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非典型溶血性尿毒症症候群(指定難病109)

ひてんけいようけつせいにょうどくしょうしょうこうぐん

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

1. 「非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)」とはどのような病気ですか

まず、血栓性微小血管症(thrombotic microangiopathy: TMA)という、1) 細い血管内に血小板のかたまり(血小板血栓)が生じることで、2) 血小板が減少し、3) 血小板血栓により赤血球が破壊されて貧血(溶血性貧血)になるという3つの特徴をもつ病気の総称があります。このTMAの中で最も頻度が高いのが溶血性尿毒症症候群(hemolytic uremic syndrome、 HUS)という病気です。HUSは、1)溶血性貧血、2)血小板減少、3)急性腎不全(腎臓の細い血管内に血小板血栓が生じることによる)を主な症状とする疾患です。HUSは、志賀毒素を産生する腸管出血性大腸菌であるO-157などの感染をきっかけに下痢症状を伴って起こります。そのため、食中毒で集団発生することがあり、しばしばニュースに出てくる病気です。
一方で、HUSと同じような症状を示しながらも、志賀毒素を産生する腸管出血性大腸菌が検出されないHUSの患者さんが約10%いることが、1970年代から報告されていました。これが“非典型”溶血性尿毒症症候群(atypical hemolytic uremic syndrome、 aHUS)と呼ばれるものです。1998年にaHUSが補体という生体防御に関わる因子の遺伝子異常により起こることが報告されてから研究が急速に進展し、現在に至るまでいくつかの遺伝子異常が見つかり、aHUSの多くは遺伝性疾患とされています。
すなわち、溶血性尿毒症症候群(HUS)は一部の大腸菌によって起こる疾患であり、“非典型”溶血性尿毒症症候群(aHUS)は主に補体系因子の異常によって起こる疾患であることから、両者の症状は似ていますが、その原因・治療は大きく異なります。

2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか

ヨーロッパからの報告では、毎年100万人に2人、小児では100万人に7人が発症すると言われています。日本では現在のところ具体的な人数は分かっていません。日本人での正確な統計はありませんが、2014年時点では、aHUSと診断のついた患者さんは100人程度いると考えられています。

3. この病気はどのような人に多いのですか

aHUSは新生児から大人まで幅広い年齢層に見られます。男性にも女性にも同様に見られます。家族内で複数の方がaHUSまたは原因不明のHUSを発症されているなど、家族性のある方が上記の症状を示した場合には、特にこの疾患も念頭に入れて検査を進めていきます。

4. この病気の原因はわかっているのですか

aHUSの多くは補体系因子の遺伝子異常であると言われています。補体とは体の免疫反応に関与する物質であり、病原体などを体内から排除する役割を持っています。補体がその役割を発揮するためには活性化される必要があり、この補体の活性化を調節している物質が補体調節因子です。補体調節因子には活性化を促す役割を持つものと、活性化を抑制する役割を持つものとがあり、これらの働きによって補体は必要に応じた適度な活性化を保つことができます。
しかしこれら補体系因子に異常が生じると補体活性化の適切な調節が行われなくなり、結果として、必要以上に活性化された補体が病原体だけでなく自身の組織も攻撃してしまいます。このようにして補体により細い動脈(細小動脈)の内壁が傷害されると、血管の内側にある細胞(血管内皮細胞)が本来持っている機能が失われ、血管の中で血小板の過剰な凝集(血小板血栓)が生じ、それによって血小板が消耗されます。さらに赤血球は非常にもろいため、このように細小動脈内で血小板血栓が生じた部位を通過する際に破砕されてしまいます。その結果、溶血性貧血や血小板減少が生じ、さらには細小動脈が集中している腎臓をはじめとする様々な臓器に障害が現れます。このようにしてaHUSという病気が発症すると考えられています。
補体系因子の異常は、補体の活性化を抑制する因子の機能が低下する例と、活性化する因子の機能が亢進する例に分けられます。抑制因子の機能が低下する例として、H因子、I因子、 CD46、トロンボモジュリンの遺伝子変異、または抗H因子抗体の出現によりH因子の機能が低下する場合が挙げられます。活性化因子の機能亢進の例としては、B因子、C3の遺伝子変異が挙げられます。いずれの場合も補体の過剰な活性化を引き起こします。
また、抗H因子抗体が出現する患者さんの多くで H因子関連蛋白質という遺伝子の変異が報告されており、その遺伝子変異のために抗体が出現すると考えられています。 また、aHUSでは遺伝子検査をしてもこれまで原因として報告されている遺伝子に異常の無い患者さんもおり、まだ分かっていない原因遺伝子があると考えられています。この様に、この疾患の原因は完全には分かっておりません。

