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遺伝性ジストニア(指定難病120)

いでんせいじすとにあ

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

○ 概要
1.概要
ジストニアとは持続性の筋収縮により生じる症状で、一部の患者では筋収縮の持続が短く不規則であったり、間歇的・律動的に観察されることもある。持続性の異常な筋収縮により姿位の異常を来すことが多い。ジストニアを症候として示す疾患には多々あるが、遺伝性があり、他の神経変性疾患に属さない疾患群を遺伝性ジストニアと呼ぶ。この群の中には、遺伝子が未だ同定されていない疾患群も多々あるが、ここでは遺伝性ジストニアのうち原因遺伝子が同定されている疾患群を扱う。遺伝性ジストニアは、遺伝子の異常によりジストニア症状を含む様々な症状を来す疾患で、DYTシリーズに属する群と金属代謝に関連するNBIAシリーズに属する疾患が多くを占める。
遺伝性ジストニアの多くは幼児から成年期(遅くても30歳代)に発症し、四肢、体幹、頭頸部のいずれかにジストニアを認める。ジストニアは進行性に症状の増悪や姿位の異常を来し、歩行障害、起立障害、座位障害を来す。疾患によっては他の不随意運動-例えば振戦、舞踏運動、ミオクローヌスなどを同時に示すことがある。また、精神発達遅滞や知的機能減退を示すこともある。遺伝性ジストニアの多くは進行性の病態を示し、発症要因については未解明な部分が多い。一般に、予後は不良であるが、疾患によっては対症療法によって症状の一部が軽快又は緩解する場合もある。この場合にも継続治療と適切な対症療法が必要である。
厚生労働科学研究班及び国立精神・神経センター委託研究による研究班によれば、遺伝性ジストニアと診断された症例は全国で約500人である。また、NBIシリーズに関する調査ではNBIに罹患している症例数は100例未満である。
 
2.原因
遺伝性ジストニアの原因遺伝子については、DYTシリーズでは約半数で病因遺伝子が同定され、NBIAシリーズは全ての病因遺伝子が同定されている。遺伝様式はDYTシリーズでは常染色体優性、常染色体劣性、伴性劣性遺伝様式を示す疾患など多様である。NBIAシリーズの多くは常染色体劣性遺伝様式を示すが、NBIA5(BPAN)は伴性優性遺伝様式を示す。原因遺伝子は同定されているものの、発症機構については未解明の部分が多い。
 
3.症状
ジストニアは運動障害の一つで、持続性又は反復性の筋緊張のために、顔面・頭頚部、四肢・体幹筋の定型的な肢位・姿勢の異常や不随意運動を生じ、このため随意運動が障害される。症状の分布により、局所性・分節性・全身性に分けられる。また、発作性にジストニアが発現したり、ミオクローヌスを伴うものやパーキンソニズムを伴うものもある。特定の動作に随伴してジストニアは発現する傾向があり、特定の感覚的刺激によって症状が軽減する感覚トリックが認められることが多い。また、音楽家や理容師、タイピスト、スポーツ選手など、特定の職業動作に伴って出現することがある。
遺伝性ジストニアにはジストニアのみを呈する群とジストニア以外の症状も示す群、何らかの誘因などによって生じる発作性ジストニアの群とがある。遺伝性ジストニアの多くは同一遺伝子変異による病型であっても、家系間、家系内で病像が異なることがあり、留意すべきである。多くの場合は世代を経るごとに全身型となり、発症年齢も早くなる傾向を示す。ジストニア以外の症状を示す群でみられる随伴症候としては他の不随意運動(振戦、ミオクローヌス、舞踏運動が多い。)、パーキンソン症状があり、精神症状としては認知障害、精神発達遅滞、てんかん発作の頻度が高い。
検査所見としては、DYTシリーズではDYT3ジストニアでのみ画像検査での異常所見を示し、NBIAシリーズではすべての病型で、MRIで基底核への鉄沈着像を認める。その他、無セルロプラスミン血症(aceruloplasminemia)ではセルロプラスミン欠損、糖尿病などを、神経フェリチン症(neuroferritinopathy)ではフェリチン値低値を認める。NBIAシリーズに属する疾患の各病型の特徴的な画像所見の詳細については各論で付記する。
 
4.治療法 
効果的な原因療法は確立されていない。対症療法としては、薬物治療(抗コリン剤、抗てんかん薬、L-dopa製剤など)やボツリヌス毒素の局部注射療法、定位脳手術(後腹側淡蒼球凝固術、視床凝固術、脳深部刺激療法)がある。DYT5ジストニアでは、レボドパを適切な時期に服用を開始し、投与を継続することにより、症状はほぼ消退する。遺伝性ジストニアで全身性や分節性ジストニアで症状が広範囲の場合、薬物療法は無効で、深部脳刺激法や髄腔内バクロフェン投与法が著効することがある。いずれの場合にも発症早期に介入した方が予後がよい。
発作性ジストニアの場合及びDYTシリーズの一部では以下の診断指針に示すような薬物が有効である。
 
5.予後
病状の進行の程度は介入方法の有無、介入時期によって様々である。一部の遺伝性ジストニアについては治療介入により著明に改善するが、長期的な医療の介入が必要である。通常、治療により症状は一定程度改善しても根治せず持続する。
 
 
○ 要件の判定に必要な事項
1.  患者数
約500人
2.  発病の機構
未解明である。遺伝性ジストニア、特にDYTシリーズに属する疾患の多くは病理学的変化も乏しく、発症病理の解明が困難な状況にある。NBIAシリーズでは病理変化および大脳基底核への鉄の沈着が共通要素であるため、金属代謝を含めた病態解明が進捗しつつある。
3.  効果的な治療方法
未確立(対症治療は存在するが、根治療法は未確立。)
4.  長期の療養
必要(症状が継続し、進行性の経過をたどる。)
5.  診断基準
あり(研究班作成の診断基準)
6.  重症度分類
Barthel Indexを用いて85点以下を対象とする。
 
○ 情報提供元
「神経変性疾患領域における基盤的調査研究班」
研究代表者 国立病院機構松江医療センター 院長 中島健二
 
「ジストニアの成因と治療に関する研究班」
「ジストニアの疫学、病態、治療に関する研究班」
「Pantothenate kinase-associated neurodegeneration(PKAN)の診断基準作成と実態調査に関する研究班」
研究代表者 国立病院機構相模原病院 神経内科学 医長 長谷川一子


 
<診断基準>
いずれかの病型でDefinite(確定診断)されたものを対象とする。
 
遺伝性ジストニアの診断基準
 
A.症状
ジストニアは持続性の筋収縮により生じ、一部の患者では筋収縮の持続が短く不規則であったり、間歇的で律動的に観察されることもある。動作異常あるいは異常姿勢を示す。
 
B.特徴とされる所見
1.本来、意識せずに遂行できる書字などの動作、姿勢の維持で症状が出現する。
2.特定の動作や環境によって症状が出現する(動作特異性)。
3.異常動作や異常姿勢には一定のパターンがある(定型性)。
4.特定の感覚刺激により症状が軽快することがある(感覚トリック)。
 
