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自己免疫性後天性凝固因子欠乏症(指定難病288)

じこめんえきせいこうてんせいぎょうこいんしけつぼうしょう

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

○ 概要
 
1.概要
血液が凝固するために必要なタンパク質である凝固因子が、先天性や遺伝性ではない理由で著しく減少するため、止血のための止血栓ができにくくなったり、弱くなって簡単に壊れやすくなり、自然にあるいは軽い打撲などでさえ重い出血を起こす疾病である。
ここでは、欠乏する凝固因子の種類により、1)「自己免疫性後天性凝固第XIII/13因子(F13)欠乏症(旧称:自己免疫性出血病XIII)」、2)「自己免疫性後天性凝固第VIII/8因子(F8)欠乏症(後天性血友病A)」、3)「自己免疫性後天性フォンウィルブランド因子(von Willebrand factor:VWF)欠乏症(自己免疫性後天性フォンウィルブランド病(von Willebrand Disease:VWD))」、4)「自己免疫性後天性凝固第V/5因子(F5)欠乏症(いわゆる第5因子インヒビター)」の4疾病を対象とする。
 
2.原因
自己抗体による凝固因子の活性阻害(インヒビター)や、それぞれの凝固因子との免疫複合体が迅速に除去されるために各凝固因子が失われることが、出血の原因となる場合が多いと推測される。多様な基礎疾患・病態(他の自己免疫性疾患、腫瘍性疾患、妊娠/分娩など)を伴っているが、症例の約半数は特発性(基礎疾患が見つからない)である。後天的に自己抗体ができる理由は不明である。
 
3.症状
1)自己免疫性後天性F13欠乏症では、血の固まる速さを調べる一般的な検査(PT、APTTなどの凝固時間)の値はあまり異常ではないにもかかわらず、突然出血する。体の軟らかい部分である筋肉・皮膚の出血が多いが、身体のどの部位にでも出血する可能性がある。急に大量に出血するので貧血になり、ショック状態を起こすこともある。出血する部位によって様々な症状(合併症)が起きる可能性がある。特に脳を含む頭蓋内の出血では脳神経系に、心臓や肺がある胸腔内の出血では循環器系に重い障害を起こし、致命的となる場合もある。
2)自己免疫性後天性F8欠乏症では、出血症状が重篤なものが多く、突然広範な皮下出血や筋肉内出血を多発することが多いが、血友病A(遺伝性F8欠乏症)と異なり、関節内出血はまれである。特に、頭蓋内、胸腔内、腹腔内出血や後腹膜出血などは、致命的となり得るので注意が必要である。
3)自己免疫性後天性VWF欠乏症の出血症状は、極めて多彩である。症例は、軽症から致死性のものまで種々の重症度の出血症状を突然発症するが、まれに検査上の異常のみを示す症例も存在する。急に大量に出血して貧血になり、ショック状態を起こすこともある。特に脳を含む頭蓋内の出血では脳神経系に、心臓や肺がある胸腔内の出血では循環器系に重い障害を起こし、致命的となる場合もある。
4)自己免疫性後天性F5欠乏症の出血症状は、極めて多彩であるが、尿路出血や消化管出血が多い。症例は、軽症から致死性のものまで種々の重症度の出血症状を突然発症する。検査上の異常のみを示す症例もしばしば存在する。急に大量に出血して貧血になり、ショック状態を起こすこともある。特に、死亡例の半数は脳出血を含む頭蓋内出血が原因であるので注意が必要である。
 
4.治療法
A.止血療法
救命のためには、まずどの凝固因子が低下しているかを確かめてから、可及的速やかに止血療法を実施する必要がある。
1)自己免疫性後天性F13欠乏症では、出血を止めるためにF13濃縮製剤を注射することが必要である。ただし、自己抗体によるインヒビターや免疫複合体除去亢進があるので、注射したF13が著しく早く効かなくなるため、止血するまで投与薬の増量、追加を試みるべきである。
2)自己免疫性後天性F8欠乏症では、活動性出血に対しては速やかに止血薬を投与する必要がある。ただし、F8補充療法には反応しないことが多いので、活性化第VII/7因子あるいは活性化プロトロンビン複合体製剤を投与する(バイパス止血療法)。
3)自己免疫性後天性VWF欠乏症では、出血を止めるためにDDAVPあるいはVWF含有凝固F8濃縮製剤を投与するが、症例の自己抗体の量や性質によってVWFの回収率と半減期が大きく異なるので、それぞれの症例の症状に合った個別化治療が必要である。
4)自己免疫性後天性F5欠乏症では、活動性出血に対して速やかに止血薬を投与する必要がある。ただし、F5濃縮製剤は市販されていないので、新鮮凍結血漿あるいは濃厚血小板(F5を顆粒中に含む)などを投与することが多い。活動性出血が無い症例でも、長期にわたって綿密な経過観察が必要である。
 
