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血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)

けっせんせいけっしょうばんげんしょうせいしはんびょう

(指定難病一覧(概要、診断基準等・臨床調査個人票))

1)概要

概念・定義
血栓性微小血管症 (thrombotic microangiopathy, TMA)という病理学的診断名がある。これは1)微小血管性溶血性貧血(microangiopathic hemolytic anemia: MAHA)、2)破壊性血小板減少、そして細血管内血小板血栓を特徴とする病態で、検査診断学的には、破砕赤血球、血小板減少、血栓による臓器機能障害を特徴とする。このTMA病態を示す代表疾患として、血栓性血小板減少性紫斑病(thrombotic thrombocytopenic purpura; TTP)と溶血性尿毒症症候群(hemolytic uremic syndrome; HUS )がある。

TTPは、1924年米国のEli Moschcowitzによってはじめて報告された全身性重篤疾患で、症状は上記1)2)に、腎機能障害、発熱、動揺性精神神経障害を加え、これを古典的5徴候と称する。一方、これによく似たHUSは上記の1)2)と急性腎不全の3徴候からなる疾患で1955年にドイツのGasserらにより報告された。以後、TTPは極めて稀な疾患で、患者の殆どは成人であり、一方HUSは小児に多く、とりわけ近年は腸管出血性大腸菌O157:H7株による感染性腸炎に続発するものが殆どであると一般に認識されてきた。しかし、便中に志賀様毒素(通称、ベロ毒素)が検出できるO157感染に併発するHUSを除いて、TTPとHUSの両者は症状のみでは鑑別困難な例がしばしばある。これ故、近年はTMAという病理学的診断名も多用される傾向にある。一方、TMA類似病態であるが、凝固(フィブリン)血栓を主体とし、凝固異常を伴う播種性血管内凝固(disseminated intravascular coagulation, DIC)は、原則として凝固異常がないTMAとは異なった病態カテゴリーと理解される。

TTPは上記の5徴候で診断されてきたが、最近では後述するADAMTS13活性著減症例のみをTTPと診断するようになった。ADAMTS13活性非著減例でも古典的5徴候を認める症例があり、TTP類縁疾患と考えられている。

b.疫学
発症率は人口100万人に年間4人と推計されているが、TTPに対する認識が高まったことにより発症率が上昇していると言われている。TTPには先天性(Upshaw-Schulman症候群:USS)と後天性が存在するが、大部分が後天性である。USSは先天性であるが、新生児期に重症黄疸で診断される典型的な症例から、成人後に妊娠などに伴って発症する成人発症型が存在する。後天性TTPは、20-40歳代の女性に多いと言われていたが、日本国内のADAMTS13活性著減後天性TTPは60歳前後に最も多く、40歳前後にもピークを認めた。40歳前後では女性が多いが、60歳以上になると男性が多い傾向が認められた。

c.病因・病態
止血因子であるvon Willebrand因子(VWF)は、血管内皮細胞で超高分子量VWF多重体(unusually-large VWF multimers, UL-VWFM)として産生され、内皮細胞内の小器官Weibel-Palade体に蓄積される。この後、一部は血管内皮下組織に分泌され内皮下マトリックスの構成成分となるが、残りの大部分は、様々な刺激によって内皮細胞からから血中に放出される。この時、UL-VWFMはその特異的切断酵素ADAMTS13 (a disintegrin-like and metalloproteinase with thrombospondin type 1 motifs 13) によって切断され小分子化し、止血に適した分子型となる。従って、ADAMTS13活性が著減するとUL-VWFMが切断されず、血中に蓄積し、末梢細動脈等で生じる高ずり応力下に過剰な血小板凝集⁄血栓を生じる。ADAMTS13活性が著減する原因として、ADAMTS13遺伝子異常に基づく先天性TTP(USS)と、ADAMTS13対するIgG、IgAあるいはIgM型の中和ないし非中和自己抗体による後天性TTPが知られている。

d.症状・検査所見
先天性TTP(USS)では、新生児期の重症黄疸が特徴的と言われているが、この症状を認めない症例がある。その場合でも、小児期に感冒などに伴って血小板減少を認めることが多い。後天性TTPの急性期所見として、1-3 万/ul の高度な血小板減少を認め、ヘモグロビンが 8-10g/dl 程度の貧血症例が多い。腎機能障害として、尿潜血や尿蛋白陽性のみの軽度のものから血清クレアチニンが上昇する症例もあるが、血液透析を必要とする程度の急性腎不全の場合はHUSが疑われる。37℃程度の微熱から39℃ 台の高熱まで発熱がある場合がある。 頭痛など軽度のものから、せん妄、錯乱などの精神障害、人格の変化、意識レベルの低下、四肢麻痺や痙攣などの神経障害などの動揺性精神神経症状を認める場合がある。

e.治療
先天性TTP(USS):新鮮凍結血漿 (FFP) 10 ml/kg を2週毎に輸注してADAMTS13酵素補充を行い、血小板数を維持しTTP発症予防治療が行われている場合が多い。近未来には遺伝子発現蛋白(rADAMTS13)による酵素補充療法が可能となると思われる。

