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再生不良性貧血(公費対象)

さいせいふりょうせいひんけつ

この病気は公費負担の対象疾患です。公費負担の対象となるには認定基準があります。
(認定基準、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

1. 再生不良性貧血とは

再生不良性貧血は血液中の白血球、赤血球、血小板のすべてが減少する疾患です。この状態を汎血球減少症と呼びます。重症度が低い場合には、貧血と血小板減少だけがあり、白血球数は正常近くに保たれていることもあります。白血球には好中球、リンパ球、単球などがあり、再生不良性貧血で減少するのは主に好中球です。これらの血球は骨髄で作られますが、本症で骨髄を調べると骨髄組織は多くの場合脂肪に置き換わっており、血球が作られていません。そのために貧血症状、感染による発熱、出血などが起こります。

2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか

臨床調査個人票を用いた2006年の解析では、全国の患者数は約11,159人で、新たに発生する患者さんの数は100万人あたり6人前後とされています。

3. この病気はどのような人に多いのですか

男女比を見ると女性の方が男性より多く、約1.5倍です。すべての年齢にみられますが、男女とも20歳代と60~70歳代に患者数のピークがあります。

4. この病気の原因はわかっているのですか

骨髄中の造血幹細胞が何らかの原因で傷害されて起こる病気です。造血幹細胞とは骨髄中にあって、赤血球、好中球、血小板の基になる未熟な細胞です。赤血球、好中球、血小板は骨髄で完成すると血液中に放出され、その後赤血球は約120日、好中球は半日、血小板は約10日で壊れます。健康な人では造血幹細胞からこれら3種類の血球が絶えず作り続けられて、毎日壊れた血球分を補っています。再生不良性貧血ではその造血幹細胞が何らかの原因で傷害されるため、3種類の血球が補給出来なくなっています(図1)。

〔 図1 〕

図1 再生不良性貧血の病態

再生不良性貧血には生まれつき遺伝子の異常があって起こる場合とそうでない場合があります。生まれつき起こる(先天性の)再生不良性貧血はごくまれな疾患で、その多くは、人の名前が付けられたファンコニ貧血という病気です。後者は後天性再生不良性貧血と呼ばれ、実際にはこれが大部分を占めます。
 
後天性再生不良性貧血には何らか原因があって起こる場合と原因不明の場合があります。約80%の例は原因不明です。残りは薬剤・薬物、放射線、ウイルスなどが原因として疑われています。原因不明の例を特発性再生不良性貧血と呼び、原因のある例を二次性再生不良性貧血と呼びます。
 
特発性再生不良性貧血の大多数は自己免疫的な(免疫を司る細胞が自分の細胞を攻撃する)機序による造血幹細胞の傷害が原因と考えられています。免疫というのは、外からの細菌やウイルスの感染を防ぐための体のしくみであり、主に白血球の中のリンパ球が担当しています。一方、自己免疫反応とは、このしくみが何らかの原因で変化した結果、リンパ球などが自分自身の細胞を傷害するようになることを指します。その結果起こる病気は自己免疫疾患と呼ばれています。特発性再生不良性貧血においては、造血幹細胞が自分自身のリンパ球によって傷害されると考えられています(図1)。ただし、すべての特発性再生不良性貧血がそのような自己免疫反応によって起こっているわけではなく、一部の例では造血幹細胞自身の異常が原因と考えられています。
 

5. この病気は遺伝するのですか

生まれつき起こるファンコニ貧血は「常染色体劣性」という遺伝形式をとる病気です。再生不良性貧血の大部分を占める後天性では遺伝は証明されていません。ただし、すべての病気の発症は生まれつきの体質と環境の影響を受けますので、この病気でも「なりやすさ」という体質は遺伝する可能性があります。

