メニュー


HOME >> 病気の解説(一般利用者向け) >> シトリン欠損症(指定難病318)

シトリン欠損症(指定難病318)

しとりんけっそんしょう

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

1. 「シトリン欠損症」とはどのような病気ですか

「シトリン欠損症」とは、身体の中(主に肝臓)で、「シトリン」という輸送体タンパク質を上手に作ることができない(欠損する)病気です。シトリン欠損症では新生児・乳児の時と大人の時では症状が全然違うので、それぞれの時期の病状にあわせて、下のような別な名前が付いています。
新生児・乳児期のときの病名:新生児肝内胆汁うっ滞症
 (NICCD : neonatal intrahepatic cholestasis caused by citrin deficiency)
成人での病名:成人発症 II 型シトルリン血症
(CTLN2: adult-onset type II citrullinemia)
細胞の中でシトリンは糖・アミノ酸・脂質・エネルギー代謝などに広く関係しています。

2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか

遺伝子変異からの計算上では日本ではおよそ7千から1万7千人に一人の割合と算定されます。しかし実際にCTLN2の発症報告からの計算では10万人に一人の頻度です。つまりシトリン欠損症のすべての方が、CTLN2を発症するわけではないと考えられています。

3. この病気はどのような人に多いのですか

シトリン欠損症は、日本人を含めた東-東南アジアに多い疾患です。
また、兄弟姉妹にシトリン欠損症がいる場合には、25%の確率でシトリン欠損症である可能性があります。

4. この病気の原因はわかっているのですか

シトリンの設計図はSLC25A13という遺伝子に記載されています。各人みなSLC25A13遺伝子を父由来のものと母由来のものとで2つ持っています。両方のSLC25A13遺伝子にシトリンの働きを悪くするような設計上の書き違い(遺伝子変異)があると、シトリン欠損症になります。この場合、父、母は一方のSLC25A13遺伝子のみの変異を持っていることとなり、その場合には保因者と言って、シトリン欠損症にはなりません。

5. この病気は遺伝するのですか

遺伝する病気であり(常染色体劣性遺伝)、保因者である両親から生まれた児がシトリン欠損症である確率は25%になります(質問3、4も参照)。

6. この病気ではどのような症状がおきますか

新生児・乳児期のときはNICCDという形で発症します。皮膚や白目が黄色いこと(黄疸)が長引いたり、体重の増え方が悪いなどの症状を認めます。黄疸が長引く・強い場合には胆道閉鎖症との区別が重要になります。胆道閉鎖症はみつかったら生後60日以内に手術が必要な病気なので、採血、エコーなど入院して短期間に集中的して検査が行われる場合もあります。生まれて間もなく全員が実施する検査(新生児マススクリーニング)でのデータ異常(シトルリン、メチオニン、フェニルアラニン、ガラクトース高値など)から、症状が出る前に発見される方もいます。
幼児期から学童期のシトリン欠損症の方ははっきりした症状のない時期を過ごします(適応・代償期)。ただし全く無症状というわけではなく、疲れやすかったり、低血糖をおこしたりする方もいます。また、この時期に糖質(白いご飯、麺類、甘いジュース、餡、みりんの照り焼きなど)を嫌い、蛋白質(豆類、豆腐、牛乳、ヨーグルト、チーズ、肉、魚など)や脂質(ナッツ類、から揚げ肉、生クリームなど)の多い食事を好む食癖が大半の方ではっきりしてきます。
思春期以降はCTLN2の形で発症します。突然、帰る道がわからなくなったり、自分がどこで何をしているのか分からなくなったり、暴れだしたりすることがあり、精神科的な疾患と疑われることがあります。また急に意識を失ったり、てんかん様発作を起こした場合には、救急施設に搬送されることもあります。飲酒が引きがねになることがあります。血液中のアンモニアとシトルリンが高いことが、診断の決め手になります。

