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オスラー病(指定難病227)

おすらーびょう

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

○ 概要
 
1.概要
オスラー病(遺伝性出血性末梢血管拡張症)は、1.鼻出血、2.舌・口腔粘膜・指・鼻の末梢血管拡張、3.内臓病変(胃腸末梢血管拡張、肺、肝、脳、脊髄動静脈奇形)、 4.家族歴(遺伝性)を特徴とする疾患である。
 
2.原因
常染色体優性遺伝により発症する。現在まで、責任遺伝子としては、ENG(Endoglin)、ACVRL1(ALK1)、 SMAD4の3つが確認されている。最近、この3つ以外の責任遺伝子の存在がいくつか推定されているが、確定はされていない。臨床病型として、ENG異常によるものはHHT1、ACVRL1異常によるものはHHT2と分類され、HHT1では肺及び脳動静脈奇形が、HHT2では肝動静脈奇形が多く併発することが知られている。
 
3.症状
鼻出血、消化管出血、腹痛、口腔内出血、発熱、全身倦怠感、痙攣、頭痛など極めて多彩である。
 
4.治療法
肝臓以外の臓器に出現した血管奇形に対しては、カテーテルを用いた血管塞栓術が第一選択の治療法として行われる、その次に実施される治療法としては、脳血管奇形に対しては外科的摘出、定位放射線療法などがある。鼻出血に対しては、圧迫法、レーザー焼灼療法、鼻粘膜皮膚置換術などが行われる。消化管に生じた出血に対して内視鏡的治療が行われ、最近ではアルゴンプラズマ凝固が多く行われている。
 
5.予後
オスラー病による死亡率は2~4%と報告されている。本邦でも4例の死亡報告例があり、 死因はそれぞれ脳膿瘍2例、敗血症1例、門脈-肝動静脈吻合による肝性脳症1例である。近年、血管塞栓術、レーザー治療などによりその殆どの血管病変が治療可能になってきており、致死的な血管病変、重篤な脳膿瘍、敗血症などの合併症が併発しなければ、予後は比較的良好と考えられている。
 
 
 
○ 要件の判定に必要な事項
1.  患者数
約10,000人
2.  発病の機構
不明(責任遺伝子としてENGEndoglin)、ACVRL1ALK1)、SMAD4の関与が確認されている。)
3.  効果的な治療方法
未確立(対症療法のみである。)
4.  長期の療養
必要(病態を改善させる治療法なし、対症療法のみ。)
5.  診断基準
あり(研究班作成の診断基準あり。)
6.  重症度分類
自覚症状(mMRC分類)、動脈血酸素分圧(酸素飽和度)、肺内シャント率、脳脊髄動静脈奇形の程度、肝臓動静脈奇形の程度、消化管出血の程度、鼻出血の程度を用いて、重症度3以上を対象とする。
 
○ 情報提供元
「難治性呼吸器疾患・肺高血圧症に関する調査研究」
研究代表者 千葉大学大学院医学研究院 呼吸器内科学 教授 巽浩一郎
 
 
<診断基準>
Definiteのみを対象とする。Probable及びPossibleの場合は、さらにオスラー病か否かの診断を経過観察も含めて進める。
 
オスラー病(遺伝性出血性末梢血管拡張症)の診断基準
 
A.症状
1.  鼻出血:自然かつ反復性に出現。
2.  末梢血管拡張症:鼻腔、眼瞼、口唇、口腔、手指などに出現する拡張性小血管病変(圧迫により退色)。
 
B.検査所見
1.  内臓病変:胃腸末梢血管拡張、肺、脳、肝、脊髄の動静脈奇形
2.  家族歴(遺伝性):HHTと診断されている1親等の血縁者(兄弟、姉妹は1親等の血縁者に含まれる。)。
 
C.鑑別診断
以下の疾患を鑑別する。
単純性肺動静脈奇形など、遺伝性でない各臓器における単純性動静脈奇形
 
D.遺伝学的検査
ENGEndoglin)、ACVRL1ALK1)、SMAD4遺伝子の変異
 
<診断のカテゴリー>
Definite:A-1、2+B-1、2の中の3項目を満たし、Cの鑑別すべき疾患を除外したもの、あるいはDを満たすもの。
Probable:A-1、2+B-1、2の中の2項目を満たし、Cの鑑別すべき疾患を除外したもの。
 Possible:A-1、2+B-1、2の中の1項目を満たし、Cの鑑別すべき疾患を除外したもの。
 
 
 
 
 