C.検査所見
1.表面筋電図で拮抗関係にある筋が同時に収縮する(共収縮)。
2.多くの例で病因遺伝子が確認される(下記図、表参照)。
 
D.診断、鑑別診断
 (1)以下の疾患を鑑別する。
ウィルソン(Wilson)病、遺伝性神経変性疾患:SCA1、2、3、17、PARK2、6、15、家族性痙性対麻痺、ハンチントン病、神経有棘赤血球症、GM2ガングリオシドーシス、GM1ガングリオシドーシス、ニーマン・ピック(Niemann-Pick)病、レット症候群、パーキンソン病、パーキンソン症候群、脳血管障害、抗精神薬投与に伴う遅発性ジストニアなど。抗精神薬投与に伴う遅発性ジストニアでは、薬歴聴取が重要である。 
ジストニアと他の不随意運動との鑑別として、振戦、ミオクローヌス、チック、アテトーゼ、舞踏病、バリスム、筋痙攣、スパスム、ジスキネジアが挙げられる。
(2)ジストニアを示す遺伝性疾患であることを確認し、下記のフローチャートを参考に診断を進める。
(3)DYTシリーズ各病型とNBIAシリーズの各病型相互の鑑別も必要で、表1、表2及び各病型の診断指針に基づき、いずれの病型かが確定されたものを対象とする。
 
図.長谷川班による遺伝性ジストニアの診断フローチャート

 

表1 遺伝性ジストニア(DYTシリーズ)

 
ATP1A3: Na+/K+-transporting ATPase alpha-3 chain
CSE:Paroxysmal choreoathetosis and episodic ataxia and spasticity
EKD:Episodic kinesigenic dyskinesia
GCH1:GTP cyclohydrolase 1
GLUT1:Glucose transporter 1
MR-1: Myofibrilogenesis regulator 1
PED:Paroxysmal execise-induced dyskinesia
PNKD:Paroxysmal nonkinesigenic dyskinesia
PRKRA:Protein kinase, interferon-inducible double-stranded RNA-dependent activator
RDP:Rapid-onset dystonia parkinsonism
SGCE:ε-sarcoglycan
TAF1: TAF1 (TATA box-binding protein –associated factor 1) RNA polymerase II
THAP1:thanatos-associated protein  (THAP) domain containing , apoptosis associated protein 1
XDP:X-linked dystonia-parkinsonism
 
 
表2 NBIAの特徴
 

NBAIA: Neurodegeneration brain iron accumulation, PKAN: pantothenate kinase associated neurodegeneration,
PANK2: pantothenate kinase 2,   PLA2G6: Phosphlipase A2 group 6,   INAD: infantile neuroaxonal dystrophy,
FTL: ferritine light chain CP: ceruloplasmin, FAHN: fatty asid hydroxylase associated neurodegeneration
 
 
 
<DYT1ジストニア>
 1.診断指針
(1)遺伝様式:常染色体優性(遺伝子座9q34、遺伝子DYT1=Tor1A、遺伝子産物torsinA)
(2)発症年齢:小児期。20歳以上はまれである。
(3)神経所見:全身性ジストニアが多い。
上肢あるいは下肢に始まり、下肢発症型の方が全身性に進行しやすい。
局所性ジストニアにとどまり、全身性とならないこともある。
(4)臨床検査所見:画像検査では異常を認めない。
(5)鑑別診断:ジストニアを示す他の一次性、二次性ジストニア
(6)Definite(確定診断):DYT1遺伝子でのGAG欠失を検出する。浸透率が低いので、他の疾患を除外できることが必要である。
(7)参考事項:一次性全身性ジストニア(捻転ジストニア)の代表的疾患である。若年発症のジストニアでは瀬川病と共に第一に疑う。局所性ジストニア、成人発症などの報告もある。DYT1遺伝子の浸透率は30%とされる。DYT1遺伝子でのGAG欠失の検出は比較的容易である。
2.疾患概念
第9染色体9q34にあるDYT1遺伝子変異による常染色体優性遺伝性、若年発症の一次性全身性ジストニアである。DYT1遺伝子産物はtorsinAタンパクで、DYT1ジストニアでは野生型torsinAの302、303番の2個の連続するグルタミン酸が1個になっている。
3.疫学
我が国の疫学調査の結果から全国で100人未満と推定できる。
症状:平均発症年齢は約12歳である。29歳以後の発症はまれである。90~95%の症例でジストニアが下肢か腕に始まり、次いで他の身体部分に広がる。下肢に始まる症例の方が上肢で始まるものより若年発症の傾向があり、全身型に移行する可能性が高く、進行も早い。一般に5~10年間進行する。進行により罹患部位の変形を来す。頸部ジストニアでは屈曲、捻転が見られる。瞬間的な頭部の動きを伴うこともある。上半身では捻転運動、異常姿勢により著明な屈曲を来す。脊椎側弯症、後弯症、骨盤捻転が生じる。歩行困難から歩行不能になる例もある。知能は正常である。高齢発症、局所性ジストニアにとどまるもの、外傷など誘因があるもの、球症状で始まるものなど変異が大きい。最近もさまざまな非典型例が注目されている。
4.病型
上肢型:書痙などで始まり、周辺に広がる。反対側にも生じ、やがて上半身、頸部にひろがる。
下肢型:歩行異常で始まり、内反尖足など異常肢位をとる。体幹にひろがって屈曲、捻転を生じる。
3~26歳に症状発現の”window“があり、上肢か下肢のジストニアを生じる。65%はその後5~10年で進行して全身性か多巣性になる。残り10%は分節性で、25%が局所性にとどまる。部位から言うと上肢が最多で95%以上である。ジストニア運動も突発的であったり振戦であったり、ミオクローヌス・ジストニア様であったりする。体幹・頸部は25~35%、頭部は15~20%で少ないのが特徴である。 
5.検査所見
形態的な画像所見は正常である。FDG-PETでは、前補足運動野(6野)、頭頂皮質(40/7野)、被殻、帯状回(24/32野)、小脳皮質で代謝の亢進が見られた。
6.診断
26歳までに発症の全身性ジストニアではDYT1遺伝子変異を調べるべきである。非典型例も多い。
7.遺伝子変異
DYT1遺伝子変異は第5エクソンのGAG3塩基の欠失である。浸透率が30%であることに対して、対立アリルに保護的な変異が想定されている。216番のアミノ酸はアスパラギン酸であるが、これが対立アリルでヒスチジンに変わっていると非発症保因者になることがわかった。また、同一アリルに、そして、同一ペプチド鎖上にグルタミン酸欠失と216番アスパラギン酸の両者があることによってDYT1が浸透し病変を生じることも示唆された。これらのことで、浸透率が60%程度までの減少が説明される。
 
