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リジン尿性蛋白不耐症(指定難病252)

りじんにょうせいたんぱくふたいしょう

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

1. 「リジン尿性蛋白不耐症」とはどのような病気ですか

私たちの体では沢山のアミノ酸が体を構成し、動かすために働いています。リジン尿性蛋白不耐症では、そのなかのリジン、アルギニン、オルニチンという3つのアミノ酸(二塩基性アミノ酸といいます)、の腸からの吸収が弱く、そして尿にもこれらのアミノ酸が沢山出てしまうという体質をもっているために、体内でこれらのアミノ酸が不足し、いろいろな症状を来します。

2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか

2010年に全国主要病院の小児科、神経内科、腎臓内科、内分泌内科を対象に行った調査では、日本では30-40人の患者さんがいらっしゃると推定されています。海外の報告によると、リジン尿性蛋白不耐症の患者さんは日本のほかにはフィンランド、イタリアに比較的多くいることがわかっています。

3. この病気はどのような人に多いのですか

リジン尿性蛋白不耐症は遺伝子の変化によって生じる病気です。感染や食物、生活習慣などの環境によって病気になるということはありません。また、この遺伝子の変化は周産期や妊娠中の管理に由来するということもありません。

4. この病気の原因はわかっているのですか

患者さんでは、二塩基性アミノ酸(リジン、アルギニン、オルニチン)の運搬に関わる輸送体蛋白質(「y+LAT-1」といいます)の機能が低いことが病気の原因です。そのために、小腸で食べ物からの二塩基性アミノ酸をうまく取り込めなかったり、腎臓の尿細管から二塩基性アミノ酸が大量に漏れ出てしまったりします(再吸収がうまくいかないため)。結果として、体内では二塩基性アミノ酸が不足し、体内でのアミノ酸バランスの破綻や蛋白合成の低下を招き、様々な症状を来します。またこのy+LAT-1蛋白は腸や腎臓以外の臓器(白血球、肺、肝、脾等)でも発現が確認されており、それぞれの臓器での機能異常が多彩な症状につながっていると思われます。

5. この病気は遺伝するのですか

リジン尿性蛋白不耐症は常染色体劣性遺伝形式をとる病気です。私達の体には、約2万2千種類の遺伝子がありますが、これらの多くは2本でペアになって存在しています。1本はお父さんから、もう1本はお母さんから受け継いだものです。リジン尿性蛋白不耐症に関係するのはSLC7A7と言う遺伝子です。患者さんではSCL7A7の2本ともに変化が認められます。1本だけの場合は発症しません(このような方を保因者と呼びます)。患者さんの遺伝子変化が突然変異でない限り、お父さんお母さんは保因者である可能性が高く、その場合患者さんのご兄弟は25%の確率で同じ病気を呈する可能性があります。
患者さんのお子さんが同じ病気を起こす確率は実際にはかなり低いですが、配偶者の方が保因者である場合には十分あり得ます(詳しくは医療機関での遺伝カウンセリングをおすすめします)。

6. この病気ではどのような症状がおきますか

多くの患者さんでは出生時には異常がなく、離乳期以後に嘔吐、下痢、体重増加不良、筋力が弱いなどで気づかれます。新生児のときに肝脾腫を認める場合もあります。また、蛋白質を過剰に摂ると血中アンモニアが上がって具合が悪くなる(嘔気嘔吐、腹痛、意識障害など)ことから、1歳前後で牛乳、肉、魚、卵などの高蛋白食品を嫌うようになることが多いです。
離乳期以後は、低身長、低体重、まばらな毛髪、皮膚や関節の過伸展など、成長に伴ってでてくるものがあります。また、骨折の頻度がやや高く、骨粗鬆症を呈する割合は半数近く認められています。約1/3の患者さんでは白血球数が少ない、貧血、血小板減少などの血液所見がみられ、ウイルス感染の重症化や感染防御能の低下、さらに血球貪食症候群、自己免疫疾患合併の報告など、免疫に関係する症状をもつかたもいらっしゃいます。そのほか、頻度は低いですが肺や腎病変、脳梗塞も報告されています。
この病気の臨床症状や重症度は非常に幅広く、これらが全ての患者さんに生じるわけではありません。
臨床症状が一定でないために、患者さんによっては診断が学童、成人期となる場合もあります。