後天性TTP: ADAMTS13活性は著減し、ADAMTS13インヒビター(自己抗体)陽性であるので、FFPのみの投与では不十分で、治療は血漿交換(plasma exchange, PE)療法が第一選択となる。この際ステロイドもしくはステロイドパルス療法の併用が一般的である。PEの効果は、1)ADAMTS13の補充、2)同インヒビターの除去、3)UL-VWFMの除去、4)止血に必要な正常VWFの補充、また、5)炎症性高サイトカイン血症の是正も効能とされる。

TTPの血小板減少に対して、血小板輸血を積極的に行う事は「火に油をそそぐ(fuel on the fire)」に例えられ、基本的には予防的血小板輸血は禁忌となる。また、難治・反復例に対してはビンクリスチン、エンドキサンなどの免疫抑制剤の使用なども考慮される。最近では、抗CD20キメラ抗体であるリツキシマブがPEに治療抵抗性を示し、且つ高力価ADAMTS13インヒビターを認める症例に極めて有用との報告が数多くなされている。しかし、本邦では未だ保険適用外である。

f.ケア
TTPでは高度の血小板減少を認めるが点状出血以外の出血症状を認めることはまれである。

g.食事・栄養
ステロイドなどの免疫抑制剤使用時には、食事の際には生ものに注意が必要である。

h.予後
先天性TTP(USS)は比較的予後良好と言われているが、腎不全のため血液透析となっている症例が存在する。また、USSと診断前に妊娠した場合、妊娠中期以降に流産となることが多く、母体死亡の症例を経験している。後天性TTPの致死率は15-20%であるが、寛解となっても1年以内に1/3の症例が再発すると言われている。

2)診断

①診断基準、②重症度分類から構成し、2つを明確に区分すること。
<診断基準>
他に原因を認めない血小板減少を認めた場合、ADAMTS13活性を測定し10%未満に著減している症例をTTPと診断する。抗 ADAMTS13 自己抗体が陽性であれば後天性 TTP と診断する。陰性であればUSSと診断する。(補足) TTPを疑う5徴候を認めるがADAMTS13活性が著減していない症例も、従来TTPと診断されてきたが、その病態が明らかでないためTTP類縁疾患と考えられている。なお、TTP類縁疾患の場合でもただちに血漿交換などの治療が必要な症例が存在する

TTPを疑う徴候の目安
① 血小板減少
血小板数が 10 万/ul 未満。1-3 万/ul の症例が多い。
② 微小血管性溶血性貧血(microangiopathic hemolytic anemia:MAHA)
MAHA は、赤血球の機械的破壊による貧血で、ヘモグロビンが 12g/dl 未満(8-10g/dl の症例が多い)で溶血所見が明らかなこと、かつ直接クームス試験陰性で判断する。 溶血所見とは、破砕赤血球の出現、間接ビリルビン、LDH、網状赤血球の上昇、ハプトグロビンの著減などを伴う。
③ 腎機能障害
尿潜血や尿蛋白陽性のみの軽度のものから血清クレアチニンが上昇する症例もあり。ただし、血液透析 を必要とする程度の急性腎不全の場合は溶血性尿毒症症候群(HUS)が疑われる。
④ 発熱
37℃ 以上の微熱から 39℃ 台の高熱まで認める
⑤ 動揺性精神神経症状
頭痛など軽度のものから、せん妄、錯乱などの精神障害、人格の変化、意識レベルの低下、四肢麻痺や痙攣などの神経障害などを認める。

除外すべき疾患
① 播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation:DIC)
TTP 症例では、PT,APTT は正常で、フィブリノゲン、アンチトロンビンは低下しないことが多く、FDP,D-dimerは軽度の上昇にとどまることが多い。DIC の血栓は、フィブリン/フィブリノゲン主体の凝固血栓であり、APTT と PT が延長し、フィブリノゲンが減少する。
② 溶血性尿毒症症候群(hemolytic uremic syndrome:HUS)
腸管出血性大腸菌(0157 など)感染症による典型 HUS は、便培養検査・志賀毒素直接検出法(EIA)などの大腸菌の関与を確認する方法や抗 LPS(エンドトキシン)IgM 抗体などで診断する。
③ HELLP 症候群
HELLP 症候群とは、妊娠高血圧腎症や子癇で、溶血(hemolysis)、肝酵素の上昇(elevated liver - enzymes)、 血小板減少(low platelets)を認める多臓器障害である。 診断は、Shibai らの診断基準(Shibai BM,et al.Am J Obstet Gynrcol 1993;169:1000)によって行われるが、この 基準では TTP との鑑別が困難である。ADAMTS13活性が著減していればTTPと診断する。
④ Evans 症候群
Evans 症候群では直接クームス陽性である。ただし、クームス陰性 Evans 症候群と診断されることがあるが、 このような症例の中から ADAMTS13 活性著減 TTP が発見されている。

