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特発性間質性肺炎

とくはつせいかんしつせいはいえん

(認定基準、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

1)概要

a.定義
間質性肺炎とは,胸部X線写真やCT画像にて両側肺野にびまん性陰影を認める疾患(びまん性肺疾患)の中で,肺胞隔壁などの肺間質を炎症や線維化病変の基本的な場とする疾患である。間質性肺炎の原因は多岐にわたり、職業(じん肺)・環境性(過敏性肺炎)や薬剤など原因の明らかな場合や、膠原病・サルコイドーシスなどの全身性疾患に付随して発症する場合とともに、原因が特定できない場合もある。
特発性間質性肺炎(idiopathic interstitial pneumonias ; IIPs)は原因を特定しえない種々の間質性肺炎の総称であり,高分解能コンピュータ断層写真(HRCT)所見や胸腔鏡下肺生検(VATS)による病理組織パターンにより分類される。2002年に発表されたアメリカ胸部疾患学会(ATS)とヨーロッパ呼吸器学会(ERS)による分類では、IIPsは臨床病理学的疾患単位として、特発性肺線維症(idiopathic pulmonary fibrosis; IPF)、非特異性間質性肺炎(nonspecific interstitial pneumonia; NSIP)、特発性器質化肺炎(cryptogenic organizing pneumonia; COP)、急性間質性肺炎(acute interstitial pneumonia; AIP)、剥離性間質性肺炎(desquamative interstitial pneumonia; DIP)、呼吸細気管支炎を伴う間質性肺炎(respiratory bronchiolitis-associated interstitial lung disease; RB-ILD)およびリンパ球性間質性肺炎(lymphocytic interstitial pneumonia; LIP)の7つに分類されていたが、2013年に発表されたIIPs改定国際集学的分類(Am J Respir Crit Care Med 2013: 188; 733-48.)では,6つの「主要IIPs」(IPF・ NSIP・COP・AIP・DIP・RB-ILD) 、2つの「稀なIIPs」(LIP・上葉優位型肺線維症(pleuroparenchymal fibroelastosis; PPFE))、「分類不能型(unclassifiable)IIPs」に分類された(表1)。また発症様式や臨床経過により、①慢性線維化(IPF, NSIP)、②喫煙関連(DIP, RB-ILD)、③急性/亜急性(COP, AIP)、の3つの大きなカテゴリーに分類されている。その中で患者数が最も多く、難治性疾患であるIPFが最も重要なIIPsである。IPFは現時点では原因が同定できない慢性・進行性の線維化間質性肺炎で、一般的には高齢者に発症し、病変は肺に限局し、病理組織学的かつ/または放射線学的に通常型間質性肺炎(usual interstitial pneumonia; UIP)パターンを呈する疾患と定義される。男性・喫煙者に多く、両側下肺野に特徴的な捻髪音(fine crackles)を認め,HRCT写真で特徴的所見である蜂巣肺を認めれば診断できるが,それ以外のIIPsに関しては病理組織診断が必要である。

表1.IIPsの国際新分類

b.疫学
わが国におけるIPFの発症率と有病率については、「厚生労働科学研究難治性疾患研究事業びまん性肺疾患に関する調査研究班」により報告されている。2003年から2007年における北海道での全例調査では、IPFの発症率は10万人対2.23人、有病率は10万人対10.0人である。また、近年の諸外国での疫学調査ではIPF患者数の増加が示されている。IPF 以外のIIPs に関する疫学調査はないが、NSIP とCOP以外のIIPsの発症率・有病率は低いものと考えられる。

c.病因・病態
IIPsの原因は現時点で不明であるが、近年では未知の原因による肺胞上皮細胞の繰り返す損傷とその修復・治癒過程の異常が主たる病因・病態と考えられている。また、全ゲノム連鎖解析により中心的な細胞としてII型肺胞上皮細胞が注目され、その機能に関与する遺伝子異常が報告されている。

d.臨床症状と検査所見
以下の症状や所見はIPFを中心とした記述である。歴史的にもIPF以外の特発性間質性肺炎(IIPs)は新たな病理像として見出されたものであり、臨床症状や検査所見は共通するところが多い。一部にIPF以外のIIPsの対照的特徴を記述した。また、喫煙者の多くに気腫病変が様々な程度に合併し、その臨床症状や検査所見を複雑にしている可能性に注意が必要である。

