特発性後天性全身性無汗症(指定難病163)
1. 「特発性後天性全身性無汗症」とはどのような病気ですか
運動をした時とか暑くて気温の高い環境にいても汗をかくことができない病気を無汗症といいます。無汗症には、生まれつき遺伝する先天性無汗症のほか、生まれた後(後天性)に発症する後天性無汗症があります。特発性後天性全身性無汗症は、明らかな原因がなく後天性に汗をかくことができなくなりますが汗の異常以外に自律神経異常および神経学的異常を伴わない疾患と定義されています。患者さんは体温調節に重要な汗をかくことが少なくなるので、運動や暑いところで簡単に体温が上昇して熱中症などになりやすくなります。
2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか
令和5年度末の特定医療費(指定難病)受給者証所持者数は全国で655名と非常にまれな病気であるものの、患者数は年々増加しています。実際は病院に受診できていない患者さんもいると考えられますので、患者数はもっと多い可能性があります。
3. この病気はどのような人に多いのですか
欧米人より日本人のほうが圧倒的に多いと考えられています。また、10~30歳代の若い男性に多いとされています。また、もともとたくさん汗をかくことが多い職業やよく運動をしている人に発症しやすいです。
4. この病気の原因はわかっているのですか
原因はまだわかっていません。汗を出すエクリン汗腺(えくりんかんせん)の障害が関係していると考えられます。ひとつは、汗腺の表面にあるアセチルコリン受容体の異常です。通常、神経から分泌されるアセチルコリンという物質がこの受容体に結合することで汗が出ますが、異常があると発汗が低下します。もうひとつは、汗腺そのものが傷んで汗を作れなくなる場合や、傷んだ汗腺から皮膚内に汗が漏れてしまい結果として汗が減る場合です。
汗腺:汗をだす器官で体温調節するエクリン汗腺と体臭のもとになるものを分泌するアポクリン汗腺の2種類の汗腺があります。
アセチルコリン:神経伝達物質で神経の末端から分泌して神経刺激を伝える役割があります。
5. この病気は遺伝するのですか
遺伝はしません。
6. この病気ではどのような症状がおきますか
患者さんは体温を調節するという大切な役割のある汗を出す機能が障害されるため、運動や暑熱環境でうつ熱を起こし、全身のほてり感、体温上昇、脱力感、疲労感、顔面紅潮、 悪心 ・嘔吐、頭痛、めまい、動悸などがみられます。ひどいときは熱中症になり意識を失ったりすることもあります。運動や暑熱環境で皮膚のピリピリする痛み・痒みを伴う小さな赤い発疹(コリン性蕁麻疹)がしばしばみられます。
7. この病気にはどのような治療法がありますか
現在のところ、医学的に有効性が確立された薬や治療法はありません。ただし、副腎皮質ステロイドであるメチルプレドニゾロン(500~1000mg/日)を3日間点滴静注するステロイド・パルス療法という治療法があり、効果は報告によって異なりますが(改善率:約50~90%)、症状が生活に大きな支障を及ぼす場合に投与が考慮されます。その他、じんましん治療薬(抗ヒスタミン薬やオマリズマブ)、漢方薬、血流改善薬、唾液分泌促進薬などで発汗が改善したとの報告もあります。また、多くの有効例では、治療と並行して無理のない範囲で運動や入浴などの発汗刺激を生活に取り入れる指導を行うこともあります。
8. この病気はどういう経過をたどるのですか
現在のところ「完全に治る」とはいえませんが、ステロイド療法などで症状が改善する方は半数ほどおられます。治療の効果には個人差があり、再び症状が出る場合もありますが、多くの方が工夫しながら日常生活を送ることができています。
9. この病気は日常生活でどのような注意が必要ですか
熱中症を起こしやすいため、暑く湿度の高い環境や強い運動には特に注意が必要です。基本的には涼しい環境で過ごし、クールベストや水分の携帯など体を冷やす工夫を心がけてください。一方で、医師の指導のもとで安全が確保できる状況では、軽い運動や適度な発汗刺激を生活に取り入れる場合もあります。ただし決して無理をせず、体調に応じて調整することが大切です。
10. 次の病名はこの病気の別名又はこの病気に含まれる、あるいは深く関連する病名です。 ただし、これらの病気(病名)であっても医療費助成の対象とならないこともありますので、主治医に相談してください。
特発性分節型無汗症
特発性純粋発汗不全(IPSF)
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