B.抗体根絶/除去療法
自己免疫性後天性凝固因子欠乏症の真の原因は不明であるが、それぞれの凝固因子に対する自己抗体が出血の原因であるので、対症療法として免疫反応を抑えて自己抗体の産生を止める必要がある。症例によって免疫抑制薬の効果が異なり、画一的な治療は推奨されない。
a.副腎皮質ステロイド薬やサイクロフォスファミドなどの免疫抑制薬が有効であることが多い(後者は保険適応がない)。糖尿病、血栓症、感染症などがある場合は、副腎皮質ステロイド薬の投与を控える。
b.治療抵抗性の症例にはリツキシマブ(rituximab)やサイクロスポリンA、アザチオプリンなどの投与も考慮する(保険適応はない)。
c.通常、高用量イムノグロブリン静注(IVIG)は推奨されていない。ただし、自己免疫性後天性VWF欠乏症では、VWFを正常レベルに数日間回復させることがある。
d.止血治療に難渋する場合は、抗体を一時的に除去するために血漿交換、免疫吸着療法も考慮する。特に、自己免疫性後天性F5欠乏症では、緊急時にはF5補充療法を兼ねて血漿交換を実施することが合理的である。
e.ヨーロッパでは、自己免疫性後天性F8欠乏症にF8投与と免疫抑制薬の多剤併用による寛解導入療法も試みられている。
 
5.予後
1)自己免疫性後天性F13欠乏症の予後は良くない。出血死後に検体が届いて確定診断される例が約1割、急性期に出血死する例が約1割、年余にわたり遷延して出血死する例が約1割、遷延して長期療養中の症例が約2割、発症後1年未満で治療中の症例が約2割、寛解中の症例が約3割である。
2)自己免疫性後天性F8欠乏症では、F8インヒビターは、免疫抑制療法によりいったんは寛解することが多いが、再燃することも少なくない。F8自己抗体が残存していることもあり、定期的検査を含む長期の経過観察が必要である。死亡率は2~3割と高く、出血死よりも免疫抑制療法中の感染死が多いので、厳重な管理が必要である。
3)自己免疫性後天性VWF欠乏症では、致死的な出血をする症例から自然に寛解に達する症例まで多彩であるが、治療に抵抗して長年にわたって遷延する症例も少なくない。さらに、いったん寛解した後に再燃する症例もあるので、定期的検査を含む長期間の経過観察が必要である。
4)自己免疫性後天性F5欠乏症でも、自然に寛解に達する症例から致死的な出血をする症例まで多彩であり、治療に抵抗して長年にわたって遷延する症例も少なくない。さらに、いったん寛解した後に再燃する症例も報告されているので、定期的検査を含む長期間の経過観察が必要である。なお、偶然発見された無症状の症例でも、将来出血症状が現われる可能性があるので、定期的な経過観察が必要である。
 
○ 要件の判定に必要な事項
1.  患者数
約700人
2.  発病の機構
不明(自己免疫寛容機構の破綻が推定されるが解明されていない。)
3.  効果的な治療方法
未確立(対症療法や免疫抑制薬を用いるが十分に確立されていない。)
4.  長期の療養
必要(根治せず、寛解と再燃を繰り返す。)
5.  診断基準
あり(研究班作成と日本血栓止血学会の診断基準)
6.  重症度分類
過去1年間に重症出血を1回以上起こした例を重症例とし、対象とする。
 
