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三尖弁閉鎖症(指定難病212)

さんせんべんへいさしょう

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

1. 「三尖弁閉鎖症」とは

正常な心臓では図1のように、全身の静脈血は上・下大静脈から右房へ戻り、右室、肺動脈、肺へと流れ、酸素が豊富な血液となって肺静脈から左房へ戻り、左室、大動脈の順に流れていきます。肺で酸素を取り込むため、肺静脈はもっとも多くの酸素を含んでいます。右房と右室の間にある弁を三尖弁と呼びます。
 

図1: 正常な心臓構造(金子幸裕、平田康隆、木村充利、阿知和郁也.先天性心疾患の血行動態:治療へのアプローチ.3p. 文光堂、2013. より転載)
 
三尖弁閉鎖症は、生まれつき三尖弁が閉鎖している病気です。そのため、右房へ戻ってきた静脈血は右室に流れ込むことができず、すべて心房間の孔(心房中隔欠損または卵円孔)を通って左房へ流れ込み、左房の血液と混合し、僧帽弁を通って左室へ流れ込みます。正常では左房の血液は多くの酸素を含んでいますが、そこへ酸素の少ない静脈血が流れ込むため、酸素の含有量が低下します。この血液が左心室、大動脈を通って体に送られるため、チアノーゼが見られることになります(図2)。この病気はチアノーゼを主症状とする先天性心臓病のなかで3番目に多い病気です。右室は小さいことがほとんどで、心臓手術を行っても通常の右室として使用することはできません。従って、使用できる心室が左心室のみであり、単心室症と同じように最終的にフォンタン型の手術を目指すことになります。
三尖弁閉鎖症は大きく分けると、肺へ流れる血液量が少なく、チアノーゼ(低酸素血症)が主な症状となるタイプ(肺血流減少型)と、肺へ流れる血液量が多いために肺や心臓に負担がかかり、呼吸器症状、肝臓の腫れ、むくみ、体重増加不良などの心不全が目立つタイプ(肺血流増加型)があり、治療、外科手術の経過も異なりますが、最終的にフォンタン手術を目指すことは同じです。
 

図2: 三尖弁閉鎖(先天性心疾患の血行動態.金子幸裕他著.2012.文光堂文光堂、より転載)
 

2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか。

先天性心疾患をすべて含めると、その発症率はおよそ1%(出生100人に対して1人)の割合で、三尖弁閉鎖症はそのうち1~3%を占めると言われています。最近の日本の出生数は年間約100万人ですので、毎年、全国で100~300人の三尖弁閉鎖症の患者さんが生まれていることになります。成人になった三尖弁閉鎖症がどのくらいいるかは、まだ明らかではありません。

3. この病気はどのような人に多いのですか。

ほとんどの場合は様々な原因が関与して発症するため、特にどのような人に多いという傾向は明らかではありません。しかし、ときに同一家系内に発生する例、染色体異常に伴って発生する例がみられます。三尖弁閉鎖症の約10~15%では心臓以外の先天性異常を伴っています。

4. この病気の原因はわかっているのですか。

胎児期(胎生30日ころ)に右心房と右心室、左心房と左心室の繋がりができあがっていく過程がうまく行かず、三尖弁口が閉鎖してしまいますが、その原因は不明です。

5. この病気は遺伝するのですか。

ほとんどの場合、遺伝はしませんが、ときに家族性にみられる場合があります。なんらかの遺伝子異常が関係している可能性はありますが、まだ明確ではありません。

6. この病気ではどのような症状がおきますか。

三尖弁閉鎖症の型や合併する他の構造異常などによって異なりますが、肺へ流れる血液量が少ない肺血流減少型ではチアノーゼ(低酸素血症)が主な症状となります。出生後、動脈管が自然に閉じはじめると肺血流量はその分減少し、チアノーゼは次第に強くなります。また、右心室から肺動脈への出口(右室流出路と呼ぶ)の狭窄が進行して、ファロー四徴症と同様の低酸素発作(スペル発作)を生じることがあります。低酸素発作の症状は、チアノーゼの増強、多呼吸、意識障害などです。一方、肺血流増加型ではチアノーゼは目立ちませんが、肺へ流れる血液量が多いために肺や心臓が負担を受け、呼吸障害、肝臓の腫大、浮腫、体重増加不良などのうっ血性心不全の症状が目立ちます。

7. この病気にはどのような治療法がありますか?

