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無虹彩症(指定難病329)

むこうさいしょう

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

1.無虹彩症とは

無虹彩症(図1)は目の虹彩(カメラでは絞りに相当する光量を調節する部分)が生まれつきうまくできなかった状態です。PAX6という目や脳がお母さんのおなかの中で作られる過程の中で働く重要な遺伝子が、2つあるうち一つが異常になるために起こります。また中心窩という網膜の中心部(黄斑部)がうまくできない(黄斑低形成と言います。図2)ことが多く、視力は0.2前後のことが多いです。また白内障や角膜上皮細胞という黒目の表面の細胞が高中年期に足りなくなり代わりに結膜上皮細胞と言う白目の上皮細胞が黒目を覆う状態(角膜輪部疲弊症と言います。図3)になることがあります。また虹彩が隅角という目の中の水(房水と言います)が出て行く部位に癒着しやすいため眼圧が上がって緑内障となることもあります。無虹彩症の患者さまの中にはウイルムス腫瘍という小児期の腎臓の癌や泌尿生殖発育不全や発達遅滞を伴うことがあり、その場合は11番染色体の短椀の13という領域の欠失が原因であることが多く、11p13欠失症候群やWAGR症候群と呼ばれています。無虹彩症のうち13%ほどが11p13欠失症候群によるものとされています。

2.この病気の患者さんはどのくらいいるのですか

10万人に1人程度とされています。

3.この病気はどのような人に多いのですか

2つのPAX6遺伝子のうち1つが異常な場合におこります。PAX6遺伝子はとても重要な遺伝子ですので、2つとも異常になると生まれてくることができない(胎生致死と言います。)と言われています。そのため、無虹彩症の患者様でPAX6遺伝子が2つとも異常となることはほとんどありません。

4.この病気の原因はわかっているのですか

2つのPAX6遺伝子のうち1つが異常となります。遺伝子異常によって正常に働く遺伝子の量が半分となり、半分だと虹彩の細胞、網膜中心部の細胞、角膜上皮細胞、水晶体の細胞をうまく作るのにはちょっと足りないために起こると考えられています。専門的な用語ですが、この半分だと遺伝子が少し足りないために異常が起こる現象のことをハプロ不全と言います。多くの遺伝子では半分の量で十分なのですが、PAX6遺伝子を含むいくつかの重要な遺伝子では細胞によっては半分では少し足りないために異常が起こると考えられています。

5.この病気は遺伝するのですか

常染色体優性遺伝形式で遺伝します。そのため男女で発症率に差はなく、また親から子に約1/2の確率で遺伝します。

6.この病気ではどのような症状がおきますか

虹彩がないための症状として眩しさを感じます。また黄班低形成や白内障のため視力は0.2前後となります。また生まれつき視力が悪いため眼振といって目が小刻みに振幅する状態や斜視があることが多いです。また緑内障を合併しやすく、視野や視力が障害される場合があります。また成人期以降に角膜輪部疲弊症となった場合には視力がさらに低下します。

7.この病気にはどのような治療法がありますか

虹彩がないことによる眩しさの症状に対しては遮光眼鏡や虹彩付きコンタクトレンズ(図4)を使用します。黄班低形成や眼振については残念ながら現時点で効果的な治療法がありません。白内障に対しては白内障手術を行います。緑内障に対しては最初は点眼治療を行いますが、点眼治療で効果が得られない場合には手術を行います。緑内障手術は隅角という目の中の水の出口の状態に応じて隅角切開術、トラベクロトミー、トラベクレクトミーなどから最も適切なものを選択されますが、これらを行っても効果がない場合にはインプラント手術(図5)と呼ばれる、目の中の液体を目の外に流すための人工のチューブを目に取り付ける手術が行われます。それでも効果がない場合には最終手段として、毛様体という目の中の水を作る場所を破壊する毛様体破壊術という手術が行われます。角膜輪部疲弊症に対しては角膜移植の一つである輪部移植術を行います。この場合、他人の細胞を移植することになりますので、生涯にわたってステロイド剤などの免疫力を抑える薬剤を使用する必要があります。

