多系統萎縮症(3)シャイ・ドレーガー症候群(指定難病17)

たけいとういしゅくしょう しゃい・どれーがーしょうこうぐん
 

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

(1)線条体黒質変性症
(2)オリーブ橋小脳萎縮症
(3)シャイ・ドレーガー症候群

1.シャイ・ドレーガー症候群とはどのような病気ですか

多系統萎縮症という疾患の一つの病型です。多系統萎縮症の中で、発症初期の症状が尿失禁や失神などの自律神経障害で、それが主な症状として経過するものをシャイ・ドレーガー症候群とよんでいます。病気の進行に伴い、パーキンソン病に似た症状や、起立・歩行のふらつきなどが出現します。

2.この病気の患者さんはどのくらいいるのですか

令和元年度末の統計では多系統萎縮症の患者さんは全国に11,387人程います。そのうち、約15%がこの病型と推定されています。

3.この病気はどのような人に多いのですか

発症は成年期で、特に50歳代に多いです。

4.この病気の原因はわかっているのですか

病気の正確な原因はわかっていません。この病気の患者さんの脳内の細胞に、特徴的なタンパク質の凝集(封入体といいます)があることがわかっています。乏突起膠細胞(オリゴデンドログリア)や神経細胞の中にアルファ-シヌクレインというタンパク質が凝集した特殊な封入体が形成されます。また、発症への関与が疑われる遺伝子が複数知られています。これらを手がかりに発症機序の研究が進められています。

5.この病気は遺伝するのですか

通常は遺伝しません。極めて稀に血縁者が発症することがあります。このことから、この病気になりやすい体質(遺伝素因)があると想定されています。

6.この病気ではどのような症状がおきますか

代表的な自律神経障害の症状は立ちくらみと尿失禁です。 起立性低血圧 が強いと、急に立ち上がったときに血圧が下がり脳への血流が一過性に乏しくなります。そのため急に目の前が暗くなり、強い虚脱感と共に失神します。これ以外にも汗をかかない、鼾をかく、睡眠時無呼吸、インポテンスなどがあります。シャイ・ドレーガー症候群では、これら自律神経障害に続いて小脳障害やパーキンソン症状が後から加わってきます。

7.この病気にはどのような治療法がありますか

病気の進行を止める治療は確立していません。それぞれの症状に対する治療を行います。しかし、起立性低血圧、排尿障害、パーキンソニズムなどの症状についてはいろいろな薬があります。適切に用いるとこれらの症状が軽くなるものがあります。立ちくらみによる失神や転倒の起きやすい状況に注意して生活することも大切です。薬の効かない排尿障害には時間をきめてカテーテルで自己導尿することもあります。排尿障害、特に尿失禁は社会活動に大きな障害となります。また尿路感染の誘因ともなります。排尿管理については泌尿器科医師も含めて専門医の助言を得ることが大切です。適度な運動は身体機能を維持する上で欠かせません。担当の医療関係者からのアドバイスを参考に、いろいろと工夫してみましょう。

8.この病気はどういう経過をたどるのですか

他の多系統萎縮症の病型と同じく、進行性の経過をとります。

9.食事・栄養について

線条体黒質変性症と同じですので、参照してください。

10. 次の病名はこの病気の別名又はこの病気に含まれる、あるいは深く関連する病名です。 ただし、これらの病気(病名)であっても医療費助成の対象とならないこともありますので、主治医に相談してください。

線状体黒質変性症、オリーブ橋小脳変性症、MSA、MSA-P、MSA-C

 

情報提供者
研究班名 運動失調症の医療水準、患者QOLの向上に資する研究班
研究班名簿 研究班ホームページ
情報更新日 令和4年12月(名簿更新:令和5年6月)