1)臨床所見
IIPsの主要症状は乾性咳嗽と労作時呼吸困難であるが、緩徐に進行するIPFでは自覚症状を認めず、検診で発見される場合もある。聴診では、背側肺底部の捻髪音(fine crackles)が90%前後の患者で聴取され、疾患が進行するにつれて聴取する領域は肺の上方へと広がる。ばち指はIPFの約30-60%に認める。病状が進行するとチアノーゼ,肺高血圧・肺性心,末梢性浮腫などがみられる。肺以外の症状は認めない場合が多いが,体重減少,倦怠感・疲労感を認めることもある。発熱はない場合が多く、発熱している場合には感染症併発,IPFの急性増悪またはIPF 以外の間質性肺炎を疑う。

2)検査所見
a)血液所見
間質性肺炎の血清マーカーとしてKL-6、SP-A、SP-Dは、特発性肺線維症(IPF)や非特異性間質性肺炎(NSIP)などの特発性間質性肺炎でもで高率に陽性となり、病態のモニタリング、治療反応性の評価に有用とされている。乳酸脱水素酵素(LDH)も高値となる。自己抗体では抗核抗体(ANA)やリウマチ因子がIPF症例の10~20%に認められるが、高い抗体価(>1:160)は膠原病の存在を疑う。CEAやCA19-9、SLXといった腫瘍マーカーの上昇は、間質性肺炎だけでも認めることがあるが、肺癌などの悪性腫瘍が合併していることを除外する必要である。

b)胸部X線検査
IPF患者の胸部Ⅹ線写真は両側肺野に末梢性、肺底部で網状、小粒状、小輪状~粗大輪状(蜂巣肺)陰影が認められ、しばしば肺容量の減少を伴う。融合性の肺胞陰影がみられるのは稀で、IPFよりもDIPやCOP、NSIPなどの他の疾患が示唆される。肺気腫とIPFが合併している患者では肺容量が正常かあるいは増加し、上葉の血管影減少が認められる。胸膜病変やリンパ節腫脹は一般に認めない。

c)高分解能CT(HRCT)
IPFの典型的なHRCT所見は、両側下葉背側胸膜下に優位に分布する蜂巣肺所見である(図2)。すりガラス様陰影は急性増悪以外では限局している。肺が線維化して縮小する(肺の容積減少)と蜂巣肺・牽引性気管支拡張像や気管支血管影や葉間線の偏位、気管支血管影や胸膜面の不整像(小葉辺縁部優位の線維化)などの特徴を示す。
IPF以外のIIPsでは蜂巣肺を伴うことは稀で、非特異性間質性肺炎(NSIP)では網状・すりガラス状陰影、器質化肺炎(OP)では肺浸潤影(コンソリデーション)を示すことが多い。CT所見による鑑別疾患としては、膠原病肺、薬剤性肺炎、慢性過敏性肺臓炎、サルコイドーシス、石綿肺などがある。間質性肺炎の画像診断は困難なことが多く、専門とする画像診断医のコンサルトをうけることが望ましい。



d)肺機能検査
一般的にIPFでは拘束性障害(肺活量[VC]と全肺気量[TLC]の減少)が認められる。肺拡散能(DLco)は初期より低下することが多い。重喫煙者では気腫病変を合併するために、肺気量の減少が軽微で、肺気腫による気流閉塞を伴うことがあるため、閉塞性障害としても拘束性障害としても非典型的な所見となる。この場合DLcoが顕著に低下しているために労作時の呼吸困難が著しいので注意が必要である。特発性肺線維症を主とする特発性間質性肺炎では、肺胞気一動脈血酸素分圧較差(AaDO2)が上昇し、安静時でも動脈血酸素分圧(PaO2)や動脈血酸素飽和度(SaO2)が低下する。6分間歩行試験中にでもSaO2の低下が著しいことで、日常生活における労作時呼吸困難を把握しうる。初期のIPF患者では安静時に肺高血圧がみられることはまれであるが、病態が進行すると、とくに肺気腫を合併している喫煙者では、肺高血圧が高率に合併することが知られている。