<DYT 5ジストニア/瀬川病/ドパ反応性ジストニア>
1.診断指針
(1)遺伝様式:常染色体優性(遺伝子座14q22.1-22.2、遺伝子GCH1、遺伝子産物GCH1)
(2)発症年齢:10歳以下に多い。
(3)神経所見:下肢ジストニアにより歩行障害を来す。尖足、内反尖足が多い。日内変動があり、昼から夕方にかけて症状が悪化し、睡眠によって改善する。固縮、姿勢時振戦がある。レボドパにより著明に改善する。
(4)臨床検査所見:画像所見に異常はない。
髄液中ホモバニリン酸の低下。
(5)鑑別診断:他のレボドパ反応性ジストニア
                常染色体劣性若年発症パーキンソニズムなど
(6)Definite(確定診断):日内変動を伴う下肢ジストニアでレボドパによく反応し、GTP cyclohydrolase l(GCH1)活性の低下かGCH1の変異が見られることによる。
(7)参考事項:不完全浸透で、女性優位(4:1又はそれ以上)に発症する。成人発症例もある。年齢とともに日内変動の程度は減少する。髄液中ビオプテリン、ネオプテリンの低下はDYT5を強く示唆する。GCH-1の変異の検出はやや困難である。
2.疾患の概念
GCH1の活性低下に基づき、レボドパによく反応する日内変動を伴う下肢ジストニアである。1971年に瀬川 
らが“著明な日内変動を呈する遺伝性進行性脳基底核疾患”として報告した。
3.疫学
我が国の疫学調査では100~200人の症例が推定されている。
4.臨床症状・検査所見
下肢優位の姿勢ジストニア(下肢の尖足あるいは内反尖足)が主症状で、立位時に腰椎前弯や頸部後屈位、後膝反張を認め、体幹の捻転ジストニアはない。著明な日内変動を呈し、昼から夕方にかけて症状が悪化し、睡眠によって改善する。年齢とともに日内変動の程度は減少する。10歳以降になると姿勢時振戦(8~10Hzが多い)が出現する。軽度の筋強剛を認める。深部腱反射は亢進し、時に足クローヌスが出現する。知能は正常である。検査所見に異常は認めない。手の動作性ジストニアなど部分症状を来す例がある。
5.治療・予後
L-ドーパによく反応し、L-ドーパ反応性ジストニア(Dopa responsive dystonia:DRD)の一つである。比較的少量で反応し、効果減弱は少ない。日内変動が著明のときドーパアゴニストを用いる。剖検で黒質のメラニン色素の減少をみとめるが、細胞死はないと考えられている。
6.遺伝子変異
L-erythrotetrahydrobiopterin(BH4)はチロシン水酸化酵素の補酵素で、この合成酵素がGCH1である。14q22.1-q22.2.にある。一瀬らによって瀬川病における活性低下と、遺伝子変異が見いだされた。変異はGCH1の全長にわたって見られる。変異と症状の関連は見いだされない。
7.類似疾患(他のドパ反応性ジストニア)
GCH1以外のビオプテリン代謝酵素、チロシン水酸化酵素(TH)の変異も明らかになった。TH変異は常染色体劣性の瀬川病でQ381K12ついでL205P13のホモ変異として見いだされた。乳児期発症で不随意運動と筋強剛が少量レボドパによく反応した。ヘテロ複合変異も見られる。ビオプテリン代謝酵素の6-pyruvoyl-
tetrahydropterin synthase(6-PTS)、セピアプテリン還元酵素(sepiapterin reductase)、carbinolamine-4a-
dehydratase1、ジヒドロプテリジン還元酵素(dihydropteridine reductase)の変異も報告されている。乳児発症で高フェニルアラニン血症を伴い重症形である。
 
<DYT6ジストニア>      
1.診断指針
(1)遺伝様式:常染色体優性(遺伝子座8q21-22、遺伝子THAP1、遺伝子産物THAP1)
(2)発症年齢:5~38歳、平均16歳
(3)神経所見:上肢発症と頭頸部発症が半数ずつである。
30%は全身性に進展する。
                    ADLを阻害するのは頭頸部のジストニアと発声困難である。
(4)鑑別診断:他の優性遺伝を示すジストニア。特にDYT1を否定する必要がある。
(5)Definite(確定診断):常染色体優性遺伝で四肢のジストニアで発症し、THAP1に変異が見られる。
(6)参考事項:限局性で発症しても次第に四肢に広がることが多い。成人発症では限局性のまま経過することもある。米国のメノナイト(Amish-Mennonite)の2家系(M、C)で報告され、その後1家系(R)が追加された。浸透率は35歳までに60%。
2.疾患の概要
青年期発症の特発性捻転ジストニアで、優性遺伝様式をとる。2009年にTHAP1遺伝子変異が見出された。浸透率は35歳までに60%である。
発症部位は、半数は上肢で、残りの半数は頭部(喉頭、舌、顔面)や頸部である。下肢発症は1例のみ。2例では局所性ジストニアにとどまり、8例が分節性、12例が全身性あるいは多巣性で下肢にも及ぶ。下肢に及ぶものは半数であるが移動補助具の必要なものは2例である。上肢障害19例、発声障害は半数である。ADLを阻害するのは頭頸部のジストニアとそれに伴う発声困難である。
DYT1との鑑別はDYT1が下肢から発症することが多いのに比較して、頭頸部から発症することが多いこと、構語障害が多いことである。DYT13は1pに連鎖するが、発症年齢、症状の分布共によく似ている。
 
<DYT8ジストニア、発作性非運動誘発性ジスキネジア1(PNKD1)     >       
1.診断指針
(1)遺伝形式:常染色体優性遺伝(遺伝子座2q33-35、遺伝子MR-1、遺伝子産物MR-1)
(2)発症年齢:小児期
(3)神経所見:非運動誘発性の発作性のジストニア、舞踏アテトーシスを示す。一側の上下肢に生じることが多いが、両側のことも体幹や顔面を含むこともある。数分~数時間の発作を1日数回~数か月に1回程度生じる。
アルコール・カフェイン摂取、緊張感、疲労などが誘因になる。
(4)臨床検査所見:脳画像(CT、MRI)や脳波を含めて特記すべきことはない。
(5)鑑別診断:他の発作性ジストニア・ジスキネジア(表3)
(6)Definite(確定診断):非運動誘発性の発作性のジストニア、舞踏運動、アテトーシスが見られ、MR-1遺伝子に変異が認められる。
(7)参考事項:発作時に痙攣や意識障害を伴わない。発作間歇期には神経学的異常を認めない。
2.疾患の概要
乳児期に始まる発作で、大きな発作と小さな発作があり、疲労感と胸部、咽喉部の締め付け感の後、両手の持ち上がる発作が起こる。足にも広がり歩行障害が起こり、複視と霧視をきたす。数分続いておさまるのが小さい発作で、これより長いものが大きい発作であるが、後者では眼球上転発作を伴う。昼食時、夕食時に多く、意識消失は伴わない。アルコールの摂取、コーヒー・お茶・コカコーラ摂取、疲労、(過度の)集中が誘引となる。1日に2回の小さな発作と1回の大きな発作を来すことが多い。睡眠による軽快が指摘された。発作は生命予後には影響しない。
3.遺伝子異常: MR-1(myofibrillogenesis regulator 1)の変異
 
表3 発作性ジスキネジアの分類

 

持続時間

遺伝性

孤発性

二次性

治療薬

PKD
発作性運動誘発性ジスキネジア

5分以内
多くは30秒以内

EKD1=DYT10
EKD2=DYT19

75%

多発性硬化症
副甲状腺機能低下症など

カルバマゼピン

PNKD
発作性非運動誘発性ジスキネジア

5分以上
多くは30分~3時間

PNKD1=DYT8
PNKD2=DYT20
CSE=DYT9  

多発性硬化症
低血糖/高血糖など

クロナゼパム?

PED
発作性労作誘発性ジスキネジア

中間
多くは5~30分

PED=DYT18

頭部外傷など

ケトン食

EKD: Episodic kinesigenic dyskinesia
CSE:Paroxysmal choreoathetosis and episodic ataxia and spasticity
 
<DYT9ジストニア、発作性舞踏アテトーシス・痙性対麻痺(CSE)>
1.診断指針
(1)遺伝様式:常染色体優性(遺伝子座1p)
(2)発症年齢:2~15歳
(3)神経所見:非運動誘発性の発作性のジストニアを四肢に生ずる。発作時に複視や構音障害、口唇や下肢の錯感覚を伴う。頭痛を伴うこともある。発作は約20分間で2/日~2/年程度生じる。間歇期に痙性対麻痺を合併する。
(4)その他の症状:知能低下を合併する場合もある。
(5)臨床検査所見:脳波上は全般的な徐波化が報告されている。過呼吸負荷で増強される。
脳画像(CT、MRI)に特記すべきことはない。
(6)鑑別診断:他の発作性ジストニア(表参照)
(7)Definite(確定診断):非運動誘発性の発作性のジストニアがみられ、間歇期に痙性対麻痺を伴う。
(8)参考事項:運動、アルコール摂取、緊張感、疲労などが誘因になる。
 
