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原発性免疫不全症候群

げんぱつせいめんえきふぜんしょうこうぐん

(認定基準、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

1)複合免疫不全症

2)免疫不全を伴う特徴的な症候群

3)液性免疫不全を主とする疾患

4)免疫調節障害

5)原発性食細胞機能不全症及び欠損症

6)自然免疫異常

7)自己炎症性疾患

8)先天性補体欠損症

1)複合免疫不全症

■概念

複合免疫不全症では細胞性免疫と液性免疫の両方が障害されている。Tリンパ球の異常による症状に加え、Bリンパ球の免疫グロブリン産生にはTリンパ球の補助が必須なこともあり、Tリンパ球に異常があると液性免疫にも何らかの異常を伴う。また、T細胞の発生障害に加え、Bリンパ球の発生障害が伴っている病型もある。Tリンパ球の数や機能の著しい異常に加え、無または低ガンマグロブリン血症を伴うものを重症複合免疫不全症(Severe combined immunodeficiency, SCID)という。
液性免疫不全による易感染性に加え、ウイルス感染の遷延と重症化、真菌、ニューモシスチス・イロベチ(Pneumocystis jirovecii)(以前はニューモシスチス・カリニ(Pneumocystis carinii)と呼ばれた)肺炎、や結核菌、非定型抗酸菌など細胞内寄生菌の感染の頻度が高く、治療抵抗性である。

■疫学

日本での登録では、複合免疫不全症は原発性免疫不全症の約10%を占め、その殆どがSCIDである。Omenn病、HLAクラスⅡ欠損症、細胞異形成症などのSCID類縁疾患のほか、発症がやや遅く、軽症の経過をとる、様々なTリンパ球の遺伝的異常症が報告されている。アメリカ・台湾では新生児マススクリーニングが開始されており、出生約5万人に1人の発生率であることが明らかになっており、日本では全国で1年間に200人近くが生まれていると考えられます。

■病因

SCIDはTリンパ球の発生障害によるTリンパ球数の減少と抗体産生不全を特徴とする。約半数はX連鎖性遺伝であり、その原因はX染色体上にあるγc鎖の遺伝子異常による。γc鎖は、IL-2、IL-4、IL-7、IL-9、IL-15、IL-21のレセプターに共通しシグナル伝達に関わる分子である。常染色体劣性のものとしてγc鎖からのシグナルを下流に伝えるチロシンキナーゼであるJAK3ならびにT細胞の発生に重要なIL-7のレセプターであるIL-7レセプターα鎖の遺伝子異常によるものがある。T細胞レセプターやB細胞レセプターなど抗原受容体の遺伝子再構成に関わる分子であるRAG1/RAG2、Cernunnos, Artemis, Lig Ⅳ, DNA PKcsの遺伝子異常によるSCIDも存在する。RAG1/RAG2のミスセンス変異ではOmenn症候群と呼ばれる特殊な病型をとる。アデノシンデアミナーゼ(ADA)欠損症もSCIDの一因である。T細胞の分化、活性化に関わるCD3γ、CD3δ、CD3ε、CD3ζ、CD45、ZAP-70、ORAI-1、STIM-1、Coronin-1の異常でもSCIDを起こす。好中球減少を伴うSCIDとして細網異形成症がありAK2が原因遺伝子である。

■症状

SCIDでは、生後3カ月までに咽頭後壁にまで広がる鵞口瘡、外陰部のカンジタ症、カリニ肺炎による百日咳様咳嗽、遷延性下痢で発症、著しい発育障害をきたす。しばしば皮疹や好酸球増多を伴う。
さまざまな治療にもかかわらず、症状は進行性に悪化する。麻疹や麻疹生ワクチン接種は巨細胞性肺炎を起こし、水痘は致死的経過をとる。BCGも播種性BCGを起こす可能性がある。ロタウイルスワクチンで重症の下痢をおこしたSCIDが報告され、投与は禁忌であるが、感染症に罹患していない場合、接種前に発見することは容易ではない。
末梢血リンパ球は通常<1,000/ul、母親由来のTリンパ球が移入していることもあるが、本人由来のTリンパ球を欠き、リンパ球サブセット解析でT細胞の欠損を確認できる。PHA, ConAによるリンパ球増殖反応は不良である。無または低ガンマグロブリン血症も呈する。SCIDの患児の約50%はγc鎖欠損症である。

