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原発性硬化性胆管炎(指定難病94)

げんぱつせいこうかせいたんかんえん

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

○ 概要
 
1.概要
原発性硬化性胆管炎(PSC)は、肝内外の胆管の線維性狭窄を生じる進行性の慢性炎症疾患である。胆管炎、AIDSの胆管障害、胆管悪性腫瘍(PSC診断後及び早期癌は例外)、胆道の手術や外傷、総胆管結石、先天性胆道異常、腐食性硬化性胆管炎、胆管の虚血性狭窄、floxuridine動注による胆管障害や狭窄に伴うものは、2次性硬化性胆管炎として除外される。また、自己免疫性膵炎に伴うものを含めて、IgG4関連硬化性胆管炎も除外される。2012年の全国アンケート調査によれば、頻度は男性にやや多く、発症年齢は20歳と60歳代の2峰性である。肝内肝外胆管両方の罹患例が多く、潰瘍性大腸炎の合併を34%に、胆管癌の合併を7.3%に認めた。
 
2.原因
自己免疫性肝炎や原発性胆汁性胆管炎と同様に免疫学的異常よると考えられているが、詳細は不明である。炎症性腸疾患の合併が多く、病因との関連が示唆されている。
 
3.症状
全国調査によれば、黄疸が28%に、掻痒感が16%に認められており、最終的に肝硬変へ至る。
4.治療法
ウルソデオキシコール酸やベザフィブラートはALPやγ-GTP値を低下させるが、予後を改善するかについては不明である。局所的狭窄に対するバルーン拡張や一時的なドレナージなどの内視鏡的治療が有用のこともある。進行例では、肝移植が唯一の救命法であり、脳死肝移植が少ない本邦では生体肝移植が主に行われているが、生体肝移植後PSCの再発率が高い可能性がわが国から報告されている。
5.予後
全国調査の結果からは、肝移植なしの5年生存率は75%であった。
○ 要件の判定に必要な事項
1.患者数(難治性の肝・胆道疾患に関する調査研究班の疫学調査2007年度)
約400人
2.発病の機構
不明(免疫学的異常が示唆されている。)
3.効果的な治療方法
未確立(根本的治療法なし、進行例では肝移植が唯一の救命法であるが再発も多い。)
4.長期の療養
必要(肝移植なしの5年生存率は75%)
5.診断基準
あり(研究班が作成した診断基準)
6.重症度分類
1)又は2)を対象とする。
1)有症状の患者(黄疸、皮膚掻痒、胆管炎、腹水、消化管出血、肝性脳症、胆管癌など)
2)ALPが施設基準値上限の2倍以上の患者
 
○ 情報提供元
「難治性の肝・胆道疾患に関する調査研究班」
研究代表者 帝京大学医学部内科学講座 主任教授 滝川 一
 
 
 
<診断基準>
硬化性胆管炎(PSC)
肝内胆管障害を惹起する代表的な疾患として硬化性胆管炎(SC)がある。SCには、①原発性(PSC)、②IgG4関連(IgG4SC)、③続発性があり、臨床像においては胆汁うっ滞に伴う症状は共通であるが、臨床経過や選択されるべき治療方法が異なるため、精度の高い鑑別診断と的確な対処が必要である。以下に、原発性SC(PSC)臨床的特徴を示し、IgG4SC、続発性との鑑別点を挙げる。
 
1.臨床的特徴(症状、臨床経過)
(1)胆汁うっ滞による症状(腹痛、発熱、黄疸など)
(2)炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)の病歴
(3)血液検査値異常(6か月以上にわたるALP値上昇(正常上限の2~3倍))
(4)IgG4SC、続発性(2次性)の除外(下記)
1)胆道感染症による胆管炎(AIDSを含む。)
2)悪性腫瘍
3)胆道外科手術後
4)胆管結石
5)腐食性硬化性胆管炎
6)先天性胆道異常
7)Floxuridine動注による胆管障害
8)虚血性狭窄
上記の(1)は原発性も続発性も同様である。
 
