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偽性副甲状腺機能低下症(指定難病236)

ぎせいふくこうじょうせんきのうていかしょう

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

○ 概要
 
1.概要
副甲状腺ホルモン(PTH)が正常に分泌されているにもかかわらず、PTHに対して標的組織が抵抗性を示し、低カルシウム血症、高リン血症など、副甲状腺機能低下症と同じような症状を呈する病態である。偽性副甲状腺機能低下症にオルブライト遺伝性骨ジストロフィー(Albright hereditary osteodystrophy:AHO)の症候を合併する病型をIa型、合併しないものをIb型と呼ぶ。その他にIc型、II型の病型が提唱されているが、Ic型の区分は意義が確立されておらず、II型は独立した疾患として存在するのか疑問視されている。
 
2.原因
PTHの受容体であるPTH/PTHrP受容体(PTHR1)と、細胞内シグナル伝達系のサイクリックAMP(cAMP)を生成するアデニルシクラーゼ(adenylyl cyclase:AC)との間に介在するGsα タンパクの活性低下が原因である。GsαタンパクをコードするGNAS遺伝子領域は複雑なインプリンティング調節を受けている。母由来アリルのGsαタンパク発現と父由来アリルのGsαタンパク発現抑制には組織特異性があり、多くのホルモン標的組織では母由来アリルの発現が優位であるために異常Gsαタンパクをコードする遺伝子が母から由来したときにはホルモン抵抗性を来し偽性副甲状腺機能低下症Ia型となる。一方、異常Gsαタンパクをコードする遺伝子が父から由来したときには子はホルモン抵抗性を伴わない偽性偽性副甲状腺機能低下症となる。
Ib型ではGNAS遺伝子近傍のDNAメチル化パターン異常がみられGsαタンパク発現量の低下が原因であると推測されるが、その機序は不明である。
 
3.症状
低カルシウム血症による症状は、口周囲や手足などのしびれ感・錯感覚、テタニー、喉頭痙攣、全身痙攣が問題である。これに加え、白内障や大脳基底核の石灰化、抑うつ、不整脈、皮膚や毛髪の異常など、多彩な症候を呈しうる。PTH以外のホルモンに対する抵抗性をしめす症例があり、甲状腺機能低下症、性腺機能低下症を合併することがある。AHOの症候を合併する場合がある。AHOの症候とは、異所性皮下骨化、短指趾症、円形顔貌、肥満、低身長、知能障害である。
 
4.治療法
低カルシウム血症に対して活性型ビタミンD投与により治療する。TSH抵抗性による甲状腺機能低下症を合併する場合には甲状腺ホルモン薬の補充療法、GHRH抵抗性による成長ホルモン分泌不全を合併する場合には成長ホルモン投与を行う。
 
5.予後
活性型ビタミンD投与を継続することで低カルシウム血症は是正されこれによる症状はほぼなくなるが、過剰なビタミンD投与による尿路結石、腎機能低下が治療にともなう合併症となることがある。AHOは全ての症例にみられる訳ではなく、症状の程度も多様であるが、異所性皮下骨化は発生した部位、大きさによっては運動制限、生活制限の原因となる。外科的切除以外対処方法がないが、同一部位に再発することもある。知能障害の程度も多様であるが、ホルモン補充療法によっては改善しないものと考えられている。
 
○ 要件の判定に必要な事項
1.  患者数
約400人
2.  発病の機構
不明(GNAS遺伝子の関連が示唆されている。)
3.  効果的な治療方法
未確立(対症療法のみである。)
4.  長期の療養
必要
5.  診断基準
あり(ホルモン受容機構異常に関する調査研究班。)
6.  重症度分類
重症度分類を用いて重症を対象とする。
 
○ 情報提供元
「ホルモン受容機構異常に関する調査研究班」
千葉県こども病院 診療部長 皆川真規
<診断基準>
Definite、Probableを対象とする。
 
ホルモン受容機構異常に関する調査研究班の診断基準
 
A.症状
1.  口周囲や手足などのしびれ、錯感覚
2.  テタニー
3.  全身痙攣
 
B.検査所見
1.低カルシウム血症、正又は高リン血症
2.eGFR 30mL/min/1.73m2以上
3.Intact PTH 30pg/mL以上
 
C.鑑別診断
以下の疾患を鑑別する。
ビタミンD欠乏症
*血清25水酸化ビタミンD(25(OH)D)が15ng/mL以上であってもBの検査所見であること。25(OH)Dが15ng/mL未満の場合にはビタミンDの補充等によりビタミンDを充足させたのちに再検査をおこなう。
 
D.遺伝学的検査
1.GNAS遺伝子の変異
2.GNAS遺伝子の転写調節領域のDNAメチル化異常
 
<診断のカテゴリー>
Definite:Aのうち1項目以上+Bの全てを満たしCの鑑別すべき疾患を除外し、Dのいずれかを満たすもの。
Probable:Aのうち1項目以上+Bの全てを満たしCの鑑別すべき疾患を除外したもの。
Possible:Aのうち1項目以上+Bの全てを満たすもの。
 
 
 
<重症度分類>
下記を用いて重症を対象とする。
 

 

重症:PTH抵抗性による低カルシウム血症に対して薬物療法を必要とすることに加え、異所性皮下骨化、短指趾症、知能障害により日常生活に制約があるもの。
 
中等症:PTH抵抗性による低カルシウム血症に対して薬物療法を必要とするもの。
 
軽症:特に治療を必要としないもの。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
※診断基準及び重症度分類の適応における留意事項
1.病名診断に用いる臨床症状、検査所見等に関して、診断基準上に特段の規定がない場合には、いずれの時期のものを用いても差し支えない(ただし、当該疾病の経過を示す臨床症状等であって、確認可能なものに限る。)。
2.治療開始後における重症度分類については、適切な医学的管理の下で治療が行われている状態であって、直近6か月間で最も悪い状態を医師が判断することとする。
3.なお、症状の程度が上記の重症度分類等で一定以上に該当しない者であるが、高額な医療を継続することが必要なものについては、医療費助成の対象とする。
 

本疾患の関連資料・リンク

内分泌学会 低カルシウム血症の鑑別診断の手引き
https://square.umin.ac.jp/endocrine/tebiki/003/003001.pdf
ホルモン受容機構異常に関する調査研究班名簿
http://www.nanbyou.or.jp/upload_files/naibunpitu1.pdf


治験情報の検索:国立保健医療科学院
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情報提供者
研究班名 ホルモン受容機構異常に関する調査研究班
研究班名簿   
情報更新日平成29年4月24日