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総排泄腔外反症(指定難病292)

そうはいせつくうがいはんしょう

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

1. 「総排泄腔外反症」とはどのような病気ですか

総排泄腔外反症(Cloacal exstrophy)は、膀胱腸裂(vesicointestinal fissure)とも呼ばれ、図1に示すような特徴的外観をしています。膀胱と回盲部腸管が体外に外反し、それぞれの粘膜が下腹壁に露出しています。露出した粘膜の中心部は回盲部に相当する腸管で、その左右に二分された膀胱が存在します。露出した腸管の下方から短い大腸が翻転し脱出しています。露出した膀胱と腸管の頭側に臍帯ヘルニアが存在し、会陰部には低形成の外性器が二分して存在します。なぜこのような本来体内にあるべき臓器が腹壁に露出したのかに関しては、胎児期早期の下腹壁と総排泄腔が形成される過程が障害されたためと考えられています。総排泄腔(cloaca)は、胎生4〜9週に存在する臓器で、将来的に膀胱・尿道と直腸・肛門に分化する臓器です。胎生5週の胎児の縦断像と総排泄腔の部分の横断像を図2Aに示します。体壁と腸管が形成されるのはその1週前の胎生4週で、体壁となる外胚葉が背部より臍部に進展し収束する形で体壁が形成され、同時に体内でも腸管となる内胚葉が管腔を形成します。図2Bに示すように、この同時期におきる体壁と腸管の形成過程が障害されると腹壁前壁と総排泄腔前壁が欠損し、総排泄腔が体外に露出する状態となります。総排泄腔は、前半部分が膀胱・尿道となり、後半部が腸管に分化するため、外反した総排泄腔の中心部には腸管が存在し、その左右に分断した膀胱が存在することとなります。この体壁が形成される胎生4週は、同時に脳脊髄神経となる神経管が閉鎖する時期で、腹壁だけでなく神経管の形成も障害されると、脊髄髄膜瘤などの神経管閉鎖不全症が合併します。神経管形成不全症を合併した場合を、OEIS複合(Omphalocele(臍帯ヘルニア)、bladder exstrophy(膀胱外反)、Imperforate anus(鎖肛)、Spinal defects(脊髄奇形))と呼ばれています。
 
図1.総排泄腔外反症外観シェーマ


図2.総排泄腔外反の発生機序

2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか

以前は20万から40万の出生に1人程度と考えられていましたが1, 2)、最近の報告ではもう少し高い発生頻度で、米国ニューヨークでは16万の出生に1人と報告されています3)。海外18地域の先天性奇形登録データの解析からは、全ての統計データを合算して計算した発生頻度は13万の出生に1人でした。地域差もあり、南米が27万人の出生に1人と最も低い発生頻度で、英国が4.4万の出生に1人と最も高い頻度でした4)
2014年に行われた本邦における全国調査5)では、図3に示すように1980年から2009年までの30年を10年毎の3期と、最近の2010年から2014年までの5年間で各時期の発生数を調べると、1980年〜2009年までの3期の発生数は35人、70人、76人で、最近の5年間は33人でした。各期間の出生数を患者数で除した何人の出生あたりに1人の患者さんが発生するかという頻度を調べると、1980〜1989年は41万の出生に1人でしたが、1990年以降は15万から17万の出生に1人というほぼ一定の割合でした。1980年以降の35年間の発生数は213人で、年平均の発生数は6.1人、1990年以降の発生数は178人で年平均の発生数は7.1人で、毎年6〜7人程度の発生状況でした。
 
図3.過去35年間の発生数と発生頻度

3. この病気はどのような人に多いですか

この疾患は男児と女児ともに発生しますが、男女比は1:2で、女児の発生が男児の倍となっています4)