6. この病気ではどのような症状がおきますか

赤血球、好中球、血小板の減少によってさまざまな症状がおこります。赤血球は酸素を運搬しているため、その減少によって酸素欠乏の症状が起こります。酸素欠乏は主に脳、筋肉、心臓に起こります。脳の酸素欠乏でめまい、頭痛が起こり、筋肉の酸素欠乏で身体がだるくなったり、疲れやすくなったりします。心臓の酸素欠乏により狭心症様の胸痛が起こることもあります。それ以外に、身体の酸素欠乏を解消しようとして呼吸が速くなったり、心拍数が多くなったりします。呼吸が速くなったことを息切れとして感じ、心拍数が速くなった状態を動悸として感じます。赤い赤血球が減るため顔色も蒼白になります。
 
白血球のうち好中球は主に細菌を殺し、リンパ球は主にウイルス感染を防ぎます。したがって、好中球が減ると肺炎や敗血症のような重症の細菌感染症になりやすくなります。
 
血小板は出血を止める働きをしているので、少なくなると出血しやすくなります。よく見られるのは皮膚の点状出血や紫斑です。それ以外に鼻出血・歯肉出血や、血小板減少がひどくなると脳出血・血尿・下血などが起こります。

7. この病気にはどのような治療法がありますか

A)原因をさけること

薬剤・化学物質や放射線が原因として疑われる場合はそれをさける必要があります。ただし、実際には因果関係がはっきりしている薬剤やごく少数であり、これらの薬剤は現在は使用されていません。

B)治療法の種類

治療法としては、1.免疫抑制療法、2.骨髄移植、3.蛋白同化ステロイド療法、4.支持療法があります。特発性でも二次性でも、いったん発症すると治療は同じです。
 
免疫抑制療法とは、造血幹細胞を傷害しているリンパ球を抑えて造血を回復させる治療法です。抗胸腺細胞グロブリン(英語の頭文字をとってATGあるいはALGとも呼ばれています)とシクロスポリンいう薬が使われます。
 
骨髄移植は、患者さんの骨髄細胞を他の人の正常な骨髄細胞と取り換える治療法です。HLAという白血球の型のあった兄弟姉妹あるいは骨髄バンクの骨髄提供者から骨髄細胞をもらい点滴します。最近では臍帯血移植も試みられています。
 
蛋白同化ステロイドは腎臓に作用し、赤血球産生を刺激するエリスロポエチンというホルモンを出させるとともに、造血幹細胞に直接作用して増殖を促すと考えられています。

C)重症度による治療法の違い

病気の程度(重症度)によって治療を変える必要があります。重症度(ステージ)は白血球、赤血球、血小板の数と輸血を必要とするかどうかによって表1のように分けられます。

〔 表1 〕

表1 再生不良性貧血の重症度基準(平成16年度修正)

stage 1 軽 症 下記以外
stage 2 中等症 以下の2項目以上を満たす

網赤血球  60,000/μl未満
好中球    1,000/μl未満
血小板   50,000/μl未満
stage 3 やや重症 以下の2項目以上を満たし、定期的な赤血球輸血を必要とする

網赤血球  60,000/μl未満
好中球    1,000/μl未満
血小板   50,000/μl未満
stage 4 重 症 以下の2項目以上を満たす

網赤血球  20,000/μl未満
好中球     500/μl未満
血小板   20,000/μl未満
stage 5 最重症 好中球 200/μl未満に加えて、以下の1項目以上を満たす

網赤血球  20,000/μl未満
血小板   20,000/μl未満

注1 定期的な赤血球輸血とは毎月2単位以上の輸血が必要なときを指す。
注2 この基準は平成10(1998)年度に設定された5段階基準を修正したものである。

1.ステージ1および2の治療

汎血球減少が進行しない場合、通常は無治療で経過を観察します。これは、経過を見ているうちに自然に回復する例があるためです。数か月以上経過を見ても回復が見られず、免疫抑制療法によって改善しやすいという特徴がみられる場合は、血球減少の程度が軽くても、シクロスポリン(ネオーラル)という免疫抑制薬を2~3ヵ月内服して効果があるかどうかをみることがあります。これは、長期間かかって血球減少が進行した場合、その時点で治療を開始しても効果が得られにくいためです。特に血小板減少から始まった汎血球減少ではネオーラルの効果が得られやすい可能性があります。
 