<DYT10 ジストニア、反復発作性運動誘発性ジスキネジア1(EKD1)>
1.診断指針
(1)遺伝様式:常染色体優性(遺伝子座16p11-q21)
(2)発症年齢:小児~成人
(3)神経所見:急激な随意運動に伴って発作性のジストニアを生じ、転倒する。10~30秒で5分を越えない発作を1日に数十回~数日に1回繰り返す。予期しない随意運動で誘発されやすく、時に驚愕も誘因になる。日本では運動静止・脱力発作で転倒しないことも多い。
(4)その他の症状:他の特徴的な症候は知られていない。
(5)臨床検査所見:脳画像(CT、MRI)や脳波を含めて異常がない。
(6)鑑別診断:他の発作性ジストニア。
(7)Definite(確定診断):急激な随意運動に伴って発作性のジストニアを生じ、転倒する。
(8)参考事項:発作は一側の上下肢に生じることが多いが、両側のことも体幹や顔面を含むこともある。発作時に痙攣や意識障害を伴わない。発作間歇期には原則として神経学的異常を認めない。
2.疾患の概要:
発作性運動誘発性コレオアテトーシス(Paroxysmal kinesigenic choreoathetosis:PKC)は繰り返し起こる
短時間の不随意運動である。類似病態がいくつかの名称で呼ばれる。反復発作性運動誘発性ジスキネジア(Episodic kinesigenic dyskinesia:EKD)、良性家族性乳児痙攣(benign familial infantile convulsion:BFIC)、乳児痙攣・発作性コレオアテトーシス(infantile convulsion and paroxysmal choreoathetosis:ICCA)があり、EKD1、BFIC2、ICCAの遺伝子座は16番染色体のセントロメア付近にあり対立遺伝子疾患の可能性がある。
急激な随意運動の開始の際のみに生じる不随意運動で発作は10秒程度と短い。準備運動によって頓挫が可能で、意識障害はない。下肢に始まり上行し体幹、上肢に及ぶ。感覚性の前兆があって、発作はほぼ毎日おこり数回で、知能は全く正常、発作間歇期には全く正常と記載された。日本の症例は不完全脱力発作が多い。
 
<DYT11ジストニア、ミオクローヌス・ジストニア症候群(MDS)>
1.診断指針
(1)遺伝様式:常染色体優性(遺伝子座7q21、遺伝子SGCE、遺伝子産物SGCE)
(2)発症年齢:小児期から青年期
(3)神経所見:ミオクローヌスとジストニアを主体とする。軽症では本態性ミオクローヌスとなる。ミオクローヌスは頸部、上肢に多い。ジストニアは、捻転ジストニア、頸部ジストニア、書痙などである。アルコールで改善する。
(4)その他の症状:精神科的異常を伴うことが多い。
(5)臨床検査所見
画像所見:異常がない。
(6)鑑別診断:他の優性遺伝を示すジストニア。
(7)Definite(確定診断):ミオクローヌス・ジストニアあるいは本態性ミオクローヌスの症例で、イプシロン・サルコグリカン(SGCE)遺伝子の変異を見出すことによる。
(8)参考事項:アルコール反応性ミオクローヌスは本症を示唆する。不完全浸透性で男性に発症が多い。イプシロン・サルコグリカンの変異部位、変異形式は多様で、検出はやや困難である。
2.疾患の概要
ミオクローヌス・ジストニアが優性遺伝性疾患として確立したのは1988年のQuinn NPらによる。 
臨床症状はミオクローヌスとジストニアが主要症状である。軽症では本態性ミオクローヌスとなる。ミオクローヌスが主症状で動作を阻害する。上肢と体幹筋に多く、大半はアルコールで改善する。静止時に生じ動作で増強する。ジストニアは通常軽度にとどまり頸部ジストニア(痙性斜頸)、上肢ジストニア(書痙)となる。典型的には20歳までに発症する。ときにジストニア単独、一過性ジストニアとなることもある。精神障害多発(強迫性障害(OCD)、パニック発作など)、アルコール依存となる家系もある。てんかんと脳波異常(発作性、非発作性)の報告もあり、てんかんはDYT11を否定する根拠にはならないとされた。
治療ではレボドパは無効、クロナゼパム、バルプロ酸はやや有効、アルコールは著効であった。アルコール反応性にはリバウンドもあり飲酒後悪化することもある。
遺伝様式は常染色体優性遺伝。不完全浸透。父-息子での遺伝子の伝達で発症頻度が高い。maternal imprintingとされる。SGCE遺伝子が父親由来のみのものが発現することは、はじめマウスのSGCE遺伝子でみいだされた。
遺伝子変異はイプシロン・サルコグリカン(SGCE)のノンセンス変異、小欠失によるフレームシフト、ミスセンス変異により機能喪失型の変異がもたらされるが、これが、ヘテロに見られる。染色体異常によるSGCE全欠失(ヘテロ)も報告された。また、最近エクソン欠失も明らかになり、定量的PCRが必要とされている。典型的なミオクローヌス・ジストニアでSGCE変異の見出される割合は20%にすぎない。
 
<DYT12ジストニア、急性発症ジストニア・パーキンソニズム(RDP)/小児交互性片麻痺(alternating hemiplegia of childhood:AHC)/小脳失調症深部反射消失凹足視神経萎縮感覚神経障害性聴覚障害(cerebellar ataxia, areflexia, pes cavus, optic atropy, and sensorineural hearing loss:CAPOS)>
 