2.画像診断
肝内胆管(および肝外胆管、胆嚢)に特徴的な画像所見を示す。
(1)US
1)散在する胆管内腔の狭窄と拡張
2)散在する胆管壁肥厚
3)胆嚢拡張
(2)ERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影法)
1)狭窄像(輪状狭窄、膜状狭窄、帯状狭窄及び二次的変化として憩室様突出や数珠状を呈する。)
2)胆管壁不整像(毛羽立ち、刷子縁様)
3)肝内胆管分枝像の減少
4)肝外胆管の狭窄に対して必ずしも肝内胆管が拡張しない。
(3)MRCP(磁気共鳴胆管膵管撮影法)(ERCPと同様)
(4)CT(ERCP、MRCPの胆管内腔の情報に加えて胆管壁や肝実質・周辺臓器との関係を把握する。)
(3~4)にて肝内胆管の狭窄と拡張の散在性の混在を確認する。
 
 
3.病型分類
(1)肝内型(病変が肝内胆管に限局するもの)
(2)肝外型(病変が肝外胆管に限局するもの)
(3)肝内外型(病変が肝内および肝外胆管に及ぶもの)
 
4.鑑別診断
鑑別すべき疾患は、IgG4関連SCである。自己免疫性膵炎(AIP)やIgG4関連疾患では肝内胆管の硬化性変化を伴って肝内胆汁うっ滞を惹起し、それによる黄疸などの臨床症状を呈することがある。これらは病態や治療がPSCとは異なるため、精度の高い鑑別診断が必要である。大部分のIgG4関連SCは自己免疫性膵炎を合併するため、自己免疫性膵炎合併を参考に診断可能であるが、自己免疫性膵炎自体の診断が難しい症例や自己免疫性膵炎を合併しない症例の診断は難しい。以下に、IgG4関連SCの特徴を示す。
 
(1)胆汁うっ滞による症状(腹痛、発熱、黄疸など)は同様。
(2)炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)の病歴は稀である。他臓器のIgG4関連疾患を合併することがある。
(3)血液検査値異常(6か月以上にわたるALP値上昇(正常上限の2~3倍))を呈することはあるが、AIPに伴う胆管病変は肝外が主体で閉塞性黄疸が主な症状である。
1)血清γグロブリン2g/dL以上、IgG1800mg/dL以上またはIgG4上昇(135mg/dL以上)
2)自己抗体陽性率が高い(抗核抗体、リウマチ因子)
(4)IgG4関連SCではステロイドが著効する場合が多い。
(5)画像上の鑑別点
1)狭窄部の上流胆管の拡張
2)比較的長い狭窄
3)時に局所的な胆管狭窄
4)下部胆管が狭窄の主座
5)PSCに特徴的な狭窄像(輪状狭窄、膜状狭窄、帯状狭窄及び二次的変化として憩室様突出や数珠状を呈する。)を認めない。
 
 
 
<重症度分類>
1)又は2)を対象とする。
1)有症状の患者(黄疸、皮膚掻痒、胆管炎、腹水、消化管出血、肝性脳症、胆管癌など)
2)ALPが施設基準値上限の2倍以上の患者



※診断基準及び重症度分類の適応における留意事項
1.病名診断に用いる臨床症状、検査所見等に関して、診断基準上に特段の規定がない場合には、いずれの時期のものを用いても差し支えない(ただし、当該疾病の経過を示す臨床症状等であって、確認可能なものに限る。)。
2.治療開始後における重症度分類については、適切な医学的管理の下で治療が行われている状態であって、直近6か月間で最も悪い状態を医師が判断することとする。
3.なお、症状の程度が上記の重症度分類等で一定以上に該当しない者であるが、高額な医療を継続することが必要なものについては、医療費助成の対象とする。
 

本疾患の関連資料
  • ・消化器系疾患調査研究班(難治性の肝・胆道疾患) 研究班名簿(平成25年10月31日)
  • ・田中 篤ほか.硬化性胆管炎の全国調査.胆道2013:27巻2号:176-187
  • ・田妻 進:原発性硬化性胆管炎.矢崎義雄,編.内科学.東京:朝倉書店;2013.p.1144-1146
    ・大原 弘隆ほか.IgG4関連硬化性胆管炎臨床診断基準2012. 胆道 26:59-63,2012.
  • ・Nakanuma Y, Sasaski M, Harada K. Autophagy and senescence in fibrosing cholangiopathies. J Hepatol. 2014 Nov 27. pii: S0168-8278(14)00876-9.


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情報提供者
研究班名 難治性の肝・胆道疾患に関する調査研究班
研究班名簿  研究班ホームページ 
情報更新日令和元年6月