補足
抗ADAMTS13インヒビターをベセスダ法で測定し、1 単位/ml 以上は明らかな陽性と判断できる。しかし、陰性の判断は必ずしも容易ではなく、USS の診断は両親の ADAMTS13 活性測定などを参考に行うが、確定診断には ADAMTS13 遺伝子解析が必要である。USS 患者の両親は、ヘテロ接合体異常であることから ADAMTS13活性は 30 から 50%を示す場合が多い。
なお、ADAMTS13自己抗体は、中和抗体(インヒビター)を測定することが一般的であり、研究室レベルでのみ非中和抗体の検査が可能である。

<重症度分類>

後天性T T P重症度分類

1. ADAMTS13インヒビター 2BU/ml以上
2. 腎機能障害
3. 精神神経障害
4. 心臓障害(トロポニン上昇、ECG異常等)
5. 腸管障害(腹痛等)
6. 深部出血または血栓
7. 治療不応例
8. 再発例

<判定> 有1点、無0点

重症 3点以上
中等症 1点~2点
軽症 0点

先天性TTP(Upshaw-Schulman症候群:USS)重症度分類

1) 重症
維持透析患者、脳梗塞などの後遺症残存患者
2) 中等症
定期的、または不定期に新鮮凍結血漿(FFP)輸注が必要な患者
3) 軽症
無治療で経過観察が可能な患者

 

 

3)治療 治療指針

急性期、慢性期、寛解期、増悪期の病状に応じた内容とする。
なお、医薬品については、保険適応されているものに限定する。
右に該当しないものについては、適応外であることを明記する。

先天性TTP(USS)
FFP 10ml/kgを2-3週間毎に定期投与する。

後天性TTP
急性期
FFP50-80kg/kgを置換液として1日1回血漿交換を連日施行する。血小板数が正常化するまで連日施行するのが理想であるが、保険適用は週3回を上限としているので注意が必要である。ステロイドパルス療法などステロイド治療を併用することが多いが、保険適用外である。

不応例、再発例
上記の治療に不応もしくは再発する症例には、シクロフォスファミド、ビンクリスチンなどの免疫抑制剤が使用されることが多かった(いずれも保険適用外)が、最近ではCD20に対するモノクローナル抗体リツキシマブが使用されている。CD20はB細胞に発現しており、抗体産生を抑制する効果が期待できる。ただし、保険適用になっておらず、現在医師主導治験が行われている。

4)鑑別診断

鑑別すべき疾患を列記し、簡単に説明する。
① 播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation:DIC)
TTP 症例では、PT,APTT は正常で、フィブリノゲン、アンチトロンビンは低下しないことが多く、FDP,D-dimerは軽度の上昇にとどまることが多い。DIC の血栓は、フィブリン/フィブリノゲン主体の凝固血栓であり、APTT と PT が延長し、フィブリノゲンが減少する。
② 溶血性尿毒症症候群(hemolytic uremic syndrome:HUS)
腸管出血性大腸菌(0157 など)感染症による典型 HUS は、便培養検査・志賀毒素直接検出法(EIA)などの大腸菌の関与を確認する方法や抗 LPS(エンドトキシン)IgM 抗体などで診断する。
③ HELLP 症候群
HELLP 症候群とは、妊娠高血圧腎症や子癇で、溶血(hemolysis)、肝酵素の上昇(elevated liver - enzymes)、 血小板減少(low platelets)を認める多臓器障害である。 診断は、Shibai らの診断基準によって行われるが、この 基準では TTP との鑑別が困難である。ADAMTS13活性が著減していればTTPと診断する。
④ Evans 症候群
Evans 症候群では直接クームス陽性である。ただし、クームス陰性 Evans 症候群と診断されることがあるが、 このような症例の中から ADAMTS13 活性著減 TTP が発見されている。

5)最近のトピックス

もしあれば簡単に記載する。
遺伝子組み換えADAMTS13の国際治験が開始されています。
TTPに対するリツキシマブの医師主導治験が2014年に行われました。

6)本疾患の関連資料・リンク

 


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情報提供者
研究班名 血液凝固異常症等に関する研究班
研究班名簿   
情報更新日平成26年12月18日