■予後

SCIDとその類縁疾患は、臍帯血、骨髄、末梢血幹細胞による造血幹細胞移植を行わないと1~2歳までに死亡する。感染予防には、ST合剤、抗真菌剤の予防投与、静注用、皮下注用ヒト免疫グロブリン製剤による免疫グロブリン補充療法を行う。一旦感染を起こすとその治療は困難であるが、抗生剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤を十分に用い、できるだけ感染を排除した状態で造血幹細胞移植を行う。アメリカでは新生児マススクリーニングの対象にSCIDが加えられ、50例以上がすでに発見され、感染を起こす前に造血幹細胞により根治している。ADA欠損によるSCIDではADA酵素補充療法や遺伝子治療、γc鎖異常によるXSCIDでは遺伝子治療が試みられている。

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2)免疫不全を伴う特徴的な症候群

■概念

特徴的な症候を有する症候群で、免疫不全症を伴うものがまとめられている。Wiskott-Aldrich症候群(WAS)、Ataxia-Teleangiectasia(毛細血管拡張性運動失調症、AT), 高IgE症候群が代表的疾患である。原因、病態が異なるものが含まれるが、特徴的な症候が診断に役立つためにまとめられたものである。なお、ほとんどの疾患が複合免疫不全症を呈する

■病因、症状、予後

WASはサイズの低下を伴う血小板減少、湿疹、易感染性を三徴とする免疫不全症である。血便、紫斑、点状出血、治療抵抗性のアトピー様の湿疹、ウイルス感染症や細菌感染症の持続感染や重症化で気づかれることが多い。なお、自己免疫疾患を伴うこともあり、自己免疫性溶血性貧血や自己免疫性の血小板減少などが前面にでることもある。免疫不全は、Tリンパ球機能の進行低下、様々な免疫グロブリン異常を伴い、複合免疫不全症に属する疾患である。
WASの原因遺伝子はWASPである。診断はWASPタンパクの発現低下、WASP遺伝子の変異同定により確定する。なお、血小板減少だけが認められるX連鎖性血小板減少症もWASP遺伝子の変異により起こり、WASの亜型である。
WASは造血幹細胞移植の適応であり、現時点で唯一の根治療法である。移植までの間、出血、感染、湿疹の管理を行う。欧米では遺伝子治療が開始され、良好な結果が得られている。

ATは毛細血管拡張、小脳失調を臨床症状とする免疫不全症である。ATの原因遺伝子はATMである。ATでは毛細血管拡張症状の出現が平均で6歳頃からと遅く出現年齢も様々である。また患者で上昇するα-Fetoproteinは乳児期には健常児でも高値であるなど、早期診断が困難である。悪性リンパ腫、白血病などの特にリンパ系の悪性腫瘍の家族歴は参考になる。
ATでは、悪性腫瘍の合併が多いことが知られている。ATはDNA切断修復障害異常があり、放射線感受性、抗がん剤感受性が亢進している。移植は困難であり、対症的治療に止まる。B細胞性の腫瘍に対してはリツキサンを使う場合もある。

高IgE症候群は易感染性と血清IgE高値を伴う免疫不全症である。原因遺伝子として、STAT3, TYK2, DOCK8が同定されている。
STAT3異常によるI型高IgE症候群は常染色体優性遺伝形式を取り、1)ブドウ球菌への易感染性、冷膿瘍形成、繰り返す肺炎によるPneumatocele形成、2)脊椎の側彎、易骨折性、乳歯の残存、顔貌異常などの骨格系の異常、3)アトピー様湿疹、喘息などのアレルギー症状など多彩な症状を示す。STAT3がさまざまなサイトカインのシグナル伝達に関わっていることによると考えられている。Th17細胞の欠損もあり、炎症反応を起こせない事が関わっていると考えられる。なお、悪性腫瘍の発生頻度も通常より高い。
TYK2異常によるII型高IgE症候群は常染色体劣性遺伝形式をとり、細胞内寄生菌(結核、BCG, サルモネラ、リステリアなど)、ウイルス、真菌に対する易感染性を示す。TYK2はIL-12レセプターのシグナル伝達に重要な機能を果たし、Tyk2異常によりIL-12刺激がはいらず、T細胞がTh1細胞に機能的に成熟できず、IFN-γ産生を行えない。その結果マクロファージの活性化が誘導されず、細胞内寄生菌に対する易感染性が起きると考えられる。
なお、原因遺伝子の判明していない高IgE症候群も存在する。

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3)液性免疫不全を主とする疾患

■概念

血清IgG、IgA、 IgMが、年齢別平均値-2SD以下の条件を充たすものを無または低ガンマグロブリン血症とする。年齢別平均値とその-2SDを表に示す。

X連鎖(ブルトン型)無ガンマグロブリン血症(XLA)、分類不能型低ガンマグロブリン血症(common variable immunodeficiency,CVID)とIgM増加を伴う免疫不全症(高IgM血症候群)が代表的疾患で、選択的IgA欠損症、IgGサブクラス欠損症などが知られている。乳児一過性低ガンマグロブリン血症は、乳幼児期の生理的な低ガンマグロブリン血症が遷延した状態であるが、感染に注意して経過を見れば、ほとんどの場合、無治療でガンマグロブリンが上昇する。

