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三尖弁閉鎖症(指定難病212)

さんせんべんへいさしょう

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)


※こちらの内容は以下の難病共通になります。
単心室症(指定難病210)
左心低形成症候群(指定難病211)
三尖弁閉鎖症(指定難病212)
心室中隔欠損を伴わない肺動脈閉鎖症(指定難病213)

○ 概要
 
1.概要
単心室症、左心低形成症候群、三尖弁閉鎖症、心室中隔欠損を伴わない肺動脈閉鎖症の総称を単心室循環症候群という。単心室循環症候群とは、体循環と肺循環の双方を、機能的に一つの心室のみに依存する血行動態を有する疾患群の総称である。全て、先天性であり、後天性の疾患は存在しない。なお、単心室症とは、形態的に心室が一つのみ存在することを意味するものではない。
単心室循環症候群では、重度の慢性低酸素血症、多呼吸、易疲労感などの心不全症状を呈する。肺血流は増加、減少の双方が存在し、心室レベルで血液が右—左短絡するため、酸素投与に反応しない低酸素血症を生じる。肺高血圧、肺血管低形成を合併することも多い。
手術を含め、根治的治療法はない。労作時の易疲労のため、就業な困難な場合が多い。重度の慢性低酸素血症やフォンタン型手術後の循環破綻によって死亡することが多い。
2.原因
先天性である。原始心筒の心ループ成熟において、房室弁と洞部中隔が心房中隔と整列する過程の異常等、幾つかの心ループ成熟過程異常が考えられている、しかし、その心臓発生異常の起因となる原因は不明である。
3.症状
心不全、低酸素血症、血液右−左短絡自体、フォンタン循環(後述)破綻に由来する。
1)  心不全に由来する症状
乳児期の哺乳不良、体重増加不良など、成人期の易疲労、動悸、食思不振など
2)  低酸素血症に由来する症状・合併症
乳児期の多呼吸、チアノーゼ、バチ状指等、成人期の易疲労、過粘稠度症候群、チアノーゼ性腎症等
3)  右左短絡による合併症
脳梗塞、脳膿瘍
4)  フォンタン循環破綻に由来する症状・合併症
心不全、低酸素血症、房室弁逆流、蛋白漏出性胃腸症、鋳型気管支炎(plastic bronchitis)、肝腫大、肺高血圧など
4.治療法
厳密な適応基準を満たせばフォンタン型手術(図1:上下大静脈からの静脈血が心室を介さず肺動脈に直接還流するように血行動態を修正する手術)を施行する。ただ、順調なフォンタン循環であっても通常の慢性うっ血性心不全状態であるため、いつかは破綻していくこととなる。フォンタン型手術は根治的手術ではない。また、フォンタン型手術適応外となった群には、効果的な薬物治療はなく、ACE阻害薬、利尿薬の効果は限定的であり、対症療法のみとなる。

 

 

5.予後
フォンタン型手術を行った患者の20年生存率は手術成績の良好な施設で69%との報告がある。
単心室症全体で手術未実施なら、10年生存率は約40%である。20歳以上で心原性の慢性低酸素血症の予後は非常に悪い。50歳以上生存することは困難である。
 
○ 要件の判定に必要な事項
1.  患者数
約3,500人(単心室循環症候群の総数。)
2.  発病の機構
不明
3.  効果的な治療方法
未確立(手術療法を含め根治療法は確立していない。)
4.  長期の療養
必要(フォンタン術後も心不全状態が継続する。)
5.  診断基準
あり(日本小児循環器学会作成の診断基準あり。)
6.  重症度分類
NYHA心機能分類II度以上の場合を対象とする。
○ 情報提供元
日本循環器学会、日本小児循環器学会、日本成人先天性心疾患学会
<診断基準>
 
単心室循環症候群は、単心室症、左心低形成症候群、三尖弁閉鎖症、心室中隔欠損を伴わない肺動脈閉鎖症の総称である。各疾患と診断された場合を対象とする。
 
1.単心室症
単心室症では、大循環と肺循環を維持する心室を主心室、小さく残存して、ほとんど機能していない心室を痕跡的心室と呼称する。
〈診断〉
心臓超音波検査又はMRIで、一つの心室(主心室)に両房室弁若しくは共通房室弁が挿入している場合(房室弁の全てが一つの心室に挿入している)、房室弁が2つある場合は、1つの房室弁は全て主心室に挿入し、他方の房室弁が痕跡的心室に騎乗していても、その程度が50%未満のみ挿入していることが判明すれば、単心室症と診断する。主心室の構造と瘢痕的心室の位置関係をみることにより、左室性か右室性かを診断する。

