単心室症(指定難病210)

たんしんしつしょう
 

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1.単心室循環とは

単心室症、左心低形成症候群、三尖弁閉鎖症、心室中隔欠損を伴わない肺動脈閉鎖症など、心臓から血液を送り出す主な心室が一つしかない疾患の総称を単心室循環症候群と呼びます。この中には、左心低形成症候群、三尖弁閉鎖症、心室中隔欠損を伴わない肺動脈閉鎖症など、心室が2つあっても一方が極端に小さく機能しない場合も含まれます。また、単心室症は心室の形で右室型と左室型に分類されます。

  
図1:左;正常心臓、中央;右室型単心室、右;左室型単心室(先天性心疾患の血行動態:治療へのアプローチ.文光堂、2013. より転載)

2.この病気の患者さんはどのくらいいるのですか

単心室症は出生約5,000から10,000人に1人の割合で発症するとされています。成人になったこれらの疾患の患者さん数は明らかではありませんが、外科治療の進歩により毎年増えていることが予想されます。

3.この病気はどのような人に多いですか

 現時点で、「このような場合に単心室症の赤ちゃんが生まれることが多い」と断定できる環境、要因は見つかっていません。

4.この病気の原因はわかっているのですか

 原因となる遺伝子変異や環境要因は明らかではありません。

5.この病気は遺伝するのですか

 単心室症に 特異的 な遺伝子変異は発見されていません。また、これらの疾患が高率に子どもに遺伝することも報告されていません。他の疾患を含めた先天性心疾患の兄弟での発症率は通常の1%より高くなるとされています。一般に先天性心疾患の親から子へ何らかの先天性心疾患が遺伝する確率は、父親で1-3%程度、母親で2-12%程度とされています。

6.この病気ではどのような症状がでますか

 術後の症状は、遺残する心臓及び大血管の構造異常や実施された外科手術によって異なります。フォンタン型手術まで到達した患者さんではチアノーゼは改善し、無理しない範囲での日常生活が営めます。未治療もしくはシャント手術やグレン手術止まりの患者さんには活動時に強いチアノーゼが見られ、日常生活が制限されます。フォンタン型手術後でも心機能が低下した患者さんや、房室弁の閉鎖不全が強い患者さんでは、疲れやすい、息切れがするなどの心不全症状が見られる場合があります。発作性頻脈などの不整脈を伴うと動悸が感じられます。

7.この病気にはどのような治療法がありますか

新生児期から乳児期にかけて、肺動脈絞扼術や体肺シャント手術などで肺への血液量をコントロールしながら、両方向性グレン手術を経て最終的に1−2歳でフォンタン手術を実施します。フォンタン型手術では、一つの心室のみで肺動脈、大動脈の循環を維持していくことになります。フォンタン型手術を行うためには、シャント手術や両方向性グレン手術など、幾つかの段階的手術を経なくてはなりません。これらの手術を乗り切るには数多くの基準があり、患者さん全員がフォンタン型手術を受けられるわけではありませんので、主治医の先生のお話をよく聞いてください。またフォンタン型手術まで無事に行われた患者さんでも、術後遠隔期に全身臓器に様々な問題が生じます。これらをフォンタン術後症候群と呼んでいます。

図2:単心室症の外科治療、左から、肺動脈閉鎖を伴う単心室症、ブラロック・トーシッヒ短絡手術後、両方向性グレン手術後、フォンタン型手術後

8.この病気はどのような経過をたどるのですか

フォンタン型手術は動脈血の低酸素状態を正常の酸素濃度にするための機能的な手術で、単心室の状態を根本的に治す手術ではありません。フォンタン型手術後に、長期間にわたり1つの心房と1つの心室で全身と肺の血液循環を維持することは、やはりどこかで無理が生じます。外科手術治療に進歩により多くの単心室症の患者さんが成人期になってきましたので、最近いろいろな問題が出てくることが分かってきました(フォンタン術後症候群)。それらの問題というのは、1)弁逆流や繰り返す手術に伴う心不全、2)難治性の不整脈、3)低酸素血症の再発、4)腎機能障害、5)糖代謝異常、6)蛋白漏出性胃腸症、7)鋳型気管支炎、8)血栓塞栓症や喀血、9)人工血管や人工弁が原因となる感染性心内膜炎、10)肝線維症、肝硬変、肝臓癌などです。現在、多くのフォンタン手術後の患者さんが成人となり、40歳以上の方もおられます。もともとの心臓の病気が完治したということではないため、定期的に専門医によるフォローが必須となります。肝線維症、肝硬変、肝癌などの有無について肝臓専門医のフォローも必要になります。
 病状によっては未手術であったり、シャント手術やグレン手術で止まっている患者さんもおられます。そのような患者さんには慢性の低酸素血症のまま成人となる方もいます。慢性低酸素血症の状態では、多血症、心不全、腎機能障害、高尿酸血症、全身の血栓塞栓症、脳膿瘍などを合併しやすく、生活や運動に制限がかかります。