血球減少が進行する場合や、血小板数が5万以下で日常生活に支障を来たす場合には、まずネオーラルを2~3ヵ月内服して効果があるかどうかを調べます。これによって血小板や網状赤血球の増加が見られなかった場合には、蛋白同化ステロイドの酢酸メテノロン(プリモボラン)に切り替えることがあります。男性の場合には最初からプリモボランを使用することもあります。血球減少が進行し、輸血が必要となった場合には入院してATG(サイモグロブリン)療法を受ける必要があります。
 
プリモボランは2~4錠/日を一日2回に分けて内服します。副作用には多毛、色素沈着、嗄声、無月経などの男性化作用と肝障害があります。男性化の副作用の多くは不可逆的であるため若年女性にとっては深刻です。若年女性に対して投与が必要な場合は5~10 mg以下の少量で開始し、効果が乏しい場合には長期投与を避ける必要があります。
 
ネオーラルは一日5mg/kg/日前後を一日2回に分けて内服します。効果のある患者さんでは1~2ヶ月以内に網赤血球という若い赤血球か血小板が増加し始めます。副作用として腎障害、多毛、歯肉腫脹、手指振戦、高血圧、消化器症状などがあります。高度の腎障害以外はいずれも減量により軽快します。

2.ステージ3以上の重症例の治療

Stage 3~5の患者さんに対しては、ATG(サイモグロブリン)とネオーラルの併用療法か、白血球の型(HLA)の合う兄弟姉妹がいる場合には骨髄移植を行います。ATGは、ヒトの胸腺細胞でウサギを免疫することによって得られた一種の血液製剤で、強力な免疫抑制作用があります。ATGを使用する際には、異種蛋白に対するアレルギー反応を抑えるためにメチルプレドニゾロンまたはプレドニゾロンという副腎皮質ステロイドが短期間併用されます。日本ではサイモグロブリンの他にウサギ抗Tリンパ球グロブリン(ゼットブリン)が再生不良性貧血に対する治療薬として認可されています。
 
40歳以上の患者さんでは移植後の生存率が低いため、免疫抑制療法が第一選択の治療法です。これによって約70%の患者さんが改善し輸血が不要となります。一方、免疫抑制療法の場合には改善したとしても再発や、骨髄異形成症候群・急性骨髄性白血病への移行などの問題があるため、40歳未満の患者さんでHLA一致同胞がいる場合は一般に骨髄移植療法が勧められます。ただし、骨髄移植の場合、治療を受けたためにかえって命が短くなるリスクがあるため、20~40歳の患者さんに対しては、骨髄移植と免疫抑制療法のそれぞれの長所・短所(表2)をよく理解したうえで、患者さんの希望や状態に応じた治療を選ぶ必要があります。

〔 表2 〕

表2 骨髄移植と免疫抑制療法の比較

  骨髄移植 ATG+CsA療法
● 骨髄移植に有利な点
造血回復の程度 ほとんどの場合完全 しばしば不完全
再発の可能性 ほとんどない 高い(~30%)
二次性MDS、AML、PNHの発症リスク ない 約1割
造血回復までに要する時間 3週間以内 1ヶ月以上
● ATG+CsA療法に有利な点
入院期間 2ヶ月以上 1ヶ月以内
社会復帰までに必要な療養期間 3ヶ月以上 奏効した場合は1~2ヶ月
治療関連死亡のリスク 10~20% 5%以下
妊孕能低下のリスク 全身放射線照射例では高い ない
回復後のQOL GVHD合併例では低い MDS、PNHへの移行がなければ高い
二次性固形腫瘍のリスク 放射線レジメンを受けた例では可能性がある 報告はあるが因果関係は証明されていない

免疫抑制療法が無効でHLAが一致する血縁ドナーがいない場合、非血縁ドナーからの骨髄移植がもっとも有効な治療方法です。ただし、非血縁ドナーからの移植では、血縁ドナーからの移植に比べて治療に関連した死亡のリスクが高いため、プリモボランで経過をみることがあります。保険適用外ですが、蛋白同化ステロイドの一種であるダナゾールは一部の患者さんに著効を示すため、他剤が無効の場合一度は試みる価値があります。また、初回のATG療法によってある程度の反応が得られた患者さんでは、保険適用外ですがATGの再投与が効果を示すこともあります。
 
