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プロピオン酸血症(指定難病245)

ぷろぴおんさんけつしょう

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

○ 概要
 
1.     概要
プロピオン酸血症(PA)は、プロピオニオニルCoAカルボキシラーゼの活性低下によって、プロピオン酸をはじめとする有機酸が蓄積し、代謝性アシドーシスに伴う各種の症状を呈する常染色体劣性遺伝形式の先天代謝異常症である。
 
2.     原因
プロピオニルCoAの代謝に障害を来す原因としては、(1)プロピオニオニルCoAカルボキシラーゼ欠損症(2)プロピオニオニルCoAカルボキシラーゼの補酵素であるビオチンの代謝障害、(3)ビオチンとPCCのアポ蛋白の共有結合を触媒する酵素であるホロカルボキシラーゼ合成酵素(HCS)欠損症がある。ビオチン代謝障害、HCS欠損症はマルチプルカルボキシラーゼ欠損症として発症する。わが国のタンデムマスによる新生児マススクリーニングの成績では発症頻度は約5万人1人と高頻度に発見され、有機酸代謝異常では最も発症率が高いとされている。
この中には軽症プロピオン酸血症と呼ばれる病型が多く含まれることが知られている。酵素活性が正常の6.9~7.5%程度のY435Cのホモ接合体であり、重篤なケトアシドーシス発作を発症しないと考えられている。生涯ケトアシドーシス発作を起こさないかは不明である。厳しいタンパク制限は不要であるものの、感染症罹患時は早期のブドウ糖輸液などの特別な管理が必要であると考えられる。
 
3.     症状
新生児期から乳児期にかけて、重度の代謝性アシドーシス、ケトーシス、高アンモニア血症などが出現し、哺乳不良・嘔吐・呼吸障害・筋緊張低下などから嗜眠~昏睡など急性脳症の症状へ進展する。初発時以降も同様の急性増悪を繰り返しやすく、特に感染症罹患などが契機となることが多い。コントロール困難例では経口摂取不良が続き、身体発育が遅延する。呼吸障害、中枢神経障害、意識障害、けいれん、嘔吐発作、心障害、骨髄抑制、視神経萎縮などを主な症状として認める。
 
4.     治療法
診断確定までは、新生児マス・スクリーニング陽性例では、診断確定までの一般的注意として、感染症などによる体調不良・食欲低下時には早めに医療機関を受診するよう指示した上で、必要によりブドウ糖輸液を実施する。診断確定後の治療としては、食事療法として、母乳や一般育児用粉乳にバリン・イソロイシン・メチオニン・スレオニン・グリシン除去ミルク(雪印 S-22)を併用して、タンパク摂取制限(1.5~2.0g/kg/日)を開始する。急性期、急性増悪時には、気管内挿管と人工換気、ブドウ糖を含む輸液、代謝性アシドーシスの補正、水溶性ビタミン投与、高アンモニア血症の薬物療法、血液浄化療法などが必要となる。
 
5.     予後
早期発症の重症例の予後は不良である。これらの症例を中心として、生体肝移植が試みられている。治療効果に乏しく、高アンモニア血症、代謝性アシドーシス発作を繰り返す症例が適応となる。食欲改善、食事療法緩和、救急受診・入院の大幅な減少など QOL が向上し、基底核梗塞様病変、精神発達遅滞については進行が抑制できるとされている。
○ 要件の判定に必要な事項
1.患者数
約300人
2.発病の機構
不明(プロピオニオニルCoAカルボキシラーゼの活性低下によって、プロピオン酸をはじめとする有機酸が蓄積し、代謝性アシドーシスに伴う各種の症状を呈する。)
3.効果的な治療方法
未確立(薬物治療によるアシドーシスの改善を図り、食事療法を併用する。)
4.長期の療養
必要(生涯にわたる薬物と食事療法が必要である。)
5.診断基準
あり(研究班作成の診断基準)
6.重症度分類
先天性代謝異常症の重症度評価を用いて、中等症以上を対象とする。
 
○ 情報提供元
「新しい新生児代謝スクリーニング時代に適応した先天代謝異常症の診断基準作成と治療ガイドラインの作成および新たな薬剤開発に向けた調査研究」 
研究代表者 熊本大学生命科学研究部小児科学分野 教授 遠藤文夫
 
 
 
<診断基準>
Definiteを対象とする。
 
①血中アシルカルニチン分析
プロピオニルカルニチン(C3)の増加
②尿中有機酸分析
メチルクエン酸、3-ヒドロキシプロピオン酸、3-ヒドロキシグリシンなどの排泄増加がみられる。これらの有機酸は、メチルマロン酸血症と共通の所見であるが、プロピオン酸血症ではメチルマロン酸の排泄増加は認められない。
③酵素活性測定
末梢血リンパ球や培養皮膚線維芽細胞の破砕液によるPCC酵素活性測定において、活性が正常の5%未満である。
④遺伝子解析
PCCA遺伝子(MIM 232000)とPCCB遺伝子(MIM 232050)のいずれかに、原因となる遺伝子変異を有する。
 
