メニュー


HOME >> 診断・治療指針(医療従事者向け) >> 先天性グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)(指定難病320)

先天性グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)(指定難病320)

せんてんせいぐりこしるほすふぁちじるいのしとーる(じーぴーあい)けっそんしょう

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

○ 概要
1.概要
糖脂質からなるGPIアンカーは、ほ乳類の細胞においては150種以上の蛋白質の膜結合に用いられている。GPIが欠損するとこれらの全ての蛋白質が細胞表面に発現できない。現在までに27個の遺伝子がGPIアンカー型蛋白質の生合成や、修飾に必要であることがわかっている。最近、これらの遺伝子の変異による先天性グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)欠損症(Inherited GPI deficiency:IGD)が次々と見つかっており、現在までに15種類の遺伝子によるIGDが報告されている。従来Mabry症候群として知られていた、高アルカリホスファターゼ(ALP)血症、精神運動発達遅滞・てんかんを呈する疾患がIGDであることが明らかになっているが、今後もオーバーラップする疾患が見つかってくると考えられる。
 
2.原因
GPIが欠損すると150種以上のGPIアンカー型蛋白質が細胞表面に発現できないので、GPI生合成遺伝子の完全欠損は胎生致死になる。IGDは、27個のGPI生合成や修飾に関わる遺伝子のうちのどれかが様々な程度に活性が低下した部分欠損症である。症状は細胞膜上のGPIアンカー型蛋白質の発現低下や構造異常によって起こり、変異遺伝子やその活性低下の程度により多様な症状を示す。症状のうち、てんかんの原因の一つとしてGPIアンカー型蛋白質であるALPの発現低下が挙げられる。
 
3.症状
必須症状は、精神・運動発達の遅れで、多くはてんかんを伴う。大田原症候群・ウエスト症候群など乳児早期発症の難治性てんかんと診断された患者のなかにも見つかっている。他によく見られる特徴として顔貌異常(両眼解離、テント状の口)、手指・足趾の異常(末節骨の短縮、爪の欠損等)、難聴、その他の奇形(肛門・直腸の異常、ヒルシュスプルング病、水腎症等)等がある。一部の患者では高ALP血症がみられるので、診断の良い指標となっている。末梢血顆粒球のフローサイトメトリー検査でGPIアンカー型タンパク質であるCD16の発現低下があることで診断が確定するが、責任遺伝子の同定のためにターゲットエクソームあるいは全エクソーム解析による遺伝子解析を必要とする。
 
4.治療法
IGDにみられるてんかんの原因の1つとして、神経細胞表面に発現するALPの発現低下によりビタミンB6の脱リン酸化がおこらないため、細胞内に取り込めないことがあげられる。細胞内のビタミンB6が欠乏すると、神経細胞の興奮を押さえるGABA合成が低下するので痙攣発作がおこる。リン酸化のないビタミンB6(ピリドキシン)の投与がてんかん発作に有効な症例がある。その他にも有効な補充療法の開発にむけて研究が行われている。
 
5.予後
遺伝子異常による疾患で、発生初期からの発達異常を伴うので根本治療は今のところない。症状の程度は軽度の知的障害等から、最重度は多臓器の奇形や難治性てんかん、重度の精神・運動発達の遅れを呈して新生児・乳児期に死亡する。また胎内死亡の症例も報告されている。最重度の症例以外の多くは成人期まで生存し、痙攣のコントロール等の対症療法を中心とする長期の療養を要する。
○   要件の判定に必要な事項
1.  患者数
100人未満 
2.  発病の機構
未解明(遺伝子異常による疾患であるが病態については未解明。)
3.  効果的な治療方法
未確立(根本的な治療法はない。種々の対症療法。ピリドキシンの補充療法が有効な症例がある。)
4.  長期の療養
必要(発症後、生涯にわたって治療の継続を要する。)
5.  診断基準
あり(学会承認の診断基準)
6.  重症度分類
Barthel Indexを用いて、85点以下を対象とする。
 
○ 情報提供元
「先天性GPI欠損症の症例登録システムの構築と実態調査及び早期診断法の確立」
代表者 大阪大学微生物病研究所 准教授 村上良子
 
「先天性GPI欠損症の診療ガイドラインの整備と病態解析及び治療法の開発」
代表者 大阪大学微生物病研究所 准教授 村上良子

<診断基準>
Definite、Probableを対象とする。
 
A.症状
1.主症状
周産期異常を伴わない知的障害があり、多くは運動発達の遅れ、てんかんを伴い時に家族性に見られる。
2.他に頻度の高い症状として以下の症状がある。
①新生児期、乳児期早期発症の難治性てんかん
②顔貌異常:両眼解離、幅の広い鼻梁、長い眼裂・テント状の口、口唇・口蓋裂、耳介の形態異常
③手指、足趾の異常:末節骨の短縮、爪の欠損・低形成1
④その他の奇形:肛門・直腸の異常、無ガングリオン性巨大結腸、水腎症、心奇形など
⑤難聴、眼・視力の異常
⑥皮膚の異常:魚鱗癬など
⑦筋緊張低下、関節拘縮、四肢の短縮
⑧高アルカリホスファターゼ(ALP)血症