7. この病気にはどのような治療法がありますか

NICCDは胆汁のながれが悪い状態です(つまり「うっ滞」している)。胆汁は脂肪の吸収に働くため、NICCDでは脂肪吸収が悪い状態になっています。そのため胆汁がなくても吸収されやすい脂肪(中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT))が多い特殊ミルクを飲用します。また胆汁を流れやすくする利胆剤(ウルソデオキシコール酸)や欠乏しやすい脂溶性ビタミン(ビタミンA, D, K, E)の内服をします。血液のガラクトースが高い場合には、乳糖(ガラクトースの元)を除去した特殊ミルクを使用します。ほとんどが1歳までに改善しますが、ごく一部に肝臓の機能がどんどん悪くなり、肝臓移植が必要であったお子さんもいます。
幼児期から学童期には、はっきりした症状がないため、個々の症状(例えば低血糖)に対しての治療をします。また、6で述べた糖類を嫌い、蛋白や脂質の多い食事を好む食癖は、病状を悪くしないための自己防衛反応と考えられますので、その食事を変更しないようにします。この時期でも、MCTオイルの飲用がよいとも言われています。
CTLN2が発症した場合には高アンモニア血症が認められます。そこで旧来的な高アンモニア血症の治療(「蛋白質の軽減」および「糖質による高カロリー輸液」)ではよけい状態を悪くすることが知られています。また、脳浮腫(脳のむくみ)をとるための治療薬のひとつ(グリセロール)も病状を悪化させることが知られています。よって、まずこれらの治療法を避けてもらうことが重要です。そのうえで、低糖質・高蛋白・高脂肪食、MCTオイル、アミノ酸の点滴、脂肪製剤の点滴などで治療します。コントロールが困難な場合には肝臓移植も考える必要があります。

8. この病気はどういう経過をたどるのですか

これまでに記載したように新生児・乳児時期のNICCDから、はっきりした症状のない時期(適応・代償期)を経て、CTLN2に至ると推測されています。しかしながらCTLN2の患者さんでこの経過をたどったことがはっきりしているのは、数例程度しか確認できていません。
また、2で述べたようにCTLN2は患者さんの数は遺伝子変異からの予想される数よりもかなりすくなく、シトリン欠損症の方すべてがCTLN2を発症するわけではないと考えられます。

9. この病気は日常生活でどのような注意が必要ですか

7で述べたように、糖類を嫌い、蛋白や脂質の多い食事を好む食癖は、病状を悪くしないための自己防衛反応と考えられます。よって、「好き嫌いのはげしい、我が儘な子」と叱ったり、無理矢理に他の人と同じもの(特に糖質)を食べさせようとしないで下さい。場合によっては事前に学校との給食での対応についてうちあわせが必要になります。ただし、3歳以下の幼児には豆、ピーナッツをそのままの形で与えることは、気管に詰まらせる可能性があるため、事故防止の観点から行ってはいけません。
成人になっても飲酒は厳禁です。また、CTLN2で急に発症して意識のないまま救急施設に搬送される可能性があることを考慮すると、7でのべたような旧来の治療をさけてもらえるような工夫が必要です。そのための一例としては病状説明のカード(「高カロリー輸液」・「グリセロール」使用の禁忌を記載)をいつも携帯するなどの対策が挙げられます。

10. この病気に関する資料・関連リンク

日本先天代謝異常学会/
新生児マススクリーニング診療ガイドライン
http://jsimd.net/pdf/newborn-mass-screening-disease-practice-guideline2015.pdf
 
日本先天代謝異常学会/
特殊ミルクの適応症と食事療法のガイドライン「小児消化器疾患」
http://jsimd.net/documents/MedicalDiet/I-syounisyoukasikkan.pdf


治験情報の検索:国立保健医療科学院
※外部のサイトに飛びます。
情報提供者
研究班名 先天代謝異常症の生涯にわたる診療支援を目指したガイドラインの作成・改訂および診療体制の整備に向けた調査研究班
研究班名簿   
新規掲載日平成29年7月24日