○ 情報提供元
難治性疾患政策研究事業「自己免疫性出血症治療の『均てん化』のための実態調査と『総合的』診療指針の
作成」
研究代表者 山形大学医学部分子病態学 名誉教授 一瀬白帝
 
日本血栓止血学会 後天性血友病Aガイドライン作成委員会
代表者 奈良医科大学小児科学 准教授 田中一郎
 
日本血栓止血学会 自己免疫性出血病FXIII/13診断基準作成委員会
代表者 山形大学医学部分子病態学 名誉教授 一瀬白帝
<診断基準>
1)自己免疫性後天性凝固第XIII/13因子(F13)欠乏症(旧称:自己免疫性出血病XIII:AHXIII/13)の診断基準
Definite、Probableを対象とする。
 
A.症状等
(1)過去1年以内に発症した出血症状がある。
(2)先天性/遺伝性凝固F13欠乏症の家族歴がない。
(3)出血症状の既往歴がない。特に過去の止血負荷(外傷、手術、抜歯、分娩など)に伴った出血もない。
(4)抗凝固薬や抗血小板薬などの過剰投与がない。
 
B.検査所見
1.特異的検査でF13に関するパラメーターの異常がある(通常は活性、抗原量が50%以下)。
(1)F13活性、F13抗原量:通常、両者とも低下。
ただし、一部の症例、例えば、抗F13-Bサブユニット自己抗体が原因の症例では、病歴全体での時期やF13製剤による治療によって両者とも正常範囲に近くなることがある。F13単独の高度の低下はAHXIII/13を疑う。他の複数の凝固因子の低下を伴って軽度~中等度に低下する場合は播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation:DIC)、重度の肝疾患などによる二次性F13欠乏症であることが多い。
(2)F13比活性(活性/抗原量):抗F13-Aサブユニット自己抗体が原因のほとんどの症例では低下しているが、抗F13-Bサブユニット自己抗体が原因の症例では正常である。
(3)F13-Aサブユニット、F13-Bサブユニット、F13-A2B2 抗原量:抗F13自己抗体のタイプ/性状によって、様々な程度まで低下している。
2.確定診断用検査
(1)F13インヒビターが存在する
標準的なアンモニア放出法やアミン取り込み法などによる正常血漿との交差混合試験(37℃で2時間加温後)などの機能的検査で陽性。
(2)抗F13自己抗体が存在する
イムノブロット法、ELISA、イムノクロマト法などの免疫学的検査で陽性。
:非抗体、非タンパク質が原因であるとした欧米の報告が複数あるので、誤診とそれに基づく免疫抑制薬投与による有害事象に注意する。
 
C.鑑別診断
遺伝性(先天性)F13欠乏症(における同種抗体)、二次性F13欠乏症[播種性血管内凝固症候群(DIC)、手術、外傷、白血病などの血液悪性腫瘍、重症肝疾患、肝硬変、ヘノッホ・シェンライン紫斑病、慢性炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病など)]、自己免疫性後天性F8欠乏症(後天性血友病A)や後天性フォンウィルブランド(VW)症候群(AVWS)(特に自己免疫性後天性VW病(AVWD))、自己免疫性後天性第V/5因子(F5)欠乏症などの他の全ての自己免疫性後天性出血病などを除外する。
 
<診断のカテゴリー>
Definite:Aの全て+B1およびB2-(2)を満たし、Cを除外したもの
Probable:Aの全て+B1およびB2-(1)を満たし、Cを除外したもの
Possible:Aの全て+B1を満たすもの
 
<参考所見>
1.一般的凝固検査  
(1)出血時間:通常は正常
(2)PTとAPTT:通常は正常
(3)血小板数:通常は正常
 
2.その他の検査
(1)血小板内F13-A抗原量(あるいはF13活性):洗浄血小板を調製して測定すると正常量が検出されるので、先天性/遺伝性F13欠乏症の可能性を除外するのに有用である。
(2)F13製剤投与試験:AHXIII/13の抗体の性状を、治療試験で明らかにできることがある。クリアランス亢進型抗体では、F13を含有する血液製剤のF13抗原量の回収率や半減期を計算することによって、除去の亢進が明確になる。ただし、除去亢進はAHXIII/13に特異的な所見ではない。中和型抗体では、F13活性の回収率や半減期を計算することによって、F13活性阻害が確認される。F13活性と抗原量を同時に測定すると比活性(活性/抗原量)も計算できる。これらの検査は、次回からのF13製剤の投与量や間隔、期間等の止血治療計画を立てる上でも有用である。
 
