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ファロー四徴症(指定難病215)

ふぁろーしちょうしょう

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

1. 「ファロー四徴症」とはどのような病気ですか

120年前にフランスの医師ファローによって報告されたチアノーゼをともなう先天性心疾患です。心臓の発生の段階で、肺動脈と大動脈の2つの大きな血管を分ける仕切りの壁が体の前方にずれたために起こる心臓の異常で、以下の4つの特徴をもつ心疾患をファロー四徴症と呼びます。
(1)左右の心室を分ける心室中隔という仕切りの壁の大きな穴(心室中隔欠損)、
(2)全身へ血液を送る大動脈が左右の心室にまたがっている(大動脈騎乗)、
(3)肺へ血液を送る肺動脈の右室の出口(漏斗部)が肺動脈弁と一緒に狭くなる(肺動脈狭窄・漏斗部狭窄)、
(4)左右の心室の圧が等しくなり、右室が肥大する(右室肥大)

ファロー四徴症で肺動脈閉鎖をともなうものを、ファロー四徴症極型と呼ぶこともあります。
 
ファロー四徴症は、生後まもなく心雑音で見つかることが多く、心室中隔欠損を通して右室から大動脈へ酸素が低い血液が流れ(「右—左短絡」という)、このためにチアノーゼ(爪や唇の色が紫色になること)を生じます。
また乳児期には、激しく泣いた後などにチアノーゼと呼吸困難が強くなる発作(チアノーゼ発作/無酸素発作)を起こすことがあり、βブロッカーで治療されることもあります。
治療の基本は心臓外科手術です。生後6ヶ月から3才くらいに人工心肺という装置を用いて心室中隔欠損閉鎖術と右室流出路再建術を行います。

 

2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか

出生数1万あたりのファロー四徴症の出生率は2.8〜4.1人(3600人に1人)、ファロー四徴症に肺動脈閉鎖を伴ったものは1.2名、合計して5.3名くらいといわれています。チアノーゼを生じる先天性心疾患の中では一番多い疾患です。男女比はほぼ1:1で男女差はありません。

3. この病気はどのような人に多いのですか

先天性の心疾患で生まれつきのものです。環境因子や遺伝因子など多因子の関与が指摘されています。特に染色体22番の長腕のq11.2領域の欠失を示す22q11.2欠失症候群での合併が多いと言われており、ファロー四徴症の15%程度に合併するという報告があります。

4. この病気の原因はわかっているのですか

生まれつきの疾患で、心臓の発生初期の発生過程の異常が原因です。心臓の発生の過程で神経堤細胞が適切な場所に移動できないことから生じるといわれていますが、この原因は多因子で一つの原因では説明できません。

5. この病気は遺伝するのですか

通常は散発性に発生することが多いと言われています。単一遺伝子で遺伝するのではなく多因子遺伝と言われています。一親等の家族内での再発率は約3%と報告されていますが、父母がこの疾患に罹患しているときの遺伝については特に他の先天性心疾患と同様と考えられています。

6. この病気ではどのような症状がおきますか

右室から肺動脈への通路が、どの程度狭いかによって、チアノーゼ(低酸素血症のために口唇や爪床が紫色になる症状)の出現の時期と程度が変わります。
約1/3は生後1ヶ月以内に、約1/3は1ヶ月から1年以内の乳児期に、残り約1/3は生後1年以後の幼児期に現れます。はじめは、泣いた後や運動時にチアノーゼがみられ、成長にともないいつも見られるようになります。
歩き始める頃になると、走ったり歩いて息が切れるとしゃがみ込むような姿勢をとることが見られるようになります。
生後2ヶ月以後には、この疾患に特有の「チアノーゼ発作(低酸素発作)」がみられることがあります。この発作は、最初はよく寝た後や午前中に見られることが多く、重くなると一日中起きるようになります。症状は、急に不機嫌になり、チアノーゼと呼吸困難が強くなり、高度になると意識がなくなったり全身のけいれんを起こすことがあります。通常10分程度で自然に改善することが多いですが、長時間続く場合は死亡することもあります。貧血があると、チアノーゼが目立たなくなる上、このチアノーゼ発作を起こしやすくなるので注意が必要です。
チアノーゼが出現して6ヶ月以上経つと手足の指先が円く変形して、太鼓のばちのような形になります。(太鼓ばち指と呼びます)。
通常は、心雑音を聴取されます。ファロー四徴症と診断された後治療されないのに心雑音が小さくなったり聞こえなくなる場合は、右室から肺動脈への通路がより狭くなっていることが多く「チアノーゼ発作」を起こしやすくなります。
現在では乳児期に短絡手術または心内修復術を行うことが多いため、手術をしないで学童期まで到達することは少ないですが、未手術の場合はチアノーゼが強く、少し運動しただけで息が切れるようになり日常生活の制限が強くなります。また、多血症を生じ、血栓症を起こしやすくなり、右—左短絡のために脳膿瘍を合併することがあります。