■疫学

厚生労働省原発性免疫不全症候群調査研究班・登録資料では、全登録症例の約半数を占め、頻度はCVID(13.5%)、XLA (10.7%)、選択的IgA欠損症(8.7%)、IgM増加を伴う免疫不全症(3.8%)の順である。

■病因

XLAはX染色体上のBTK (Bruton's tyrosine kinase)遺伝子異常によっておこり、プレB1細胞からプレB2細胞への分化が障害され、末梢血B細胞が欠損する。高IgM症候群は、免疫グロブリンのクラススイッチ機構に欠陥があり、IgMを産生できるが、IgG、IgA、IgEを産生できない疾患群である。X連鎖型のものは活性化T細胞上のCD40リガンドの遺伝子異常により、常染色体劣性の一部はAID(activation-induced cytidine deaminase)やUNG(uracil DNA glycosylase)の異常による。CVIDは一般には原因が特定できない低ガンマグロブリン血症の総称であるが、最近、ICOS、TACI、BAFF-R、CD19, CD20などの遺伝子異常がみつかっている。

■症状

Bリンパ球の欠損によるXLAでは、通常母体由来の移行抗体が消失する乳児期後半からインフルエンザ菌、肺炎球菌、連鎖球菌などの化膿菌による中耳炎、肺炎、髄膜炎、膿皮症などを反復、遂には気管支拡張症をきたす。エンテロウイルス持続感染を例外とし、ウイルス感染症の多くは正常に経過し、カリニ肺炎も稀である。CVIDもT細胞機能不全が伴わないタイプではXLAと基本的に同じである。
X連鎖高IgM症候群やCVIDのうちT細胞機能不全を伴う群では、さまざまな化膿菌の感染に加え、カリニ肺炎などの日和見感染や自己免疫様疾患、悪性腫瘍の合併頻度が高い。

■治療

無または低ガンマグロブリン血症を呈する場合は、静脈注射用あるいは皮下注射用ヒト免疫グロブリン製剤による補充療法が不可欠である。気管支拡張症などの肺合併症の進行を防ぐには、適正な抗菌薬治療に加え、血清のIgGトラフ値を500 mg/dl以上に維持することが望ましく、最近では、700-1,000mg/dl以上に保った方が有意に肺炎の発症が少ないというデータがあり、700 mg/dl以上には保った方が良いであろう。3~4週毎に200~600 mg/kgが投与されるが、患者に副作用が起きなければ600 mg/kgが望ましい。
IgGサブクラス欠損症などの一部では易感染性を伴う例があり、免疫グロブリン補充療法が必要となることがある。

■予後

IVIG、SCIG製剤による充分な量の免疫グロブリン定期投与が可能になり、予後は著しく改善される。XLAではIVIG・SCIGによりほぼ正常の生活が送れるが、X連鎖高IgM症候群やCVIDにみられる日和見感染、自己免疫様疾患や悪性腫瘍の高頻度の合併などは問題点として残っており、造血細胞移植が行われている。

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4)免疫調節障害

■概念

キラーT細胞やNK細胞の感染細胞などの排除機構の障害により免疫反応の制御異常がおきたり、免疫調節障害により自己抗体産生をきたす疾患を含む。
Chediak-Higashi症候群、家族性血球貪食リンパ組織球増殖症(Familial hemophagocytic lymphohistiocytosis, FHL)、X連鎖リンパ増殖症候群(X-linked Lymphoproliferative syndrome, XLP)、自己免疫性リンパ増殖症候群(Autoimmune lymphoproliferative syndrome, ALPS), APECED, IPEXなどが含まれる。
Chediak-Higashi症候群(CHS)は、好中球、NK細胞の形態・機能に欠陥があり、部分白子症で淡い頭髪をもつ。好中球、NK細胞における巨大顆粒が特徴であり、診断に重要である。原因遺伝子はLYSTである。
FHLにはタイプ1から5まである。FHL1の原因遺伝子は不明である。FHL2はPerforin 欠損症で、原因遺伝子はPRF1である。パーフォリンは細胞融解分子であり、キラー細胞やNK細胞が標的細胞を融解する際に放出する。FHL3はMunc13-4 (UNC13Dとも呼ばれる)の異常である。UNC13-4は細胞融解分子の形成、移送に必要である。FHL4はSyntaxin 11 の異常である。STX11は融解分子の放出に重要である。FHL5はSTXBP2 (Munc 18-2) の異常である。STXBP2も融解分子の放出に重要である。FHLでは、融解分子の欠損や、移送、放出障害により、ウイルス感染細胞などを融解することができず、代償的にIFN-γが大量に産生され、血球貪食症候群を起こす。

