メニュー


HOME >> 病気の解説(一般利用者向け) >> カルニチン回路異常症(指定難病316)

カルニチン回路異常症(指定難病316)

かるにちんかいろいじょうしょう

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

1. 「カルニチン回路異常症」とはどのような病気ですか

ヒトのからだは、多少の食事間隔があいてもエネルギー不足にならないように様々な仕組みでエネルギーを補います。脂肪を分解してエネルギーにするのも重要な仕組みの1つで、このおかげで、食欲が落ちたときなどでも低血糖症などの重篤なエネルギー不足にならずに過ごす事ができます。カルニチンはからだの中で脂肪を分解する時に必須の物質で、脂肪をエネルギー工場ともいえる細胞内のミトコンドリアという場所の中に運ぶときに使われます。このカルニチンを細胞の中に取り込み、脂肪をミトコンドリアに運ぶなどの一連のステップをまとめてカルニチン回路と呼びます。カルニチン回路異常症の患者さんは、それらのステップのどこかが生まれつき十分ではなく、脂肪をエネルギーとして上手に使う事が出来ません。患者さんの症状は生まれた直後から重篤な症状がある場合から成人になるまでほとんど自覚症状もない場合まで様々です。カルニチン回路異常症では、各ステップを担っている酵素や蛋白の種類によりさらに細かく分類されます。カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ-1(CPT-1)欠損症、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ-2(CPT-2)欠損症、カルニチン/アシルカルニチントランスロカーゼ(CACT)欠損症及びカルニチントランスポーター(OCTN-2)異常症がそれらにあたります。いずれの病気も“新生児マススクリーニング”対象疾患ですが、CACT欠損症、CPT-2欠損症、OTCN-2異常症については自治体の判断で検査をしていない場合もあります。

2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか

新生児マススクリーニングで見つかる患者さんの頻度から、CPT-1欠損症はおよそ30万人に1人、CPT-2欠損症はおよそ26万人に1人、OCTN-2異常症はおよそ26万人に1人と考えられています。CACT欠損症については約196万人を対象としたスクリーニング検査では発見されなかったことからそれ以下の頻度と考えられます。

3. この病気はどのような人に多いのですか

カルニチン回路を構成する酵素や蛋白は、その設計図である遺伝子を基に作られます。ヒトではこの遺伝子2つを1ペアとして持っていますが、患者さんは遺伝子の2つともが十分ではありません。遺伝子は両親から受け継ぎますので、カルニチン回路異常症の患者さんの両親は2つの遺伝子うち十分にはたらかない遺伝子を1つ持っている事がおおく、この場合両親は保因者と呼ばれます。

4. この病気の原因はわかっているのですか

CPT-1欠損症、CPT-2欠損症は、CACT欠損症、OCTN-2異常症でそれぞれの酵素や蛋白をつくる設計図になっている遺伝子が2つあるうち両方とも十分に働かない事が原因である事が分かっています。しかし、同じ病気でも症状の程度に差ががあることもしられています。

5. この病気は遺伝するのですか

遺伝する病気です。両親がともに保因者である場合は1/4の確率で患児が生まれます。患者さんがお子さんをのぞむ場合、配偶者が保因者である場合は1/2の確立で患児がうまれますが、配偶者が保因者でない場合、患児は生まれることはないといえます。

6. この病気ではどのような症状がおきますか

カルニチン回路異常症は複数の病気を併せた呼び方であり、それぞれの病気によって少しずつ症状が違う部分もありますが、いずれの病気も脂肪がエネルギー源として利用できない事による、様々な臓器のエネルギー不足と、体にとって最も基本的なエネルギー源であるブドウ糖を急激に使い果たしてしまう事による影響(低血糖症といいます)が問題になります。肝臓や筋肉、心臓などは脂肪をエネルギーとしてたくさん利用するので、カルニチン回路異常症の患者さんでは、肝機能障害、脂肪肝、筋痛、横紋筋融解症(筋肉がこわれる)、心筋症などの症状が見られることがあります。低血糖症による症状としては、意識障害や痙攣、嘔吐、脳症などの重篤な症状を引き起こすことがあります。ただし、症状にはそれぞれの患者さん毎にかなりの個人差があります。

7. この病気にはどのような治療法がありますか

生まれて間もない時期に重篤な状態に陥ったり、すでに診断されていている患者さんが重篤な発作として発症した場合は、特別に濃厚な治療が必要です。集中治療による十分なブドウ糖の投与や必要に応じての様々なビタミン類の投与などが行われます。
普段の生活においては、重篤な発作を起こさない様に生活や食事の面で気を付ける事がとても大切です。体が脂肪を使う状況が起こらないよう、医師と相談しながら食事間隔や食事内容を決めていきます。OTCN-2異常症の患者さんにおいては大量のカルニチン内服が非常に有効である事が分かっています。CPT-1欠損症の患者さんではカルニチンを内服する事はありませんが、CPT-2欠損症やCACT欠損症の患者さんでは状況によっては内服する事があります。また、場合によってはカルニチン回路異常症の患者さんでも体内で利用できる中鎖トリグリセリド(MCT)を摂取する事があります。
また、感冒や胃腸炎などに罹患した場合は、特別の注意が必要です。早期のブドウ糖点滴などをしっかり行う事が急性発作の予防につながります。

8. この病気はどういう経過をたどるのですか

生後間もなく重篤な状態になる患者さんの一部は救命が困難であったり、重篤な神経学的な後遺症を残すことがあります。新生児マススクリーニングで発見される場合でも、特に乳幼児期では感冒などにともなう急性発作として発症する場合があります。この場合、重篤な低血糖症を合併することもあります。適切な治療により乳幼児期を過ぎた場合、低血糖症などの症状は減る傾向にあります。その代わりに筋肉などの症状が強くなっていく傾向があります。患者さんによっては、学童期や成人期になるまで全く症状がなく、最初の症状が筋痛や筋力低下などの症状であることもあります。

9. この病気は日常生活でどのような注意が必要ですか

日頃から食事間隔や内容に注意し、病院で処方された治療を継続することが大切です。感冒などで食事が取れない時にはただちに病院でブドウ糖点滴を受ける事が重要です。OTCN-2異常症の患者さんでは、ある種の抗生剤を服用すると急激に症状が増悪する事がありますので処方を受ける場合には注意が必要です。
また、定期的に病院で血液検査などを受ける必要があります。過度な運動やダイエット、飲酒は症状を増悪させる危険があります。手術の際、妊娠、出産の際はあらかじめ病名を申告し、適切な配慮を受ける必要があります。

10. この病気に関する資料・関連リンク

日本先天代謝異常学会(ガイドライン)
NPO法人タンデムマス・スクリーニング普及協会(病気の説明、新生児マススクリーニングで見つかったとき、患者会へのリンク)


治験情報の検索:国立保健医療科学院
※外部のサイトに飛びます。
情報提供者
研究班名 先天代謝異常症の生涯にわたる診療支援を目指したガイドラインの作成・改訂および診療体制の整備に向けた調査研究班
研究班名簿   
新規掲載日平成29年7月24日