e)気管支肺胞洗浄
現時点で、IPF/UIPの、診断、予後推定、経過の評価にBALが必要ではないが、他疾患を除外するために有効な場合がある。なお、IPFでは、NSIPやCOPに比べ、BALの細胞分画ではリンパ球比率は一般には正常に近い。

f)肺生検と組織所見
IPF/UIPの組織所見は1)小葉間隔壁および胸膜直下組織を中心とした様々な段階の線維化病変(下左図)、2)線維化病変に分布する線維芽細胞巣(fibroblastic foci)(下中図)、3)線維化が亢進した胸膜下組織の蜂巣病変(下右図)、が挙げられる。除外すべき所見としては、1)他の間質性肺疾患(例:サルコイドーシス、あるいはランゲルハンス細胞組織球症)を示唆する病変、2)著明な間質性慢性炎症、3)肉芽腫病変、4)無機性粉塵蓄積(例:石綿小体)、ただし炭素色素を除く、5)著明な好酸球増多、などがあげられる。
病変写真

IPF以外の特発間質性肺炎に関しては肺生検が確定診断のために必要で、間質性肺炎の分類に詳しい病理医の診断が求められる。
e.診断
実地医療で最も重要なことは、患者数が最も多く、予後不良であるIPFであるか否かを正確に診断することであり、以下ではIPFの診断を中心に解説する。

国際的かつevidence-basedのガイドラインであるATS/ERS/JRS/ALAT エビデンスに基づく特発性肺線維症(IPF)の診断と管理ガイドラインの診断アルゴリズム(図1)に従い、まず原因の明らかな間質性肺疾患(慢性過敏性肺炎、膠原病関連、薬剤など)を除外し、次にHRCT所見で3つのパターン(UIPパターン、possible UIP、inconsistent with UIPパターン)に分類する(表2)。UIPパターンであれば外科的肺生検は施行せずにIPFと診断可能である。HRCTでのUIPパターンとしては蜂巣肺所見が必須であり、胸膜直下・下肺野優位の陰影分布、網状影、牽引性気管支拡張も重要な所見である(図1)。HRCTがUIPパターンでない場合(図3、4)には、可能な限り外科的肺生検を施行し、病理組織学的検討を行う。病理組織所見は4つのパターン(UIPパターン、probable UIPパターン、possible UIPパターン、not UIPパターン)に分類する。表3にHRCTパターンと病理組織パターンの組み合わせによるIPFの診断基準を示す。HRCT所見がUIPパターンの場合には、病理組織パターンがnot UIPパターンでない限り、IPFと診断する。また、HRCT所見がpossible UIPの場合でも、病理組織所見がUIPまたはprobable UIPパターンであれば、IPFと診断する。
しかし、IPFの診断が決して容易でない症例も存在し、常に呼吸器臨床医と放射線診断医、病理医による有機的な議論がきわめて重要であり、multidisciplinary discussion(MDD)と呼ばれる。