XLPは劇症型EBウイルス感染症を起こす。XLP1はSH2D1A の欠損により起きる。 SH2D1A は細胞内シグナル伝達のアダプター分子である。XLP2はXIAP欠損により起きる。XIAPはアポトーシス抑制に関与している分子である。XLP2は、炎症性腸疾患や反復性血球貪食症候群を呈することも多い。

ALPSはアポトーシスが誘導できず、リンパ増殖性疾患をきたす。CD4-CD8-のdouble negative T細胞の増加が特色である。ALPS1はアポトーシスを誘導するFAS分子の異常であり、原因遺伝子はTNFRSF6である。ALPS2はFAS リガンドの異常であり、原因遺伝子はTNFSF6である。ALPS3は、FASのアポトーシス誘導シグナル伝達に関わる CASP10の異常である。ALPS4は同様にFASのアポトーシス誘導シグナル伝達に関わCASP8 異常である。ALPS5は N-Rasの異常であり、GTP結合たんぱくなどを介したミトコンドリアのアポトーシスの障害が起きる。ALPS6はFADD の異常である。FADDはFASと結合するアダプター分子であり、アポトーシス、炎症、自然免疫に関与している。

APECED (APS-1)は、自己免疫性内分泌不全症・カンジダ症・外胚葉異形成症をきたす疾患であり,その責任遺伝子は転写因子AIRE である。AIRE は胸腺上皮における末梢臓器特異抗原の発現に関わり、胸腺における自己抗原への免疫寛容に関わっている。

IPEX (Immune dysregulation polyendocrinopathy enteropathy, X-linked) は、FOXP3の変異により制御性T細胞の発生障害から、末梢性免疫寛容の破綻を来す疾患であり、サイトカイン産生異常などにより様々な自己免疫症状を呈する。

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5)原発性食細胞機能不全症及び欠損症

■概念

好中球を中心とする食細胞の機能や数に先天的な欠陥があり、易感染性を示す免疫不全症である。生後間もなくから臍炎、肛門周囲膿症、中耳炎、リンパ節炎、肝膿瘍、骨髄炎、敗血症など細菌感染を繰り返し、抗生剤に対する反応も不良である。臍帯脱落遅延を起こすこともある。
先天性好中球減少症(SCN)、周期性好中球減少症(CN)、慢性肉芽腫症(CGD)、白血球粘着異常症(LAD) などが知られている。

■疫学

登録事業ではCGDは原発性免疫不全症の14%を占めるが、LADは極めて稀である。

■病因

CGDは活性酵素産生能の障害による疾患である。5亜型に分類される。活性酸素産生酵素の構成分子である、gp91phox (CYBB), p22phox (CYBA), p47phox (NCF1), p67phox (NCF2), p40phox (NCF4) の異常による。X連鎖遺伝型(gp91 phox欠損症)が最も多い。また、欧米に比較的多いp47phox欠損症はわが国では極めて少ない。
好中球の血管外遊走能に障害のあるLADはⅠ型(CD18分子の変異)、Ⅱ型(sialyl Lewisx分子の異常)、III型(KINDLIN3異常)に分類される。
先天性好中球減少症(SCN)は、SCN1はELA2(ELANE)異常、SCN2はGFI 1 異常、SCN3はKostmann 病であり、好中球と神経細胞のアポトーシスに関わるHAX1遺伝子の異常である。SCN4はG6PC3 欠損である。なお、糖原病Ibでも好中球減少を起こす。

■症状

CGDでは乳児期早期に肛門周囲膿瘍、化膿性リンパ節炎などのため切開、排膿を余儀なくされる。肺、肝臓、脾臓など網内系を中心に膿瘍を反復、肉芽腫様病変をきたす。カンジダやアスペルギルスなどの真菌感染が重症化しやすい。細胞内寄生菌に対する易感染性もあり、BCG菌によるリンパ節炎を発症するため、BCG接種は禁忌である。
LADでは臍帯脱落の遅れが特徴的で、高度の歯周囲炎を伴う。様々な化膿菌の感染が多いが、局所病変は壊死が主で膿形成に乏しい。感染が明らかでない時でも、末梢血白血球が30,000/ulにも及ぶ増加がある。部分白子症で淡い頭髪をもつCHSでは、好中球、NK細胞における巨大顆粒が特徴であり、診断の決め手となる。
先天性好中球減少症(SCN)は、細菌感染を繰り返し、重症化する。臍炎、臍帯脱落遅延、肛門周囲膿瘍、中耳炎、肺炎、敗血症などを呈する。