8.この病気はどういう経過をたどるのですか

幼少時は黄班低形成と眼振のために0.2前後の低視力と眩しさが主症状となります。成人期以降には緑内障の合併と角膜輪部疲弊症の発生が視力や視野を障害します。特に緑内障は視神経を障害し、視神経は再生能力がほとんどありませんので進行してしまうと元には戻りません。定期検査と適切なタイミングで治療することがとても大切です。

9.この病気は日常生活でどのような注意が必要ですか

日常生活で特に注意することはありませんが、成人期以降に糖尿病になりやすいという報告がありますので、血糖値を管理する必要がある場合があります。

10.この病気に関する資料・リンク

日本小児眼科学会
http://www.japo-web.jp/info_ippan_page.php?id=page07
日本WAGR症候群の会
http://wagr.ho-plus.com/medical_information/aniridiavision/aniridia/
難病情報センター
http://www.nanbyou.or.jp/kenkyuhan_pdf2014/gaiyo076.pdf

11.図の説明


図1.  無虹彩症の前眼部写真

図2.  黄班低形成の眼底写真(左)と光干渉断層計の写真(右)

図3.  角膜輪部疲弊症となった無虹彩症の前眼部写真

図4.  虹彩付きコンタクトレンズの外観(株式会社シード提供)

図5.  チューブインプラント(BAERVELDT® Glaucoma Implants )の外観
 

 

 

用語解説

角膜(かくまく):
目の黒目の部分にある厚さ0.5mmほどの薄い膜のことを言います。透明性が高く、また球面状の形状をしていることから光を曲げるレンズとしての働きを持ちます。表面から内側にかけて5つの層に分かれ、最表層に5-6層の角膜上皮(じょうひ)細胞があります。

虹彩(こうさい):
黒目の奥の茶目の部分のことを言います。中心部には瞳孔という穴が開いており、これがカメラでいう絞りの役割をします。瞳孔以外の部分の虹彩は色素の細胞によって光が通過できないようになっています。

網膜(もうまく):
光を感知する0.2mmほどの厚みの神経の膜で、カメラでいうフィルムの役割をします。

黄斑部(おうはんぶ):
網膜の中心部はキサントフィルという黄色の色素が豊富に含まれるために黄色(実際には黒く見えます)に見えるために黄斑部と呼ばれます。黄斑部のさらに中心部は中心窩といってくぼんでおり、この部位には光を感受する視細胞という細胞が豊富にあるため細かいものを見分ける働きが高くなっています。中心窩が障害されると視力が低下します。

白内障(はくないしょう):
虹彩の後ろにはレンズの形をした透明な水晶体があります。加齢や目の病気、薬の副作用などの様々な原因によって水晶体が濁ると視力が低下し眩しさの症状が出現します。この状態を白内障と言います。

緑内障(りょくないしょう):
眼圧という眼球の内部の圧力が高まると視神経を障害します。この状態が長く続くと視野が狭くなり、視力も低下して最終的には失明します。視神経は140万本の神経線維からなっており、緑内障では神経線維の数が減っていきます。

視神経(ししんけい):
眼球と脳を繋ぐ神経です。脳から直接出る12本の神経の一つで、ビデオカメラに例えるとカメラとコンピュータを繋ぐケーブルの役割をします。

房水(ぼうすい):
眼球のなかの毛様体という場所で作られる栄養と酸素を含んだ透明な液体です。水晶体や角膜のような透明組織には血管が存在しないため、房水は血液の代わりとして働いています。

隅角(ぐうかく):
角膜と虹彩の間の場所のことを言います。ここには線維柱帯という房水を目の外の血管に流すための組織があり、眼圧の調整に大切な働きをしています。隅角が虹彩によって塞がれてしまうと眼圧が上がり緑内障になります。

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情報提供者
研究班名 角膜難病の標準的診断法および治療法の確立を目指した調査研究班
研究班名簿   
新規掲載日平成29年7月10日