禿頭と変形性脊椎症を伴う常染色体劣性白質脳症(指定難病123)

とくとうとへんけいせいせきついしょうをともなうじょうせんしょくたいれっせいはくしつのうしょう
 

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

1. 「禿頭と変形性脊椎症を伴う常染色体劣性白質脳症(CARASIL)」とはどのような病気ですか

歩行のふらつき、無気力やいらいら感、注意力や記憶力の低下などの神経障害による症状と、頭髪の薄さ、腰痛といった神経以外の障害による症状がおこる病気です。神経障害による症状は、主に前頭葉という、大脳の前方に位置する場所の働きが悪くなったときに現れます。この病気では遺伝子の変異によって非常に細い脳の血管(脳小血管といいます)が衰え、そのために脳に十分な血流を送れなくなって神経障害がおこると考えられています。

2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか

遺伝子検査によって、日本国内で21名、国外で53名の患者さんが確認されています。しかし、調査がまだ不十分なため、もっと多くの患者さんがいる可能性があります。

3. この病気はどのような人に多いのですか

この病気は遺伝子の変異によっておこる病気です。患者さんのご両親がいとこ同士の場合が多いのですが、そうでなくてもこの病気になることがあります。接触などで他人にうつる病気ではありません。

4. この病気の原因はわかっているのですか

HTRA1High Temperature Requirement Serine Peptidase A1)という遺伝子の変異によっておこることがわかっています。この遺伝子変異によって、脳小血管が衰え、背骨の形成や頭髪の発育にも異常が出ると考えられています。

5. この病気は遺伝するのですか

これまでは、両親ともに遺伝子の変異を持っている場合にのみ、25%の確率で子供に遺伝すると考えられてきました。つまり、通常はお子様に伝わることはないと考えられてきました。しかし、最近、遺伝子変異のタイプによっては、両親のうち、片親だけが遺伝子変異を持っている場合でも、お子様に遺伝する可能性があることがわかりました。患者さんが遺伝子検査を受けることによって、お子様に遺伝するリスクをある程度予測することができます。

6. この病気ではどのような症状がおきますか

主な症状は、歩行のふらつき、無気力やいらいら感、注意力や記憶力の低下、脳卒中(突然の片麻痺など)です。腰痛以外の症状は、ゆっくりと進みます。病気が進行すると車椅子を使用しなければならなくなります。また、およそ半数の方が40歳までの間に脳卒中、歩行のふらつきや注意力・記憶力の低下のいずれかを経験します。

7. この病気にはどのような治療法がありますか

この病気では、脳梗塞に対して使用されている薬の有効性は証明されていません。高血圧の治療によって、進行をある程度遅くすることができる可能性があります。

8. この病気はどういう経過をたどるのですか

症状はとてもゆっくりと進みます。進み方は、同じ病気でも、お一人お一人で差があります。脳梗塞を起こした場合などは、急に症状が進むことがあります。

9. この病気は日常生活でどのような注意が必要ですか

症状が急激に悪化した場合は、速やかにかかりつけ医に連絡してください。禁煙、飲酒量を減らすといった生活習慣の改善によって、進行をある程度遅くすることができる可能性があります。

10. 次の病名はこの病気の別名又はこの病気に含まれる、あるいは深く関連する病名です。 ただし、これらの病気(病名)であっても医療費助成の対象とならないこともありますので、主治医に相談してください。

該当する病名はありません。

11. この病気に関する資料・関連リンク

GeneReviews[Internet]
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK32533/

用語解説

白質脳症(はくしつのうしょう):大脳のうち、白質とよばれる部分の病変によって、症状をおこす病態の総称。
 
大脳(だいのう):脳のなかで最も大きい部分。
 
遺伝子(いでんし):子孫に伝達するための遺伝情報の単位。
 
脳梗塞(のうこうそく):脳が血流供給されなくなった際におこる組織の障害。

 

情報提供者
研究班名 治験を目的とした、成人発症白質脳症のレジストリーと評価方法に関する研究班
研究班名簿 
情報更新日 令和4年12月(名簿更新:令和5年6月)