5. この病気は遺伝するのですか

欧米からの報告では補体系因子の遺伝子異常は、常染色体劣性遺伝、常染色体優性遺伝の2つの遺伝形式を持つと言われています。しかし、たとえ補体系因子に遺伝子異常が見られたとしても無症状の方もいます。そのため、遺伝子の異常があっても必ずこの病気を発症するとは限らないようです。このように症状の出方に違いが見られる理由については、はっきりと分かっていません。

6. この病気ではどのような症状がおきますか

もともと遺伝的な要因のある方が、感冒症状(風邪など)・腸炎などの感染症や、出産などをきっかけに発症することが多いとされています。aHUSで見られる主な症状としては、血小板が減少するために起こる点状や斑状の出血斑(紫斑)などの出血症状や、溶血性貧血による全身倦怠感や息切れです。また腎臓への障害が大きい場合には、浮腫(むくみ)や尿量の減少、食欲低下などの尿毒症症状などが見られます。発熱、神経症状、消化器症状等が見られる場合もあります。

7. この病気にはどのような治療法がありますか

現在、主に用いられている治療法としては血漿交換や血漿輸注という血漿療法と、エクリズマブという補体のC5という成分に対する抗体による治療が行われています。腎臓の機能が低下している場合には、透析による治療を行うこともあります。高度の腎不全に至った場合、長期的には腎移植も治療の選択肢の1つとなりますが、欧米からの報告では腎臓の移植だけでは再発の恐れが高いとされています。 血漿交換は、血液の中でも血漿という成分を献血による血漿と交換する治療で、血液の中にある補体を活性化させている成分も含めて取り除き、健康な人の血漿を代わりに補充する治療です。血漿輸注は、健康な人の血漿を補充する目的や、新生児や小児で血漿交換が困難な場合に行われます。 また最近aHUSの治療薬として、エクリズマブという薬があります。エクリズマブはC5という補体成分を抑制する抗体で、元来、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)という疾患に対して開発された治療薬ですが、補体の過剰な活性化を阻害する働きを持つことから、2013年にaHUSが適応症に追加されました。なお、エクリズマブを使用した場合に、いつまで治療を続けるのが良いのかに関しては、まだ分かっていません。

8. この病気はどういう経過をたどるのですか

従来、約半数のaHUS患者さんは高度の腎不全に至るとされていました。また患者さんの中にはいったん症状が落ち着いても頻回にaHUS症状を繰り返す方もいます。近年では治療の進歩により予後は改善され、発作を繰り返す患者さんの割合も減少すると考えられています。原因となる遺伝子の変異により予後が違うと考えられていますが、日本においてはaHUS患者さんの原因遺伝子変異の割合が正確に分かっておらず、変異ごとの予後についても明らかではありません。

9. この病気は日常生活でどのような注意が必要ですか

患者さんにより発症する年齢、重症度、治療の効果、再発の頻度が違うので、一概には言えませんが、この疾患と診断された患者さんが、aHUSの症状(血小板数の低下、貧血、腎機能障害、たんぱく尿、血尿など)が出てきた際には、再発の可能性が疑われますので、すぐに病院を受診するのが良いでしょう。また風邪や腸炎などをきっかけとして発症することがあるので、この様な症状の後には注意深く様子を見るのが良いでしょう。

10. この病気に関する資料・関連リンク

日本腎臓学会、日本小児科学会 非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)診断基準


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情報提供者
研究班名 非典型溶血性尿毒症症候群( aHUS )の全国調査研究班
研究班名簿   
情報更新日新規掲載日:平成26年12月18日