図1 IPF診断のためのアルゴリズム


表2 UIP patternのHRCT診断基準


図3 possible UIP patternのHRCT所見


図4 inconsistent UIP patternのHRCT所見


表3 IPFの診断基準

f.治療
IIPsは各々の疾患により、臨床経過や治療反応性が異なるため、治療目標も原因の除去(禁煙など)から疾患進行の抑制まで様々である。
IPFの治療に関しては、これまで生存率や健康関連QOLに対する有効性を証明した薬物療法はなかったが、2011年以降に報告された新たな臨床試験では、ピルフェニドンおよびニンテダニブがIPFに対する新たな治療薬として注目されている。ピルフェニドンは抗線維化作用に加え、抗炎症・抗酸化作用などの複合的な作用機序を有する低分子化合物で、日本では2008年に世界で初めて承認され、経口のIPF治療薬として使用され、重要な有害事象は食欲低下などの消化器症状と光線過敏症であり、実地医療では有効性と有害事象とのバランスを見極めながら治療を行うことが重要である。ステロイドや免疫抑制薬の有用性を示すエビデンスはなく、減量に伴う急性増悪の誘発や長期使用による感染症併発などの副作用を考慮すると、大部分のIPFでは適応とならないと考えられる。NAC単剤吸入療法は日本において早期IPFに対する有用性が検証され,病態の安定化効果が報告されている。
IPFの急性増悪時にはステロイド療法が行われ,免疫抑制剤の併用を行う場合もある。また急性増悪を予防するために日常生活管理指導が重要である。進行すると呼吸不全を併発し,酸素療法(在宅酸素療法)が必要となる。最近では肺移植による根治治療も試みられている。さらにIPFでは、高率(10-30%)に肺癌が発生するため早期に発見し治療することも重要である。
IPF 以外のIIPsでは一般にステロイドを中心とする治療が行われる。

g.ケア・食事・栄養
IPFでは、無治療での経過観察中においても呼吸機能、画像検査などの定期的な評価(6 – 12ヶ月ごと)が重要である。また日常の生活管理としては、禁煙指導とともに、過労・睡眠不足など身体に対する負担を減らすような生活指導を行う。過食・体重増加は横隔膜の拳上による呼吸困難が増強する可能性があり、適正体重を保つことが重要である。一方、IPFが進行すると体重減少をきたし、予後不良となることからバランスのとれた食事により体重を維持すべきである。
また、感染予防はきわめて重要であり、IPFの急性増悪は上気道感染が契機となることも多く、冬季においては外出時のマスク着用や手洗い・うがいの励行、インフルエンザの予防接種などの日常生活管理が重要である。

h.予後
IPFの自然経過は個々の症例により様々であるが、一般的には慢性経過で肺の線維化が進行し、不可逆的な蜂巣肺形成をきたす予後不良な疾患である。平均生存期間は、欧米の報告では診断確定から28 - 52ヶ月、わが国の報告では初診時から61 - 69ヶ月であるが、患者間での差が大きく、予後予測は困難である。予後不良因子として観察開始時の呼吸困難の程度・拡散能の低下・運動負荷試験時の低酸素血症・HRCTでの蜂巣肺の広がり・肺高血圧症の合併が重要で、自覚症状・努力肺活量・拡散能・HRCTでの線維化所見の経時的な悪化も重要な因子である。IPF以外のIIPsでは、AIPを除き一般に治療が奏効し、予後は比較的良好であることが多い。

 

2)診断 

国際的かつevidence-basedのガイドラインであるATS/ERS/JRS/ALAT エビデンスに基づく特発性肺線維症(IPF)の診断と管理ガイドラインの診断アルゴリズム(図2)に従い、行う。

(6) 重症度判定
特発性肺線維症の場合は下記の重症度分類判定表(表5)に従い判定する。安静時動脈血ガスが80Torr以上をⅠ度,70Torr以上80Torr未満をⅡ度,60Torr以上70Torr未満をⅢ度,60Torr未満をIV度とする。重症度Ⅱ度以上で6分間歩行時SpO2が90%未満となる場合は,重症度を1段階高くする。ただし,安静時動脈血ガスが70Torr未満の時には,6分間歩行時SpO2は必ずしも測定する必要はない。

表5:重症度分類判定表
新重症度分類 安静時動脈血ガス 6分間歩行時SpO2
80Torr以上  
70Torr以上80Torr未満 90%未満の場合はⅢにする
60Torr以上70Torr未満 90%未満の場合はⅣにする
(危険な場合は測定不要)
60Torr未満 測定不要

【特定疾患治療研究事業の対象範囲】
2014年までは、診断基準により特発性間質性肺炎と診断された者のうち、重症度分類のⅢ、Ⅳ度の者が対象となっていたが、2015年以降は重症度分類のⅢ、Ⅳ度の者でも、所得に応じた自己負担が必要である。一方、重症度分類がI、II度の者でも医療費の基準を満たせば、助成の申請は可能である(軽症高額)。