7. この病気にはどのような治療法がありますか

1)治療の基本は、心臓手術です。
手術は低酸素血症を改善するため、手にいく鎖骨下動脈という動脈と肺動脈をつなぐブラロックータウシッヒ短絡手術と心室中隔欠損を閉鎖して狭い右室流出路を拡大形成する心内修復術があります。
ブラロックータウシッヒ短絡手術は、新生児や乳児早期で体重が小さかったり、「チアノーゼ発作」の改善のためや細い肺動脈や左室が小さいために心内修復術が難しい場合に行われます。
ファロー四徴症の心内修復術は、通常生後6ヶ月以後2歳以下に行われることが多く、狭い右室流出路の手術法に自分の肺動脈弁を残す方法(自己弁温存法)、右室流出路にパッチと呼ばれる膜を当てて拡大形成する方法(右室流出路パッチ拡大術)、人工血管などの導管を使って右室から肺動脈へ通路を作成する方法(ラステリ手術)の3通りがあります。特に肺動脈閉鎖をともなう場合にはラステリ手術が行われます。
 

 
小児期に心内修復術が行われた後、右室流出路が再び狭くなったり肺動脈が狭くなったりした場合には、バルーンカテーテルやステントで拡大するカテーテル治療が行われる場合があります。また大動脈から肺動脈に異常なバイパス血管が出来た場合にはコイル塞栓術が行われる場合があります。
術後遠隔期には、肺動脈弁閉鎖不全の進行のために右心室が拡大し手右室の収縮が低下して右心不全を生じる場合があります。 この場合には肺動脈弁置換術を必要とすることがあります。
 
2)「チアノーゼ発作」の治療
チアノーゼ発作に対しては、β遮断剤が用いられます。通常はミケラン(カルテオロール)またはインデラル(プロプラノロール)の内服が処方されます。貧血があると発作を起こしやすくなるため、輸血を行う場合もあります。
 
3)不整脈の治療
術後に心室頻拍を起こす場合があります。術後心室頻拍にたいして抗不整脈剤の投与や心室頻拍の元になっている部位をカテーテルで焼く心臓カテーテルアブレーションを施行することもあります。

8. この病気はどういう経過をたどるのですか

通常は、乳児期にチアノーゼを生じてチアノーゼ発作や運動制限などのために手術が行われます。心内修復術を行えば術後の状態にもよりますが通常の日常生活は過ごせるようになりますが、激しい競技スポーツや運動は制限されます。加齢とともに肺動脈弁閉鎖不全が進行すると運動時の息切れや日常生活の制限が起こるようになり、右室機能低下や三尖弁閉鎖不全を生じて心不全を呈するようになります。この場合には肺動脈弁置換術を必要とすることがあります。また、肺動脈閉鎖でラステリ手術を行った場合は、右室—肺動脈の導管の狭窄が進行することがあり、カテーテル治療による拡大を必要としたり導管を交換する手術が必要になることがあります。

9. この病気は日常生活でどのような注意が必要ですか

手術前と術後の症状や手術後の状態によって異なります。術後は、激しい競技スポーツは制限されることがあります。運動時の準備運動/整理運動をきちんと行い、運動中の水分補給を心がけることが大切です。
人工物を使用した心臓手術となるため、抜歯や出血をともなう歯科治療、その他の外科手術時などには感染性心内膜炎の予防が必要です。
術後の合併症が重くなければ妊娠出産は可能ですが、担当主治医と事前によく相談して心機能を評価することが大切です。

10. この病気に関する資料・関連リンク

高尾篤良他.臨床発達心臓病学改訂3版. 中外医学社2005
 
中澤 誠他.目で見る循環器病シリーズ5-先天性心疾患-.Medical View2000
 
日本循環器学会ホームページ
http://www.j-circ.or.jp/guideline/
「先天性心疾患術後遠隔期の管理・侵襲的治療に関するガイドライン(2012年改訂版)」(班長:越後茂之 循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2012年度合同研究班報告)
 
「先天性心疾患の診断、病態把握、治療選択のための検査法の選択ガイドライン(2007-2008年度合同研究班報告)」(班長:濱岡建城)Circulation JournalVol.73,Supplement. III, 2009


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情報提供者
研究班名 単心室循環症候群の予後に関する研究班  
新規掲載日平成27年10月25日