病気が進行しないようにするにはどうすればいいでしょうか。
- 抗凝固薬投与にて肺動脈内の血栓形成を抑制して肺高血圧の悪化を防ぐ必要があります。また、プロスタグランジンI2(プロスタサイクリン)製剤、エンドセリン受容体拮抗薬、ホスホジエステラーゼ-5(PDE-5)阻害薬といった血管拡張薬には肺血管拡張作用以外にも、血小板凝集抑制作用、抗血栓作用、血管平滑筋細胞の増殖抑制作用があることが報告されており、肺高血圧症の進行を抑制することが期待されています。
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PGI2持続注入療法について教えてください。
- PGI2持続注入薬は、英国にて1983年にフローラン(Flolan)の名で発売開始されました。原発性肺高血圧症に対して、米国にて1995年9月にFDA(米国食品医薬品局)で承認されています。我が国での導入はかなり遅れており、1999年1月に輸入申請が許可され、同年4月に発売されました。また、2000年4月には待望の携帯用小型ポンプによるPGI2持続静脈内注入療法の在宅医療が保険適応になりました。ここ数年で様々な新規血管拡張薬が出現しましたが、現在でも重症例には重要で有効な治療薬です。24時間持続投与することが必要ですので、体内にカテーテルを埋め込み、携帯ポンプで持続して静脈内に投与し続けます。携帯型精密輸液ポンプは、ポンプの故障などの異常が生じた場合に備えて常にバックアップ用のポンプを1台以上用意しておく必要があります。感染、閉塞、血栓症等のトラブルが発生していない限りは、留置カテーテルの定期的な交換は必要ありません。平均して1年の留置というデータもありますが、これはトラブルのために抜去した場合の留置期間であり、トラブルが無く5年以上留置しているという報告もあります。PGI2による持続静脈内注入療法の在宅治療は、自己の責任で薬を正しく調合し、ポンプを正確に操作することが特に必要であり、患者さん本人はもとより、介助する家族の方々にも知っていただきたく必要があります。グラクソ・スミスクライン社の肺高血圧症情報サイトPAH.jp http://pah.jp/の「一般・患者のみなさま」に詳しく記載されていますので、是非ご参照ください。
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新規の治療法にはどのようなものがありますか。
- すでにご紹介した①プロスタグランジンI2(プロスタサイクリン)製剤、②エンドセリン受容体拮抗薬、③ホスホジエステラーゼ-5(PDE-5)阻害薬といった薬剤に加えて、現在も新たな作用機序の薬の開発が進んでいます。PDGF受容体チロシンキナーゼ阻害薬であるイマチニブは、慢性骨髄性白血病の治療薬としてすでに使用されている薬剤ですが、肺動脈平滑筋細胞の増殖を抑制する効果があり、本疾患への有効性も期待されています。他にも可溶性GC(sGC)刺激薬であるRiociguatやRhoキナーゼ阻害薬のFasudilといった薬剤も臨床試験が進んでおり、注目されています。
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移植医療の我が国の現状はどうでしょうか。
- 肺高血圧症に対する初めての肺移植は、1981年にスタンフォード大学にて45歳の特発性肺動脈性肺高血圧症の女性に対して行われました。日本では臓器移植制度は各国からかなり後れをとっており、1997年にようやく臓器移植法案が成立し、1998年に日本初の生体肺移植が実現しました。2000年には大阪大学と東北大学で日本初の脳死肺移植が施行されました。2010年7月までに日本全体で行われた肺移植は161例であり、そのうち生体肺移植は96例、脳死肺移植は65例でした。適応疾患として最も多かったのが特発性肺動脈性肺高血圧症で、37例でした。特発性肺動脈性肺高高血圧症における肺移植の適応は、可能な限りの内科的治療にも関わらず、症状が重篤な症例です。肺移植を希望する患者さんは、肺移植認定施設(東北大学、獨協医科大学、京都大学、大阪大学、岡山大学、福岡大学、長崎大学)のいずれかで精査を受け、肺移植の適応と認められる必要があります。脳死肺移植を希望する場合には、さらに中央肺移植検討委員会で適応が検討され、承認されれば日本臓器移植ネットワークに登録され、脳死ドナーの出現を待つことになります。生体肺移植に関しては、脳死肺移植の適応患者のうち、より重篤な患者さんが適応となります。その判断は書く肺移植認定施設の判断にゆだねられています。
日本で施行された37例の肺動脈性肺高血圧症患者さんにおける肺移植の5年生存率(5年後に生存している比率)は79.3%であり、そのうち生体肺移植25例の5年生存率は85.4%、脳死肺移植12例の5年生存率は66.7%でした。また、これまでのデータから片肺移植より両肺移植の方が予後がいいことが分かっています。
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