メニュー


HOME >> 病気の解説(一般利用者向け) >> 血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)

血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)

けっせんせいけっしょうばんげんしょうせいしはんびょう

(指定難病一覧(概要、診断基準等・臨床調査個人票))

1.「血栓性血小板減少性紫斑病 thrombotic thrombocytopenic purpura : TTP」とはどのような病気ですか

末梢の細血管が血小板の凝集塊(血小板血栓)によって閉塞され、以下のような5つの症状(5徴候)がみられる全身性の重篤な疾患と考えられてきました。
1. 血小板減少症(出血傾向のため、皮膚に紫斑ができる)
2. 溶血性貧血 (赤血球の機械的な崩壊がおこる)
3. 腎機能障害 (腎臓の毛細血管が血栓で閉塞する)
4. 発熱
5. 動揺性精神神経症状(症状に大きな幅があり、また著しく変動する)

1924年に米国の医師Eli Moschcowitz によってTTPが最初に報告されましたが、上記の5症状は1966年にAmorosi & Ultmannの二人によって提唱されました。近年の病態解析の結果、5徴候全部揃わなくても、血小板減少症と溶血性貧血があれば、TTPを念頭において診断を行うべきとの考え方が主流を占めています。一方、血小板減少症、溶血性貧血、そして腎機能障害を3徴候とする疾患で溶血性尿毒症症候群 (hemolytic uremic syndrome; HUS)という疾患があります。 HUSはTTPよりも腎機能障害の程度が強いことが特徴的とされてきましたが、実際、臨床上ではTTPとHUSの鑑別はしばしば困難で、両者は共に血栓性微小血管症 (thrombotic microangiopathy, TMA)という共通の病理学的診断名のカテゴリーに入っています。

最近では、TTPは下記で説明するADAMTS13 (a disintegrin-like and metalloproteinase with thrombospondin type 1 motifs 13)活性が著減するものを指し、それ以外で5徴候を認める症例はTTP類縁疾患と診断するべきであるという考えが広がっています。

2.この病気の患者さんはどのくらいいるのですか

特徴的な診断基準が無かった時代には、人口100万人当たり毎年4人(0.0004%)発症すると推計されてきましたが、疾患自体が広く認識されるようになり、最近はこれより遥かに多いと考えられていました。ただ、ADAMTS13活性著減のみをTTPとしますと妥当な頻度と考えられます。

3.この病気はどのような人に多いのですか

先天性のものと後天性のものとがあります。先天性TTPはADAMTS13(下記に記載)の遺伝子異常によるものです。これは極めて稀な疾患で、生後間もなく重症黄疸と血小板減少で発症するUpshaw-Schulman症候群(USS)という病名で知られています。

一方、後天性TTPはTTP全体の95%以上を占めており、発症年令は乳幼児から老人までと幅広く、男女の発症率は、全体的にはほぼ1:1ですが、20~40歳では、1:2の比率で女性に多いという報告があります。それらは、原因不明に起こるものを原発性、また何らかの基礎疾患があって起こるものを二次性あるいは続発性と言います。近年、特定薬剤による発症も報告されていますが、定期的な検査の実施を徹底し発症予防をしています。

4.この病気の原因はわかっているのですか

全身の細い動脈(特に脳、腎臓、そして冠状動脈)が血小板血栓で詰まる事によって起こります。この原因として従来は二通りの説がありました。一つは、細小動脈の内壁が何らかの原因で障害され、血管内皮細胞の持つ抗血小板機能が失われ、同所で血小板の凝集、消費が進む場合です。もう一つは、ADAMTS13活性著減で、TTPはこちらの原因のみを指すようになりました。

ADAMTS13は別名フォンビルブランド因子(von Willebrand factor; VWF)切断酵素とも呼ばれる主として肝臓で産生される酵素です。VWFは互いの血小板をくっつける「分子糊」として知られていますが、これを切断するADAMTS13の活性が減少もしくは欠損するために、非常に大きなVWF重合体(unusually-large VWF multimer; UL-VWFM)が血液中に存在し、血管内で血小板血栓がどんどんできる状態となりTTPを発症します。全身の毛細血管の内側は本来なら赤血球が通れるほどの大きさですが、血管内皮に血小板が張り付いて血栓を作ると、この構成成分であるフィブリン糸がクモの巣状に張りめぐらされ、この間隙を赤血球が通過する際に、物理的に破棄され、溶血性貧血がおこると考えられます。因に、毛細血管は血流も非常に速いため、このような条件下では物体を歪まそうとする物理的な力、"ずり応力"、が強く生じ、血小板血栓形成に拍車がかかる状態となります。またこの"ずり応力"を高めるもう一つの要因として、血液の粘度上昇があり、それは高体温や運動負荷後などで脱水症状をおこしたような状態の時です。

血漿ADAMTS13活性著減の原因として、1)ADAMTS13活性の先天性欠損、2)後天性にADAMTS13に対する自己抗体(IgG型中和抗体、IgA、IgM型非中和抗体)の産生、3)重篤肝機能障害などによる産生低下などが知られています。

5.この病気は遺伝するのですか

先天性TTPの USSは第9染色体上にあるADAMTS13遺伝子の異常に基づく病気で、遺伝形式は見かけ上は常染色体劣性を示します。即ち、患者の両親は保因者ですが無症状です。一方、患者でこの遺伝子のホモ接合体(2つの遺伝子ともに同じ部位に異常をもつ)患者は稀で、多くは両親から異なったADAMTS13遺伝子異常を引き継ぎ、いわゆる複合型ヘテロ接合体で異常が見つかります。つまり、USS患者であっても、それを引き継いだ子供はおおむね無症状の保因者であるということです。一方、後天性TTPの遺伝性は今のところ認められていません。

