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遠位型ミオパチー(指定難病30)

えんいがたみおぱちー

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

1. 「遠位型ミオパチー」とはどのような病気ですか

遺伝的な筋肉の病気(筋疾患)の一つです。理由は不明ですが、筋疾患の多くは、体幹に近い筋(近位筋)から障害されます。ところがこの遠位型ミオパチーでは、体幹から遠い筋(遠位筋)、例えば足首を動かすような筋肉や指先を動かすような筋肉から障害されます。そのような遺伝性筋疾患を総称して、遠位型ミオパチーと呼んでいます。

2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか

そもそも筋疾患は全て患者数の少ない病気(希少疾病)です。その希少疾病の中でも例外的に遠位筋が主に侵されるわけですから、極めて希な疾患です。遠位型ミオパチーには10以上の異なる疾患があることが知られていますが、日本では、「縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチー(またはGNEミオパチー)」と「三好型ミオパチー」の患者さんが比較的多いとされています。患者数は、それぞれ400人程度と推測されています。3番目に多いのは、「眼咽頭遠位型ミオパチー」という疾患で、50人前後の患者さんがいると推測されています。

3. この病気はどのような人に多いのですか

「縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチー(またはGNEミオパチー)」と「三好型ミオパチー」の患者さんの多くは20代~30代に掛けて発症します。「眼咽頭遠位型ミオパチー」は比較的高齢の患者さんが多いことが知られています。男女ともに侵されます。遺伝性疾患ですので、原因遺伝子に変異がある方が発症します。

4. この病気の原因はわかっているのですか

「縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチー(またはGNEミオパチー)」はGNE遺伝子の変異が原因です。誰でも父親由来のGNE遺伝子と母親由来のGNE遺伝子を持っていますが、両方に変異がある場合のみ発症します(このような疾患を常染色体劣性遺伝病と呼びます)。GNE遺伝子はシアル酸という糖の一種を身体の中で合成するのに必要な酵素をコードしています。患者さんではこの酵素の機能が低下していて、シアル酸が出来にくくなっています。患者さんの細胞やモデルマウスを用いた研究で、シアル酸を投与すると症状が軽減することが示されています。この成果に基づき、現在日本・米国・イスラエルで、シアル酸製剤による治療薬開発を目指した臨床試験が行われています。
「三好型ミオパチー」はジスフェルリン遺伝子の変異が原因です。この疾患も常染色体劣性遺伝病です。従って、2つあるジスフェルリン遺伝子の両方に変異がある場合にのみ発症します。ジスフェルリン遺伝子がコードするジスフェルリンは、筋線維の膜の修復に関わっています。筋肉はいつも伸びたり、縮んだりしていますので、筋線維の膜にかなりの負担が掛かっており、時々、筋線維膜に小さな裂け目ができると考えられています。このような裂け目ができても、すぐにそれを修復する仕組みが備わっています。その仕組みの一部を担っているのがジスフェルリンです。患者さんの筋線維からはジスフェルリンがなくなってしまっており、このような小さな裂け目ができた時にうまく修復ができず、筋線維が壊れてしまうのだと考えられています。
「眼咽頭遠位型ミオパチー」の原因はまだ分かっていません。

5. この病気は遺伝するのですか

遠位型ミオパチーは全て遺伝性疾患です。日本に多く、原因も分かっている「縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチー(またはGNEミオパチー)」と「三好型ミオパチー」はともに常染色体劣性遺伝病です。すなわち父親由来の遺伝子と母親由来の遺伝子の両方に変異がある場合にしか発症しない疾患です。常染色体劣性遺伝病では、片一方の遺伝子にしか変異がない人(保因者またはキャリアーと呼びます)は、全く正常です。例えば、患者さんのご両親は通常、保因者ですが、全く健常です。患者さんが結婚されて子供ができた場合はどうでしょうか。相手の方が血縁関係にない場合は、相手の方がたまたま保因者である可能性は極めて低いので、お子さんは全員保因者になります。保因者は全く発症しませんので、完全な健常者です。現在、いわゆる健常者は、誰でも平均で7個程度の遺伝性疾患の保因者であることが明らかになっています。そうすると、例えばGNE遺伝子変異の保因者は、7個の遺伝子の内の一つがたまたまGNE遺伝子であるというだけであって、医学的には一般の健常者と全く同等です。「眼咽頭遠位型ミオパチー」も遺伝性疾患と考えられますが、その遺伝の仕方などについてはまだ結論が出ていません。