これらの治療が無効であり、定期的な輸血が必要な比較的若年(50歳未満)の患者さんに対しては非血縁ドナーからの骨髄移植が行われます。年齢が16歳未満の場合、非血縁ドナーからの移植後5年生存率(85%)は血縁ドナーからの移植後5年生存率(93%)とほぼ同等ですが、16歳以上の場合には非血縁が70%、血縁が89%とかなりの差があります。これは、非血縁ドナーからの移植後には、移植された細胞の拒絶や移植片対宿主病(GVHD)などの合併症の頻度が高いためです。拒絶を防ぐためにこれまで用いられてきた抗がん剤や全身放射線照射は臓器に対する毒性が強いため、最近ではこれらの抗がん剤や全身放射線照射の量を大幅に減量する代わりに、フルダラビンという免疫抑制作用の強い薬剤を使った毒性の低い移植療法が試みられています。これによって非血縁ドナーからの移植成績が向上することが期待されます。

D)支持療法

支持療法とは、病気の根本的な治療ではなく、その症状を改善するための治療のことです。
 
それには貧血に対する赤血球輸血、血小板減少に対する血小板輸血、白血球減少に対する白血球を増やすホルモンの投与があります。また、白血球減少に伴って敗血症や肺炎などの感染症が起これば抗生物質で治療します。
 
貧血に対しては赤血球輸血を行います。自覚症状にもよりますが、一般にはヘモグロビン濃度が7g/dl以下にならないように、白血球が除去された赤血球製剤を輸血します。
 
血小板減少に対しては血小板輸血を行います。しかし、血小板数が少ないからといってすぐに血小板輸血を行うことはありません。鼻血、歯肉出血、下血、血尿、脳出血時などの出血傾向が著しい場合、手術時、感染症を起こしているときなどに限って行います。その理由は、長期にわたって血小板輸血を行うと血小板に対する抗体ができて、血小板を輸血しても血小板が増えなくなるからです。抗体ができた場合には、HLAという「白血球型」があった血小板を輸血する必要があります。
 
好中球減少が著しかったり、そのために重症感染症を起こしたりしている場合は顆粒球コロニ一刺激因子(granulocyte colony-stimulating factor,G-CSF)という好中球を増やすホルモンを使います。これによって好中球が増え、感染症が克服されることが期待できます。しかし、好中球数が極端に少ない場合にはG-CSFを投与しても好中球が増えないこともあります。

8. この病気はどういう経過をたどるのですか

発症後早期に的確に治療された場合には、8割以上の患者さんが輸血不要となるまで改善します。ただ、G-CSFを投与しても好中球が0のままで全く増えない最重症例では、早期に骨髄移植を行わなければ感染症のため死亡する確率が高いのが現状です。一部の重症例や、発症後長期間を経過した患者さんは免疫抑制療法に反応しないため、定期的な赤血球・血小板輸血が必要になります。赤血球輸血が度重なると糖尿病・心不全・肝障害などの鉄過剰症の症状が徐々に進行します。
 
このような輸血による鉄過剰症に対しては、デフェラシロクス(エクジェイド)という経口の除鉄薬が用いられます。これによって鉄過剰症による臓器障害を改善することができます。
 
免疫抑制療法により改善した再生不良性貧血患者さんの約5%は骨髄異形成症候群や急性骨髄性白血病などの悪性疾患に移行するとされています。特に7番染色体の欠失がある例の予後は非常に悪いことが知られています。このため、血球減少が改善したのちも定期的に血液検査を受け、異常がみられた場合には骨髄染色体検査を受ける必要があります。

情報提供者
研究班名 血液系疾患調査研究班(特発性造血障害)
研究班名簿  研究班ホームページ 
情報更新日平成23年9月3日