4. この病気の原因はわかっているのですか

この病気は発生頻度が低く、しかも散発性発生のため、原因はわかっていません。直腸・肛門の発達と分化に関係しているSHH(ソニックヘッジホッグ)蛋白質やその蛋白質の細胞内伝達に関与するGli2とGli3と呼ばれる蛋白質がありますが、その蛋白をコードする遺伝子異常は見つかっていません。FGF10という泌尿器の発達に関係している遺伝子に関しても異常は発見されていません。人における遺伝子異常としては染色体9番長腕とY染色体長腕との不均衡な転座が1例報告6)されているだけです。また、妊娠中に精神安定剤長期服用を行っている母親からの発生したという報告もあります7)

5. この病気は遺伝するのですか

ほとんどの症例は散発性です。Smithは、死産となった兄弟発症例を報告しています8)。また、一卵性双生児における同胞発症も報告されています9,10)

6. この病気ではどのような症状がおきますか

胎児期には、膀胱が外反しているため膀胱が確認できない、臍帯付着位置が低い、臍帯ヘルニア、髄膜瘤、外性器異常、腎奇形などの症状で、胎児超音波検査や MRIにより出生前診断されています。本邦における全国集計229例でも5)、出生前診断例は増加傾向にあり、2000年から2009年では58.5%であったものが、2010年から2014年では77.4%と、出生前診断例が増えていました。
生後の診断は特徴的な外観より容易です。外反した膀胱と直腸は放置すると機能が荒廃するため、生直後の外科治療が必要です。多くの合併症を伴うため、合併症に関連した症状も出現します。
本邦における全国集計結果229例では5)、尿路系の合併奇形は188例(82.0%)に認められ、腎欠損、多嚢胞異形成腎、低形成・異形成腎、水腎症、馬蹄腎、重複腎盂尿管、巨大尿管、尿管瘤、後部尿道弁、尿管狭窄などが認められています。その他の合併症としては、染色体異常が8例(3.5%)、心奇形が19例(8.3%)、中枢神経異常が23例(10.0%)、脊髄髄膜瘤が105例(46.3%)、脊髄髄膜瘤以外の脊椎奇形が97例(42.3%)でした。脊髄髄膜瘤の合併が半数近くに認められ、下肢麻痺、水頭症のほかに、直腸・膀胱機能障害の原因となり、膀胱・直腸手術の治療方針を決定に重要な因子となります。内性器異常では、子宮の異常ありとされたのは57例(24.9%)、腟の異常ありは29例(12.7%)でした。子宮や腟の形態異常は、思春期における無月経、月経血流出路障害、生理痛などの原因となります。
生後に問題となるのは、性の判定です。外性器の形成が不良のため、外観だけでは判定が困難な場合が多くあります。染色体検査が必要ですが、生直後の手術で性腺や内性器が同定され、判定できる場合があります。

7. この病気にはどのような治療法がありますか

外科治療が中心となります。まず外反している膀胱と腸管を分離し、左右の膀胱を一つに修復する一期的膀胱閉鎖と尿道形成を行います。膀胱の形成が極めて不良の場合は、膀胱を切離し回腸導管による尿路作成術を行うこともあります。外反した回盲部腸管は修復し、人工肛門を造設します。外反している回盲部以降の大腸は短結腸の状態です。本邦における全国集計229例では5)、人工肛門造設部位は、小腸が51例、大腸104例でした。大腸が長い場合は、横行結腸やS状結腸などに鎖肛の手術と同様に人工肛門を造設します。臍帯ヘルニアの閉鎖と腹壁形成が必要です。恥骨離開に対しては、恥骨・骨盤形成術を行いますが、単なる恥骨閉鎖術や腸骨骨切術を併用する方法もあります。二分した陰茎の形成術を新生児期に行う場合もあります。
男児の場合、外性器の形成が不十分なために、女児として養育するため除睾術や陰茎切除術が施行されたことがありました。しかし、男性的な成長や、不自然な性の選択による本人の精神的葛藤の原因となるため、最近は本来の性にそった性決定と外性器の形成が行われています。
乳幼児期に、可能であれば肛門形成術を検討しますが、脊髄髄膜瘤を合併し膀胱・直腸障害が存在する場合は、車いすでの生活を考慮し永久人工肛門や導尿路作成が選択されることが多い。本法における全国集計229例では、永久人工肛門造設は169例(73.8%)で、肛門形成は18例(8.3%)のみでした。膀胱機能が不良で膀胱拡大術が施行されたのは62例(27%)でした。また、膀胱尿管逆流に対しても外科治療は35例(15.3%)に施行されていました。腟・子宮の先天的な形成異常に対して、腟・子宮形成術が24例(10.5%)に施行されていました。
本症は、新生児期から思春期、さらに成人期にかけて膀胱・直腸障害や生殖器障害に対する継続した治療が必要で、女性では妊娠や出産に対するサポート、男性では外性器形成不全による性機能障害や妊孕性低下へのサポートなど、内科的・外科的治療だけでなく、カウンセリングを含めた精神的サポートも重要で、総合的医療チームによる多面的治療が不可欠です。特に女性の場合、思春期に発生する可能性がある月経血流出路障害に対応するための早期の産婦人科医との医療連携が重要です。