チアノーゼが進行するときは肺へ流れる血液量の不足が主な原因であるため、酸素を吸入しても良くなりません。プロスタグランジンという薬を持続静注して動脈管を閉じないようにして、肺へ流れる血液量を確保する治療を行います。動脈管は大動脈と肺動脈を橋渡ししている血管で、出生後に自然に閉鎖する性質があります。これを開存させることによって肺血流を維持することができるのです。その後、1~2週間のうちに動脈管の代わりにシャント手術(ブラロック・トーシヒ短絡手術)を行います。
逆に肺血流が多すぎて心不全症状があるときは、肺動脈絞扼術(バンディング)(肺動脈の回りにテープをかけて絞り込む手術)を行って、肺へ流れる血液量を減らします。
また、心房間の交通が不十分で、静脈がうっ血するときは、バルーンカテーテルを使って卵円孔を大きくするカテーテル治療(心房中隔裂開術:BASと呼ぶ)が必要となることもあります。
三尖弁閉鎖症では右心室は小さくて使用できないので、単心室と同様の考え方でチアノーゼをなくすことを目標として、最終的にフォンタン型の手術を目指します。しかし、ほとんどの症例ではフォンタン型手術を行う前にいくつかの段階的手術が必要となります。両方向性グレン手術(上大静脈を肺動脈につないで、まず上半身の静脈のみ肺へ流す手術)もその一つです。また、すべての患者さんにフォンタン手術ができるわけではなく、肺動脈が細すぎるなど様々な理由で、フォンタン手術に到達できないことがあります。

8. この病気はどういう経過をたどるのですか。

タイプによっても経過は違いますが、手術を行わない場合の生存率は1歳で約60%、10~15歳に達するのは半数以下と言われています。フォンタン型手術が成立すれば生存率は改善しますが、そこに到達するまでに段階的な手術を必要とすることが多く、フォンタン型手術は3歳前後で行われることが多いようです。しかし、フォンタン型手術に到達して経過の良好な患者さんでも、術後10~20年以上すると、フォンタンという特殊な循環に伴う様々な合併症が出現してきます。フォンタン型手術は決して根治手術ではなく、あくまで低酸素状態を回避するために行うものであり、やはり、一つの心室で一生涯、全身の循環を維持することにはどこか無理があるようです。特に予後に影響する主な合併症は、心不全、不整脈、血栓症の3つですが、それ以外にも、低酸素血症(チアノーゼ)の再発、肝障害、蛋白漏出性胃腸症、特殊な気管支炎など様々です。

9. この病気は日常生活でどのような注意が必要ですか。

フォンタン型手術を行った患者さんでは上記の合併症に注意して生活することが重要です。心不全の症状としては、顔や手足のむくみ、お腹の張り、息切れや動悸、持続する咳や痰、夜間の息苦しさなどがあります。不整脈の症状としては、動悸、胸痛、めまいなどがありますが、特に失神(意識消失)のあったときは要注意です。これらの症状があったときには早期に病院を受診するようにします。また、血栓症の誘因となる脱水症にも気を付け、血栓予防の薬についても主治医とよく相談し、定期的に血液検査を受け、薬の効き具合を調べるようにします。運動については、激しい運動は困難なことが多いですが、自分に合った適度な身体的活動、運動を無理しない程度に日常に取り入れて体力を付けることも重要です。
女性では妊娠のことも問題となります。フォンタン型手術後の女性では妊娠中に心臓に負担がかかり、危険を伴うことが少なくありません。血栓予防のためにワルファリンを内服している場合は妊娠は禁止となります。妊娠可能な年齢になったら、早めから主治医の先生、産科の先生とよく相談して十分な知識を持っておくことが必要です。


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情報提供者
研究班名 単心室循環症候群の予後に関する研究班  
新規掲載日平成27年8月6日