3)治療 治療指針

IIPsに含まれる疾患のうち,IPFとそれ以外の疾患に対しての薬物治療の内容は異なる。一般にIPF以外ではステロイドや免疫抑制薬を中心とした治療薬を用いる。
1.特発性肺線維症(IPF)
IPFに対しては根治療法が存在せず、これまでは対症療法が中心であったが,近年は悪化・進行する症例に抗線維化薬であるピルフェニドン(ピレスパ)(保険適応あり)やN-アセチルシステイン(ムコフィリン)(保険適応なし)などの新しい治療の有効性が示されつつある。HRCT画像で蜂巣肺が確認されても自覚症状がなく安定している場合にはそのまま無治療で経過観察を行うこともある。咳嗽や労作時呼吸困難などが強くなる傾向を認めるときは専門医による本格的な治療が必要である。IPF患者が急性増悪を起こした場合は緊急入院をさせて急性肺障害に準じた治療を行う。IPF急性増悪時の治療は,酸素療法・ステロイドパルス療法とともに急性肺障害患者の治療に用いる好中球エラスターゼ阻害薬(エラスポール)やポリミキシンカラム(PMX)による新たな試みがなされ,その治療効果の検証が進められている(いずれも保険適応はなし)。
非薬物治療としては、酸素療法や呼吸リハビリテーションなどの呼吸管理も重要である。IIPsにおける在宅酸素療法の予後改善効果は証明されてないが、酸素療法により呼吸困難感は軽減し,QOLも向上すると考えられている。
治療薬の副作用としては,ステロイドや免疫抑制薬の長期投与に伴うものや抗線維化薬であるピルフェニドンに特有なもの(光線過敏症,食欲不振など)に注意が必要である。ステロイドの長期投与に伴う副作用の中で,消化性潰瘍・ニューモシスチス肺炎・骨粗鬆症などの発症予防目的で抗潰瘍薬・ST合剤・ビスホスホネート製剤を投与することがある。プレドニゾロン換算7.5 mg/日以上のステロイドを3か月以上使用中あるいは使用予定の場合に,ステロイド性骨粗鬆症予防としてアレンドロネートとリセドロネートの使用は推奨されている。しかしIIPsには併存症も多く,それぞれの予防的治療については個々の症例ごとに慎重に判断する必要がある。

a)各種治療薬
i)NAC (ムコフィリン)吸入
NAC経口剤の臨床効果が海外から報告されたが、残念ながらその経口剤は日本では手に入らない。NAC吸入療法の治療効果の検討が進められている。長期に使っても副作用がほとんどない利点があり、自覚症状が少ない安定期の患者に適している。

ii)pirfenidone (ピレスパ)
Invitroの成績ではpirfenidoneはTGFβによるコラーゲン合成の抑制、細胞外matrixの減少、線維芽細胞増殖の抑制作用などを有する。本邦の第Ⅲ相試験では、肺機能の悪化を妨げる効果が明らかになった。特に重症度が軽度で初めて治療を開始される患者で自覚症状の改善効果が報告されている。その副作用として吐き気などを伴う腹部不快感や日光過敏症があるが、薬剤の減量や紫外線防止などの対策が有効である。IPFのどの段階で用いるべき薬剤なのかは近い将来明らかになることが予想される。

iii)プレドニゾロン
IPFに対するステロイドの有用性を示すエビデンスはなく、減量に伴う急性増悪の誘発や長期使用による感染症併発などの副作用を考慮すると、大部分のIPFでは適応とならないと考えられる。ステロイドの副作用としては、感染増悪・誘発、消化性潰瘍、糖尿病、精神変調、骨粗鬆症、満月様顔貌、高血圧などがあり、投与中にはこれらの予防薬や臨床的なチェックが欠かせない。

iv)シクロスポリン (CsA)(ネオーラル)
有効性は不明であり保険適応外処方となるが、本邦においてはステロイドについで使用報告例が増加している。用法・用量は100mg-150mg/日で投与開始し、トラフレベルを100ng/ml程度に保つように投与量を調節する。食事内容の影響を受けやすいので食前30分の投与も試みられている。その副作用には、腎障害、高血圧、歯肉肥厚、等があり、薬物相互作用にも十分な注意が必要である。

