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遺伝性周期性四肢麻痺(指定難病115)

いでんせいしゅうきせいししまひ

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

1. 「遺伝性周期性四肢麻痺」とはどのような病気ですか

我々が自分の体を動かそうとするとき、我々の意思は電気信号として、脳から脊髄、末梢神経、筋肉(骨格筋)へと伝わって、自分の思い通りの動きを実現します。この際、筋肉は、電気信号に適切に反応し収縮することで「力」を出さなければなりません。しかし、筋肉に存在する「あるタンパク質」の異常により、筋肉が「力」を出せなくなり、いわゆる「麻痺」の症状が出る病気があります。これを総称して、「周期性四肢麻痺」と呼びます。「周期性四肢麻痺」には、「あるタンパク質」の遺伝子に異常があって起こる「遺伝性(一次性)周期性四肢麻痺」と、他のホルモン異常などが原因となって筋肉の「あるタンパク質」に二次的に影響を及ぼして起こる「二次性周期性四肢麻痺」とがあります。ここで紹介しているのは、前者の「遺伝性周期性四肢麻痺」についてです。麻痺発作の時に血液中カリウム濃度が変化することが知られており、その濃度によって、更に「高カリウム性周期性四肢麻痺」と「低カリウム性周期性四肢麻痺」との2つの病気に大別されます。

2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか

我が国で確認されている患者さんの数はまだまだ少なく、正確な数はわかっていません。患者さんごとに症状の強さが違い、特に軽症の患者さんの場合には、「すこし力が入りにくかったが、一日寝たら治ったし気のせいだろう」と、病気だと思われずに過ごしている方が多くいることが予想されます。ですので、実際の患者さんの数は、現在わかっている数よりも多い可能性があります。参考までに欧米では、1.5人/10万人以下という報告があります。

3. この病気はどのような人に多いのですか

現在のところ、特定の生活習慣や住んでいる地域などによる傾向などは知られていません。

4. この病気の原因はわかっているのですか

「遺伝性周期性四肢麻痺」に関連の深い遺伝子は主に2つわかっています。どちらも筋肉の膜の上にありイオン(電解質)の出入りを制御しているタンパク質(イオンチャネル)を作る遺伝子です。一つは、骨格筋型電位依存性カルシウムチャネルを作るCACNA1S遺伝子、もう一つは骨格筋型電位依存性ナトリウムチャネルを作るSCN4A遺伝子です。患者さんはこれらの遺伝子に変異をもっていて、タンパク質の機能が通常とは変わってしまっていることが、病気の原因になると考えられています。「遺伝性周期性四肢麻痺」は、麻痺中の血液中カリウム濃度によって、「低カリウム性周期性四肢麻痺」と「高カリウム性周期性四肢麻痺」とに分類されると述べましたが、「低カリウム性周期性四肢麻痺」はCACNA1S遺伝子とSCN4A遺伝子のいずれかの遺伝子異常で起こることが知られています。一方、「高カリウム性周期性四肢麻痺」はSCN4A遺伝子の異常で起こり、時に先天性パラミオトニー(別項「非ジストロフィー性ミオトニー症候群)を参照)とよく似て、麻痺だけでなく「筋肉のこわばり」も感じることがあるのが特徴です。
「低カリウム性周期性四肢麻痺」に、心臓の不整脈や身体の小奇形を伴う「Andersen(-Tawil)症候群」では、カリウムチャネル(KCNJ2, KCNJ5)の遺伝子異常が原因となることが知られています。
この他、遺伝子変異が同定できない原因不明例があり、上記以外にも原因遺伝子があると考えられています。

5. この病気は遺伝するのですか

はい、遺伝性の病気と考えられています。上記4.で述べた患者さんで見つかるCACNA1S遺伝子やSCN4A遺伝子の変異は、ご両親の少なくともどちらかから受け継いでいることが多いです。しかし、まれにご両親は変異を持っていないのに、突然変異として遺伝子変異をもつ患者さんもいます。また、患者さんの子供さんが遺伝子の変異を受け継ぐ確率は、ほとんどのタイプは優性遺伝性ですので50パーセントです。