 

 

2.左心低形成症候群
心臓超音波検査にて、下記の2つの特徴を有する場合に診断する。
①    非常に小さい左室(重度低形成例では左室はスリット状又は確認不能)を認める。大動脈弁及び僧帽弁は閉鎖又は狭窄している。 左室は左後方に存在するが低形成で心尖部に到達しない。
②    一方、肺動脈は太く、動脈管が閉鎖しない状態では、血液は肺動脈から大動脈へ右—左短絡している。卵円孔又は心房中隔欠損があることが必須で、左房から右房への短絡が確認される。

 

 

3.三尖弁閉鎖症
①四腔断面で右房から右室へのつながりの閉鎖(多くは筋性閉鎖)、②心房中隔と心室中隔の不整合 (malalignment)が診断の基本となる。また、③生存中なら心房間交通(右房から左房への短絡)が必須であり、④心室中隔欠損も伴い左室から右室への短絡を認めることもある。大血管は正常連結のものと大血管転位のものに分けられる。基本は心臓超音波検査で診断されるが、心臓カテーテル検査、心臓MRI又はCTでも可能である。
〈診断〉
心臓超音波検査、心臓カテーテル検査、心臓MRI又はCTのいずれかにおいて、①を認めた場合、三尖弁閉鎖症と診断する。②、③、④は診断に必須ではない。

 

 

4.心室中隔欠損を伴わない肺動脈閉鎖症
①肺動脈弁が漏斗部閉鎖か弁性閉鎖となる。②肺動脈は細く、③肺血流は大動脈から動脈管を通して供給されるか、④大動脈からの体肺側副血管によって供給される。⑤心室中隔欠損は存在しない。多くは、右室は低形成であり、肺循環を維持することが不可能である。
〈診断〉
心臓超音波検査、心臓カテーテル検査、心臓MRI又はCTのいずれかにおいて、①、②、⑤の全てと③かつ/または④を認める場合、心室中隔欠損を伴わない肺動脈閉鎖症と診断する。

 

 

 
 
<重症度基準>
 NYHA心機能分類II度以上
 
NYHA分類

 

I度

心疾患はあるが身体活動に制限はない。
日常的な身体活動では疲労、動悸、呼吸困難、失神あるいは
狭心痛(胸痛)を生じない。

II度

軽度から中等度の身体活動の制限がある。安静時又は軽労作時には無症状。
日常労作のうち、比較的強い労作(例えば、階段上昇、坂道歩行など)で疲労、動悸、呼吸困難、失神あるいは狭心痛(胸痛)を生ずる。

III度

高度の身体活動の制限がある。安静時には無症状。
日常労作のうち、軽労作(例えば、平地歩行など)で疲労、動悸、呼吸困難、失神あるいは狭心痛(胸痛)を生ずる。

IV度

心疾患のためいかなる身体活動も制限される。
心不全症状や狭心痛(胸痛)が安静時にも存在する。
わずかな身体活動でこれらが増悪する。

NYHA: New York Heart Association
 
NYHA分類については、以下の指標を参考に判断することとする。

NYHA分類

身体活動能力
(Specific Activity Scale; SAS)

最大酸素摂取量
(peakVO2

I

6METs以上

基準値の80%以上

II

3.5~5.9 METs

基準値の60~80%

III

2~3.4 METs

基準値の40~60%

IV

1~1.9 METs以下

施行不能あるいは
基準値の40%未満

 
※NYHA分類に厳密に対応するSASはないが、
「室内歩行2METs、通常歩行3.5METs、ラジオ体操・ストレッチ体操4METs、速歩5~6METs、階段6~7METs」をおおよその目安として分類した。
 
 
 
 
※診断基準及び重症度分類の適応における留意事項
1.病名診断に用いる臨床症状、検査所見等に関して、診断基準上に特段の規定がない場合には、いずれの時期のものを用いても差し支えない(ただし、当該疾病の経過を示す臨床症状等であって、確認可能なものに限る。)。
2.治療開始後における重症度分類については、適切な医学的管理の下で治療が行われている状態であって、直近6か月間で最も悪い状態を医師が判断することとする。
3.なお、症状の程度が上記の重症度分類等で一定以上に該当しない者であるが、高額な医療を継続することが必要なものについては、医療費助成の対象とする。


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情報提供者
研究班名 単心室循環症候群の予後に関する研究班
研究班名簿   
情報更新日平成29年4月24日