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肺動脈性肺高血圧症

はいどうみゃくせいはいこうけつあつしょう

(認定基準、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

1. 肺動脈性肺高血圧症とは?

ヒトが生きるためには、きちんと「呼吸」をして「大気中の酸素」を肺から体の中に取り込む必要があります。しかし、「呼吸」するだけでは体の中に酸素は取り込めません。「肺から取り込んだ酸素」を、心臓に一度戻して、さらに全身に送る必要があります。
心臓から肺に血液を送るための血管を「肺動脈」といいます。この肺動脈の圧力(血圧)が異常に上昇するのが「肺動脈性肺高血圧症(PAH)」です。肺動脈の圧力が上昇する理由は、肺の細い血管が異常に狭くなり、また硬くなるために、血液の流れが悪くなるからです。必要な酸素を体に送るためには、心臓から出る血液の量を一定以上に保つ必要があります。狭い細い血管を無理に血液を流すように心臓が努力するために、肺動脈の圧力(血圧)が上昇します。 しかし、何故このような病気が起こるのかは解明されていません。この病気の原因解明が必要であり、有効な治療法の研究開発のため、「肺動脈性肺高血圧症(PAH)」は「難治性呼吸器疾患(指定難病)」に認定されています。
この病気の最初の認定のためには、右心カテーテル検査を受ける必要があります。肺動脈平均圧が25 mmHg以上であり、さらに、肺血流シンチグラムという検査で、肺血栓塞栓症ではないことを確認する必要があります。この病気は難治性ですが、この病気であることの診断が付いた場合には、専門医により適切な治療(薬を服用)を受けることにより、体を動かす時の息苦しさが改善するなど、自覚症状の改善が得られる場合があります。

2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか

「呼吸不全に関する調査研究班」による調査では、肺動脈性肺高血圧症(PAH)の患者数は2,587名(2013年度)です。

3. この病気はどのような人に多いのですか

「呼吸不全に関する調査研究班」による調査では、女性患者さんが男性患者さんの2倍以上です。女性は、加齢と共に発症は増え、70歳代がピークになっています。一方、男性の発症年齢分布は、20歳代が多く、40歳代まで減り、その後70歳代まで増えるという二層性になっています。

4. この病気の原因はわかっているのですか

肺動脈性肺高血圧症(PAH)は、1) 特発性PAH(原因が全く不明)、2) 遺伝性PAH(BMPR2、ALK1、Endoglin、SMAD9、CAV1、KCNK3と呼ばれる遺伝子が病気の発症に関与していることまでは判明しているが、どのように関与しているのかは不明)、3) 薬物誘発性PAH(食欲抑制薬などの特殊な薬物の服用が発症に関与)、4) 膠原病に伴うPAH、5) HIV感染症に伴うPAH、6) 肝臓に関係する門脈圧の上昇に伴うPAH、7) 先天性心疾患に伴うPAH、8) 住血吸虫症に伴うPAHに分類されています。この分類で示したように、「肺動脈性肺高血圧症(PAH)」といっても、実際には種々の病気が同時に存在しており、PAHという病気の発症に関係している場合があります。「特発性肺動脈性肺高血圧症(IPAH)」は、原因に関係するような他の病気が認められない場合に診断されます。それ以外に、膠原病に伴い肺高血圧が発症する場合、先天性の心臓の病気に伴い肺高血圧が発症する場合など、いろいろな病気が同時にある場合もあります。 しかし、いずれの場合も発症原因は解明されておらず、「難病」に指定されています。

5. この病気は遺伝するのですか

遺伝性PAH(BMPR2、ALK1、Endoglin、SMAD9、CAV1、 KCNK3と呼ばれる遺伝子が病気の発症に関与していることまでは判明しているが、どのように関与しているのかは不明)の場合に、遺伝する可能性があります。

6. この病気ではどのような症状がおきますか

自覚症状として「肺動脈性肺高血圧症」だけに特別なものはありません。この病気は肺の血管に異常が生じるため、心臓に多大な負担がかかり、結果として「全身への酸素供給がうまくいかなくなる病気」です。初期は、安静時の自覚症状はありません。しかし、体を動かす時に、ヒトはより多くの酸素が必要になります。この酸素の供給が十分にできなくなるのが、「肺動脈性肺高血圧症」であり、病気がある程度進行すると、それによる症状が出現します。すなわち、体を動かす時に息苦しく感じる、すぐに疲れる、体がだるい、意識がなくなる(失神)などの症状が現れます。病気が進むと、「心臓の機能がより低下」するために、足がむくむ、少し体を動かしただけでも息苦しいなどの症状が出現します。

