シュワルツ・ヤンペル症候群(指定難病33)

しゅわるつ・やんぺるしょうこうぐん
 

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

○ 概要
 
1.概要
シュワルツ・ヤンペル症候群(Schwartz-Jampel syndrome:SJS)は、別名、軟骨異栄養性筋強直症と称され、ミオトニア症状と軟骨異常を伴う遺伝性疾患で、生命予後は良いが成長とともに日常生活動作が障害される。顔面筋の緊張のため眼裂は狭小となり、口を尖らせた特長的な顔貌を呈する。骨格異常としては、低身長、大関節の屈曲拘縮等が認められる。この疾患では、骨格異常とミオトニアという特異な臨床症状の組合せが知られていた。ミオトニアとは、筋の持続収縮、弛緩障害を意味し、通常筋原性の症状を指すが、本疾患におけるミオトニアは、筋緊張性ジストロフィーや、先天性ミオトニア等で観察されるミオトニアとは異なった特徴を持つため病因遺伝子の発見とその分子機構解明が待たれていた。
SJSは、1997年にGiedionらにより臨床型から1A、1B、2型に分類されていた。1Aと1Bは重症度によって分類されていたが、明確な区分は難しい。筋症状と骨、軟骨異常を合併し、乳児期致死を呈する2型は、現在では、leukemia inhibitory factor receptorLIFR)遺伝子変異に起因するStuve-Wiedemann症候群と同一の疾患とされている。
 
2.原因
2000年代に入り、SJSはパールカン(HSPG2)遺伝子変異疾患であることが示され、また同時に、パールカンが、アセチルコリンエステレースを神経筋接合部に局在させる必須分子であることが示されたが、発症の機序は不明である。
 
3.症状
一般に出生時には明らかな症状を認めず乳児期以降、低身長や特徴的な顔貌に気付かれ、3歳位までに診断される。顔面筋の緊張のため眼裂は狭小となり、口を尖らせた仮面のような顔貌を呈する。筋の自発持続収縮によるミオトニアと骨格病変を主症状とする。本疾患で観察されるミオトニアは、持続性、全身性に出現し、筋電図上も静止時に複合反復放電(complex repetitive discharge)と称される特徴的な所見を示す。骨格異常としては、低身長、大関節の屈曲拘縮、脊椎の後弯が認められる。X線所見にて、扁平椎体、骨端、骨幹端異形成が見られるが、骨端、骨幹端異形成は大関節に限られる。大腿骨頭の変化は比較的強く、内反股を認めることがある。
 
4.治療法
効果的対症療法、根治療法が確立していない。
 
5.予後
合併症としては、小眼症、白内障、斜視、眼振等の眼症状がある。高口蓋、低位耳介等の小奇形もしばしば合併する。
 
○ 要件の判定に必要な事項
1.患者数
100人未満(研究班による)
2.発病の機構
不明(遺伝子変異が示唆されている。)
3.効果的な治療方法
未確立(根治療法が確立していない。)
4.長期の療養
必要(成長と共に日常生活動作が障害される。)
5.診断基準
あり(日本神経学会及び小児神経学会承認の診断基準等あり。)
6.重症度分類
Barthel Indexを用いて、85点以下を対象とする。
 
○ 情報提供元
希少難治性筋疾患に関する調査研究班
研究代表者 東北大学大学院医学系研究科神経内科学 教授 青木正志
 
 
 
<診断基準>
Definite、Probableを対象とする。
 
○シュワルツ・ヤンペル症候群1型診断のカテゴリー
・Definite
①に加え、③又は④を認める。
・Probable
①②を認める。
 
①顔面を含むミオトニーを認める。1)又は2)。
1)臨床的にミオトニー現象(筋強直現象)を認める。
眼輪筋の収縮による眼裂狭小を認める。
口輪筋の収縮による口を尖らせた表情をとる。
2)針筋電図で連続的な自発性活動電位を認める。
低振幅で漸減がなく長く持続する特異なミオトニー放電である。
②下記のいずれかの骨格異常を認める。
低身長
大関節の屈曲拘縮
小胸郭
脊椎の後弯
扁平椎、骨端、骨幹端異形成
③筋生検の免疫染色等でパールカンタンパク質の欠損を認める。
(参考:筋病理所見は筋線維の大小不同、内在核増生等非特異的なミオパチー様所見をとる。径の大小不同は主にタイプ1線維に認められる。)
④パールカン遺伝子に変異を認める。
 
○参考事項
・発症は幼少期。多くは3歳位までに気付かれる。
・ときに下記の小奇形を合併する。
小眼球
小顎症
耳介低位
毛髪線低位
シュワルツ・ヤンペル症候群は、1997年にGiedionらにより臨床型から1A、1B、2型に分類されていた。1Aと1Bは重症度によって分類されていたが、明確な区分は難しい。筋症状と骨、軟骨異常を合併し、乳児期致死を呈する2型は、現在ではleukemia inhibitory factor receptorLIFR)遺伝子変異に起因するStuve-Wiedemann症候群と同一の疾患とされている。
<重症度分類>
機能的評価:Barthel Index
85点以下を対象とする。

 

質問内容

点数

食事

自立、自助具などの装着可、標準的時間内に食べ終える

10

部分介助(例えば、おかずを切って細かくしてもらう)

全介助

車椅子からベッドへの移動

自立、ブレーキ、フットレストの操作も含む(歩行自立も含む)

15

軽度の部分介助又は監視を要する

10

座ることは可能であるがほぼ全介助

全介助又は不可能

整容

自立(洗面、整髪、歯磨き、ひげ剃り)

部分介助又は不可能

トイレ動作

自立(衣服の操作、後始末を含む、ポータブル便器などを使用している場合はその洗浄も含む)

10

部分介助、体を支える、衣服、後始末に介助を要する

全介助又は不可能

入浴

自立

部分介助又は不可能

歩行

45m以上の歩行、補装具(車椅子、歩行器は除く)の使用の有無は問わず

15

45m以上の介助歩行、歩行器の使用を含む

10

歩行不能の場合、車椅子にて45m以上の操作可能

上記以外

階段昇降

自立、手すりなどの使用の有無は問わない

10

介助又は監視を要する

不能

着替え

自立、靴、ファスナー、装具の着脱を含む

10

部分介助、標準的な時間内、半分以上は自分で行える

上記以外

排便コントロール

失禁なし、浣腸、坐薬の取扱いも可能

10

ときに失禁あり、浣腸、坐薬の取扱いに介助を要する者も含む

上記以外

10

排尿コントロール

失禁なし、収尿器の取扱いも可能

10

ときに失禁あり、収尿器の取扱いに介助を要する者も含む

上記以外

 
 
 
※診断基準及び重症度分類の適応における留意事項
1.病名診断に用いる臨床症状、検査所見等に関して、診断基準上に特段の規定がない場合には、いずれの時期のものを用いても差し支えない(ただし、当該疾病の経過を示す臨床症状等であって、確認可能なものに限る。)。
2.治療開始後における重症度分類については、適切な医学的管理の下で治療が行われている状態であって、直近6か月間で最も悪い状態を医師が判断することとする。
3.なお、症状の程度が上記の重症度分類等で一定以上に該当しない者であるが、高額な医療を継続することが必要なものについては、医療費助成の対象とする。
 

平成27年1月1日

情報提供者
研究班名 希少難治性筋疾患に関する調査研究班
研究班名簿 
情報更新日 令和4年3月(名簿更新:令和5年6月)