■治療

造血幹細胞移植による治癒可能な疾患で、ST合剤などによる感染の予防が重要である。CGDでは、1/3の症例でインターフェロンγ製剤の臨床的有効性が示されている。遺伝子治療の試みもなされている。
SCNではG-CSF投与を行うが、長期投与によりMDS, AML発症のリスクがあり、造血幹細胞移植の適応である。

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6)自然免疫異常

■概念

免疫系には獲得免疫と自然免疫がある。自然免疫の障害がある免疫不全症がこの分類に含まれる。自然免疫の障害により、炎症を起こしにくく肺炎球菌に対する易感染性があったり、単純ヘルペスウイルス脳炎に罹患しやすい、皮膚粘膜においてカンジダにかかりやすいなどの症状が出現する。

■疫学

IRAK4欠損症は50例程度、Myd88は9例の報告がある。ただし見逃されている場合もあり、実際はもっと多い頻度が高い可能性がある。

■病因

代表的なものとして、自然免疫において病原体を認識するToll-like receptorのシグナル伝達に関わる分子であるIRAK-4, Myd88の欠損症、ヘルペス脳炎(Herpes simplex encephalitis, HSE) に罹患しやすい免疫不全症であるTLR3欠損症、UNC93B1欠損症、TRAF3欠損症、慢性皮膚粘膜カンジダ症(Chronic mucocutaneous candidiasis, CMC)を引き起こすIL-17RA欠損症、IL-17RF欠損症、STAT1の活性化変異がある。

■症状

IRAK4欠損症、Myd88欠損症は肺炎球菌などに易感染性を示す免疫不全症である。この2つの分子は自然免疫で微生物などを認識するToll like receptor のシグナル伝達に重要な役割を果たし、その欠損により炎症を惹起できず、易感染性を示す。LPS刺激で炎症性サイトカインであるIL-6, TNF-αを産生出来ないことをFACSで迅速に検査することでスクリーニングが可能である。8歳を超すと易感染性が無くなるが、乳幼児期には肺炎球菌感染が重症化して致死的になることもある。抗生剤予防内服、肺炎球菌ワクチン接種の他、ガンマグロブリン定期補充を行うこともある。炎症反応が出にくいので、CRP陰性であっても感染を否定できないという特徴がある。

単純ヘルペス脳炎(Herpes simplex encephalitis, HSE)を起こしやすい免疫不全症が知られている。原因遺伝子としてTLR3, UNC93B1, TRAF3が同定されている。IFN-α、β、λの中枢神経系での産生不全が原因であると考えられている。単純ヘルペス特異的に易感染性があり、かつ中枢神経系に限って易感染性があるという特徴がある。

慢性粘膜皮膚カンジタ症 (1.3%)は、皮膚および粘膜にカンジダ感染が持続する免疫不全症であり、通常は深部臓器感染は起こさない。原因遺伝子としてIL-17RA、IL-17RF、STAT1の活性化変異が同定されている。

■予後

IRAK4, Myd88は14歳未満で重症感染を起こしうる。しかしそれ以降は易感染性は明らかでなくなる。8歳以降での死亡例も見られない。小児期の予防内服、肺炎球菌、Hibなどに対する予防接種をしっかり行えば、予後良好である。

慢性皮膚粘膜カンジダ症は、治療としては抗真菌剤投与を行うが、難治である場合も多い。口腔内に疼痛を伴う重症で慢性皮膚粘膜カンジダ症は、治療としては抗真菌剤投与を行うが、難治である場合も多い。口腔内に疼痛を伴う重症で難治のカンジダ症が続くため、嚥下できないなどの場合も見られる。重症例の一部では、骨髄移植も試みられている。

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7)自己炎症性疾患

■概念

自己炎症性疾患は、発熱、皮疹、関節炎などの全身の炎症を反復する疾患である。炎症反応の抑制系の障害、促進系の異常活性化など炎症制御異常により炎症が亢進している病態であり、自己免疫疾患、免疫不全、アレルギーとならぶ免疫病と位置づけられる。IL-1β、TNF, NF-κB のカスケードが異常活性化したり、好中球のアポトーシスが抑制されて生じる事が多い。近年の研究により、原因遺伝子(TNFRSF1A, MEFV, CIAS1, NLRP12, MVK, CD2BP1 (PSTPIP1), NOD2 (CARD15), LPIN2, IL10RA, IL10RB, IL1RN)が明らかになり、病態の理解が進み、診断法が確立されてきている。また、病態に応じた新しい治療法も開発されている。国内で、これらの遺伝子を網羅的に遺伝子解析する体制が整ってきている(http://pidj.rcai.riken.jp)。