当初、RDPのみが知られていたが、最近、上記の3病型があることが確認された。3疾患は臨床症状がオーバーラップしていることもある。
 
1.診断指針
【RDP】
(1)遺伝様式:常染色体優性(遺伝子座19q13、遺伝子ATP1A3、遺伝子産物ATP1A3)
(2)発症年齢:14~45歳
(3)神経所見:急性に発症する。2~3分から1か月で症状は完成し以後ほとんど進行しない。ジストニアとパーキンソン症状を示す。ジストニアは顔面口部に強い。パーキンソン症状は無動、姿勢反応障害を示す。
(4)その他の症状:精神科的異常を伴うことが多い。
(5)臨床検査所見:特に異常ない
(6)鑑別診断:急性発症ジストニア・パーキンソニズムとして鑑別する。
(7)Definite(確定診断):急性発症でほぼ停止性のジストニア・パーキンソニズムを示し、ATP1A3に変異を認める。
(8)参考事項:ジストニアは顔面口部に強くDYT1、DYT5と反対の勾配を示す。パーキンソン症状として振戦は報告されていない。常染色体優性遺伝であるが不完全浸透である。家族発症は必ずしも示さない。
 【AHC】
(1)遺伝様式:常染色体優性遺伝様式
(2)発症年齢:乳児期~幼児期(18か月以前)
(3)神経所見:発作性反復性の片麻痺発作で(弛緩性、痙性、ジストニア姿勢を含む。)発症する。四肢麻痺発作の場合もある。麻痺側は一定せず交互性である。麻痺の程度は様々で発作は通常数分又は数時間であるが、数日持続する症例も見られる。ジストニア姿位やコレオアテトーシス、眼球運動異常(眼振、非対称性眼転位、斜視など)、自律神経症状(発汗、皮膚紅潮又は蒼白、呼吸不全など)を認める。発達障害、進行性の認知症状を随伴することが多い。睡眠で症状は消失する。てんかん発作を伴う症例も報告されている。家系内に軽症のAHCを認める事もある。
(4)臨床検査所見:画像所見を含め、特記する事項はない。
(5)遺伝子検査:遺伝子変異:ATP1A3、遺伝子産物:Na+/K+ transporting ATPase alpha-3chain、遺伝子座:19q13
(6)鑑別診断:もやもや病、ミトコンドリア病(MELAS、PDHC異常症など)、てんかん(トッド(Todd)麻痺)、片麻痺性片頭痛、グルコース・トランスポーター1異常症、芳香族L-アミノ酸脱炭酸酵素欠損症、その他の先天性代謝異常症(ホモシスチン尿症、ハルトナップ病など)
(7)Definite(確定診断):遺伝子検査で遺伝子変異が同定されたもの。
 【CAPOS】
(1)遺伝様式:常染色体優性遺伝様式
(2)発症年齢:乳児期~小児期
(3)神経所見:発作性反復性にCAPOSが発熱とともに見られる。発作は数日持続し、経過とともに症状は軽快・消失する。神経症状は緩徐進行性に増悪し、歩行障害、四肢失調、視力障害、難聴となる。嚥下困難も認められる。認知機能は保たれる。
(4)臨床検査所見:MRI画像には異常を認めない。
(5)遺伝子検査:遺伝子変異:ATP1A3、遺伝子産物:Na+/K+ transporting ATPase alpha-3chain、遺伝子座:19q13
(6)鑑別診断:もやもや病、ミトコンドリア病(MELAS、PDHC異常症など)、てんかん(トッド(Todd)麻痺)、片麻痺性片頭痛、グルコース・トランスポーター1異常症、芳香族L-アミノ酸脱炭酸酵素欠損症、その他の先天性代謝異常症(ホモシスチン尿症、ハルトナップ病など)
(7)Definite(確定診断):遺伝子検査で遺伝子変異が同定されたもの。
(8)参考事項:家系内に不全型の症例が見られることが報告されている。 
2.疾患の概要
優性遺伝のジストニア・パーキンソン症候群を示し、特徴的な急性発症経過をとる。Brashearらは36例のATP1A3変異の見られる症例を解析した。9家系で7種の変異があり4家系は同一変異である。5家系では発症者は1名で、T613Mではde novo変異も見られ、ハプロタイプ解析からは互いに関連がないとされた。発症年齢は8歳から55歳で10代20代に多い。平均22歳。急激な発症前には手と腕の軽いジストニアを見ることもある。発症は常に急激で、2~3分から30日で完成し、肉体的なあるいは心理的なストレスの後に起こることが多い。多くは進行も回復もしないが、2回目の増悪を経験することもある。球症状は特徴的で構語障害と小声になり、嚥下障害を伴う。ジストニアは全身性、分節性で顔面>上肢>下肢の勾配がある。パーキンソン症状は無動と姿勢保持障害である。抗パーキンソン病薬には反応しない。うつ状態、統合失調症的性格、てんかん発作も見られる。
 
<DYT18ジストニア、発作性労作誘発性ジスキネジア(PED)>
1.診断指針
(1)遺伝様式:常染色体優性(遺伝子座1p35-p31.3、遺伝子SLC2A1、遺伝子産物GLUT1)
(2)発症年齢:小児期
(3)神経所見:運動練習、持続的な運動、特に歩行の後で不随意運動がおこる。ジストニア、コレオアテトーシス、バリズムなどを生じる。5分から30分の発作を1日に1回~1月に1回繰り返す。
(4)その他の症状:てんかん発作を伴うものが多い。 
(5)臨床検査所見:MRIで多系統萎縮症様の被殻尾側の異常所見。FDG-PETで異常側視床の取り込み低下。
(6)鑑別診断:発作性ジスキネジアとして鑑別する。DYT8-10、18-20の遺伝子座が確定している。
(7)Definite(確定診断):運動練習誘発性のジスキネジアでSLC2A1にヘテロの変異が見られる。
(8)参考事項:誘発要因としては運動練習のほか、長い書字、空腹、ストレスなどがある。GLUT1欠乏症候群は対立遺伝子疾患でPEDと同じくSLC2A1のヘテロ変異があり、乳児発症の痙攣発作と精神運動発達遅滞を来す重症型である。
2.疾患の概要
運動練習で誘発されるジスキネジアで、ジスキネジア発作の長さなどがPKDとPNKDの中間であることが特徴とされた。
遺伝子異常は2008年Weberらが溶血性貧血を伴うPEDでGLUT1(glucose transporter 1)の欠失ヘテロ変異(Q282-S285del)を見出した。3代4例(男性3例女性1例)発症の家系で、てんかん、軽度の発達遅滞、髄液グルコース値低下、有棘赤血球を伴う溶血性貧血、赤血球内鉄含有量低下を伴っていた。PEDの病因遺伝子はSLC2A1、変異タンパクはGLUT1であることが結論された。
 
<DYT19ジストニア、反復発作性運動誘発性ジスキネジア2(EKD2)>
1.診断指針
(1)遺伝様式:常染色体優性(遺伝子座16p13-q22.1)
(2)発症年齢:7~13歳
(3)神経所見:急激な随意運動に伴って発作性のジストニアと舞踏運動を生じる。2分以内の発作を1日に1~20回繰り返す。自然軽快が多い。
(4)その他の症状:てんかんをきたすものがある。
(5)臨床検査所見:脳画像(CT、MRI)は異常がない。
(6)鑑別診断:他の発作性ジストニア。とくにEKD1(DYT10)。
(7)Definite(確定診断):急激な随意運動に伴って発作性のジストニアを生じる。:
(8)参考事項:症状はEKD1(DYT10)と大差がない。確実なのはインドの1家系のみ。
2.疾患の概要
インドの報告では初発年齢は7~13歳、平均9.6歳で、ジストニア(8人)か舞踏運動(9人)の発作がある。四肢に多く顔面にも見られ、軽度の構音障害も来す。意識は保たれるが、前兆として皮膚の蟻走感が生じる(6人)。5秒から2分の発作で1日に1~20回見られる。強いと立っていられなくなるが、わずかに気付かれるほどの軽いものもある。片側、両側ともにある。突然の運動により引き起こされることが多いが、過呼吸でも寒冷、緊張感でも生じうる。自然寛解が9人に見られ再発はしなかった。てんかん2人であるが、抗てんかん薬は著効した。
遺伝子座:16p13-q22.1とされ、EKD1(日本)に隣接する。アフリカ系米国人のPKCはこの両者にまたがる。ICCAとも近くEKD1とは対立遺伝子であるかもしれないが、EKD2はこれらとは異なるとされる。PKCにはEKD1、EKD2に連鎖しないのもある。
 
