若年性特発性関節炎(指定難病107)

じゃくねんせいとくはつせいかんせつえん

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

この病気は治りますか?

病型により異なります。全身型では 再燃 する方も多いのですが、最終的には約80%の患者さんは完治しています。また、少関節炎では約40%、 リウマトイド因子 陰性多関節炎では約70%、リウマトイド因子陽性多関節炎では約20%の患者さんが完治しています。ただし今のところ、どういった方が治るのかを予想・判定することはできません。なお、最近では生物学的製剤が使われるようになり、目覚ましい効果を挙げていますので、完治できる患者さんがもっと増えることが期待されています。

この病気はどこで診てもらえますか?

発症時は小児科医が担当して、必要に応じてリウマチ専門医に認定された小児科専門医が診療にあたります。その専門の医師数は全国100名程度と少なく、また小児リウマチ診療医がいる医療機関はそれほど多いものではありません。
おすまいの地域における専門施設については、日本小児リウマチ学会のホームページに「小児リウマチ診療支援マップ」が掲載されておりますので、ご参照ください。それでも不明な場合は、主治医の先生にお尋ね頂くか、JIAの患者家族会「あすなろ会」(http://asunarokai.com/)へご相談ください。成人年齢に達するなどより長期的な通院が必要な患者さんは、必要に応じて成人診療科(内科や整形外科など)に引き継ぎをして、継続的な診療を行っていきます。

(全身型)ステロイドは副作用が怖くて心配です。ステロイドを使わない治療法はありますか?最初から生物学的製剤を使用するわけにいきませんか?

全身型では、初期の全身性 炎症 をステロイドなしで抑え込むことは難しく、ステロイドによる治療が必要です。また、全身型では、発熱が続くなど病勢の強い時期が続けば、危険な合併症やより 重篤 な状態へ移行するリスクが高まります。したがって、このような危険な状態を回避するためにも、病勢を速やかに抑え込むステロイドが必要なのです。ステロイドを使わないと、かえって危険な状況に陥りかねません。
一方、この病気には、初期の激しい病勢が一旦おさまれば、その後は自然に軽快していく特徴があります。したがって、ステロイドで病勢を抑え込むことに成功すれば、その後は病勢の沈静化に応じてステロイドを減量することが可能になります。実際には約80%の患者さんが最終的にステロイドを中止できています。
以上から、病勢が強い時期の危険な合併症や移行病態を回避するため、また最終的にはほとんどがステロイド中止可能であることから、ステロイドを使った治療が、全身型の治療の中心となっています。
カナキヌマブとトシリズマブは、病勢が落ち着いてから始める治療です。
全身型の患者さんの体内では、大量のIL-1やIL-6(炎症を起こすサイトカイン)が作られており、それが患者さんの細胞や血中にあるそれぞれのアンテナ(IL-1受容体、IL-6受容体)と結合し、炎症を起こす命令(シグナル)が伝わって、発熱や関節痛などの症状や検査値の異常が出現することが分かっています。IL-6はIL-1の刺激により作られるサイトカインで、カナキヌマブはIL-1とくっついてIL-1がアンテナ(受容体)を刺激しないようにすることで、IL-6が作られるのを抑えます。しかし、IL-1の産生を抑える作用はないので、大量にIL-1がある時はカナキヌマブとくっつかないIL-1によってIL-6が産生されます。トシリズマブはIL-6のアンテナにくっついてIL-6がアンテナと結合するのを邪魔し、炎症を起こす命令を伝える経路を塞ぐことで炎症を抑えます。しかし、IL-6の産生を抑え込む作用はないので、IL-6のアンテナと結合できないIL-6が血中に増加します。したがって、病勢の強い時にカナキヌマブやトシリズマブだけで治療を始めると、病態としては非常に不安定な状況になります。
一方、このIL-6産生を抑え込む役割を果たすのがステロイドです。ですので、まずはステロイドで治療して活発なIL-6産生を抑制し、その上でIL-6の産生や命令を遮断する、カナキヌマブまたはトシリズマブを投与するという手順が決まっています(なお2023年11月現在、カナキヌマブはトシリズマブが効かないか使えない患者さんにのみ使用が認められています)。

生物学的製剤による治療を受けています。日常生活で気をつけることを教えてください。

抗リウマチ薬や生物学的製剤使用時は、感染症の合併や悪化に気をつけてください。うがい・手洗い・マスクなどの標準的な予防策や、季節性インフルエンザ流行前の予防接種は感染症を防ぐだけでなく、感染症をきっかけにJIAが悪化する事を防いでくれることがわかっています。ただし、これらの薬を使用中は生ワクチン(麻しん風しん混合ワクチン、水痘ワクチン、おたふくかぜワクチン、ロタワクチンなど)は打てませんので、ご注意ください。
自己注射タイプの生物学的製剤を使用中の方で、風邪を引いた場合、治るまで投与を延期する場合もあります。主治医に投与スケジュールを確認してください
なお、トシリズマブ使用中の方は以下の点にご注意ください。IL-6は、発熱や倦怠感などの症状を引き起こすサイトカインですが、トシリズマブは、IL-6の命令が伝わらないようにする薬剤ですので、風邪の症状が軽くなります。例えば風邪をこじらせて気管支炎や肺炎になっていても、微熱程度で元気に見える事があります。もし、症状がすっきりせず続く事があれば、早めに主治医にご相談ください。
生物学的製剤使用により劇的に病状がよくなることが多いのですが、そのような場合でも自己判断で治療を中断したり減量したりすることは危険ですのでやめましょう。

将来、妊娠・出産は可能でしょうか?赤ちゃんに影響はありますか?

JIAの疾患活動性が落ち着いていれば、妊娠出産は可能です。今までの報告では、JIAのお母さんから生まれた赤ちゃんはほとんど健康状態に問題がないことがわかっています。ただし、使用しているお薬によっては妊娠・授乳に影響がでるものもありますので、医師に相談せず妊娠計画を立てるのはやめましょう。その場合、まず妊娠・授乳に問題のない治療薬に変更し、それによって疾患活動性が悪化しない事を確認しなければいけません。経験豊富なリウマチ内科医・産婦人科医・新生児科医が連携して安全な出産ができるよう、計画的に進めていきます。研究班によるガイドラインも作られていますので、参照してください(https://ra-ibd-sle-pregnancy.org/)。


情報提供者
研究班名自己免疫疾患に関する調査研究班
研究班名簿 
情報更新日令和6年1月(名簿更新:令和5年6月)