6. この病気ではどのような症状がおきますか

「縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチー(またはGNEミオパチー)」では、前頸骨筋という足首を上に持ち上げる筋肉が特によく障害されます。従って、気づかないうちに足首が十分に上に持ち上がっておらず、小さな段差などで躓くことがよくあります。他にも走りにくいとか歩きにくいといった症状で気づかれることがしばしばあります。また筋肉が徐々に痩せてきます。発症すると10数年で車椅子を常時必要とするような状態になります。
「三好型ミオパチー」はふくらはぎの筋肉が障害されやすく、ふくらはぎが痩せてきます。この筋肉は足首を下に曲げる筋肉ですので、つま先立ちができなくなります。また徐々に走りにくくなったり、歩き方に変化が見られたりします。進行すると近位筋も侵され、階段が上りにくいとか、椅子からの立ち上がりが難しくなるといった症状が出るようになります。発症10数年で歩行ができなくなると考えられています。
「眼咽頭遠位型ミオパチー」は、「縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチー(またはGNEミオパチー)」と同様に前頸骨筋という足首を上に持ち上げる筋肉が特によく障害され、小さな段差などで躓くなどの症状が出ます。これに加えて、瞼が下がる、ものが飲み込みにくいなどの症状が出てくることが特徴です。

7. この病気にはどのような治療法がありますか

何れの疾患も現時点では根本的治療法はありません。ただし、「縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチー(またはGNEミオパチー)」については、シアル酸補充療法の臨床試験が行われており、数年の内に薬が手に入るようになる可能性があります。これに向けて、患者さん達自らが立ち上がり、患者会活動を精力的に繰り広げています。「三好型ミオパチー」では、患者さん由来のiPS細胞を使って、有効な薬剤を探す研究が行われていますが、今のところ、臨床試験にすぐに繋がるような成果はまだ出てきていません。「眼咽頭遠位型ミオパチー」など原因不明の疾患については、残念ながら、治療法開発の糸口すら見つけられないのが現状です。
対症療法としては、主に拘縮を防ぐ目的でのリハビリが行われています。装具を用いることで歩行可能な期間をある程度延長できることが分かっています。最近では、ロボットスーツを用いる試みもなされています。

8. この病気はどういう経過をたどるのですか

「縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチー(またはGNEミオパチー)」と「三好型ミオパチー」では下肢遠位筋の症状で発症することが殆どですが、徐々に近位筋も障害されるようになります。その結果、座った状態からの立ち上がりや階段の昇り降りなどが難しくなり、10数年で全面的に車椅子を使用するようになると考えられています。長期に経過が観察された例は殆どないのですが、発症後40年以上経過してベッド上生活となっている例があることが知られています。「眼咽頭遠位型ミオパチー」は症例数も少なく、どのような経過になるのか、十分に分かっていません。

9. この病気は日常生活でどのような注意が必要ですか

転倒に注意することが必要です。運動の効果は賛否両論ありますが、少なくとも、筋トレのような激しい運動を行うことにメリットはないと考えられています。「縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチー(またはGNEミオパチー)」では、体内でシアル酸ができにくくなっています。牛乳のようなシアル酸の比較的豊富な食品を積極的に摂取することで病状が改善するという証拠はありませんが、少なくとも、このような食品を嫌って避けるようなことはしない方が良いと思われます。

10.この病気に関する資料・関連リンク

http://remudy.jp/dmrv/index.html
http://npopadm.com/
http://www.padj.jp/miyoshi/newpage2.html


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情報提供者
研究班名 希少難治性筋疾患に関する調査研究班
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情報更新日新規掲載日:平成27年2月20日