v)シクロフォスファミド(CPA)
最近では膠原病肺を強く疑う以外、特発性間質性肺炎ではあまり使われない。用法・用量は、1.0-2.0mg/kg/day(理想体重、最大用量150mg/day)で、50mg/dayから開始し、7から14日ごとに25mgずつ増量する。副作用には、骨髄抑制、出血性膀胱炎、二次発癌などがある。WBC 4000以下あるいはPLT 10万未満で、改善まで半量あるいは中止とする。この際、1週ごとに経過をチェックし改善がなければ中止する。出血性膀胱炎予防に、毎日多めの水分摂取にて利尿を図り、尿検査を毎月チェックする。出血性膀胱炎が出現時は直ちに投与を中止する。

vi)アザチオプリン(AZP)
本邦では使用する施設はほとんどない。用法・用量は、2.0~3.0mg/kg/day(理想体重、最大用量150mg/day)で、50mg/dayから開始し、7から14日ごとに25mgずつ増量する。副作用には、吐気、嘔吐、下痢といった消化器症状、肝障害、骨髄障害がある。白血球数(WBC)4000以下あるいは血小板数(PLT )10万未満で、改善まで半量あるいは中止とする。この際、1週ごとに経過をチェックし改善がなければ中止する。肝機能は毎月チェックし、正常上限の3倍以上となったら減量あるいは中止する。

vii)急性増悪時の新たな治療法の試み
従来極めて難治で知られてきたIPFを中心とする間質性肺炎の急性増悪に対しては肺障害に準じた治療を行ってきたが、メチルプレドニゾロン(ソルメドロール)1000mg/日を3日間点滴するステロイド大量療法が最も一般的に用いられている治療法である。最近では急性肺損傷患者の治療に用いられている好中球エラスターゼ阻害薬(エラスポール)やポリミキシンカラム(PMX)を用いる試みがなされ、その治療効果の検証が進められている。急性増悪発症段階において気管支鏡検査は、とくにBALはその後急変する危険性が極めて高いことがよく知られているのでできる限り避けることが望ましい。

b)効果判定と治療期間
IPF/UIP は、基本的に進行性の予後不良の疾患であるので、長期間悪化を防ぐことを目標とすべきである。経時的に進行・悪化する場合には、pirfenidone (ピレスパ)治療を開始・継続し、国際的な合意にもとづく効果判定(Am. J. Respir. Crit. Care Med. 161: 646-664, 2000)を行う。悪化がなければ治療を継続し以後6カ月ごとに効果判定を行い、悪化あるいは副作用が問題とならなければ治療継続を基本とする。

c)その他の管理上の問題
IPFの併存症としては,冠動脈疾患・閉塞性睡眠時無呼吸症候群・貧血・骨粗鬆症・うつ病・逆流性食道炎・アスペルギローマ・肺癌・気胸・肺高血圧症・肺動脈塞栓症・心不全など様々なものがある。これらの併存症の中には,IPF診断時に存在していてもIPFの予後に影響を与えないものの,診断後の経過中に発症することで予後に影響を与えるものもあるため,併存症の有無について注意深く観察していく必要がある。

2. IPF以外の主要な間質性肺炎
1)NSIP
NSIPには肺病変が発現してしばらくしてから膠原病が明らかとなる「肺先行型」と考えられる場合が少なくないこともあり、 IPF に比べステロイド療法に反応することが多く(特にリンパ球浸潤が顕著なcellular NSIP)、予後は一般に良好とされる。しかし、線維化所見が顕著なNSIP(fibrotic NSIP)の治療反応性は乏しく、IPFと同様の難治性で予後も変わらないとの報告もある。一般にプレドニゾロン0.5~1.0mg/kg/日を初期投与量とし、4週間投与後の反応を確認しながら漸減するが、20mg/日あるいは隔日の中等度量にネオーラルなどを加えた治療法もよく用いられる。治療中にも膠原病発症の可能性を考えて定期的に検査を行う。fibrotic NSIPではIPFに準ずる治療を行う。