B.検査所見 
1.多くは末梢血顆粒球のフローサイトメーター解析によりCD16の発現低下を示す。
2.以下の検査所見が見られることがある。
①高アルカリホスファターゼ(ALP)血症(年齢別正常値の上限を超える。)
②手指・足趾のX線写真で末節骨欠損
③聴性脳幹反応(ABR)の異常
④脳MRIの拡散強調画像(DWI)にて基底核に高信号、進行性の小脳萎縮、髄鞘化の遅延 
 
C.遺伝学的検査
GPIアンカー型タンパク質の生合成及び発現・修飾・輸送に関与する遺伝子(PIGAPIGYPIGQPIGHPIGCPIGPPIGLPIGWPIGMPIGXPIGVPIGNPIGBPIGOPIGFPIGGPIGZPIGKPIGTPIGSGPAA1PIGUPGAP1PGAP2PGAP3PGAP5PGAP6 等のいずれかに変異を認める。)

D.鑑別診断
先天性GPI欠損症が原因でない大田原症候群、ウエスト症候群、ヒルシュスプルング病
 
<診断のカテゴリー>
Definite:
(1)Aの1+Bの1+Cを満たすもの
(2)Bの1を満たさないが、Aの1+Aの2のうち1項目以上+Cを満たすもの
Probable:Aの1+Bの1を満たすもの
*備考:病型によっては(PGAP1、PGAP3、PIGG欠損症など)Bの1を満たさないものがあるので、
Aの1に加え、Aの2のうち1項目以上を満たしていれば遺伝子診断を行う。
この病型については診断のために遺伝子解析が必須である。<重症度分類>
Barthel Indexで85点以下を対象とする。
 

 

質問内容

点数

1 食事

自立、自助具などの装着可、標準的時間内に食べ終える

10

部分介助(例えば、おかずを切って細かくしてもらう)

全介助

2 車椅子からベッドへの移動

自立、ブレーキ、フットレストの操作も含む(歩行自立も含む)

15

軽度の部分介助又は監視を要する

10

座ることは可能であるがほぼ全介助

全介助又は不可能

3 整容

自立(洗面、整髪、歯磨き、ひげ剃り)

部分介助又は不可能

4 トイレ動作

自立(衣服の操作、後始末を含む、ポータブル便器などを使用している場合はその洗浄も含む)

10

部分介助、体を支える、衣服、後始末に介助を要する

全介助又は不可能

5 入浴

自立

部分介助又は不可能

6 歩行

45m以上の歩行、補装具(車椅子、歩行器は除く)の使用の有無は問わず

15

45m以上の介助歩行、歩行器の使用を含む

10

歩行不能の場合、車椅子にて45m以上の操作可能

上記以外

7 階段昇降

自立、手すりなどの使用の有無は問わない

10

介助又は監視を要する

不能

8 着替え

自立、靴、ファスナー、装具の着脱を含む

10

部分介助、標準的な時間内、半分以上は自分で行える

上記以外

9 排便コントロール

失禁なし、浣腸、坐薬の取扱いも可能

10

ときに失禁あり、浣腸、坐薬の取扱いに介助を要する者も含む

上記以外

10 排尿コントロール

失禁なし、収尿器の取扱いも可能

10

ときに失禁あり、収尿器の取扱いに介助を要する者も含む

上記以外

 
 
※診断基準及び重症度分類の適応における留意事項
1.病名診断に用いる臨床症状、検査所見等に関して、診断基準上に特段の規定がない場合には、いずれの時期のものを用いても差し支えない(ただし、当該疾病の経過を示す臨床症状等であって、確認可能なものに限る。)。
2.治療開始後における重症度分類については、適切な医学的管理の下で治療が行われている状態であって、直近6か月間で最も悪い状態を医師が判断することとする。
3.なお、症状の程度が上記の重症度分類等で一定以上に該当しない者であるが、高額な医療を継続することが必要なものについては、医療費助成の対象とする。


治験情報の検索:国立保健医療科学院
※外部のサイトに飛びます。
情報提供者
研究班名 先天性GPI欠損症の症例登録システムの構築と実態調査及び早期診断法の確立に関する調査研究班
研究班名簿  研究班ホームページ 
新規掲載日平成29年5月30日