7. この病気にはどのような治療法がありますか

普段の治療は充分なカロリー摂取と蛋白制限、アミノ酸補充が主体となります。
日常の摂取蛋白を制限(目安として1日におよそ体重1kgあたり1-1.5g程度)することで、血中のアンモニアは上がりにくくなります(そもそも蛋白嫌いのかたが多く、もともと摂取量は少ないことが多いです)。しかし、一方でカロリー及びカルシウム、鉄、亜鉛、ビタミンDなどは不足しやすくなりますので、注意が必要です。なかなかカロリーや種々の栄養素が十分に摂れない場合は、無蛋白乳の併用も考慮します。
薬物治療としては、アミノ酸末であるL-シトルリン(日本では医薬品として認可されていません)の有用性が報告されています。L-シトルリンは中性アミノ酸であるため吸収障害はなく、肝でアルギニン、オルニチンに変換されます。同様にL-アルギニンも有効ですが、吸収障害のため効果が限られ、下痢をきたす場合があります。これらの薬物の内服は、高アンモニア血症の予防・抑制に有効です。
合併症に対しての治療は各々の病態に準じて行われます。免疫能改善を目的としたγグロブリン療法、肺、腎合併症に対しステロイド(PSL)療法などが試みられています。
一方、高アンモニア血症を来した場合は、補液、カロリー補充に加えL-アルギニン、安息香酸ナトリウム等の静注を行います。アンモニアの除去効果が不十分なときは、持続血液透析等の導入を考慮します。
ほか、以前の全国調査では個々人の栄養状態や症状によってL-カルニチン、ビタミンD、ビスフォスフォネート、抗痙攣薬、フェニル酪酸ナトリウム、成長ホルモン、などの使用が報告されています。

8. この病気はどういう経過をたどるのですか

リジン尿性蛋白不耐症の重症度は幅広いので、患者さんによって合併症の種類も重症度もさまざまです。実際には寝たきりの患者さんから通常の日常生活や就労が可能な方までいらっしゃいます。長期の高アンモニア血症を呈する場合には知能障害を認めます。
小児期は成長障害(低身長、低体重)や、骨折、腹痛、嘔吐下痢、高アンモニア血症によるけいれん、などの頻度が高いです。薬物治療や食事療法によって症状をある程度コントロールすることが可能です。
一方、成人期以降は晩期的に生じる合併症に注意が必要です。間質性肺炎、肺胞蛋白症、腎尿細管病変、腎炎、腎不全、自己免疫疾患などがあり、定期的な診察や検査が望まれます。また無事に妊娠・出産を経験されている方もおられますが、時に貧血、出血傾向、妊娠中毒症を起こされた例が報告されています。

9. この病気は日常生活でどのような注意が必要ですか

血中アンモニアの上がりやすい患者さんにおいては、高アンモニア血症発作をいかに防ぐかが重要です。過労や睡眠不足、感染症、乱れた食生活、怠薬などは高アンモニア血症を起こすリスクとなります。規則正しい生活と十分な睡眠、疲労をためないことなどが望まれます。特にお食事においては、高タンパク食品の過剰摂取はもとよりカロリー不足が続いても体調を崩しやすくなりますのでバランスのよい食事を心がけていただくことは大切です。個人差も大きいのですが、就労においては常に重度の労作を要するものは避けたほうが無難です。

10. この病気に関する資料・関連リンク

「厚生労働科学研究難治性疾患克服研究事業 リジン尿性蛋白不耐症における最終診断への診断プロトコールと治療指針の作成に関する研究」
研究代表者 秋田大学小児科 教授 髙橋 勉


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研究班名 先天代謝異常症の生涯にわたる診療支援を目指したガイドラインの作成・改訂および診療体制の整備に向けた調査研究班
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新規掲載日平成27年9月24日