8. この病気はどういう経過をたどるのですか

この病気の長期経過は、よくわかっていません。壮年期以降の長期生存者の報告がなく、本邦における全国集計5)でも、最も古い登録例は1969年でした。近年の出生前診断例の増加、新生児管理や外科治療の進歩、適切な性の決定は、患児のQOLを改善していると考えられています。
各種機能評価では、本邦における全国集計では5)、排便は73.8%が永久人工肛門を設置された状態で、肛門形成を施行されたのは18例で、術後に汚染がなく、失禁がなく、便意を有するものはそれぞれ7名、7名、9名でした。膀胱機能障害は139例(60.7%)に認められ、間欠的導尿は65例(28.4%)に施行されていました。透析や腎移植も3例に施行されていました。月経が出現した45例のうち、月経異常を有するものは27例(60%)で、月経流出路障害は22例(48.9%)で、19例(42.2%)が外科治療を受けていました。月経痛を有するものは19例(42.2%)でした。精神的な問題点を検討した報告では、健全で良好な精神的発達を遂げているとの報告があります11)

9. この病気は日常生活でどのような注意が必要ですか

原疾患が重症複雑奇形で合併症が多いため、新生児期から成人期にかけての多段階的外科治療が必要なことを理解する必要があります。外科治療の領域も消化器、泌尿生殖器、脳脊髄神経、心大血管と多岐にわたり、患児それぞれの病態に応じた個別的治療がQOLの改善に重要です。そのためには、医療サイドがチーム医療を構築し、生涯にわたるスムーズな医療連携を心がけなければなりません。治療担当者との細やかな連携とどの治療段階にあるかを理解して、家庭でのケアを行う必要があります。
新生児期の注意点として、人工肛門管理、膀胱形成後の排尿管理が重要です。人工肛門は大腸が短く発達が悪いため回腸に設置されることも多く、水分や栄養の吸収障害に注意し、栄養効率を高めるためには消化態や半消化態栄養素を用いることも有効です。膀胱尿管逆流症は、尿路感染による腎機能低下をもたらすため、発熱や膿尿などの感染徴候に気をつける必要があります。性の決定は染色体に則って決定します。
就学時には、人工肛門や排尿障害にたいする学校の支援が必要です。
思春期に入り乳房がふくらみ始めると、2年以内に生理が初来するとされています。内性器の異常が思春期に生理痛や月経流出路障害となって出現するため、思春期には生理の状態や月経困難症に注意する必要があります。将来の結婚や家庭を構築するにあたり、カウンセリングを含めて精神的支援も重要で、これら成長段階に応じた支援体制を主治医とともに築いてゆくことが重要です。


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情報提供者
研究班名 性分化・性成熟疾患群における診療ガイドラインの作成と普及研究班  
新規掲載日平成27年8月31日