環状20番染色体症候群(指定難病150)

かんじょう20ばんせんしょくたいしょうこうぐん
 

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

1. 「環状20 番染色体症候群」とはどのような病気ですか

てんかんを主症状とする病気のうち、染色体に特定の異常を認める病気です。てんかんの発病は0~24歳で平均6歳です。非けいれん性てんかん重積状態という発作が代表的な発作型です。年少の小児では、はじめの頃は種々の動きを伴う発作型が主のこともありますが、数年遅れて非けいれん性てんかん重積状態が主になってきます。てんかん発病後から精神面や行動面の問題がみられることがあります。てんかん発作は薬が効きにくく、完全な発作消失は難しいことも多いですが、改善させられる可能性はあります。診断には血液などを用いた染色体検査が必要です。

2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか

正確な患者数や発症率、罹患率は不明です。これまでに散発的に症例報告がなされていますが、その総数は世界で約200人です。この病気を含む環状染色体の発生率は3-6万出生に1人との推計があります。症例報告されていない患者さんや診断のついていない患者さんも多いと推定されます。

3. この病気はどのような人に多いのですか

症例報告は世界各地からなされており、女性にやや多いです。

4. この病気の原因はわかっているのですか

細胞に存在する1対の20番染色体の1本が環状(リング)になっていることが関連しています。多くの場合、環状でない正常染色体を1対もつ細胞と、リング状の染色体を持つ細胞とが、0.5〜100%程度の比率で混在しています(モザイクと呼びます)。なぜこの環状染色体が出現するのか、環状染色体になることでなぜてんかんやその他の症状がみられるかはわかっていません。モザイク率が高いほど、てんかん発病年齢が早く、重症である傾向が示唆されています。

5. この病気は遺伝するのですか

これまで世界で4家系の親子例が報告されていますが、遺伝することはまれといわれています。環状20番染色体症候群が見つかった人の母親の染色体を調べたら環状20番染色体がみられたという報告が主で、父親から子どもへの遺伝は報告がありません。母親は子どもよりも環状20番染色体のモザイク率が低く、軽症で、そもそもてんかんがない、あるいは子どもよりも軽症のてんかんを有していることもありました。20番染色体に限らず、環状染色体は、一般的に遺伝することはまれといわれています。1991年の文献レビュー(多くの症例報告を調べてまとめた研究)では、環状染色体が遺伝する可能性は最大5.6%であり、珍しい現象のほうが論文で報告されやすい(出版バイアス)ので、報告されない症例も考慮すると、実際に環状染色体が遺伝するのは1%未満だろうと考察されています。このように遺伝よりも突然変異で生じることが多いと考えられています。

6. この病気ではどのような症状がおきますか

小児期には怖がっているような、あるいは驚いたような表情や奇妙な言動・行動を示す発作や、手足をこわばらせてつっぱる、ぴくつく、ばたばたするなどの動きを伴う発作、全身けいれんする発作(強直間代発作)などがみられることがあります。また、意識がくもり、適切な行動ができない非けいれん性てんかん重積状態という発作が数分間から数十分間みられます。多いと毎日何回もおこります。動作緩慢、発語減少、同じことを繰り返す、注意散漫、反応の遅延などを示し、不機嫌に見えることや、不適切な応答や行動をすることも少なくありません。発作と認識されないと単なる非社会的なふるまいとみなされることもあります。
発作以外の症状として、程度はさまざまですが知的障害や行動障害を伴うことがあります。染色体異常に関連する疾病では特徴的な顔貌や身体的特徴を伴うことがしばしばありますが、この病気では外表的な特徴はありません。またてんかんの中では、レノックス・ガストー症候群や前頭葉てんかん、睡眠時棘徐波活性化を示す発達性てんかん性脳症およびてんかん性脳症に間違われることがあるで、注意が必要です。

7. この病気にはどのような治療法がありますか

抗てんかん発作薬をはじめ種々の薬物が用いられますが、きわめて薬が効きにくく、完全な発作消失は難しいことが多いです。一方で、ラモトリギンやバルプロ酸が、ほかの薬剤よりも有効なことがあり、軽い発作はあっても日常生活への支障が少ない状態になる人も一定数いることも報告されています。脳の一部を切除する、あるいは離断する外科治療は無効です。ケトン食や修正アトキンス食などの食事療法の効果は明らかではありません。迷走神経刺激療法の有効性の評価も定まっていません。いずれも限られた報告をもとにすると、発作への有効率は50%未満(治療を受けた人のうち、有効といえる人の割合)のようです。

8. この病気はどういう経過をたどるのですか

小児の発作では短い意識減損や運動性の症状が目立つ傾向がありますが、次第に非けいれん性てんかん重積状態が主発作型になってきます。最初から非けいれん性てんかん重積状態のみが発作ということもあります。多くの場合、10〜15歳頃には発作症状や脳波所見はほぼ固定し、その後大きく変化することはありません。しかし、薬剤調整により、非けいれん性てんかん重積状態の回数の減少、持続時間の短縮、症状の軽減が期待できる場合があります。ある報告では、患者さんの3割が、発作が日常生活に支障の少ない状態まで改善したとされています。発作はよくなっても、併存する知的障害や行動障害などで、日常生活や社会参加に制約がみられる場合も少なくないため、薬の治療だけではなく、多職種による包括的な支援も必要です。

9. この病気は日常生活でどのような注意が必要ですか

発作は小児期や学童期に出現することが多く、知的面・行動面の問題を伴うことがあります。発作症状がてんかんと認識されずに行動面の問題と解釈されることもあります。心的な負荷がきっかけで発作が出現する場合にはますます精神的な問題と間違われます。したがって、正しい診断のもと、これらが病気に関連する症状であることを家族や周囲の人達が正しく理解することが大切です。また、発作をできるだけ抑制するための薬物治療は不可欠ですが、薬の種類が多くなりすぎると知的・行動面に影響することもあります。午前中は発作が少ないといった一定した傾向があることも珍しくなく、大事な用件は調子のいい時間帯に済ませるような工夫もよいでしょう。

10. 次の病名はこの病気の別名又はこの病気に含まれる、あるいは深く関連する病名です。 ただし、これらの病気(病名)であっても医療費助成の対象とならないこともありますので、主治医に相談してください。

該当する病名はありません。

11. この病気に関する資料・関連リンク

日本てんかん学会編。てんかん症候群 診断と治療の手引き、pp256-260、メディカルレビュー社、東京、2023。

日本てんかん学会編。稀少てんかんの診療指標、pp111-112、診断と治療社、東京、2017。

ring 20 research & support UK(英語)
https://ring20researchsupport.co.uk
 
Ring 20 Japan
https://www.facebook.com/groups/2962554697388973

てんかん専門医施設
http://square.umin.ac.jp/jes/senmon/senmon-list.html

(一社)日本てんかん学会
てんかん専門医施設
https://jes-jp.org/jes/index.html
トップページの「てんかん専門医、技術資格認定医、専門医療施設」から「てんかん専門医>専門医名簿」をご覧ください。

 

情報提供者
研究班名 稀少てんかんの診療指針と包括医療の研究班
研究班名簿 研究班ホームページ
情報更新日 令和7年11月(名簿更新:令和7年6月)