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グルコーストランスポーター1欠損症(指定難病248)

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(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

1. 「グルコーストランスポーター1欠損症」とはどのような病気ですか

グルコーストランスポーター1(GLUT-1)欠損症は、脳のエネルギー源であるグルコースが脳内に取り込まれないことにより生じる病気です。乳児期早期に、眼球の異常な動き、けいれん発作で発症し、経過とともに発達の遅れ、ふにゃふにゃ・だらりとした体(筋緊張低下)、歩行時の足のつっぱり(痙性麻痺)、ふらつき・ことばのもつれ・不器用(運動失調)、運動時に勝手に体に力が入ってしまう様子(ジストニア)などのいろんな症状を認めます。髄液検査での糖の値の低さがGLUT-1欠損症の診断の手がかりとなります。GLUT-1欠損症はケトン食による食事治療が有効な疾患で、患者さんの生活の質を著しく改善させます。

2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか

欧米を中心に約200人が診断されています。2011年度に実施されたわが国における全国実態調査では50人以上が確認されていますが、まだ全国に未診断の小児、成人例が多く存在すると考えられています。

3. この病気はどのような人に多いのですか

人種差や性別に差はないようです。空腹(特に早朝)、運動、体温上昇、疲労時に悪化し、食事、睡眠、安静によって改善する神経症状をもつ患者さんがこの病気である可能性があります。

4. この病気の原因はわかっているのですか

患者さんの多くで、片親由来のSLC2A1 遺伝子において新規の遺伝子変異を認めます。脳が生理学的条件下でエネルギー源として使用できるのはグルコースのみです。SLC2A1 遺伝子の異常によって、血中から脳内にグルコースを運ぶ働きをするグルコーストランスポーター1が欠損します。小児における脳のグルコース需要は成人の3〜4倍とされており、発達期の脳へのグルコースの供給不全は脳の機能や発達に大きな影響を及ぼすことになるのです。グルコーストランスポーター1蛋白の残存機能が75-100%となる遺伝子変異では軽微な症状のみを示し、50-75%では軽症型となります。残存機能が50%となる変異をもつ患者さんがグルコーストランスポーター1欠損症の典型例となります。

5. この病気は遺伝するのですか

大規模な調査では孤発例が多いとされていますが、家族例の報告も少なからず認められます。常染色体優性遺伝形式が多数ですが、常染色体劣性遺伝形式も報告されています。同一の遺伝子変異を持つ患者間、さらに当然同一変異を持っている常染色体優性遺伝の家族内でさえ病気の重さや表現型に差があります。

6. この病気ではどのような症状がおきますか

初発症状として、乳児期に異常眼球運動、けいれん、無呼吸などの症状が現れたり、消えたりします。経過とともに、発達遅滞、筋緊張低下、痙性麻痺、運動失調、ジストニアなどのさまざまな症状が出現します。運動失調、眠気、運動麻痺ジスキネジア、頭痛、嘔吐などの症状が突然現れることもあります。こうした症状が、空腹(特に早朝空腹時)、運動、体温上昇、疲労などで引き起こされ、食事、睡眠、安静によって改善することが特徴です。

7. この病気にはどのような治療法がありますか

てんかん発作に対しては、発作型を考慮した抗てんかん薬による内服治療が行われます。障がいされた知的能力、身体能力を向上させ、基本的、社会適応的能力を得るために、リハビリ、教育が行われます。表面的な症状の緩和を主目的とする対症療法だけでなく、この病気の原因治療に近い食事療法があります。グルコースに代わりケトン体をエネルギー源として供給するケトン食療法は、てんかん発作やその他の発作症状を抑えることにはっきりと効果があり、知的能力、運動能力、覚醒度、意欲も向上させるので、早期診断のもとに開始されるべき治療です。平成24年度より、グルコーストランスポーター1欠損症がケトンフォーミュラ(明治817-B)の適応疾患(先天性代謝異常症治療用ミルク関係事業)となりました。調製粉乳なので、乳児早期からの治療も可能です。難治てんかんに対して行われるケトン食療法よりも、患者さんご本人、ご家族の負担が少ない修正アトキンス食を用いてのケトン食療法でも効果が得られます。

8. この病気はどういう経過をたどるのですか

てんかんは、思春期を経て軽減し、さらには消失することもあります。一方、発作性ジスキネジア、痙性麻痺や運動失調などの運動障害や他の発作性症状が、思春期以降に新たに出現したり、小児期から認めていれば悪化したりすることもあります。生命には別状はありませんが、早期にケトン食で治療が開始されることにより脳機能の改善や二次的脳障害の防止が期待されます。

9. この病気は日常生活でどのような注意が必要ですか

ケトン食療法前は、グルコーストランスポーター1の機能を抑制する飲食物(カフェイン、アルコール)や薬剤(フェノバルビタール、抱水クロラール、テオフィリン)を摂取しないように注意しなければなりません。糖分摂取はむしろ重要で、過剰摂取で太ってしまうこともあります。ケトン食療法後は、逆に糖質制限が必要となりますので、つまみ食いやもらい食いなどに気をつけなければなりません。

10. この病気に関する資料・関連リンク

1.伊藤康, 小国弘量:【神経症候群 III(第2版) -その他の神経疾患を含めて-】 先天代謝異常症 膜輸送系の異常 グルコーストランスポーター1欠損症症候群 別冊 日本臨牀 新領域別症候群シリーズ No.28 日本臨牀社,p823-826,2014

2.Ito Y, Takahashi S, Kagitani-Shimono K, Natsume J, Yanagihara K, Fujii T, Oguni H. Nationwide survey of glucose transporter-1 deficiency syndrome (GLUT-1DS) in Japan. Brain Dev. 2014 Dec 5.[Epub ahead of print]

3.小国弘量:グルコーストランスポーター1欠損症症候群の実態と診断治療指針に関する研究.厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患克服研究事業) グルコーストランスポーター1欠損症症候群の実態と診断治療指針に関する研究.平成23年度総括・分担研究報告書,p1-7, 2012.

用語解説

孤発例:家族の中にはまったく発病者がみられないのに、突然発病者があらわれる場合のことです。本人の遺伝子の異常が、両親のどちらかに由来するのではなく、本人で初めて発生したと考えられます。
 
表現型:個体がもつ形態や機能の特徴を形質と呼び、遺伝子によって定められて発現する個々の形質のことを言います。
 
運動麻痺:手足を動かそうとしても、力が入ってしまったり(痙性麻痺)、抜けてしまったりして(弛緩性麻痺)、十分に力が発揮できない状態です。
 
ジスキネジア:自分の意志に関係なく、からだが勝手に動いてしまう症状のことです。
 
ケトン食療法:厳格に設定された高脂肪、低炭水化物の組成の食事によって体内にケトン体を産生させ、てんかん発作を抑制する特殊な食事療法です。


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研究班名 先天代謝異常症の生涯にわたる診療支援を目指したガイドラインの作成・改訂および診療体制の整備に向けた調査研究班
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新規掲載日平成27年7月30日