7. この病気にはどのような治療法がありますか

肺の血管を拡げて血液の流れを改善させる「肺血管拡張療法」により、病気が完全に治るわけではありませんが、ある程度効果がある場合が多いのが現状です。肺血管を拡げる「プロスタサイクリンおよびその誘導体」、肺血管を収縮させるエンドセリンが平滑筋に結合することを防ぐ「エンドセリン受容体拮抗薬」、血管平滑筋の収縮を緩めるサイクリックGMPという物質を増加させる「ホスホジエステラーゼ5(PDE5)の作用を阻害する薬」が用いられます。しかし、これらの薬をどのように服用すると最も効果があるのかは、まだ研究段階であり、専門医との相談が必要です。しかし、病気が進んでしまうと、薬の効果が乏しくなることがありますので、早めに専門医を受診することが必要です。
さらに補助的な治療法として、利尿薬(循環血漿量を減少させて、心臓の負担を減らす)、酸素療法(心臓の機能が低下して全身への酸素供給能力が低下しているので、吸入酸素濃度を上昇させてそれを補う)が、必要に応じて使用されています。内科治療に抵抗性の場合、肺移植も適応となります。

8. この病気はどういう経過をたどるのですか

病気が診断されず適切な治療が受けられなかった場合には、1) 肺の血圧が高い ⇒ 2) 心臓が頑張る ⇒ 3) 心臓が疲れて、血液を全身に送れなくなり、酸素が全身に廻らなくなる ⇒ 4) 少し動いても息苦しく感じる、となります。 しかしすべての肺高血圧症の患者さんが、このような経過をたどるわけではありません。進行が早い方と、進行がゆるやかな方がいます。どのような経過をたどるかの予測がつかないのが現状です。

9. この病気は日常生活でどのような注意が必要ですか

「この病気の原因はわかっているのですか」に記載したとおり、「肺動脈性肺高血圧症」は一つの病気ではなく、さまざまの病気の合併症としても起こります。共通点は、「肺動脈性肺高血圧症」は、肺動脈の血液の流れが障害される病気ですので、必ず心臓(右心室;肺へ向かう血液を送り出す心臓の部屋)に負担がかかります。右心室の壁が厚くなり、右心室の大きさが拡大し、右心室の機能が低下するため十分な血液が送り出せなくなります。さらに右心室が拡大するため、左心室の大きさが相対的に小さくなります。「肺動脈性肺高血圧症」に必ず伴う合併症は、心不全(右心不全)です。但し、潜在的な右心不全(症状がまだでない)という段階から、明らかに症状が出現する場合まで、程度は様々です。この心臓の機能低下を回復させる、ないしは進行を遅らせる治療法が「肺血管拡張療法」になります。日常生活では、専門医とよく相談をして、治療を継続する必要があります。
「肺動脈性肺高血圧症」に合併する病気としては、膠原病、先天性心疾患、肝臓疾患(門脈圧亢進症)などが挙げられます。また、「肺動脈性肺高血圧症」と同じような症状が出現する病気として、「呼吸器疾患に伴う肺高血圧症」があります。原因となる呼吸器疾患としては、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、間質性肺疾患、気腫合併肺線維症などです。例えば、慢性閉塞性肺疾患(COPD)は喫煙により呼吸器系の構造が壊れるため、動くと息が苦しくなる病気です。しかし、同時に肺の血管にも変化が出現し、肺の血液の流れが悪くなります。この状態が進行すると、「肺高血圧症」になることがあります。肺高血圧症そのものに対する治療と同時に、合併する病気の治療を日常的に継続する必要があります。

10. この病気に関する資料・関連リンク

呼吸不全に関する調査研究班HP  http://kokyufuzen.umin.jp/
千葉大学大学院医学研究院 呼吸器内科学HP 肺高血圧症センター
http://www.m.chiba-u.ac.jp/class/respir/index.html
呼吸不全に関する調査研究班(巽浩一郎、他). 肺動脈性肺高血圧症(PAH)および慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH). 日本呼吸器学会雑誌 48: 551-564, 2010.

情報提供者
呼吸器系疾患調査研究班(呼吸不全に関する調査研究)


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情報提供者
研究班名 呼吸不全に関する調査研究班
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情報更新日平成26年12月27日