TNF receptor-associated periodic syndrome(TRAPS)
成因:
TNFレセプタータイプ1(TNFR1)をコードするTNFRSF1Aの遺伝子異常が原因である。変異によりTNFR1 の細胞外ドメインを膜近傍で切断されなくなり、可溶性TNFR1が分泌されず、TNF1αと結合して中和することができなくなり、結果的にTNF シグナルが持続的に増強して入るため、炎症性サイトカインの産生が誘導され炎症が起きると考えられている(shedding model)。最近、小胞体にmisfolding した変異TNFR1 が蓄積して炎症反応の増強が起きるという説(misfold & aggregate model)も出されている。
症状:
反復発熱,漿膜炎,発疹,眼炎,関節炎が認められる。
検査所見:
白血球増多、急性期反応蛋白の上昇、発作間欠期の血漿可溶性TNFR1の低値が認められる。
遺伝性:
常染色体優性遺伝(12p13.2)。国内でも20例以上の報告がある。
治療:
ステロイド、Etanarcept (TNF-α阻害剤)、anakinra の有効例が報告されている。しかし、ステロイドのみでは発熱のコントロールは困難である。また、Etanarceptも、misfold & aggregate model で説明されるように血中TNFと無関係にシグナル伝達が起きるとすると、効果は低いと考えられる。

家族性地中海熱(familiar Mediterranean fever, FMF)
成因:
PyrinをコードするMEFV遺伝子が原因遺伝子である。Pyrinは、ASC (apoptosis-associated speck-like protein with caspase recruitment domain)と結合し炎症を抑制する機能を持っている(競合的抑制)が、変異により抑制ができなくなり、カスパーゼI活性化をもたらし、Pro-IL-1βからIL-Iβへの変換が亢進し、IL-1βの過剰産生にいたる.変異により、カスパーゼI活性化の直接的な抑制もできなくなる。NF-κBの活性化、apoptosis の抑制による単球、好中球、軟骨細胞のアポトーシス不全も起きていると考えられている。すなわち、炎症の抑制分子として働いているpyrinの機能低下により、炎症が亢進することが本症の本態である。
症状:
反復発熱,漿膜炎,単関節炎,血管炎,発疹,腹膜炎を起こす。無治療では30-50% が長期的な炎症の結果アミロイドーシスを合併し、腎不全にいたる。
検査所見:
発熱発作時の白血球増多、急性期反応蛋白の上昇、漿液中C5a inhibitorの低下が認められる。
遺伝性:
常染色体劣性遺伝。(16p13)。国内でも30例以上の報告がある。
治療:
コルヒチン内服を行う。遊走能を抑制して好中球の炎症部位への浸潤を抑制すると考えられている。周期的な発熱発作やアミロイドーシスの予防に効果がある。

