(2)オリーブ橋小脳萎縮症
(3)シャイ・ドレーガー症候群
■概念・定義
最初、線条体とくに被殻の神経細胞の変性によりパーキンソニズムすなわちパーキンソン病によく似た症状を呈する疾患として1961年に記載された。その後、より広汎な神経系が変性することがわかり、オリーブ橋小脳萎縮症、シャイ・ドレーガー症候群と併せて多系統萎縮症(multiple system atrophy: MSA)と呼ばれる様になったため、その1つの病型ということになる。パーキンソニズム優位の多系統萎縮症(MSA-P)とも呼ばれる。
■疫学
発症は平均約58 (35~79)歳である。我が国では、MSAとして約1万1千件の特定疾患の医療券が発行されており、そのうち約30%が本症と思われる。
■病因
MSAは線条体の他、黒質、小脳皮質、橋核、オリーブ核、大脳皮質運動野などの神経細胞の変性、オリゴデンドログリア細胞質内のαシヌクレインからなる封入体(グリア細胞質内封入体)を特徴とするが、神経細胞質内やグリア・神経細胞核内にも封入体が見られる。ほとんどは孤発例であるが、ごく希に家族内発症がみられる。現在、発症機序について封入体や遺伝要因を手がかりに研究が進められているが、まだ十分には解明されていない。
■症候
筋固縮、無動(動作緩慢、動作の減少)、姿勢反射障害などのパーキンソニズムが中心で、安静時振戦は少ない。進行すると、歩行時のふらつき、構音障害など小脳失調症状や排尿障害、起立性低血圧症などの自律神経症状が加わってくる。注意すべきは夜間の喘鳴や睡眠時無呼吸などで、早期から認められることがあり突然死も知られている。診察ではさらに錐体路徴候がみられることも多い。
■診断
パーキンソニズムのみのときは抗パーキンソン病薬も有効なことが多く、パーキンソン病との区別は難しい。しかし、やがて抗パーキンソン病薬の効きが悪くなったり、小脳失調症状や自律神経症状が加わってくると本症の疑いが高まる。MRI所見で、線条体の被殻の萎縮、T2低信号、外側の線状の高信号に加えて、多系統萎縮症に特徴的な小脳や橋の萎縮、T2強調画像での橋の十字状の高信号(十字サイン)、中小脳脚の高信号(中小脳脚サイン)、あるいは錐体路病変を示唆する内包、放線冠、運動野直下のT2高信号などが見られればより積極的な診断が可能である。また、Lewy小体を伴うふつうのパーキンソン病はMIBG心筋シンチグラムで取り込みの高度低下を示すことが多く、ほぼ正常なMSAとは対照的である。
■治療
抗パーキンソン病薬は、とくに初期の場合ある程度は有効であることが多く、積極的に治療を試みる。また、自律神経症状や小脳失調症が加わってきたときには、それぞれの対症療法を行う(オリーブ橋小脳萎縮症とシャイ・ドレーガー症候群の項を参照)。呼吸障害には非侵襲性陽圧換気法などの補助が必要であったり、嚥下障害が高度なときは胃瘻が必要となることも多い。リハビリテーションは残っている運動機能の維持に有効であり積極的に勧め、日常生活も工夫して寝たきりになることを少しでも遅らせることが大切である。
■予後
抗パーキンソン病薬はその標的である線条体の神経細胞が障害されてしまうため、パーキンソン病に比べると効きが悪い。また、小脳症状や自律神経障害も加わってくるため全体として進行性に増悪し、発症後平均約5年で車椅子使用、約10年で臥床状態になり死に至ることが多い。





