オスラー病(指定難病227)

おすらーびょう
 

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

1. 「オスラー病(遺伝性出血性末梢血管拡張症)」とは?

オスラー病は、遺伝性出血性毛細血管拡張症あるいは遺伝性出血性末梢血管拡張症とも呼ばれる疾患で、全身の血管に異常(血管奇形)がおこり、その結果、出血症状があらわれる遺伝性の疾患です。症状はまちまちですが、この病気の遺伝子は、それを持つ親から子へと伝わります(遺伝します)。

2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか?

欧米では10,000人に1人、日本では5,000~8,000人に1人がこの病気の遺伝子をもっていると報告されています。しかし、病気の遺伝子をもっていても必ずしも発病するわけではありません。日本では、実際の患者さんの数は、10,000人くらいではないか、と推測されています。

3. この病気はどのような人に多いのですか?

オスラー病の原因になる遺伝子をもったひとがこの病気になります。ただし、遺伝子変異があるからといって必ず発病するわけではありません。

4. この病気の原因はわかっているのですか?

オスラー病の原因は遺伝子の変異です。オスラー病の原因遺伝子として、代表的な4つの遺伝子(ENG、ACVRL1、MADH4、GDF2)がわかっています。

5. この病気は遺伝するのですか?

常染色体顕性遺伝(優性遺伝) ですから、確率論的にはオスラー病の親からオスラー病のお子さんが生まれる確率は50%ということになります。

6. この病気ではどのような症状がおきますか?

いちばん多い症状は鼻出血で、80~90%の患者さんにみられます。鼻出血の程度によっては鉄欠乏性貧血を合併することがあります。
また、異常な血管(動静脈奇形)が肺、脳、消化管、肝臓などにできると、それぞれの臓器に応じた症状や合併症が現れます。
特に肺にできる動静脈奇形(肺動静脈瘻)は重要な病変です。静脈内でできた血栓や静脈内に入り込んだ細菌が肺の毛細血管で取り除かれずに肺動静脈瘻(奇形)を通過し、脳や心臓などへ流れることで「奇異性塞栓症」を起こすことがあります。その結果、脳梗塞、脳膿瘍、心筋梗塞などの重大な合併症を引き起こすことがあります。また、肺の毛細血管には血液に酸素を取り込ませるという重要な役割がありますが、肺動静脈瘻(奇形)があると、そこを流れる血液は肺の毛細血管を通過しないため、その血液は酸素を取り込めないためその分低酸素血症になります。その結果、息切れや疲れやすさ、チアノーゼなどの症状がみられることがあります。さらにまれではありますが、肺動静脈瘻(奇形)が破裂して血胸や喀血を生じることがあります。この症状は妊娠中に起きやすいことが知られています。
舌や口唇などの口の中の粘膜や、顔・手指をはじめとする全身の皮膚に、毛細血管拡張症による血管腫(小さな赤い血管の斑点)がみられることがあります。これらも破れて出血することがあります。動脈性の出血なので血圧が高く、そのため血が止まりにくいことがあります。
消化管にも毛細血管拡張症による血管腫ができることがあり、そこから出血することがあります。これが長期間続くことで鉄欠乏性貧血の原因となることがあります。
比較的まれですが、「肺高血圧症」を合併することがあります。肺高血圧症とは、肺動脈の血圧が異常に高くなり、心臓に負担がかかる病気です。主な症状として、労作時の息切れ、疲れやすさ、動悸、失神などがみられます。肺高血圧症の原因はいくつか知られています。肝臓など肺以外の臓器にある動静脈奇形や、高度の貧血によって心拍出量(心臓が送り出す血液の量)が増加し、高心拍出状態となることで肺高血圧症を生じることがあります。また、オスラー病の原因となる遺伝子の異常によって、肺の血管そのものが細くなるタイプの肺高血圧症(肺動脈性肺高血圧症)を発症することがあります。さらに、肝臓の動静脈奇形などにより門脈圧亢進症をきたした場合には、「門脈肺高血圧症」を合併することもあります。

7. この病気にはどのような治療法がありますか?

オスラー病患者の鼻粘膜は外的刺激に弱いため、出血の予防として鼻粘膜の加湿、保護が重要で、マスクの着用や、鼻の入り口へのワセリン塗布などによる乾燥防止が基本になります。電気凝固やレーザーによる処置は、非出血時または軽度の鼻出血には効果を示すことがありますが、過度の処置は鼻出血を悪化させたり、鼻中隔穿孔を起こしたりすることがあるので注意が必要です。
一方、鼻出血時の処置として、医療機関では軟膏をつけたガーゼや止血用の資材を挿入することがありますが、丁寧な挿入が望まれます。また、自宅での処置は軽度の圧迫が基本で、柔らかい止血用の資材を用いることも効果的です。過度の圧迫は出血の増悪を招きますので、軽く小鼻をつまむ程度の圧迫を行います。その際に、血液がのどや胃に落ちないように、座ったままうつむいた姿勢を取ります。これらの処置でも止血しない場合には、オスラー病に詳しい耳鼻咽喉科専門医の受診をおすすめします。
肺動静脈瘻(奇形)では、奇異性塞栓症(静脈内でできた血栓や静脈内に入り込んだ細菌が肺動静脈瘻(奇形)を通過して脳や心臓などの臓器で塞栓を起こす)、低酸素血症、破裂がおきる可能性があり、それらを予防するために、カテーテルによって肺動静脈瘻内に金属でできたコイルやプラグを留置する治療(経カテーテル的肺動静脈瘻塞栓術)が行われます。病変の形態によっては外科的切除や特にびまん性の場合は肺移植が検討されることもあります。画像的に肺動静脈瘻(奇形)を認めた場合は、大きさや形態に関係なく治療を検討しますので、オスラー病と肺動静脈瘻(奇形)に詳しい呼吸器内科もしくは放射線科専門医の受診をおすすめします。

8. この病気はどういう経過をたどるのですか?

肺動静脈奇形(瘻)による奇異性塞栓症、重篤な低酸素血症や破裂、その他の臓器の動静脈奇形による重篤な症状、慢性的な鉄欠乏性貧血による心不全、肺高血圧症などといった重篤な合併症を併発しなければ、予後は比較的良好であり、普通のひとと同じ生活が送ることができると考えられます。

9. この病気は日常生活でどのような注意が必要ですか?

未治療の肺動静脈奇形(瘻)がある人に関しては、スキューバダイビングは脳梗塞発症のリスクがあるため禁止です。また歯科治療などの際に、感染予防のための抗生物質の服用が推奨されています。

10. 次の病名はこの病気の別名又はこの病気に含まれる、あるいは深く関連する病名です。 ただし、これらの病気(病名)であっても医療費助成の対象とならないこともありますので、主治医に相談してください。

別名:遺伝性出血性末梢血管拡張症

11. この病気に関する資料・関連リンク

1.遺伝性出血性末梢血管拡張症・診療ガイドライン作成委員会.塩谷隆信:編集、遺伝性出血性末梢血管拡張症(オスラー病; HHT)の診療マニュアル増補版、中外医学社、東京、2015.
2.HHT JAPAN: 日本HHT研究会ホームページ.
https://www.hht.jpn.com/

 

情報提供者
研究班名 難治性呼吸器疾患・肺高血圧症に関する調査研究班
研究班名簿 研究班ホームページ
情報更新日 令和8年7月(名簿更新:令和8年7月)

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