9.この病気は日常生活でどのような注意が必要ですか

フォンタン型手術後に心臓の機能が良好な場合、一見正常のように見える元気な患者さんもおられます。しかし、肺への血流を送るポンプ機能を持つ心室は存在しないので、心臓の予備能力は正常より少なくなります。無症状でも必ず専門施設での定期的な受診をしてください。運動の程度は患者さんの病状により異なるので、主治医とよく相談してください。一般にウォーキングや軽いジョギングなど、息が上がらないマイペースの範囲での運動が勧められます。長時間続く動悸、今までには経験したことのない息切れや、手足や顔のむくみなどが新たに出現したら、速やかに主治医に相談してください。青年期以降の患者さんでは就労が問題となります。基本的には、長時間労働や肉体的な重労働は避け、睡眠時間を確保し、規則正しい生活様式を心がけてください。
 フォンタン型手術後の女性の場合は、生理不順の頻度が高いことに加えて、妊娠と出産が大きな問題になります。女性が妊娠すると、健全な女性でも妊娠中期以降には血液量が1.4倍に増えて心臓に負担がかかります。したがって、心室が一つしかないフォンタン型手術後の場合は、妊娠中に心臓に相当な負担がかかり不整脈も起こしやすくなります。現時点では、心臓の機能が良好な一部のフォンタン型手術後の女性においては、厳重な管理下のもとに妊娠出産が可能になってきました。しかし多くのフォンタン型術後患者さんでは、妊娠出産は母親だけでなく胎児にも大きな危険が伴うため困難であり、可能性について主治医と十分に相談する必要があります。また、高校生以降の女性患者さんは、生理不順や妊娠や出産に関して主治医の先生ときちんと相談して正しい知識を得ておく必要があります。ワルファリンを服薬していたら妊娠は禁忌ですので、主治医に確認してください。
フォンタン型手術に至らなかった患者さんやフォンタン型手術後で低酸素血症が残存する患者さんでは、自分で可能な範囲の生活や運動に心がけて下さい。低酸素血症があっても働いている方も多くいらっしゃいます。食事に関しては塩分はやや控えめにすることと、低酸素血症の患者さんでは鉄分の補給には心がけてください。また、他の多くの先天性心疾患患者と同様に歯科治療なのどの際に感染性心内膜炎の予防に心がける必要があります。社会福祉制度として幾つかの助成制度がありますので、就労については、最寄りの地方自治体、ハローワークの窓口で相談してください。(日本成人先天性心疾患学会ホームページ:https://www.jsachd.org/)

10. 次の病名はこの病気の別名又はこの病気に含まれる、あるいは深く関連する病名です。 ただし、これらの病気(病名)であっても医療費助成の対象とならないこともありますので、主治医に相談してください。

該当する病名はありません。

11. この病気に関する資料・関連リンク

① 小児・成育循環器学. 日本小児循環器学会編集. 診断と治療社, 2018.
② 小児慢性特定疾病情報センターホームページ
https://www.shouman.jp/disease/details/04_30_037/
③ 先天性心疾患並びに小児期心疾患の診断検査と薬物療法ガイドライン(2018年改訂版)
https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2020/02/JCS2018_Yasukochi.pdf
④ 成人先天性心疾患診療ガイドライン(2017年改訂版)
https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2020/02/JCS2017_ichida_h.pdf
⑤ 先天性心疾患術後遠隔期の管理・侵襲的治療に関するガイドライン(2012年改訂版)
https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2022/03/JCS2022_Ohuchi_Kawada.pdf
⑥ 心疾患患者の妊娠・出産の適応、管理に関するガイドライン(2018年改訂版)
https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2020/02/JCS2018_akagi_ikeda.pdf
⑦ 日本成人先天性心疾患学会ホームページ
https://www.jsachd.org/

 

情報提供者
研究班名 先天性心疾患を主体とする小児期発症の心血管難治性疾患の救命率の向上と生涯にわたるQOL改善のための総合的研究班
研究班名簿 
情報更新日 令和5年1月(名簿更新:令和5年6月)