<重症度分類>
自覚症状(mMRC分類)、動脈血酸素分圧(酸素飽和度)、肺内シャント率、脳脊髄動静脈奇形の程度、肝臓動静脈奇形の程度、消化管出血の程度、鼻出血の程度を用いて、重症度3以上を対象とする。
 
息切れを評価する修正MRC分類グレード
0:激しい運動をした時だけ息切れがある。
1:平坦な道を早足で歩く、あるいは緩やかな上り坂を歩く時に息切れがある。
2:息切れがあるので、同年代の人よりも平坦な道を歩くのが遅い、あるいは平坦な道を自分のペースで歩いている時、息切れのために立ち止まることがある。
3:平坦な道を約100m、あるいは数分歩くと息切れのために立ち止まる。
4:息切れがひどく家から出られない、あるいは衣服の着替えをする時にも息切れがある。

 

重症度

自覚症状

動脈血液ガス分析

肺内シャント率

肝動静脈奇形、消化管出血

脳・脊髄動静脈奇形に関する重症度

鼻出血(別に定める)

 

息切れの程度

PaO2

血流シンチ法/100%酸素吸入法による

 

 

 

mMRC ≥ 1

PaO2 ≥ 80 Torr (SpO2 ≥ 95%)

肺内シャント率 < 5%

血管病変を認めるものの治療を要しない

血管病変を認めるものの治療を要しない

なし

mMRC ≥ 2

PaO2 ≥ 70 Torr  (SpO2 ≥ 93%)

肺内シャント率 < 10%

血管病変を認め、治療を要するが、身体活動は制限されない

重症度3に至らない場合

軽度

mMRC ≥ 3

PaO2 > 60 Torr  (SpO2 >90%)

肺内シャント率 < 15%

血管病変を認め、治療を要し、身体活動が中等度に制限される

欄外(下記)に示す

中等度

mMRC ≥ 4

PaO2 ≤ 60 Torr  (SpO2 ≤ 90%)

肺内シャント率 ≥ 15%

肝動静脈奇形の場合は肝不全を認め、消化管出血の場合は、輸血、内視鏡治療などの治療を要し、身体活動が高度に制限される。

 

重度

鼻出血の重症度(申請前3か月間の平均)

 

頻度

持続時間

程度

軽症

週1回未満

< 5分

軽症(にじみ出る)

中等症

週1回以上

< 15分

中等症(あふれ出る)

重症

週2回以上

> 15分

重症(貧血あり、輸血歴あり)

頻度、持続時間、程度の中で、最も重い重症度基準を満たすグレードを選択して、鼻出血全体の重症度とする。

脳・脊髄動静脈奇形に関する重症度3

 

 

 

1)脳出血、脳梗塞、脳膿瘍などの器質的変化があり、それによる高次脳機能障害あり、
2)外科的治療・脳血管内治療・定位放射線治療の適応あり、これらの治術後5年以内、
3)再発例(新たな脳出血、脳梗塞、脳膿瘍、脊髄出血の出現)

自覚症状、動脈血液ガス分析、肺内シャント率、肝動静脈奇形、消化管出血、脳・脊髄動静脈奇形、鼻出血の項目の中で、最も重い重症度基準を満たすグレードを選択して、全体の重症度とする。
治療を必要とする肺動静脈奇形が存在する場合、奇異性塞栓症の既往がある場合には重症度3とする。
動脈血ガス分析ができない場合にはパルスオキシメータによる酸素飽和度で代用できる。

 
※診断基準及び重症度分類の適応における留意事項
1.病名診断に用いる臨床症状、検査所見等に関して、診断基準上に特段の規定がない場合には、いずれの時期のものを用いても差し支えない(ただし、当該疾病の経過を示す臨床症状等であって、確認可能なものに限る。)。
2.治療開始後における重症度分類については、適切な医学的管理の下で治療が行われている状態であって、直近6か月間で最も悪い状態を医師が判断することとする。
3.なお、症状の程度が上記の重症度分類等で一定以上に該当しない者であるが、高額な医療を継続することが必要なものについては、医療費助成の対象とする。

本疾患の関連資料・リンク

1.遺伝性出血性末梢血管拡張症・診療ガイドライン作成委員会.塩谷隆信編集、遺伝性出血性末梢血管拡張症(オスラー病; HHT)の診療マニュアル.増補版、中外医学社、東京,2015.
2.塩谷隆信.オスラー病(遺伝性出血性末梢血管拡張症).呼吸 33(9): 845-855, 2014.
3.HHTJAPAN. http://komiyama.me/HHT_JAPAN/


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情報提供者
研究班名 難治性呼吸器疾患・肺高血圧症に関する調査研究班
研究班名簿  研究班ホームページ 
情報更新日平成29年8月3日