<Pantothenate kinase-associated neurodegeneration:NBIA 1(旧名 Hallervorden-Spatz syndrome)>
1.診断指針
(1)遺伝様式:常染色体劣性(遺伝子座 22q13.1、遺伝子PKAN2、   
遺伝子産物 PKAN(Pantothenate kinase 2)
MIM ID *606157、Gene map locus: 22q13.1
(2)発症年齢:classical type:6歳以下(6か月~12歳)、atypical type:14歳(1~28歳)
(3)頻度:1~3/1,000,000
2.臨床症状
10歳以下で発症する進行性のジストニア、構音障害、固縮、網膜色素変性を示す。
75%の症例はclassical typeとされ、歩行障害、姿勢障害で発症し、錐体外路症状が加わってくる。錐体外路症状の多くはジストニアで、筋固縮や舞踏運動がそれに続く。ジストニアは脳神経領域、四肢に見られる。口部ジストニアにより咬舌を来すこともある。錐体路症状も通常見られる。発症早期に色素性網膜変性症は明らかで、2/3の症例で合併する。症状は進行性で発症から10~15年で歩行不能となる。てんかんはまれである。
25%を占めるatypical typeの症例では、10歳以上で発症し、発話障害や精神症状が目立ち、より緩徐に進行する。発話障害としては40%の症例で反復言語か構語障害が多い。その後ジストニアをみるが、classical typeよりも程度は軽症で、15~40年程度で歩行不能となる。すくみ足の頻度も高い。約1/3の症例で精神症状(行動障害あり)か前頭側頭葉型認知症が見られる。症例によっては運動症状が明らかでなく、精神症状で推移する場合もある。網膜色素変性症は通常合併しない。
中間表現型と呼ばれる10歳代以前に発症するが進行が遅い型、10歳代に発症し進行が速く20歳代に歩行不能となる例などがある。その他Tourette症候群、純粋アキネジア、運動ニューロン疾患類似の病態を呈する症例、早期発症パーキンソニズムを示す症例などが報告されている。
HARP症候群(hypoprebetalipoproteinemia、acanthocytosis、retinitis pigmentosa、pallidal degeneration、OMIM 607236)も遺伝子変異がPANK2に見られたことからPKANに包含された。
3.検査所見
MRIでeye-of-the tiger signを認める。これは1.5テスラ以上のMRIのT2強調画像で、強い低輝度を示す淡蒼球内の内側領域に高輝度を認めることを指す。PANK2変異の見られるPKANでは全例陽性であるため、MRI所見からPKANの診断に至る例が少なくない。NBIAの中でもPKANにのみ見られる所見で特異性が高い。ただし逆は成立せず、Hartigのシリーズではeye-of-the tiger signが見られる症例のうち15%でPANK2変異が見出されなかった。
網膜電図で網膜障害パターンを示す。
8%の症例で有棘赤血球症を示す。
4.診断
Pantothenate kinase 2遺伝子に変異を認める。
遺伝歴、臨床像でPKANを疑いMRIでeye-of-the tiger signを認めた場合にはPKANを強く疑う。遺伝子診断については日本神経学会「神経疾患の遺伝子診断に関するガイドライン」を参照されたい。
5.鑑別診断
(1)セルロプラスミン値、血清銅(R/O Wilson病)
(2)神経セロイドリポフスチン症(Neuronal ceroid lipofuscinosis)
(3)β-hexosaminidase A欠損症、GM1-galactosidase欠損症
(4)乳児神経軸索ジストロフィー(infantile neuroaxonal dystrophy)及び他のNBIAの疾患群
(5)αfucosidosis
(6)childhood-onset ataxia (esp. SCA3、SCA7)
6.遺伝子変異と病態生理
PKANに見られるPANK2遺伝子変異は極めて多様である。Hartigの72症例のシリーズでは48例の96のアレルで変異が見出され、33種の変異が検出された。ミスセンス変異、exon欠失、小欠失によるframe shift、aberrant splicingがあり保存部位の全長にわたり見られた。ホモ接合もあるが複合ヘテロ接合も多い。Alternative splicingで多種の翻訳産物を生じるため変異部位の呼称も安定しない。このシリーズで最も多いのはc.1583C>T(p.Thr528Met)で、C.573delC(p.S191RfsX13)変異はポーランド人でのみ見られた。
これまでの報告を集積すると最も多い変異はc.1561G>A変異でp.Gly521Argとミスセンス変異を示し25%を占める。このほかc.1583C>T(p.Thr528Met)、c.1351C>T(p.Arg451X)、c.1413-1G>T(IVS)が多い。c.1561G>A変異はハプロタイプ解析から共通の創始者が推定された。
神経病理学的検討からは鉄はミクログリアに主として集積し、神経細胞の一部にも見られる。細胞外鉄枕着は血管周囲で顕著である。PKANでは鉄濃度上昇は淡蒼球と黒質で見られるが、他の部位ではあきらかではない。神経細胞脱落、グリオーシス、二次性脱随は淡蒼球と黒質で著明である。軸索のスフェロイドも顕著である。セロイドリポフスチンとニューロメラニンも細胞内に集積する。
7.治療
(1)有効な治療はない。
(2)ジストニアに対してボツリヌス(筋注)、バクロフェン(経口及び髄注)やトリヘキシフェニジール(経口)が有用である。
(3)パーキンソニズムは一般にL-DOPAは無効である。
(4)GPi-DBSが有用との報告もある。
(5)ジストニアによる二次性の障害である口頬舌ジストニアによる咬舌予防の装具や、栄養管理が必要である。
 
<乳児神経軸索ジストロフィー(Infantile neuroaxonal dystrophy:INAD)、NBIA2>
1.診断指針
(1)遺伝様式:常染色体劣性(遺伝子座 22q13.1、原因遺伝子 PLA2G6(phospholipase A2、group VI)
INADの79%の症例で同定された。)
MIM ID #256600
(2)発症年齢:classical type:1歳(5か月~2.5歳)、atypical type:4.4歳(1.5~6.5歳)
(3)頻度:1/1,000,000
2.臨床症状
進行性の精神症状、低緊張、深部反射亢進、四肢麻痺を示す。
Classical typeでは精神運動退行と体幹の低緊張、進行性の四肢麻痺を生後6か月から3年の間に示す。多くの症例では次第に痙性四肢麻痺となるが、1/3の症例では反射消失性の脱力のままである。全例でジストニア、痙縮、球症状、小脳症状を認める。発症後5年くらいまで歩行可能であることが多い。約半数で失調性のあるいは他の要因による歩行障害を示し、視神経症状(視神経萎縮、斜視、眼振など)を認める。1/3の症例ではてんかん発作を認める。平均死亡年齢は9.4歳である。
Atypical typeの発症時期はclassical typeよりおそく10代が多い。主症状は不安定さ、失調性歩行障害である。言語発達は遅れ、社会的な意思疎通はできない。視神経萎縮、眼振、痙攣発作はclassical typeと同様であるが、体幹の低緊張は見られない。
Karak症候群は、臨床像として早期発症小脳失調、ジストニア、痙縮、知能低下があり、MRIで小脳萎縮、淡蒼球と黒質に鉄枕着を認めるヨルダンの家系として報告されたが、PLA2G6遺伝子変異が同定されたため、INADに含まれることになった。
3.検査所見
筋電図検査で脱神経所見、脳波検査で速波を認めるが、神経伝導速度低下は1/3に認めるのみである。
MRI画像では95%の症例で小脳萎縮、50%の症例で淡蒼球、黒質に鉄の沈着を認める。小脳のグリオーシスに対応してT2強調画像で小脳の高輝度を認める。また、脳梁、大脳白質で異常を認める頻度が高い。Atypical typeのMRI像では小脳萎縮は83%の症例に留まり、淡蒼球や黒質の鉄沈着が目立つ。
PLA2G遺伝子変異陽性症例の87%で末梢神経生検で軸索スフェロイドを認める。
4.遺伝子変異と病態生理
PLA2G6遺伝子では44遺伝子変異が同定され、32がミスセンス変異、5が小欠失によるflameshift、2ノンセンス、1スプライス部位変異、1大欠失の報告がある。
Classic typeではnull allelesでatypical typeは複合ヘテロ接合を示す。共通の遺伝子変異は現時点ではない。
神経病理学的検討は少ないが、全般的な大脳皮質、小脳の萎縮と淡蒼球と黒質の茶褐色色素沈着を認める。組織学的には神経細胞脱落とグリオーシスを全般に認め、小脳ではPurkinje cellとgranule cellとの双方の細胞脱落をみる。軸索腫大とスフェロイド大脳皮質、基底核、小脳、脳幹、脊髄全般に見られる。スフェロイドはエオジン好性の円形の腫大で直径30~100µmであり、ニューロフィラメントを含んでいる。淡蒼球と黒質では血管周囲に褐色顆粒状の鉄の沈着を認める。Alzheimer病変及びPD病変もみられ、黒質では典型的なLewy小体を、大脳皮質や基底核ではαシヌクレイン陽性のLewy小体をみ、また、リン酸化τ陽性の神経原性線維を前頭葉や側頭葉に認める。
スフェロイドやLewy小体、神経原線維変化をもたらす機序は不明であるが、細胞骨格の酸化的ストレスが鉄によってもたらされる可能性がある。PLA2G6遺伝子は細胞膜維持やアポトーシスについて極めて重要な酵素をコードしているが、鉄枕着との関連は不明である。
5.治療
(1)有効な治療はない。
(2)ジストニアはバクロフェンやトリヘキシフェニジールで軽快できる。
(3)てんかん発作については抗痙攣薬におり治療を行う。
 