 
2)自己免疫性後天性凝固第VIII/8因子(F8)欠乏症(後天性血友病A)の診断基準
Definite、Probableを対象とする。
 
A.症状等
(1)過去1年以内に発症した出血症状がある。
(2)血友病A(遺伝性F8欠乏症)の家族歴がない。
(3)出血症状の既往がない。特に過去の止血負荷(外傷、手術、抜歯、分娩など)に伴った出血もない。
(4)抗凝固薬や抗血小板薬などの過剰投与がない。
 
B.検査所見
1.特異的検査でF8関連のパラメーターの異常がある(通常はF8活性、F8抗原量が基準値の50%以下)。
(1)F8活性(F8:C):必ず著しく低下
(2)F8抗原量(F8:Ag):通常は著しく低下
(3)F8比活性(活性/抗原量):通常は著しく低下
2.確定診断用検査
(1)APTT交差混合試験でインヒビター型である。
症例の血漿と健常対照の血漿を5段階に希釈混合して、37℃で2時間加温してからAPTTを測定する。下向きに凸であれば「欠乏型」でインヒビター陰性、上向きに凸であれば「インヒビター型」で陽性と判定する。なお、抗リン脂質抗体症候群のループスアンチコアグラントでは、混合直後にAPTTを測定しても凝固時間の延長が認められるので(即時型阻害)、鑑別に有用である。
(2)F8インヒビター(凝固抑制因子)が存在する。
力価測定:一定量の健常対照血漿に様々に段階希釈した症例の血漿を混合して、2時間37℃で加温してから残存F8活性を測定する(ベセスダ法)。完全阻害型(タイプ1)と不完全阻害型(タイプ2)インヒビターがあり、後天性血友病Aでは後者が多いので、残存F8活性が50%を超えた希釈倍率を用いてインヒビター力価を算出すると良い。
(3)抗F8自己抗体が存在する。
非阻害性抗体は、主に結合試験(イムノブロット法、ELISA法、イムノクロマト法など)を用いて免疫学的に検出される。F8インヒビター、すなわち中和型抗F8自己抗体も、免疫学的方法で検出され、微量に残存する抗F8自己抗体も鋭敏に検出することが可能なので、病勢、免疫抑制療法の効果、寛解の判定や経過観察に有用であると期待されている。
:出血症状を生じない抗F8自己抗体(非病原性自然自己抗体)も存在することが報告されているので、A-(1)とB-1のないものは検査対象に含めない。
 
C.鑑別診断
血友病A(遺伝性F8欠乏症)、先天性第V/5因子(F5)・F8複合欠乏症、全ての二次性F8欠乏症(播種性血管内凝固症候群(DIC)など)、(遺伝性)フォンウィルブランド病(VWD)、自己免疫性後天性フォンウィルブランド病(AVWD)、全ての二次性フォンウィルブランド症候群(心血管疾患、本態性血小板増多症、甲状腺機能低下症、リンパ又は骨髄増殖性疾患などの明確な原因疾患がある非自己免疫性後天性フォンウィルブランド症候群(AVWS))、自己免疫性後天性F13欠乏症、自己免疫性後天性F5欠乏症、抗リン脂質抗体症候群などを除外する。
 
<診断のカテゴリー>
Definite:Aの全て+B1およびB2-(3)を満たし、Cを除外したもの
Probable:Aの全て+B1+B2-(1)またはB2-(2)を満たし、Cを除外したもの
Possible:Aの全て+B1を満たすもの
 
<参考所見>
1.一般的血液凝固検査
(1)出血時間:通常は正常
(2)APTT:必ず延長
(3)血小板数:通常は正常
2.その他の検査
(1)フォンウィルブランド因子Ristocetin cofactor活性(VWF:RCo):通常、正常あるいは増加(出血時)
(2)VWF抗原量(VWF:Ag):通常、正常あるいは増加(出血時)
3)自己免疫性後天性フォンウィルブランド因子(VWF)欠乏症(自己免疫性後天性フォンウィルブランド病(AVWD))の診断基準
Definite、Probableを対象とする。
 
