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ミトコンドリア病(公費対象)

みとこんどりあびょう

1. ミトコンドリア病とは

細胞の中でエネルギーを作り出す働きをしているミトコンドリアの機能が低下することによって、主に心臓、骨格筋、脳などに異常を生じる疾患です。疲れやすく長い距離を歩けない、意識を失って手足が麻痺するなど、さまざまな症状を現すことがあります。

2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか

日本では全国レベルの調査はまだ行われていませんが、小児科・神経内科・循環器内科などにかかっている患者さんが、合わせて数百 人いると推定されています。また、糖尿病の患者(全国で約600万人)のうち、約1%がミトコンドリアの異常に基づくと言われていますので、ミトコンドリ ア病の患者数は数万人に達すると見積もられています。

3. この病気はどのような人に多いのですか

男女差はありません。出生直後から症状の現れる重症例もありますが、50歳台になってからゆっくりと症状の現れる人もいます。

4. この病気の原因はわかっているのですか

核遺伝子の変異によって起こるミトコンドリア病もまれにありますが、大部分のミトコンドリア病はミトコンドリア遺伝子の変異が原 因です。ミトコンドリア病の原因となるミトコンドリアDNAの変異は、大きく分けて、ミトコンドリアDNAの中の遺伝子の連なり方が異常になった再配置 と、ミトコンドリアDNAの1個所の正常な塩基が異常な塩基によって置き換わった塩基置換あるいは点突然変異に分類することができます。再配置はさらに挿 入と欠失に分けられます。挿入とは、一揃いの遺伝子(ミトコンドリアゲノム)の中に、別のミトコンドリア遺伝子の断片(多くの場合には数千塩基対の長さ) が割り込んでしまった状態を言います。正常の遺伝子が分断されてしまうために、遺伝子の機能が失われ、細胞が呼吸によってエネルギーを得ることができなく なってしまいます。欠失(けっしつ)とは、ミトコンドリアゲノムの一部分が欠けてしまった状態をいいます。多くの場合には、数千塩基対の長さのDNAが失 われていますので、複数の蛋白質を作りだすための遺伝子や、トランスファーRNA遺伝子がなくなっていますので、ミトコンドリアの中で、これらの呼吸機能 を果たす酵素が作られなくなり、細胞がエネルギー不足に陥ります。

点突然変異はどの遺伝子に生じるかによって、その結果が少しずつ異なります。蛋白質を規定する遺伝子に点突然変異が生じた場合に は、その蛋白質の機能、例えばATPを合成する働きが失われて、細胞がエネルギー不足になります。トランスファーRNA遺伝子に点突然変異が生じた場合に は、ミトコンドリアの中での蛋白質の合成が低下し、呼吸鎖を構成する酵素の機能が悪くなって、細胞がエネルギー不足に陥ります。22種のトランスファー RNA遺伝子のうち、どの遺伝子に変異が起きたかによって、どの臓器・組織に異常が生じるか、どんな症状を表すかがほぼ決まっています。

5. この病気は遺伝するのですか

核遺伝子の変異が原因の場合には、多くの場合、常染色体劣性遺伝です。母親と父親から1個ずつ異常な遺伝子が伝わり、2個の異 常な遺伝子をもった子が病気になります。従って、兄弟が同じ病気にかかる確率は1/4、保因者(1個の異常な遺伝子を持っているが発病しない)となる確率 は1/2、正常な遺伝子を2個持つ確率は1/4です。

ミトコンドリア遺伝子の変異が原因の場合には、遺伝する場合と遺伝しない場合があります。
ミトコンドリア遺伝子の挿入や欠失などの再配置を原因とするミトコンドリア病は、ほとんどの場合、弧発例(兄弟・姉妹は正常)で、遺伝しません。
まれに、ミトコンドリア遺伝子の多重欠失が家族性に起こり、常染色体優性遺伝を示す場合があります。この場合は、父親または母親のどちらかから異常な核遺 伝子が1個伝えられると、ミトコンドリア遺伝子の欠失が複数生じて、病気になります。この場合、兄弟・姉妹が病気にかかる確率は1/2です。

ミトコンドリア遺伝子の点突然変異を原因とするミトコンドリア病は、母性遺伝することがあります。

6. この病気ではどのような症状がおきますか

病気のタイプが主に四種類あります。まずは(1)眼球を動かす外眼筋の麻痺を主症状とするもので,物がダブって見えたりする外眼 筋麻痺,視力低下(網膜色素変性),不整脈や脈拍数の低下を主症状とするもの。これらは10歳代に始まることが多くなっています。また他に筋力低下,難 聴,ふらつき(小脳失調),糖尿病などがみられる病型もあります。(2)発作性の頭痛や嘔吐,全身の痙攣発作や半身麻痺,脳卒中様発作がみられるもので す。また疲れやすいなどの心不全症状が主な症状の方もいます。(3)全身の痙攣発作やふらつき,感覚低下,足の変形などを認める。(4)肥大型心筋症の所 見を呈し、やがて心不全となります。糖尿病や低身長、難聴等の症状を伴います。

7. この病気にはどのような治療法がありますか

電子伝達系の機能を補うために、ユビキノンやコハク酸が使われることがあります。これらの投与によって症状が改善したという報告もありますが、全ての患者に有効であるとはいえません。
ミ トコンドリアの異常によって、エネルギーが十分産生できないと、ミトコンドリアに代わって、解糖系がブドウ糖を分解して乳酸にする過程でエネルギーを作り 出します。乳酸が大量に産生されると、血液が酸性に傾き、意識障害が引き起こされたりします。血液を中性にもどすために、点滴をする必要が生じることもあ ります。

8. この病気はどういう経過をたどるのですか

乳児期や小児期に発症した患者さんは、変異ミトコンドリア遺伝子の割合が高いことが多く、進行して、心不全や腎機能異常、あるいは血液の中の乳酸が異常に高くなることによって死亡する場合もあります。

思春期や成人に達して発症した場合には、比較的病気の進行がゆっくりであることが多い。次第に筋肉の力が弱くなったり、脳や心臓の機能が低下したりします。

情報提供者
研究班名 循環器系疾患調査研究班(特発性心筋症)
情報更新日 平成22年3月9日