6.この病気ではどのような症状がおきますか

先天性TTPであるUSSは、生後間もなく発症する重症型が約半数ありますが、学童期に発症するものや、稀に成人期以降に発症するタイプもあります。この発症年令の差が何故なのかは未だ不明です。しかし、最近になって小児期に特発性血小板減少性紫斑病(ITP)と誤って診断されている症例で、妊娠を契機にTTPを発症し、USSであると診断された例が多く報告されています。また非経産婦、男性にいたっては高齢になって発見される場合もあります。

後天性TTPでは、体のだるさ、吐き気、筋肉痛などが先行し、発熱、貧血、出血(手足に紫斑)、精神神経症状、腎障害が起こります。発熱は38℃前後で、ときに40℃を超えることもあり、中等度ないし高度の貧血を認め、軽度の黄疸(皮膚等が黄色くなる)をともなうこともあります。精神神経症状として、頭痛、意識障害、錯乱、麻痺、失語、知覚障害、視力障害、痙攣などが認められます。血尿、蛋白尿を認め、まれには腎不全になる場合もあります。

7.この病気にはどのような治療法がありますか

先天性TTP(USS)に対しては、2週間毎に新鮮凍結血漿10ml/kg体重を輸注し、ADAMTS13酵素を補充する事により発症を予防します。ただし、半数の症例で定期的な補充を必要とせず、発作時のみ新鮮凍結血漿を輸注している症例もあります。

後天性TTPに対しては、基本となるのは以下の血漿交換療法です。血小板減少に対して、初回に血小板輸血を行うと症状が急速に増悪する事がありますので、予防的血小板輸血は「禁忌」と考えられています。しかし、活動性出血などがあり、やむなく血小板輸血による止血が必要とされる場合もあります。この場合は、その後速やかに血漿交換を行うか、或は時間的余裕がある場合であれば、血漿交換後に血小板輸血を行うという方法もあります。また、この病気の治療において、全身管理は特に大切で、原因疾患がある場合には、その治療が必要です。また、急激な腎機能障害の進行のために人工透析が必要とされることもあります。
(1)血漿交換療法
血漿交換療法が第一選択です。できるだけ早期に血漿交換を開始することが重要だと言われています。
(2)ステロイド療法
多くの症例で血漿交換と同時に実施されています。短期間に大量投与するパルス療法とステロイドを内服する場合があります。
(3)抗血小板療法
TTP回復期の血小板数増加時に再血栓が出来るのを防ぐために、抗血小板薬を併用する事があります。
(4)その他
難治性TTPの場合には、ビンクリスチンやシクロスポリンなどの免疫抑制剤、ガンマ・グロブリン製剤などが経験的に使用されてきました。最近では、リツキシマブという抗CD20キメラモノクロナール抗体製剤の投与が有効であるという報告が多くなされています。リツキシマブはADAMTS13インヒビター(IgG型自己抗体)を産生するBリンパ球を破壊し、抗体産生を抑えるために有効と考えられています。但し、平成26年12月現在で保険未適用ですが、医師主導治験が行われており、早期に保険適用される努力がなされています。

8.この病気はどういう経過をたどるのですか

先天性TTP(USS)に対しては、現在の日本における治療方法は、定期的に血漿を輸注し、欠損しているADAMTS13酵素を補充する方法しかありません。しかし、近い将来、遺伝子組み換えADAMTS13製剤による治療が期待されています。これらの治療により普通の生活が送れますが、稀に腎臓が悪くなり血液透析を受けている方もおられます。

後天性TTPについては、血漿交換療法が導入されてから治療成績は著しく向上しました。しかし、十分に効果が認められない症例や、何度もTTP症状を繰り返す症例(難治・再発性TTP)、また、TTPの寛解後に膠原病を発症するようなこともあります。

9.この病気は日常生活でどのような注意が必要ですか

先天性TTP(USS)では、定期的に新鮮凍結血漿の輸注を受ける必要があります。定期的な輸注が不必要な場合でも、インフルエンザなどの感染が引き金となってTTPの発作が起こることがあります。また、後天性TTPの場合は、TTPの発作が収まる寛解となっても、その後の1年間に約1/3の症例が再発すると報告されていますので、注意が必要です。

10.ADAMTS13活性はどこで測定していますか?

TMAは基本的に血小板輸血をできるだけ避けるべき病態ですが、まず、血小板減少の原因がTMAであることを診断しなければなりません。その診断にはADAMTS13活性測定とVWF解析は必須となります。とりわけADAMTS13活性著減TTPでは、血小板輸血を行う事は「火に油をそそぐ(fuel on the fire)」と云う事になるため血小板輸血は禁忌です。つまり、血小板輸血する前にはADAMTS13活性の測定を実施することが重要です。現在、測定キットも市販化され複数の会社での受託検査も可能です。また、簡便で迅速な測定法の開発も進んでいますが、検査費用は未だ保険適用になっておりません。測定を希望される方、もしくは興味ある方は奈良県立医科大学輸血部のホームページ(http://www.naramed-u.ac.jp/~trans/)を御覧下さい。


治験情報の検索:国立保健医療科学院
※外部のサイトに飛びます。
情報提供者
研究班名 血液凝固異常症等に関する研究班
研究班名簿   
情報更新日平成26年12月18日