リジン尿性蛋白不耐症(指定難病252)

りじんにょうせいたんぱくふたいしょう

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

○ 概要

1.概要 
二塩基性アミノ酸の輸送蛋白の一つであるy+LAT-1(y+L amino acid transporter-1)の機能異常によって、二塩基性アミノ酸(リジン、アルギニン、オルニチン)の輸送異常(小腸での吸収障害、腎での再吸収障害)を生じるために、アミノ酸バランスの破綻、蛋白合成の低下などを招き、諸症状を来す。
初発時の主な臨床所見は高アンモニア血症、蛋白嫌い、成長障害、嘔吐、肝腫大などであるが個人差が大きい。本症は常染色体劣性遺伝を呈し、近年の本邦患者数は30~40人と推定される。LPIの責任遺伝子SLC7A7(Solute carrier family7, member7)はy+LAT-1をコードしている。
 
2.原因 
y+LAT-1の責任遺伝子であるSLC7A7の異常が報告されている。ただしその詳細な病態は未解明である。
 
3.症状 
出生時には異常を認めず、離乳期以後に嘔吐、下痢、体重増加不良、筋緊張低下などで気づかれることが多い。肝脾腫は新生児期から認める場合もある。蛋白過剰摂取後に嘔気/嘔吐、高アンモニア血症による意識障害を呈するため、1歳前後で多くは牛乳、肉、魚、卵を嫌うようになる(蛋白嫌い)。
離乳期以後、低身長(四肢・体幹均衡型)、低体重、疎な毛髪、皮膚や関節の過伸展を呈する。骨粗鬆症・頻回骨折を呈する割合は半数近くあり、なかには骨成熟の遅延、骨変形も認められる。また約1/3の症例に血液免疫学的異常所見を有する。ウイルス感染の重症化や感染防御能の低下、さらに血球貪食症候群、自己免疫疾患合併の報告がある。肺合併症(間質性肺炎、肺胞蛋白症)、腎病変(腎炎、尿細管障害)、血管内皮機能障害に基づくと思われる脳梗塞も報告されている。妊娠時には貧血、出血傾向、妊娠中毒症が生じやすい。
本疾患の臨床症状と重症度は非常に多彩であり、症例によっては診断が学童、成人期まで遅れる。
 
4.治療法 
高アンモニア血症の急性期は蛋白を除去し、静脈栄養によるカロリー調整を行う。またアンモニア代謝改善のため、L-アルギニン、安息香酸ナトリウム、フェニル酪酸ナトリウム、必要に応じL-シトルリンを投与する。無効な場合は、持続血液透析の導入を図る。
維持療法としては、充分なカロリー摂取と蛋白制限、アミノ酸補充が主体となる。カルシウム、鉄、亜鉛やビタミンD等は欠乏しやすく、蛋白除去乳の併用も考慮する。
L-アルギニンも有効だが、吸収障害のため効果が限られ、また浸透圧性下痢を来しうる。二次的な低カルニチン血症には、L-カルニチンが有効である。その他、免疫能改善のためのγ グロブリン投与、肺、腎合併症に対するステロイド投与などが試みられている。
 
 
 
5.予後
合併症の重症度によるが、寝たきりの例から一応日常生活が可能な例までが存在し、また高アンモニア血症の程度により知能障害を残す。就業できた例においても体力的に継続できない場合も多い。肺、腎、骨症状は進行を阻止しきれず、これらの晩期合併症への対応が課題となっている。死亡原因としては肺病変の進行や重症感染症などがある。
 
○ 要件の判定に必要な事項
1.患者数
100人未満
2.発病の機構
不明(責任遺伝子は判明しているが、病態は未解明な点が多い。)
3.効果的な治療方法
未確立(対症療法のみである。)
4.長期の療養
必要(根治療法がなく、諸臓器症状は緩徐進行性)
5.診断基準
あり(研究班作成の診断基準あり。)
6.重症度分類
先天性代謝異常症の重症度評価で、中等症以上を対象とする。
 
情報提供元
「厚生労働科学研究難治性疾患克服研究事業 リジン尿性蛋白不耐症における最終診断への診断プロトコールと治療指針の作成に関する研究」
研究代表者 秋田大学小児科 教授 髙橋勉
 
 
 
 
<診断基準>
 
以下の臨床所見(A)のいずれかを満たし、かつ主要な検査所見(B)のうち3項目以上を満たすもの。
                                                                                
A.臨床所見
 
l  低身長、体重増加不良、肝腫大、脾腫大のいずれかを呈する。
l  蛋白摂取後の嘔吐・腹痛がある。もしくは高蛋白食品(肉、魚、卵・乳製品)を嫌う。
 
( 参考所見)
l  ウイルス感染の重症化、免疫異常、自己免疫疾患
l  骨粗鬆症      
l  筋力低下、易疲労
 
B.検査所見
 
l  尿中アミノ酸分析でリジン(症例によりアルギニン、オルニチンも)の排泄亢進 (必須項目)
l  高アンモニア血症の既往 
l  血清LDH、フェリチン値の上昇
SLC7A7遺伝子変異の確定
 
