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脳表ヘモジデリン沈着症(指定難病122)

のうひょうへもじでりんちんちゃくしょう

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

1. 「脳表ヘモジデリン沈着症」とはどのような病気ですか

脳表ヘモシデリン沈着症は、1908年にはじめて報告された病気です。脳の表面(くも膜下出血を生じる場所)に、血液が持続的に漏れ出て、その血液の赤血球にある鉄(酸素を運搬するために大事なものです)が、ヘモジデリンという物質になって脳の表面に沈着します。その結果脳組織が破壊されてしまい、以下にのべるような様々な症状をだすと考えられます。大きく2つの病型に分けることができ、脳全体に広がる古典型と、脳の一部だけに病変が生じる限局型です。指定難病の対象は、古典型です。

2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか

論文の報告によれば、欧米では270例ほど、本邦で確認できる学会論文報告などでも100例に満たない希少疾患です。しかし、最近の画像診断の進歩やこの病気への認知度が広がったことから、今後もう少し増える可能性があります。

3. この病気はどのような人に多いのですか

とくに、どういった方に多いということはわかっていません。

4. この病気の原因はわかっているのですか

くも膜下腔に持続的に出血をするような病気を持っていれば、それが原因になることが考えられます。たとえば、脳腫瘍や動静脈奇形(脳血管の奇形で多くは、脳出血、くも膜下出血、てんかんなどを生じます)がある時、頭部外傷、アミロイドアンギオパチー(高齢者において脳の血管にアミロイドという物質が沈着して、血管の壁が弱くなり破れるもの)などが指摘されています。しかし、多くの場合は明らかな原因が不明です。一部では、脊椎の硬膜(脊椎の中にある脊髄を覆う硬い膜です)の異常がみつかることもあります。

5. この病気は遺伝するのですか

遺伝はしません。ただし、4.に述べた何らかの原因疾患が判明した場合、その原因疾患自体が遺伝性の場合もあります。

6. この病気ではどのような症状がおきますか

古典型と限局型では症状が異なります。この病気の中心となる古典型では、多くは50歳代で気づかれることが多いようです。過去の報告では男性に多く、この病気で亡くなられた方のデータでは、発症してから1年から22年までと幅が広くなっています。しかし、これは個々の方の症状などによって大きく変わる可能性があります。主な症状は、難聴、小脳失調、錐体路障害です。
 
《難聴》音を聞くために重要な聴神経にヘモジデリンが沈着することで生じます。この難聴は必発でこの病気で、完全聾になってしまうことが多いものです。
《小脳失調》ヘモジデリンは脳の表面、小脳(体のバランスを司る大事な脳)、脳幹(顔や首の運動や感覚を司る神経や、脳と四肢をつなぐ神経がある)、脊髄(手足の神経がある)の表面にも沈着します。特に、小脳へのヘモジデリン沈着は強く、そのため組織も強く破壊されます。その結果、話しにくくなったり、体がふらついたりします(ちょうどお酒を飲み過ぎて呂律がまわらない、あるいは千鳥足になるときと似ています)。これを小脳失調と言います。
《錐体路障害》脊髄の表面にヘモジデリンが沈着し、脊髄を破壊すると、錐体路障害といって、歩行のときに足が突っ張る、排尿がうまくできないといった症状が出ます。
《その他の症状》それ以外に、ヘモジデリンの沈着状況によって、においがわからない(嗅覚低下)といった症状も多く見られますが、きちんと検査がされていなくて気づかれていないときもあります。他には、ものが見えにくい(視覚障害)、物忘れや判断力が低下する(認知機能障害)など様々な症状を認めます。難聴は必発で、本疾患の特徴である。排尿障害、頭痛、嗅覚障害などもみられます。

7. この病気にはどのような治療法がありますか

この病気に対する、特異的な治療法はありません。特に、一度脳に沈着してしまったヘモジデリンを除去すること、あるいは、それにより破壊されてしまった脳組織を修復することが困難なためです。しかし、4.に述べたような、持続的出血の原因が判明した場合は、それを手術などにより、積極的に治療をすることが重要と考えられます。脊髄の硬膜欠損や瘻孔などがある場合は、可能なかぎり手術的に閉鎖を行ったほうがよいとする考えもあります。また、難聴に関しては、人工内耳による治療が効果的であることがあります。いったん発症してしまった後でも、持続的な出血を止めることが重要です。また、止血剤の点滴注射も効果がある可能性がありますが、個々の病態にあわせて判断する必要があります。 まだ、確立した治療法がないために、それぞれの状態に併せて、適切な対処方法を考える必要があります。

8. この病気はどういう経過をたどるのですか

患者さんによって異なりますが、⑦で述べた症状が徐々に進行して、移動が困難となり、車椅子やあるいはベッド上での生活を余儀なくされることになります。また、難聴のために、意思伝達も筆談などになりますが、小脳の障害のために、書字自体も難しくなり、文字盤などの使用が必要になります。日常生活動作が低下すると、誤嚥による肺炎や、褥瘡なども生じやすくなるので、総合的なケアが必要になります。病気自体の生命予後は、必ずしも短い訳ではありません。

9. この病気は日常生活でどのような注意が必要ですか

病状の進行により、日常生活動作が徐々に障害をされることが多いのですが、まずはリハビリテーションを日頃から行い、身体機能を維持することがとても重要になります。また、難聴のために周囲の音が聞こえないことで、事故などにならないようにしなければなりません。接近する車の音なども聞こえないので、外出時には注意が必要です。また、からだがふらつくことにより、転倒なども珍しくありません。転倒をした時に、骨折や頭部外傷などを生じると、その後の生活に大きく影響をします。リハビリテーションに加え、杖の使用、車椅子の使用など、状態に応じて適切な対応ができるよう、主治医との相談が重要です。排尿障害に関しても、尿路感染の原因などにもなりますので、主治医と相談をし、必要に応じて泌尿器などへの紹介をしてもらってください。病状が進行すると、嚥下障害、あるいは誤嚥による肺炎などのリスクも上昇します。食事の形態などにも病状に応じた注意が必要です。感染症予防のために、インフルエンザワクチン、肺炎球菌ワクチンなども可能な限り、接種をされたほうがよいと考えます。

10. この病気に関する資料・関連リンク

Superficial Siderosis
https://superficialsiderosis.wordpress.com/
 
山脇,櫻井.脳表ヘモジデリン沈着症の診断と治療.BRAIN and NERVE 2013;65(7):843-55


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情報提供者
研究班名 運動失調症の医療基盤に関する調査研究班
研究班名簿   
新規掲載日平成27年11月30日