並んでおり、その並び順で遺伝情報が表されます。遺伝子はそのひとつの単位です。この遺伝子をもとに細胞内で重要な機能を持つタンパク質が作られます。遺伝子の塩基に変異があると異常なタンパク質ができたり、量が減少したりして病気になるのです。

糖脂質
糖を結合した脂質のことで、全身の組織に存在しますが,特に脳や脊髄といった神経組織の細胞膜表面に多く存在して、細胞同士の結合や刺激の受容体として働きます。GPIもこのうちの一つで、さらにタンパク質と結合してGPIアンカー型タンパク質として細胞膜表面に存在します。


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情報提供者
研究班名 先天性GPI欠損症の症例登録システムの構築と実態調査及び早期診断法の確立に関する調査研究班
研究班名簿  研究班ホームページ 
新規掲載日平成29年5月30日