6. この病気ではどのような症状がおきますか

一般には、「麻痺発作」が一番多い症状です。その程度は「動けるが、はっきりと実感できる一時的な筋力低下」から「完全麻痺」まで様々です。症状は下肢に多い傾向がありますが、身体全体のどこの筋肉にも生じる可能性があります。ただし、呼吸や飲み込みは「麻痺発作中」も一般に問題ありません。
「麻痺発作」の時間は、患者さんや病型によって異なります。一般に「高カリウム性周期性四肢麻痺」の患者さんの麻痺は、数十分から数時間程度のことが多いです。一方、「低カリウム性周期性四肢麻痺」の患者さんの場合には、数時間から数日間にまで続くことがあります。また、「麻痺発作」の出やすい「条件」や「状況」に特徴があります。
「高カリウム性周期性四肢麻痺」の場合には、「カリウムを多く含む食物の摂取」、「運動後の安静」、「寒冷」や「妊娠」が、発作の誘因・増悪因子と言われています。典型的な発作は、「朝食前に生じ15分から1時間ほど持続した後消失する」というものです。発作のないときには「筋肉のこわばり」を感じる患者さんもいます。
「低カリウム性周期性四肢麻痺」の場合には、早朝・夜間に起こりやすく、「前日の激しい運動」、「高炭水化物食・アルコールの大量摂取」に加え、「精神的ストレス」なども誘引となるとされています。典型的な発作は「前日の晩にお酒や御馳走をたくさん飲んだり食べたりして寝たら、朝目覚めた時からからだが動かない」というものです。ほとんどの患者さんでは麻痺発作のみが症状で、発作のないときは全く普通ですが、約25%の患者さんで、筋力低下が持続し進行する病型の方がいます。
症状は個人差も大きく、特に幼少期や学童期の患者さんでは、自分では症状を的確に訴えられずに、「朝だるくて学校にいけない」とか「運動のあとは体調が悪くなるから体育の授業が嫌い」などと感じている場合もあり、まわりに誤解されたりしかねません。このようなことを避けるためにも、きちんと診断を受け、下記9.のように、日常生活上の対応を行うことは重要であると考えられます。

7. この病気にはどのような治療法がありますか

残念ながら、根治的療法は現在のところなく、生涯を通して、ある程度「症状とうまくつきあっていく」ことが必要な病気です。「麻痺発作」の予防には、食べ物や生活習慣に注意することが中心になります。保険適応ではないですが、いくつかの薬は発作予防に有効であることが知られていますが、これも患者さんによっては身体に合わず悪化するケースもあるので、注意が必要です。いずれにしても、完全に「麻痺発作」をなくすことは難しいとされています。

8. この病気はどういう経過をたどるのですか

上記5.でも触れましたが、遺伝性の病気であることから、多くの方は幼少期や若いころに既に何らかの症状を感じている場合が多いです。ただし、程度には個人差があります。また、中年以降症状の程度が軽くなることが多いです。
一般には、生命の危険が及ぶような病気ではありません。ただし、生活面や社会面などの「体の機能」としては医学的にサポートを必要とする状況が考えられます。特に「低カリウム性周期性四肢麻痺」の一部の患者さんでは、長い経過の中で徐々に筋肉が痩せていく(ミオパチー型)方がいることが知られています。高齢になると「力が弱る」「転倒しやすくなる」など、生活面で支障がでてくることが知られています。このような長期的な観点から、早期から治療にあたることで少しでも生活面の支障がでてくることを減らせるかどうか、今後も研究が必要だと考えられています。

9. この病気は日常生活でどのような注意が必要ですか

上記6.でも触れましたが、症状の出現や悪化にはある一定の「条件」や「状況」が関わっていると考えられています。症状の悪化する可能性のある食べ物を避ける、長時間の運動は避けるように気をつける、など工夫することで症状を悪化させないようにすることは重要です。また、手術を受ける際には注意が必要です。術後に「麻痺」が遷延したり、場合によっては筋肉が壊れて高熱が出る悪性高熱という病気を併発することが稀ではありますが、知られています。そのような危険性を回避する意味でも、予め診断を受け、手術を受けられるときに万全な対策を麻酔科と連携して講じてもらうことが重要です。

10.  この病気に関する資料・関連リンク

1.筋チャネル病および関連疾患の診断・治療指針作成および新規治療法開発に向けた基盤整備のための研究班
http://square.umin.ac.jp/channel/index.html
 
2.久保田 智哉、古田 充、高橋 正紀、家族性高カリウム性周期性四肢麻痺;新領域別症候群シリーズ;32、別冊 日本臨床 「骨格筋症候群(第二版)上」;217-221.
 
3.久保田 智哉、古田 充、高橋 正紀、家族性低カリウム性周期性四肢麻痺;新領域別症候群シリーズ;32、別冊 日本臨床 「骨格筋症候群(第二版)上」;222-228.
 
4.穀内 洋介、高橋 正紀、不整脈を伴う周期性四肢麻痺(Andersen症候群);新領域別症候群シリーズ;32、別冊 日本臨床 「骨格筋症候群(第二版)上」;229-232.
 
5.Gene Review Japan 低カリウム性周期性四肢麻痺(Hypokalemic Periodic Paralysis)
http://grj.umin.jp/grj/hokpp.htm
 
6.Gene Review Japan 高カリウム性周期性四肢麻痺1型(Hyper kalemic Periodic Paralysis Type 1)
http://grj.umin.jp/grj/hyperpp1.htm


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情報提供者
研究班名 希少難治性筋疾患に関する調査研究班
研究班名簿   
新規掲載日平成27年8月17日