Cryopyrin-associated periodic syndrome (CAPS)
Cryopyrin(別名PYPAF, NALP3)をコードするCIAS1 (cold-induced autoinflammatory syndrome) 遺伝子異常により起きる疾患であり、familiar cold autoinflammatory syndrome(FCAS)、Muckle-Wells syndrome(MWS)、neonatal onset multisystem inflammatory disease(NOMID)/Chronic infantile neurologic cutaneous and articular syndrom (CINCA) の3病型がある。FCASが軽症、MWSは中等症、CINCAは重症ととらえることもできる。いずれも常染色体優性遺伝であり、責任遺伝子はIq44に位置する。国内でも、30例以上の報告がある。
なお、CIAS1 に遺伝子変異を認めないCAPS 患者も30%以上存在し、原因解明が待たれている。
Cryopyrinは、主として好中球、単球、軟骨細胞に発現し、細胞内センサーとして炎症を制御している。通常は、折りたたまれた構造の不活性型として存在しているが、細胞内に侵入した微生物由来の抗原などをLLRドメインにより認識すると開裂して活性型になり、カスパーゼIを活性化し、これによりPro-IL-1βからIL-Iβへの変換が起こり、IL-1βの放出が起こり、炎症を惹起する。CAPSでは、変異によりCryopyrinが折りたたみ構造をとりにくく、容易に活性化される状態になっている。すなわち異常なCryopyrinの活性化がIL-1βの過剰な産生を誘発して慢性的な炎症を惹起していると考えられる。異常活性化Cryopyrinは、NF-κBの活性化による炎症の亢進や、単球、好中球、軟骨細胞のアポトーシス不全による炎症部位への浸潤にも関与していると考えられている。なお、LLRドメインにより抗原認識がなされることから、微生物等の細胞内への侵入が、発作の引き金になっている可能性もある。
Familiar cold autoinflammatory syndrome(FCAS)
症状:
寒冷曝露により誘発される蕁麻疹様皮疹,関節炎、結膜炎を主要症状とする。大部分の発作は、24時間以内に治まる。ほとんどが1歳未満で発症する。感音性難聴は起こさず、アミロイドーシスを来す頻度は低い。
検査所見では、白血球増多、CRP 上昇が見られる。皮疹の病理学的所見では、真皮上層の浮腫と血管周囲性の好中球浸潤が見られる。
Muckle-Wells syndrome(MWS)
症状:
小児期から始まる24−48時間続く発熱、蕁麻疹様発疹,多関節痛の発作を、数週間周期で繰り返す。進行性に感音性難聴(内耳の炎症によるものらしい),アミロイドーシスをきたし、腎アミロイドーシスにより死亡する事が多い。
Neonatal onset multisystem inflammatory disease(NOMID)/ Chronic infantile neurologic cutaneous and articular syndrom (CINCA)
CAPS 3疾患の中で、最重症である。
症状:
1)生後一週以内から出現する高熱、2)無菌性髄膜炎、水頭症、けいれん、精神運動発達遅滞、感音性難聴などの精神神経症状、3)生後一週間以内から出現する隆起性紅斑、4)左右対称性の膝、指、の慢性関節炎、5)虹彩炎、脈絡網膜炎、乳頭浮腫、ぶどう膜炎、視神経萎縮などの眼症状、6)低身長などの成長障害、7)低色素性貧血、8)前頭部突出、鞍鼻などの顔貌異常などの臨牀症状を呈する。
検査所見:
白血球(好中球)増加、CRP 高値、低色素性貧血、サイトカイン(IL-1β、IL-2, IL-3,IL-5,IL-6,TNFα)の高値)を示す。本症では、LPS刺激で単球がアポトーシスを起こしやすいことを利用して、FACSで簡易スクリーニング法が開発されている。
治療:
IL-1 レセプター拮抗剤(Anakinra)がFCAS, MWS, CINCAいずれにも著効を示す。IL-1β産生亢進がCAPSの本態であることから、病態に則した治療法と考えられる。しかし、中枢神経系への移行は不良であり、CINCA でみられる神経症状には効果が不良である。Etarnercept の有効例も報告されているが、TNF はIL-1による炎症反応の下流であり、効果は低い。NSAID は無効で、ステロイドは一時的に有効であるが、減量中に再燃する。

IgD 症候群(hyper IgD syndrome, HIDS)
成因:
MVK(mevalonate kinase、メバロン酸キナーゼ)の遺伝子異常が原因である。MVKは、コレステロール代謝経路でメバロン酸をリン酸化する酵素である。
MVK の完全欠損ではMVK活性は検出感度以下であり、先天性代謝異常症であるメバロン酸尿症を起こし、精神発達遅滞、小脳性失調、発育不全、白内障、網膜色素変性症、激しい炎症を伴う周期熱を伴う。HIDSはその軽症型であり、MVK活性は基準値の1〜10%である。炎症発生の機序は不明であるが、メバロン酸の蓄積、MVK代謝産物の減少の関与が予想されている。
症状:
乳児期からの周期性発熱、リンパ節腫脹、腹部症状(嘔吐、下痢、腹痛)、頭痛、関節痛、発疹などを周期的に起こす。
検査所見:
白血球増多,IgD上昇(血清IgD 14.1 mg/dl以上)、尿中メバロン酸濃度増加、MVK活性の低下(正常の1〜10%)。
遺伝性:
常染色体劣性遺伝である (12q24)。国内で20例以上の報告がある。
治療:
確立していないが、statin, etanercept, anakinra の有効例が報告されている。HMG-CoA還元酵素は、HMG-CoAをメバロン酸に変換する。statin は、HMG-CoA還元酵素阻害剤で、高脂血症治療薬として広く使われている薬剤である。作用機序からはHIDS でのメバロン酸の蓄積を減少させることが予想され、効果が期待されている。

Pyogenic sterile arthritis, pyoderma gangrenosum, acne (PAPA) syndrome
成因:
CD2-binding protein 1(CD2BP1)、別名PSTPIP1(proline/serine/threonine phosphatase-interacting protein 1)の遺伝子異常が原因である。CD2BP1変異により、pyrinおよびASCの炎症抑制作用をコントロールできなくなり、炎症反応が亢進すると考えられている。
症状:
好中球の浸潤による破壊性関節炎,炎症性皮疹(壊疽性膿皮症),筋炎を示す。発熱は必ずしも伴わない。
遺伝性:
常染色体優性遺伝(15q24)である。
治療:
Etanerceptが有効である。Anakinraの有効例も報告されているが、ステロイドへの反応性は不良である。