A.症状等
(1)過去1年以内に発症した出血症状がある。
(2)フォンウィルブランド病(VWD:遺伝性VWF欠乏症)の家族歴がない。
(3)出血症状の既往がない。特に過去の止血負荷(手術、外傷、抜歯、分娩など)に伴った出血もない。
(4)抗凝固薬や抗血小板薬などの過剰投与がない。
 
B.検査所見
1.特異的検査でVWF関連のパラメーターの異常がある(通常はVWF Ristocetin cofactor活性(VWF:RCo)、VWF抗原量(VWF:Ag)が基準値の50%以下)。
(1)FVIII/8活性(F8:C):低下あるいは正常
(2)VWF:RCoとVWF:Ag:通常は両者とも減少
(3)VWF比活性(VWF:RCo/VWF:Ag):通常は中等度から高度に減少
2.確定診断用検査
(1)VWFインヒビターが存在する。
VWFとGP(Glycoprotein)Ibとの相互作用を阻害する中和抗体(インヒビター)が存在すれば、VWF:RCoかRistocetin-induced platelet agglutination(RIPA)アッセイを用いた正常血漿との交差混合試験(37℃で2時間加温後)で機能的に検出することができる。
(2)抗VWF自己抗体が存在する。
非中和型(非阻害性)抗体は、主に結合試験(イムノブロット法、ELISA法、イムノクロマト法など)を用いて免疫学的に検出される。中和型抗VWF自己抗体(インヒビター)も、免疫学的方法で検出される。
 
C.鑑別診断
フォンウィルブランド病(遺伝性VWF欠乏症)、全ての二次性フォンウィルブランド症候群(心血管疾患、本態性血小板増多症、甲状腺機能低下症、リンパ又は骨髄増殖性疾患などの明確な原因疾患がある非自己免疫性後天性フォンウィルブランド症候群)、自己免疫性後天性F13欠乏症、自己免疫性後天性F8欠乏症(後天性血友病A)、自己免疫性後天性F5欠乏症などを除外する。
 
<診断のカテゴリー>
Definite:Aの全て+B1およびB2-(2)を満たし、Cを除外したもの
Probable:Aの全て+B1およびB2-(1)を満たし、Cを除外したもの
Possible:Aの全て+B1を満たしたもの
 
<参考所見>
1.一般的血液凝固検査
(1)出血時間:延長または正常
(2)APTT:延長または正常
(3)血小板数:正常、減少または増加
2.その他の検査
(1)RIPA:正常、減少あるいは欠如
(2)VWFマルチマー:正常あるいは異常(高分子量マルチマー欠如あるいは減少)
(3)VWF投与試験:VWF含有F8濃縮製剤を投与して、経時的にVWF活性と抗原量を測定し、その回収率、半減期を計算することによって、血中からの除去促進(クリアランス亢進型抗体)や活性阻害(中和型抗体)の有無と病態を推定することができる。ただし、回収率の低下や半減期の短縮はAVWDに特異的な所見ではない。
 
 
4)自己免疫性後天性凝固第V/5因子(F5)欠乏症(いわゆる第5因子インヒビター)の診断基準
Definite、Probableを対象とする。
 
A.症状等
(1)過去1年以内に発症した出血症状がある。
(2)パラ血友病(遺伝性F5欠乏症)の家族歴がない。
(3)出血症状の既往がない。特に過去の止血負荷(外傷、手術、抜歯、分娩など)に伴った出血もない。
(4)抗凝固薬や抗血小板薬などの過剰投与がない。
 