<神経フェリチン症(Neuroferritinopathy:NBIA3)>
1.診断指針
  (1)遺伝様式:常染色体優性(遺伝子座19q13.3-q13.4、原因遺伝子FTL gene の第4exonの460insA変異、
         まれに458dupA、遺伝子産物 FTL:ferritin light chain)
MIM ID #606159
(2)発症年齢:平均39歳(13~63歳)
(3)頻度:世界で100例以下
2.臨床症状
成人発症の舞踏運動又はジストニアを1~2肢に認め、軽度の認知機能障害を伴う。錐体外路症は舞踏運動が50%、局所性ジストニア43%、パーキンソニズム7.5%で急性バリスムや顔面痙攣、書痙はまれである。口下顎ジストニアや発生困難は見られる。顔面のジストニアは動作特異的で会話の際に広頸筋や前頭筋が収縮する、他の脳神経には問題ない。進行すると舞踏運動とジストニア双方が見られるようになる。5~10年で他肢に広がり、発症後20年くらいで全身性となるが、非対称性である。小脳失調、動作性振戦、認知症は目立たないことが多い。
458dupAは進行が速く、パーキンソニズムが目立ち、認知障害、小脳失調が見られる(460insAとの差異)。日本人家系(c.469_484dup16nt)も報告され10歳代に手指の振戦が見られ、低緊張性で、発生困難、小字症、歩行障害を示す。振戦は姿勢時が主体で、神経フェリチン症(neuroferritinopathy)で見られる典型的な錐体外路症状を示さない。
フランス系カナダ人家系は498-499insTC変異で、20歳代に手指の位置性振戦で発症し、症状の増悪により40歳代には上肢運動障害が著明となり、小脳症状、錐体外路障害、顔面の不随意運動、認知障害を認める。460insA遺伝子変異とは小脳症状、認知障害を認める点で異なる。646insC変異もフランス系カナダ人/オランダ人家系でみられ、60歳代で小脳症状、仮性球麻痺、舞踏運動、加速歩行、感情失禁、口下顎~頸部ジストニア、軽度であるが下肢の筋力低下を示す。パーキンソニズム、認知障害はない。474G>A変異がスペイン~ポルトガル家系で見られ、10代に失調性歩行で発症、次いで精神症状を示す。パーキンソニズムも見られる。
3.検査所見
血清フェリチン濃度はほとんどの男性、更年期以降の女性で低下する。更年期以前の女性では血清フェリチン濃度の低下は1/4に留まる。
MRIで発症早期には赤核、尾状核、淡蒼球、被殻、視床、黒質、大脳皮質がT2強調画像で低輝度となる。進行期となり組織障害が増悪すると、淡蒼球、尾状核が高輝度となる。これはおそらく変性による浮腫、嚢胞と思われる。C468_484dup 16int症例では小脳萎縮を認める。T2*による撮像の報告もあり、最早期や発症前症例で淡蒼球や黒質が低輝度となる。
4.遺伝子変異と病態生理
フェリチンは分子量21kのフェリチン重鎖(ferritin heavy chain 1:FTH1)と分子量19kのフェリチン軽鎖(ferritin light chain:FTL)からなり、合計24個集まって中空の殻状構造になり内部に最大4500個の鉄原子を取り込む。フェリチン重鎖はFe2+をFe3+に速やかに酸化する。フェリチンは細胞質にありFe2+鉄イオンの解毒作用と貯蔵機能を有している。同時にフェリチンは軸索にも存在し、シナプスまでの鉄の輸送に関連している。
ミトコンドリアはヘムの生合成に鉄を必要とし、鉄/硫酸クラスターは多くの不可欠な酵素中に存在している。鉄はミトコンドリア内でmitoferrinとなりミトコンドリアの内膜に存在する。Frataxinはミトコンドリア鉄シャペロンで、鉄/硫酸クラスタータンパク生合成における品質管理を行っている。
神経フェリチン症(Neuroferritinopathy)における遺伝子変異部位はいずれもFTL C末端側にあり、フェリチン12面体の形態を変化させ、鉄輸送能に影響を及ぼす。鉄輸送障害により、神経系のレドックス鉄が神経系に沈着する。
現時点でexon4に6、exon3に1つ遺伝子変異が報告されている。
頻度の高い変異:
              DNAヌクレオチド変異(同義)            タンパク質アミノ酸変異
               c.474G>A                                                    p.Ala96Thr
               c.442dupC (c.646_647insC)                           p.His148ProfsX33
               c.497_498dupTC (498insTC)                         p.Phe167SerfsX26
               c.460dupA (c.460_461insA)                           p.Arg154LysfsX27
神経病理学的には大脳皮質、視床、黒質、尾状核、被殻、淡蒼球、Purkinje細胞の脱落とグリオーシスを認める。組織学的には核内及び細胞質内の封入体を神経細胞、グリア血管内皮細胞に認め、これらはPerl染色及び抗フェリチン抗体で陽性である。フェリチン陽性封入体は被殻で最も濃度が高い。細胞外のヒアリン様構造物もフェリチンや鉄が陽性とされる。
神経フェリチン症(Neuroferritinopathy)では鉄の沈着が酸化的ストレスを生じ、heme-oxygenase-1(酸化的ストレスで誘導される。)を発現し、脂質酸化物(4-hydroxy-nonenal)の集積をもたらす。組織学的に被殻ではcaspase-3とp53の発現増強がみられ、アポトーシスによる神経細胞死が誘導されていることが示されている。同時にミトコンドリアの枯渇も見られるため、ミトコンドリアでの酸化的ストレスによる鉄沈着、次いでミトコンドリア障害、これによりアポトーシスが生じると考えられる。
5.治療
(1)有効な治療はない。
(2)鉄キレート剤は無効
(3)ジストニアに対してベンゾジアゼピンやボツリヌム注射は有用
(4)舞踏運動は抗精神病薬や抗コリン薬が有効
(5)脳深部刺激(DBS)は1例報告があり無効
(6)パーキンソニズムに対してL-DOPAは無効
6.鑑別診断
(1)ハンチントン病(Huntington disease)、SCA17
(2)DYT1ジストニア(dystonia)
(3)Choreoacanthocytosis、McLeod症候群
(4)SCA2、3
(5)若年性パーキンソニズム
 
