巨大リンパ管奇形(頚部顔面病変)(指定難病278)

きょだいりんぱかんきけい(けいぶがんめんびょうへん)
 

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

1. 「巨大リンパ管奇形(頚部顔面病変)」とはどのような病気ですか

「リンパ管奇形」は従来「リンパ管腫」と呼ばれていた病変のことで、最近病名が徐々に入れ替わりつつあります。体の中にはリンパ(液)が流れるリンパ管のネットワークがあります。これは血管のように全身に張り巡らされており全身の組織で発生したリンパを集めて血液に戻す回路で途中にあるリンパ節は免疫機能に大きな役割をはたしています。リンパ奇形はこのリンパ管が袋状に膨らんだ大小の病変がいくつも集まってできた病変です。
この疾患は全身に生じうるものですが、特に首や顔の辺りに出来る巨大な病変は、呼吸困難など生命にかかわる 重篤 な症状を生じることもあります。

2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか

平成21年以降におこなわれたいくつかの全国調査結果から約600名と推定されています。

3. この病気はどのような人に多いのですか

患者さんは子どもが多いです。母親の胎内ですでに病変ができていると考えられます。したがって生まれたときにすでに病変を持っていることが多く、また生まれたときに分からなくてもこどものうちに発症することが多いです。しかし一部に胸の中やお腹のなかに病変があって成人になって症状がでたり、偶然他の目的の検査で発見される場合もあります。
また元の病変が大きい場合には完治が難しいことが多く、成人しても病気とともに歩んでいる方もおられます。

4. この病気の原因はわかっているのですか

リンパ管の形成時に生じた異常によるものであると考えられています。病変中の細胞のPIK3CA遺伝子の変異により、細胞の増殖や分化、生存に関わるPI3K/AKT/mTOR経路の働きが活発になっていることがわかってきました。
その他のリンパ管疾患でも、細胞、血管の形成に重要な体細胞のPI3K/AKT/mTOR経路の遺伝子変異が原因や病態に関与していると考えられています。

5. この病気は遺伝するのですか

上記の遺伝子変異は病変内で生じたものですので遺伝しません。また、親子・親類内の発症は報告がなく、現時点では遺伝はしないと考えられます。

6. この病気ではどのような症状がおきますか

もともと腫瘤を形成しており、左右のバランスを欠いたりして、整容性が問題となることが多いです。経過中には特に誘因なく病変の中に出血したり、感染を起こしたりすることがあり、そのときは急速に腫れて、発熱や痛みを伴うこともあります。特に感染の場合には、全身のだるさや悪寒などの強い症状が出たり、病変部が赤くなったりして触れると強く痛んだりします。
また急速に腫れてきた場合、普段と比べて息を吸い込みにくくなったり飲み込みにくくなることがあります。

7. この病気にはどのような治療法がありますか

大きく分けて3種類あります。
一つは外科的切除です。ただし、病変の部位や広がり方によっては切除が難しく、また神経や血管、筋肉などの組織損傷の危険があります。また創が残ることは避けられないため、慎重な選択を要します。
もう一つは 硬化療法 です。硬化剤には最も良く使用される承認薬のOK-432(ピシバニール)の他、ブレオマイシン、エタノール、抗癌剤、高濃度糖水、フィブリン糊などが使用されることがあります。
また、内科的として、mTOR阻害剤であるシロリムスが2021年9月に難治性リンパ管疾患に対する有効な治療薬として承認されました。また漢方薬も用いられています。

8. この病気はどういう経過をたどるのですか

多くは体の成長と同じペースで大きくなります。つまり病変の占める部分は変わりません。切除や硬化療法により完治することもありますが、全く治療が困難であることもあり、全般的にはある程度の病変が残っており、病変と付き合いながら生活していくことが多いのが現状です。

9. この病気は日常生活でどのような注意が必要ですか

病変が顎の下、首にある場合、特に気を付けねばならないことがあります。病変が喉の奥の方や舌の奥の方にも広がっている場合には病変が喉の内側に張り出してくるため気道が狭くなり、呼吸困難に陥ることがあります。特に、赤ちゃんの場合注意が必要です。訴えることはできませんが、哺乳が弱くなったり続けて飲めなくなったり、いびきが目立つようになったり、息を吸うときに胸が大きくへこんだりするような変化が出ます。外から見て病変が普段より腫れている場合に特に気を付ける必要があります。
その他病変の部位にかかわらず突然起こりうることとして腫れて痛みを生じたり発熱したりすることがあります。また色調が青黒く変わったり、赤く熱を持つこともあります。これは内出血や感染によるもので治療を要することもあるので受診を勧めます。患部を強く打撲することは出血の原因になりうるので出来るだけ避けると良いでしょう。しかしながら明らかな誘因がなくとも内出血は自然に起こることが多いようです。

10. 次の病名はこの病気の別名又はこの病気に含まれる、あるいは深く関連する病名です。 ただし、これらの病気(病名)であっても医療費助成の対象とならないこともありますので、主治医に相談してください。

リンパ管腫
嚢胞性ヒグローマ
原発性リンパ浮腫

11. この病気に関する資料・関連リンク

日本血管腫血管奇形学会
http://plaza.umin.ac.jp/~jssva/index.html
 
血管腫・脈管奇形・血管奇形・リンパ管奇形・リンパ管腫症診療ガイドライン2022
https://issvaa.jp/wp/wp-content/uploads/2023/05/5a0c3123c7066f4f0f6978789816197b.pdf
 
国際血管腫・血管奇形学会(ISSVA)
http://www.issva.org/
 
血管腫・血管奇形IVR研究会
http://www.marianna-u.ac.jp/avm/
 
混合型脈管奇形の会
http://www.myakkankikei.com/
 
血管腫・血管奇形の患者会
http://www.pava-net.com
 
血管奇形ネットワーク
http://kekkankikeinw.web.fc2.com/
 
NPO法人 リンパ管腫と共に歩む会
https://www.npo-ilmn.org/
 
リンパ管疾患情報ステーション
http://lymphangioma.net

 
情報提供者
研究班名 難治性血管腫・脈管奇形・血管奇形・リンパ管奇形(リンパ管腫)・リンパ管腫症および関連疾患についての調査研究班
研究班名簿 研究班ホームページ
情報更新日 令和5年11月(名簿更新:令和5年6月)