BLAU syndrome
成因:
NOD2 (nucleotide-binding oligomerization-domain protein、別名CARD15,IBD1)の遺伝子変異による。NOD2 はcryopyrinなどとともにNOD蛋白ファミリーに属する。細菌細胞壁のmuramyl dipeptide,MDP) をLRR(leucine rich repeat)ドメインで認識すると構造変化が起こり、NF-κBを活性化するシグナルを伝える。BLAU 症候群では、機能獲得変異によりNF-κBが恒常的に活性化し、単球、マクロファージからの種々の炎症メデイエーターが分泌され、肉芽腫が形成されると考えられる。また、若年発症サルコイドーシス(Early onset sarcoidosis, EOS)もNOD2 の機能獲得性変異により起きる同一疾患で、Blau 症候群の孤発例と考えられる。
なおNOD2 の機能消失変異はChron 病を起こすことが知られている。
症状:
ブドウ膜炎,肉芽腫性関節炎,発疹を3主徴とする。関節炎は、滑膜の肥厚と浸出性変化が主体で、関節部の皮下腫瘤、嚢腫や指趾の屈曲拘縮が特徴的である。皮膚は、苔癬様紅色丘疹で、類上皮細胞肉芽腫が認められる。
周期性発熱はみられない。これは、Nod2 が主にNF-κBの活性化に働き、caspase-1 活性化によるIL-1β産生には関わらない事によると考えられる。
検査所見:
炎症反応は軽度である。サルコイドーシスでみられる血清リゾチームの上昇、可溶性IL-2 受容体の上昇は肉芽腫の形成を反映する。MMP3 は関節炎の病勢を反映する。
遺伝性:
常染色体優性遺伝 (16q12)である。
治療:
ステロイドが有効である。

Syndrome of periodic fever, aphtaous stomatitis, pharyngitis, and adenitis (PFAPA) (周期性発熱、アフタ性口内炎、咽頭炎、頚部リンパ節炎症候群)
成因:
不明である。炎症反応の亢進、有熱期の炎症性サイトカイン(IL-6, IFN-γ、IL-1-β、可溶性TNF受容体の上昇が認められる。
症状:
5歳以下で、周期性発熱、アフタ性口内炎、咽頭炎、頚部リンパ節炎を主症状とする疾患である。
遺伝性:
明らかでない。
治療:
発作時にはステロイドが有効である。T細胞のH2受容体拮抗作用を期待して、cimetidine を予防的に使い効果があったとする報告がある。

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8)先天性補体欠損症

■概念

補体蛋白の欠損や補体抑制因子の欠損による免疫不全症である。

■病因

補体は、細菌感染においてオプソニン効果の補助、好中球の走化や、Membrane attack complex (MAC)によるグラム陰性桿菌の溶菌に関与している。したがって、補体欠損により化膿菌や、グラム陰性桿菌特に髄膜炎菌などのナイセリア菌に対する易感染性を示す。C3, C4, C5, C6, C7, C8a, C9, properdine, Factor B, Factor Dの欠損症は髄膜炎菌髄膜炎のリスクファクターである。特にproperdine欠損症では50%で髄膜炎菌感染症を発症するとされている。これらの補体欠損症では、Hibワクチン, 結合型肺炎球菌ワクチンを積極的に行う。髄膜炎菌ワクチンも推奨されているが、日本では認可されていない。

補体には免疫複合体を溶解する作用もあり、補体欠損は免疫複合体病の発症リスクになる。SLE、リウマチ様疾患、特発性血小板減少症、血管性紫斑病が報告されている。C1q, C1r, C1s, C2, C3, C4, C5, C6, C7, C8a, C8b, factor I欠損で見られる。特に、C1q欠損症では93%がSLEを起こすとの報告もある。

補体抑制因子の欠損症としては、MAC阻害作用のあるCD59の欠損による溶血発作、GPIアンカー蛋白異常による夜間発作性血色素尿症、Factor B, Factor H, CD46, Decay accelerating factor (DAF)欠損による家族性溶血性尿毒症症候群(Hemolytic uremic syndrome, HUS)が知られている。
またC1 inhibitor の欠損症により遺伝性血管神経浮腫(Hereditary angioneurotic edema, HANE)を起こす。喉頭浮腫による気道閉塞を起こすことがあり、適切な診断と治療が必要である。治療は、C1 inhibitorの投与を行う。海外ではブラディキニンB2レセプター拮抗剤であるicatibantが即効性があり使用されているが、国内では承認されていない。

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情報提供者
研究班名 原発性免疫不全症候群の診断基準・重症度分類および診療ガイドラインの確立に関する研究班
研究班名簿   
情報更新日平成28年6月15日