B.検査所見
1.特異的検査でF5関連のパラメーターの異常がある(通常はF5活性、F5抗原量が基準値の50%以下)。
(1)F5活性(F5:C):必ず著しく低下
(2)F5抗原量(F5:Ag):通常は著しく低下
(3)F5比活性(活性/抗原量):通常は著しく低下
2.確定診断用検査
(1)PTおよびAPTT交差混合試験でインヒビター型である。
症例の血漿と健常対照の血漿を5段階に希釈混合して、37℃で2時間加温してからPTおよびAPTTを測定する。下向きに凸であれば「欠乏型」でインヒビター陰性、上向きに凸であれば「インヒビター型」で陽性と判定する。なお、抗リン脂質抗体症候群のループスアンチコアグラントでは、混合直後にPTおよびAPTTを測定しても凝固時間の延長が認められるので(即時型阻害)、鑑別に有用である。
(2)F5インヒビター(凝固抑制物質)が存在する。
力価測定:一定量の健常対照血漿に様々に段階希釈した症例の血漿を混合して、2時間37℃で加温してから残存F5活性を測定する(ベセスダ法)。
(3)抗F5自己抗体が存在する。
非阻害性抗体は、主に結合試験(イムノブロット法、ELISA法、イムノクロマト法など)を用いて免疫学的に検出される。F5インヒビター、すなわち中和型抗F5自己抗体も、免疫学的方法で検出され、微量に残存する抗F5自己抗体も鋭敏に検出することが可能なので、病勢、免疫抑制療法の効果、寛解の判定や経過観察に有用であると期待される。
:出血症状を生じない抗F5自己抗体保有症例も多数も存在することが報告されているので、A-(1)とB-1のないものは検査対象に含めない。
 
C.鑑別診断
パラ血友病(遺伝性F5欠乏症)、先天性F5・F8複合欠乏症、全ての二次性F5欠乏症(播種性血管内凝固症候群(DIC)など)、(遺伝性)第X/10因子(F10)欠乏症、自己免疫性後天性F10欠乏症、全ての二次性F10欠乏症、(遺伝性)プロトロンビン欠乏症、自己免疫性後天性プロトロンビン欠乏症、全ての二次性プロトロンビン欠乏症、自己免疫性後天性F13欠乏症、抗リン脂質抗体症候群などを除外する。
 
<診断のカテゴリー>
Definite:Aの全て+B1およびB2-(3)を満たし、Cを除外したもの
Probable:Aの全て+B1+B2-(1)またはB2-(2)を満たし、Cを除外したもの
Possible:Aの全て+B1を満たすもの
 
<参考所見>
1.一般的血液凝固検査
(1)出血時間:通常は正常
(2)PTおよびAPTT:必ず延長
(3)血小板数:通常は正常
 
2.その他の検査
ループスアンチコアグラントが陽性あるいは測定不能の場合は、抗CL・β2GPI抗体や抗カルジオリピンIgGを測定して、F5インヒビターが原因の偽陽性である可能性を除外すると良い。
<重症度分類>
過去1年間に重症出血の(1)~(4)のいずれかを1回以上起こした例を重症例とし対象とする。
 

1.重症出血
(1)致命的な出血
(2)重要部位、重要臓器の出血(例えば、頭蓋内、脊髄内、眼球内、気管、胸腔内、腹腔内、後腹膜、関節内、心嚢内、コンパートメント症候群を伴う筋肉内出血等)
(3)ヘモグロビン値8g/dL以下の貧血あるいは2g/dL以上の急速なヘモグロビン値低下をもたらす出血
(4)24時間内に2単位以上の全血あるいは赤血球輸血を必要とする出血
 
2.軽症出血
上記以外の全ての出血**
  *:日本語版簡略版出血評価票(JBAT)も参考にすることを推奨
  **:多発性及び有痛性の出血は、重症に準じて止血治療を考慮すべき

 
 
 
※診断基準及び重症度分類の適応における留意事項
1.病名診断に用いる臨床症状、検査所見等に関して、診断基準上に特段の規定がない場合には、いずれの時期のものを用いても差し支えない(ただし、当該疾病の経過を示す臨床症状等であって、確認可能なものに限る。)。
2.治療開始後における重症度分類については、適切な医学的管理の下で治療が行われている状態であって、直近6か月間で最も悪い状態を医師が判断することとする。
3.なお、症状の程度が上記の重症度分類等で一定以上に該当しない者であるが、高額な医療を継続することが必要なものについては、医療費助成の対象とする。
 


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情報提供者
研究班名 自己免疫性出血症治療の「均てん化」のための実態調査と「総合的」診療指針の作成 研究班
研究班名簿   
情報更新日平成29年4月24日