先天性肺静脈狭窄症(指定難病313)

せんてんせいはいじょうみゃくきょうさくしょう
 

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

1. 「先天性肺静脈狭窄症」とは

正常な心臓では、全身の静脈血は上・下大静脈から右心房へ戻り、右心室、肺動脈、肺へと流れ、酸素が豊富な血液となって左右の計4本の肺静脈から左心房へ戻り、左心室、大動脈の順に流れていきます。肺で酸素を取り込むため、肺静脈は多くの酸素を含んでいます。先天性肺静脈狭窄症ではこれらの4本の肺静脈のうち何本かが 狭窄 ないし閉鎖している疾患です(図1)。

図1:先天性肺静脈狭窄症(*は狭窄部位)

他に心疾患を合併しない単独の場合と、総肺静脈還流異常症に合併する場合があります。指定難病としての先天性肺静脈狭窄症は、総肺静脈還流異常症の術前後の肺静脈狭窄は含めません。
本症は非常に治療をするのが難しく、 予後 不良の疾患です。肺静脈の全てが狭窄していれば、非常に予後不良です。特に胎児期から肺静脈全てが閉鎖していれば、生後は生存できません。片側1本ないし2本の肺静脈のみが狭窄している場合には、無症状で経過することもあります。治療は、症状があれば、 カテーテル治療 か、手術が行われますが、治療後に再び狭くなる頻度は高いです。

2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか。

まれな病気です。全国で約100人の患者さんがいると推定されます。成人になった患者さんがどのくらいいるかは、まだ明らかではありません。

3. この病気はどのような人に多いのですか。

ほとんどの場合は様々な原因が関与して発症するため、特にどのような人に多いという傾向は明らかではありません。しかし、ときに遺伝子変異や染色体異常に伴って発生する例がみられます。

4. この病気の原因はわかっているのですか。

単独で存在する場合の病因は不明です。術前から総肺静脈還流異常の約10%に肺静脈狭窄があり、予後不良の要因となっています。

5. この病気は遺伝するのですか。

ほとんどの場合、遺伝はしません。なんらかの遺伝子の変異が関係している可能性はありますが、まだ明確ではありません。

6. この病気ではどのような症状がおきますか。

肺静脈の全てに狭窄ないし閉鎖があれば、出生時より チアノーゼ 、呼吸困難を認め、生後早期に死亡することが多いです。肺静脈狭窄が1−2本に限定していれば、多呼吸、体重増加不良などの症状は軽いことかあります。

7. この病気にはどのような治療法がありますか?

治療は、カテーテル治療(バルーン拡大術またはステント拡大術)か外科手術です。ただし再狭窄の頻度は高く、肺の中までの末梢の肺静脈の低形成をともなうものは治療が困難となります。

8. この病気はどういう経過をたどるのですか。

非常に予後不良です。治療しても再狭窄の頻度は高いです。肺静脈狭窄が1−2本に限定している場合には、多呼吸、体重増加不良などの症状は軽いことがあります。

9. この病気は日常生活でどのような注意が必要ですか。

ほとんどの症例で外科治療後も肺静脈狭窄が遺残するため、狭窄の程度の応じた運動制限が必要です。

10. 次の病名はこの病気の別名又はこの病気に含まれる、あるいは深く関連する病名です。 ただし、これらの病気(病名)であっても医療費助成の対象とならないこともありますので、主治医に相談してください。

該当する病名はありません。

11. この病気に関する資料・関連リンク

① 小児・成育循環器学. 日本小児循環器学会編集. 診断と治療社, 2018.
② 先天性心疾患並びに小児期心疾患の診断検査と薬物療法ガイドライン(2018年改訂版)
https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2020/02/JCS2018_Yasukochi.pdf
③ 成人先天性心疾患診療ガイドライン(2017年改訂版)
https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2020/02/JCS2017_ichida_h.pdf
④ 先天性心疾患術後遠隔期の管理・侵襲的治療に関するガイドライン(2022年改訂版)
https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2022/03/JCS2022_Ohuchi_Kawada.pdf
⑤ 先天性心疾患,心臓大血管の構造的疾患に対するカテーテル治療のガイドライン (2021年改訂版)
https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2021/03/JCS2021_Sakamoto_Kawamura.pdf

情報提供者
研究班名 先天性心疾患を主体とする小児期発症の心血管難治性疾患の救命率の向上と生涯にわたるQOL改善のための総合的研究班
研究班名簿 
情報更新日 令和5年1月(名簿更新:令和5年6月)