<診断のカテゴリー>
①②で特異的所見が得られたものをDefiniteとする。尿中有機酸分析で特異的所見が不十分な場合には、③④酵素活性測定や遺伝子解析による確定診断が必要な場合もある。メチルマロン酸血症との鑑別が重要である。
 
 
 
<重症度分類>
中等症以上を対象とする。

 

先天性代謝異常症の重症度評価(日本先天代謝異常学会)

点数

I

薬物などの治療状況(以下の中からいずれか1つを選択する)

a

治療を要しない

b

対症療法のために何らかの薬物を用いた治療を継続している

c

疾患特異的な薬物治療が中断できない

d

急性発作時に呼吸管理、血液浄化を必要とする

II

食事栄養治療の状況(以下の中からいずれか1つを選択する)

a

食事制限など特に必要がない

b

軽度の食事制限あるいは一時的な食事制限が必要である

c

特殊ミルクを継続して使用するなどの中程度の食事療法が必要である

d

特殊ミルクを継続して使用するなどの疾患特異的な負荷の強い(厳格な)食事療法の継続が必要である

e

経管栄養が必要である

III

酵素欠損などの代謝障害に直接関連した検査(画像を含む)の所見(以下の中からいずれか1つを選択する)

a

特に異常を認めない        

b

軽度の異常値が継続している    (目安として正常範囲から1.5SDの逸脱)  

c

中等度以上の異常値が継続している (目安として1.5SDから2.0SDの逸脱)      

d

高度の異常値が持続している    (目安として2.0SD以上の逸脱)

IV

現在の精神運動発達遅滞、神経症状、筋力低下についての評価(以下の中からいずれか1つを選択する)

a

異常を認めない         

b

軽度の障害を認める  (目安として、IQ70未満や補助具などを用いた自立歩行が可能な程度の障害)

c

中程度の障害を認める (目安として、IQ50未満や自立歩行が不可能な程度の障害)   

d

高度の障害を認める  (目安として、IQ35未満やほぼ寝たきりの状態)    

V

現在の臓器障害に関する評価(以下の中からいずれか1つを選択する)

a

肝臓、腎臓、心臓などに機能障害がない

b

肝臓、腎臓、心臓などに軽度機能障害がある
(目安として、それぞれの臓器異常による検査異常を認めるもの)

c

肝臓、腎臓、心臓などに中等度機能障害がある
 (目安として、それぞれの臓器異常による症状を認めるもの)

d

肝臓、腎臓、心臓などに重度機能障害がある、あるいは移植医療が必要である 
(目安として、それぞれの臓器の機能不全を認めるもの)

VI

生活の自立・介助などの状況(以下の中からいずれか1つを選択する)

a

自立した生活が可能     

b

何らかの介助が必要      

c

日常生活の多くで介助が必要  

d

生命維持医療が必要     

総合評価

IからVIまでの各評価及び総点数をもとに最終評価を決定する。

(1)4点の項目が1つでもある場合    

重症

(2)2点以上の項目があり、かつ加点した総点数が6点以上の場合  

重症

(3)加点した総点数が3-6点の場合  

中等症

(4)加点した総点数が0-2点の場合   

軽症

注意

診断と治療についてはガイドラインを参考とすること

疾患特異的な薬物治療はガイドラインに準拠したものとする

疾患特異的な食事栄養治療はガイドラインに準拠したものとする

 
 
※診断基準及び重症度分類の適応における留意事項
1.病名診断に用いる臨床症状、検査所見等に関して、診断基準上に特段の規定がない場合には、いずれの時期のものを用いても差し支えない(ただし、当該疾病の経過を示す臨床症状等であって、確認可能なものに限る。)。
2.治療開始後における重症度分類については、適切な医学的管理の下で治療が行われている状態であって、直近6か月間で最も悪い状態を医師が判断することとする。
3.なお、症状の程度が上記の重症度分類等で一定以上に該当しない者であるが、高額な医療を継続することが必要なものについては、医療費助成の対象とする。
 

研究斑

新しい先天代謝異常症スクリーニング時代に適応した治療ガイドラインの作成および生涯にわたる診療体制の確立に向けた調査研究班
(研究代表者)中村公俊
(分担研究者)高柳正樹 担当 小林正久



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情報提供者
研究班名 先天代謝異常症の生涯にわたる診療支援を目指したガイドラインの作成・改訂および診療体制の整備に向けた調査研究班
研究班名簿   
情報更新日平成29年4月24日(研究班名簿:平成30年4月更新)