<無セルロプラスミン血症(Aceruloplaminemia (Hereditary ceruloplasmin deficiency):NBIA4)>
1.診断指針
(1)遺伝様式:常染色体劣性(遺伝子座3q23-q24、原因遺伝子CP、
遺伝子産物 セルロプラスミン(ceruloplasmin)
変異はホモ接合体とヘテロ接合体があり、ほとんどが複合ヘテロ接合体
MIM ID #604290)
(2)発症年齢:成人発症 平均51歳(16~72歳)
(3)頻度:5000人、1/2,000,000人(日本)
2.臨床症状
無セルロプラスミン血症(Aceruloplasminemia)は鉄が脳と内臓に蓄積する疾患である。3主徴として糖尿病(神経所見に10年以上先行することがある)、網膜症、神経症状が挙げられる。神経症状としては認知障害、頭部顔面ジスキネジア、顔面頸部のジストニア、小脳失調が多くの症例で見られる。舞踏運動、パーキンソニズムも頻度が高い。糖尿病発症前に貧血が先行することもある。精神症状としてはうつ、認知障害があり、50歳以上で見られる。網膜変性症は宮島らによれば93%の症例で見られるが、視力は保たれる。
ヘテロ接合体の報告例は5症例あり、糖尿病はない。神経所見は様々で小脳失調、姿勢時振戦、舞踏運動-アテトーシスの報告がある。創始者とも思われる家族には神経症状ありとの報告はない。
3.検査所見
ホモ接合体では血清セルロプラスミンはなく、フェリチン濃度が上昇(正常の12倍程度)をみる。血清セルロプラスミン、フェロキシダーゼ活性は無く、小球性貧血を認める。
血清銅(10µg/dL以下)、鉄濃度(45µg/dL以下)は低下する。フェリチン濃度(850ng/mL)は増加。肝臓の鉄濃度は増大する。
ヘテロ接合体では血清セルロプラスミンレベルは正常の約1/2である。
MRIではT2強調画像で大脳および小脳、淡蒼球、尾状核、被殻、視床、赤核、黒質で低輝度を認め、FDG-PETで発症早期には尾状核の低代謝、進行期には基底核、大脳皮質にまで低代謝領域が広がる。ヘテロ接合体のMRIでは小脳萎縮のみが報告されている。鉄濃度の増大は内臓でも見られ、肝臓で著しい。
4.遺伝子変異と病態生理
無セルロプラスミン血症(Aceruloplasminemia)ではセルロプラスミン遺伝子の変異が見られる。40程度の変異が知られているが、いわゆるhot spotはない。
セルロプラスミンは血漿銅の95%の担体であり、フェロキシダーゼとしての作用があり、組織から鉄を移動する。さらにfree radical scavengerとしても作用する。セルロプラスミン遺伝子異常が生じると組織からの鉄移動がうまくいかなくなり、その結果組織内に鉄が蓄積し、組織内で酸化的ストレスが増大する。脳内での酸化的ストレスが増大していることは4-水酸化ノネナールやマロン酸-2-アルデヒド濃度が上昇していることで証明された。ミトコンドリアのcomplex IとIV機能に関する検討から、ミトコンドリア機能障害も明らかとされている。
組織学的には脳内鉄量が正常の2~5倍となり、尾状核、被殻で著しい。鉄は神経細胞よりもアストロサイトで著明に蓄積する。肝臓には鉄枕着は見られるが、肝硬変像はない。膵臓β細胞に鉄枕着を認め、糖尿病の原因と推定される。
5.鑑別診断
(1)NBIAの他疾患
(2)ウィルソン(Wilson)病
(3)メンケス(Menkes)病
(4)HFA associated hereditary hemochromatosis
6.治療
大規模な鉄キレート薬や鉄欠乏治療はないが、症例報告では有用とされた。改善は神経系-不随意運動や失調症状に有効とされた。
 
<Fatty Acid Hydroxylase-associated neurodegeneration(FAHN):dysmyelinating leukodystrophy and spastic paraparasis with or without dystonia, spastic paraplegia 35>
1.診断指針
(1)遺伝様式 常染色体性劣性(遺伝子座16q21-q23.1、原因遺伝子 FA2H、遺伝子産物 FAHN)
MIM ID #612319
(2)発症年齢: 3~11歳
(3)頻度 1/1,000,000以下
2.臨床症状
3~11歳で発症する錐体路障害、失調/ジストニア、眼症状(視神経萎縮、眼球運動障害)を早期に呈する疾患で、進行性に知的機能障害、てんかんを生じる。NBIAに属する疾患の1つで、7家系の報告がある。対麻痺から痙性四肢麻痺を呈する。講語障害、嚥下障害も示す。眼症状としては視力低下、視野狭窄、色覚障害を認め、眼球運動系では斜視、側方視眼振、核上性眼球運動障害を認める。
3.検査所見
MRIで淡蒼球の鉄枕着を認める。進行性に小脳半球、虫部、橋、延髄、脊髄の萎縮を認める。脳梁も萎縮する。
骨髄でgranular histiocyteを認める。
 
4.治療
(1)ジストニア/痙縮に対してバクロフェン、抗コリン薬、チザニジン、ダントロレンが用いられる。効果は症例による。時にボツリヌム毒が使用される。脳深部刺激療法(DBS)、淡蒼球破壊術、視床破壊術なども施行されている。
(2)二次的な合併症の予防
 
 
 
 
<重症度分類>
Barthel Index 85点以下を対象とする。
 

 

質問内容

点数

食事

自立、自助具などの装着可、標準的時間内に食べ終える

10

部分介助(例えば、おかずを切って細かくしてもらう)

全介助

車椅子からベッドへの移動

自立、ブレーキ、フットレストの操作も含む(歩行自立も含む)

15

軽度の部分介助又は監視を要する

10

座ることは可能であるがほぼ全介助

全介助又は不可能

整容

自立(洗面、整髪、歯磨き、ひげ剃り)

部分介助又は不可能

トイレ動作

自立(衣服の操作、後始末を含む、ポータブル便器などを使用している場合はその洗浄も含む)

10

部分介助、体を支える、衣服、後始末に介助を要する

全介助又は不可能

入浴

自立

部分介助又は不可能

歩行

45m以上の歩行、補装具(車椅子、歩行器は除く)の使用の有無は問わず

15

45m以上の介助歩行、歩行器の使用を含む

10

歩行不能の場合、車椅子にて45m以上の操作可能

上記以外

階段昇降

自立、手すりなどの使用の有無は問わない

10

介助又は監視を要する

不能

着替え

自立、靴、ファスナー、装具の着脱を含む

10

部分介助、標準的な時間内、半分以上は自分で行える

上記以外

排便コントロール

失禁なし、浣腸、坐薬の取扱いも可能

10

ときに失禁あり、浣腸、坐薬の取扱いに介助を要する者も含む

上記以外

10

排尿コントロール

失禁なし、収尿器の取扱いも可能

10

ときに失禁あり、収尿器の取扱いに介助を要する者も含む

上記以外

 
 
 
※診断基準及び重症度分類の適応における留意事項
1.病名診断に用いる臨床症状、検査所見等に関して、診断基準上に特段の規定がない場合には、いずれの時期のものを用いても差し支えない(ただし、当該疾病の経過を示す臨床症状等であって、確認可能なものに限る。)。
2.治療開始後における重症度分類については、適切な医学的管理の下で治療が行われている状態であって、直近6か月間で最も悪い状態を医師が判断することとする。
3.なお、症状の程度が上記の重症度分類等で一定以上に該当しない者であるが、高額な医療を継続す
ることが必要なものについては、医療費助成の対象とする。

本病名の関連資料・リンク

「神経変性疾患領域における基盤的調査研究班」
研究代表者 鳥取大学脳神経内科教授 中島健二
「ジストニアの成因と治療に関する研究班」
「ジストニアの疫学、病態、治療に関する研究班」
研究代表者 国立病院機構相模原病院神経内科医長 長谷川一子
診療ガイドライン 現在作成中
神経変性疾患調査研究班リスト

治験情報の検索:国立保健医療科学院
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情報提供者
研究班名 神経変性疾患領域における基盤的調査研究班
研究班名簿  研究班ホームページ 
情報更新日平成29年4月24日