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遺伝性膵炎(指定難病298)

いでんせいすいえん

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

1. 「遺伝性膵炎」とはどのような病気ですか

遺伝性膵炎とは、遺伝により慢性膵炎が家族の中に多発する稀な病気です。遺伝性膵炎の定義として欧米では、①血縁者に3人以上の膵炎症例を認め、②若年発症、③大量飲酒など慢性膵炎の成因と考えられるものが認められず、④ 2世代以上で患者が発生していることを挙げています。我が国では少子化に伴い明確な家族歴を得ることが困難なため、厚生労働省難治性膵疾患に関する調査研究班が策定した独自の臨床診断基準に基づき診断されます。

2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか

厚生労働省難治性膵疾患に関する調査研究班が2011年に行った全国調査では、82家系214症例(男性118例、女性96例)が報告されています。一方、同研究班が行った2007年受療患者を対象とした慢性膵炎全国疫学調査では、慢性膵炎の推計受療患者数47,100人に対して遺伝性膵炎の成因別頻度は0.8%でした (推計される遺伝性膵炎患者数 377人)。2011年受療患者を対象とした調査では、慢性膵炎の推計受療患者数66,980人に対して、遺伝性膵炎の成因別頻度は0.3%(推計される遺伝性膵炎患者数 201人)でした。これらの結果をもとに、我が国における遺伝性膵炎の患者数は300-500人程度と推計されています。

3. この病気はどのような人に多いのですか

遺伝性膵炎自体は遺伝子の異常によるものと考えられていますので、家族や親戚で膵炎の方が多い場合、通常の膵炎ではなく遺伝性膵炎の可能性があります。

4. この病気の原因はわかっているのですか

膵臓から分泌される消化酵素(食べ物を溶かす酵素)であるトリプシンの活性化と不活性化に関わる遺伝子異常が原因であることが明らかとなっています。最も多い遺伝子異常は、トリプシンの前駆体であるカチオニックトリプシノーゲン(PRSS1)遺伝子の異常で、我が国における遺伝性膵炎家系の約4割が該当します。次に多いのが、トリプシンの働きを抑える膵分泌性トリプシンインヒビター(SPINK1)遺伝子の異常で、約3割の家系が該当します。一方、残りの3割の遺伝性膵炎家系では、原因となる遺伝子異常は見つかっていません。

5. この病気は遺伝するのですか

原因となる遺伝子の異常がある場合には遺伝します。しかし、遺伝子の異常があっても、全員が遺伝性膵炎になるわけではありません。カチオニックトリプシノーゲン遺伝子異常を有する場合、8割から9割の方が遺伝性膵炎を発症するとされます。

6. この病気ではどのような症状がおきますか

幼少期より腹痛、悪心、嘔吐、下痢などの急性膵炎様発作を繰り返し、多くは慢性膵炎へと進行します。慢性膵炎になると、膵臓から消化酵素が十分に出なくなり下痢や脂肪便、体重減少を起こす膵外分泌機能不全や、インスリンの分泌が減少することによる糖尿病を高率に合併します

7. この病気にはどのような治療法がありますか

原則として通常の慢性膵炎と同じ治療をします。慢性膵炎治療の基本は、“患者さんの背景(成因)をふまえ、臨床経過上の各病期に出現する症状とその重症度、活動性(再燃寛解)に応じて集学的に治療する”ことにあります。すなわち、腹痛や急性膵炎の発作が症状の中心である代償期においては急性増悪の予防と腹痛のコントロール、膵臓の機能が低下した非代償期には消化吸収障害ならびに糖尿病の治療といった、膵外内分泌機能の適切な補充が治療の中心となります。一方、慢性膵炎は多分に生活習慣病的な側面があります。したがって治療においては、①断酒、禁煙といった生活指導、②病期に応じた食事指導・栄養管理、③薬物療法、④内視鏡(胃カメラ)による膵石の治療や手術が治療の柱となります。薬物療法や内視鏡治療などを考える際には、生活指導や栄養指導の徹底が前提になります。

8. この病気はどういう経過をたどるのですか

発症は幼少期であることが多く、腹痛、悪心、嘔吐、下痢などの急性膵炎様発作を繰り返し、多くは慢性膵炎へと進行します。慢性膵炎になると、膵臓から消化酵素が十分に出なくなり下痢や脂肪便、体重減少を起こす膵外分泌機能不全やインスリンの分泌が減少することによる糖尿病を高率に合併します。頻回な膵炎発作のための入院や疼痛コントロールのために内視鏡(胃カメラ)を用いた治療や膵臓の手術が必要となる症例も少なくありません。

9. この病気は日常生活でどのような注意が必要ですか

飲酒や喫煙は、膵炎の進行のみならず膵癌のリスクを上昇させますので、厳に控えるべきです。食事に関しては、病気の時期に応じた注意が必要です。すなわち、腹痛発作が症状の中心で、膵臓の働きが保たれている代償期と呼ばれる時期には脂肪の制限を、一方、腹痛発作がなくなり、膵臓の消化やインスリン分泌といった働きが悪くなった非代償期と呼ばれる時期では、過度な脂肪制限は栄養やビタミン不足をおこしてしまうため、消化酵素薬を内服しながら、むしろ十分な栄養を摂ることが大切です。

10. この病気に関する資料・関連リンク

厚生労働省の難治性膵疾患に関する調査研究班では、遺伝性膵炎に限らず慢性膵炎についてわかりやすく解説したアプリ(「慢性膵炎」の話をしよう。)を作成しています。どなたでも無料でダウンロード可能です。
(android版)https://play.google.com/store/apps/details?id=net.doctorinfo.pdfscroller.pancreatitis&hl=ja
(iOS版)https://itunes.apple.com/jp/app/man-xing-cui-yanno-huawoshiyou/id966082258?mt=8
 
膵炎の原因遺伝子探索
https://www.jstage.jst.go.jp/article/suizo/29/1/29_51/_pdf

用語解説

慢性膵炎:膵臓の内部に不規則な線維化、細胞浸潤、実質の脱落、肉芽組織などの慢性変化が生じ、進行すると膵外分泌・内分泌機能の低下を伴う病気です。
 
トリプシン:膵臓で作られる消化酵素の一種で、たんぱく質を溶かします。
 
遺伝子の変異:遺伝子情報の配列の一部が置き換わっていたり欠けていたりすること。その情報をもとに作られる分子の働きに様々な影響が出ます。


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情報提供者
研究班名 小児期発症の希少難治性肝胆膵疾患の移行期を包含し診療の質の向上に関する研究班
研究班名簿   
新規掲載日平成27年11月8日