(参考所見)
l  血中アミノ酸分析で、リジン、アルギニン、オルニチンのいずれか又は3者の低値 
l  末梢白血球・血小板減少、貧血
 
 
 
 
<重症度分類>
先天性代謝異常症の重症度評価で、中等症以上を対象とする。

 

先天性代謝異常症の重症度評価(日本先天代謝異常学会)

点数

I

薬物などの治療状況(以下の中からいずれか1つを選択する)

a

治療を要しない

b

対症療法のために何らかの薬物を用いた治療を継続している

c

疾患特異的な薬物治療が中断できない

d

急性発作時に呼吸管理、血液浄化を必要とする

II

食事栄養治療の状況(以下の中からいずれか1つを選択する)

a

食事制限など特に必要がない

b

軽度の食事制限あるいは一時的な食事制限が必要である

c

特殊ミルクを継続して使用するなどの中程度の食事療法が必要である

d

特殊ミルクを継続して使用するなどの疾患特異的な負荷の強い(厳格な)食事療法の継続が必要である

e

経管栄養が必要である

III

酵素欠損などの代謝障害に直接関連した検査(画像を含む)の所見(以下の中からいずれか1つを選択する)

a

特に異常を認めない

b

軽度の異常値が継続している    (目安として正常範囲から1.5SDの逸脱)  

c

中等度以上の異常値が継続している (目安として1.5SDから2.0SDの逸脱)      

d

高度の異常値が持続している    (目安として2.0SD以上の逸脱)

IV

現在の精神運動発達遅滞、神経症状、筋力低下についての評価(以下の中からいずれか1つを選択する)

a

異常を認めない

b

軽度の障害を認める  (目安として、IQ70未満や補助具などを用いた自立歩行が可能な程度の障害)

c

中程度の障害を認める (目安として、IQ50未満や自立歩行が不可能な程度の障害)   

d

高度の障害を認める  (目安として、IQ35未満やほぼ寝たきりの状態)    

V

現在の臓器障害に関する評価(以下の中からいずれか1つを選択する)

a

肝臓、腎臓、心臓などに機能障害がない

b

肝臓、腎臓、心臓などに軽度機能障害がある
(目安として、それぞれの臓器異常による検査異常を認めるもの)

c

肝臓、腎臓、心臓などに中等度機能障害がある
 (目安として、それぞれの臓器異常による症状を認めるもの)

d

肝臓、腎臓、心臓などに重度機能障害がある、あるいは移植医療が必要である 
(目安として、それぞれの臓器の機能不全を認めるもの)

VI

生活の自立・介助などの状況(以下の中からいずれか1つを選択する)

a

自立した生活が可能

b

何らかの介助が必要

c

日常生活の多くで介助が必要  

d

生命維持医療が必要

総合評価

IからVIまでの各評価及び総点数をもとに最終評価を決定する。

(1)4点の項目が1つでもある場合    

重症

(2)2点以上の項目があり、かつ加点した総点数が6点以上の場合  

重症

(3)加点した総点数が3-6点の場合  

中等症

(4)加点した総点数が0-2点の場合   

軽症

注意

診断と治療についてはガイドラインを参考とすること

疾患特異的な薬物治療はガイドラインに準拠したものとする

疾患特異的な食事栄養治療はガイドラインに準拠したものとする

 
※診断基準及び重症度分類の適応における留意事項
1.病名診断に用いる臨床症状、検査所見等に関して、診断基準上に特段の規定がない場合には、いずれの時期のものを用いても差し支えない(ただし、当該疾病の経過を示す臨床症状等であって、確認可能なものに限る。)。
2.治療開始後における重症度分類については、適切な医学的管理の下で治療が行われている状態であって、直近6か月間で最も悪い状態を医師が判断することとする。
3.なお、症状の程度が上記の重症度分類等で一定以上に該当しない者であるが、高額な医療を継続することが必要なものについては、医療費助成の対象とする。
 

本疾患の関連資料・リンク

「厚生労働科学研究難治性疾患克服研究事業 リジン尿性蛋白不耐症における最終診断への診断プロトコールと治療指針の作成に関する研究」
研究代表者 秋田大学小児科 教授 髙橋勉


情報提供者
研究班名先天代謝異常症の生涯にわたる診療支援を目指したガイドラインの作成・改訂および診療体制の整備に向けた調査研究班
研究班名簿 研究班ホームページ
情報更新日令和2年8月