2)COP
一般にステロイド療法に対する反応は良好であり、多くの症例は3ヶ月程度で改善する。経験的にプレドニゾロン0.5~1.0mg/kg/日を初期投与量とし、4週間投与後の反応を確認しながら漸減する。漸減やステロイド療法終了後1~3ヶ月以内に再発することも少なくないことから、6ヶ月から1年間は治療を継続することが推奨されてきた。治療反応不良症例はIPFに準じて種々の免疫抑制剤を試みる。

3)DIP
ほとんどの患者は、禁煙とステロイド治療で改善する。

4)RBILD
DIPとの関係がまだ不明瞭な疾患であり、DIPに準じた治療をとられる。
5)AIP
本邦ではAIPに対し、ステロイド大量療法(パルス療法:メチルプレドニゾロン1,000mg/日の3日間点滴静注を)を病状の安定化が見られるまで1週間間隔で3~4回投与されることが多い。また、大量療法後にも画像上陰影が残存し、肺機能障害が十分に改善しない場合にはIPFに準じ、ステロイド薬と免疫抑制薬の併用療法を行う。またシクロフォスファミド(CPA)大量療法(500mg/日、一回/2~4週毎)やシクロスポリンが有効とする報告もある。ステロイドや免疫抑制剤の大量療法が継続する場合に、薬剤固有の副作用に加え、感染症の合併には十分な注意と対策を要する。重症呼吸不全に対しては酸素療法や人工呼吸器管理が必要とされる。

4)鑑別診断(表6)

心不全、肺炎(特に異型肺炎)、既知の原因による急性肺傷害(ALI)、膠原病、血管炎、サルコイドーシス、過敏性肺炎、じん肺、放射線肺炎、薬剤性肺炎、好酸球性肺炎、びまん性汎細気管支炎、癌性リンパ管症、肺胞上皮癌、リンパ脈管筋腫症(LAM)、肺胞蛋白症、ランゲルハンス細胞肉芽腫症

表6.鑑別の必要な疾患
鑑別診断
(1)心不全
(2)肺炎(特に異型肺炎)
(3)既知の原因による急性肺傷害(ALI)
(4)膠原病
(5)血管炎
(6)サルコイドーシス
(7)過敏性肺炎
(8)じん肺
(9)放射線肺炎
(10)薬剤性肺炎
(11)好酸球性肺炎
(12)びまん性汎細気管支炎
(13)癌性リンパ管症
(14)肺胞上皮癌
(15)リンパ脈管筋腫症(LAM)
(16)肺胞蛋白症
(17)ランゲルハンス細胞組織球症

5)最近のトピックス

IPFを対象とした3つの重要な臨床試験結果が2014年に発表され、NEJMに掲載された。
1)INPULSIS trial : ニンテダニブの第3相臨床試験(日本を含む国際共同試験)
2)ASCEND study :ピルフェニドンの第3相臨床追加試験(米国・豪州など)
3)PANTHER study : 経口N-アセチルシステイン(NAC)の臨床試験(米国)
以上の結果を踏まえ、米国FDAはIPF治療薬としてニンテダニブおよびピルフェニドンを承認した(日本ではピルフェニドンは2008年に承認済、ニンテダニブは今後承認予定)。
ニンテダニブは、血小板由来増殖因子(PDGF)受容体、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)受容体、線維芽細胞成長因子(FGF)受容体のチロシンキナーゼ活性を阻害する経口の薬剤(トリプルキナーゼ阻害薬)で、重要な有害事象は下痢・悪心・嘔吐などの消化器症状である。

6)本疾患の関連資料・リンク

1)Raghu G, et al. An official ATS/ERS/JRS/ALAT Statement: Idiopathic pulmonary fibrosis: Evidence-based guidelines for diagnosis and management. Am J Respir Crit Care Med 183: 788-824, 2011.
2)日本呼吸器学会 びまん性肺疾患診断・治療ガイドライン作成委員会編:特発性間質性肺炎診断・治療の手引き改訂第2版 南江堂,東京 2011


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情報提供者
研究班名 びまん性肺疾患に関する調査研究班/びまん性肺疾患に対するエビデンスを構築する新規戦略的研究班
研究班名簿  研究班名簿   
情報更新日平成27年3月24日