メニュー


HOME >> 病気の解説(一般利用者向け) >> ファンコニ貧血(指定難病285)

ファンコニ貧血(指定難病285)

ふぁんこにひんけつ

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

1. 「ファンコニ貧血」とはどのような病気ですか

細胞の染色体の中にある「DNA」の修復に働く蛋白の一部に障害があるために、染色体が薬剤や放射線などに暴露されると切れやすいという特徴(染色体脆弱)を持っています。低身長や色素沈着など様々な体の異常を伴い、血液が作れなくなってしまう再生不良性貧血や、白血病あるいは固形がんを合併しやすい病気です。

2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか

日本小児血液・がん学会の疾患登録データによれば、年間の発症数は5〜10人で、出生100万人あたり5人前後といわれています。本邦における患者数は200人前後と推計されます。

3. この病気はどのような人に多いのですか

この病気は遺伝性の疾患です。男女による頻度の差はなく、全世界中の全ての人種で見つかっており、日本でも海外からの報告とほぼ同じ頻度で発症します。両親のうちの両方がこの病気の遺伝子を持っている(保因者)場合、その両親から生まれた子供が発症する確率は1/4となります。一部のこの病気の遺伝子異常では男子に限り発症がみられ、その場合は女性(母親)が保因者です。
保因者の頻度は日本では200〜300 人に 1 人と推定されます。

4. この病気の原因はわかっているのですか

この病気の原因となる遺伝子としてFANCAからFANCT群まで全部で18個の遺伝子の異常が見つかっていますが、まだ見つかっていない遺伝子もあると推測されます。これらの遺伝子は「DNA」の修復に重要な役割を果たしています。日本でのファンコニ貧血の遺伝子の異常の中では、特にFANCAFANCGが多いことがわかっています。また18個の遺伝子のうち一部の遺伝子は、家族性乳がん遺伝子と同じであることがわかってきました。

5. この病気は遺伝するのですか

この病気はFANCBの遺伝子異常を除いて、常染色体劣性遺伝という遺伝形式で遺伝します。ヒトの染色体は46本あり、そのうち2本は性染色体で男女の性別を決めるものです。残りの44本の染色体が常染色体で、2本ずつ対になって22対あります。染色体はそれぞれの両親から常染色体22本、性染色体1本(X染色体かY染色体)を受け継ぎます。この病気ではファンコニ貧血の各群の異常な遺伝子を、それぞれの両親から1本ずつ受け継いでいます。たとえば母親も父親もFANCAの保因者の場合、それぞれの親は一対ある染色体のうち、片方の染色体のFANCA遺伝子に異常を持っていますが、片方の染色体の遺伝子異常だけでは発症しません。子供は両親の2個の遺伝子のうち1個を受け継ぎますが、この時、父親と母親の両方からFANCA遺伝子に異常がある方の遺伝子を受け継ぐ確率は1/4で、その場合にファンコニ貧血として発症します。このような常染色体劣性遺伝を起こす病気の種類は非常に多く、誰もが劣性遺伝子の異常を複数個持っているとされています。ファンコニ貧血の18個の遺伝子のうち、一部の遺伝子は家族性乳がん遺伝子と同じであることがわかってきました。このような遺伝子異常が見つかったときには、専門の医師に相談されることをお勧めします。
FANCBの遺伝子異常では、原因となる遺伝子がX染色体上に存在します(男性は通常X染色体は1個、女性は2個)。そのためX染色体上に異常遺伝子がある場合、補助するもう片方のX染色体がないので、男性は女性に比べて発症しやすくなります。このような遺伝形式をX連鎖性劣性遺伝形式といいます。片方のX染色体に遺伝子異常をもつ女性が保因者となります。女性保因者は健常なX染色体と病因遺伝子のあるX染色体の2つをもっており、どちらか一方が子供に伝えるので1/2の確率で子供に遺伝します。ただし発症するのは子供が男児の場合であり、女児の場合は1/2の確率で保因者となります。一方、発症した男性からその方の男の子に遺伝子が伝わることはありませんが、女児は100%保因者となります。FANCBの保因者の方が男のお子さんを出産された際は、本症について詳しい医師に相談されることをお勧めします。
遺伝子の話は理解が難しいため、出来れば遺伝カウンセリングが可能な医療機関への受診をお勧めします。

6. この病気ではどのような症状がおきますか

身体の異常として、皮膚の色素沈着、低身長、耳、眼、手の親指や骨格の異常のほか、腎臓、消化管、性腺、心臓など内臓の先天性の奇形を伴いますが、その程度は個人により異なり、身体の異常がほとんど見られない場合もあります。血液の異常は通常6歳ころからみられ、赤血球、白血球、血小板が減少すると再生不良性貧血と診断されますが、生まれてすぐ、あるいは成人になってから発症することもあります。また白血病や白血病の前段階である骨髄異形成症候群や、固形がんでこの病気に気づかれることもあります。年齢が進むにつれて、再生不良性貧血から骨髄異形成症候群や白血病へと移行する頻度も高くなります。固形がんは20歳を超えると発症しやすくなり、舌がん、喉頭がん、食道がんや、肝がん、女性生殖器がんなどの発症がみられます。一部の遺伝子異常の症例では、幼小児期から小児がんの発症がみられることがあります。

7. この病気にはどのような治療法がありますか

身体異常に対しては各臓器別に小児外科、整形外科、耳鼻科などと連携をとり、外科的手術を行います。
造血障害の支持療法としては、貧血に対する赤血球輸血、血小板減少に対する血小板輸血、白血球減少に対して白血球を増やすホルモンや造血因子の投与などありますが、一時的な効果にとどまります。また、白血球減少に伴って敗血症や肺炎などの感染症が起これば抗生剤や抗真菌剤・抗ウイルス剤で治療します。輸血が必要な再生不良性貧血や骨髄異形成症候群、白血病に対しては造血幹細胞移植が行われます。DNAの修復障害があるため、移植時に使用される抗がん剤や放射線の副作用が重症化しやすく、後天性再生不良貧血や通常の白血病の患者さんより少量の前処置で移植を行います。固形がんに対しては、抗がん剤を用いた通常量の化学療法は副作用が強いために投与できず、減量した化学療法や放射線療法が試みられていますが、治療の主体は外科的手術になります。
 
公的支援としては再生不良性貧血として特定疾患に指定されていますので(2015年7月1日からは指定難病)、申請により医療費の公費負担が受けられます。

8. この病気はどういう経過をたどるのですか

海外の報告では10歳までに80%以上、40歳までに90%以上の患者は再生不良性貧血を発症するといわれています。造血幹細胞移植の成績の向上に伴い、造血不全に関連する死亡率は減少しました。白血病やがんなどの悪性腫瘍の合併は年齢とともに増加し、固形がんは20歳を超えると頻度が高くなり、治療が困難です。

9. この病気は日常生活でどのような注意が必要ですか

固形がんの治療が最も困難なため、早期発見、早期摘出が重要です。特にがんができやすい頭頸部、食道、肝臓、婦人生殖器の定期的な検診が勧められます。また、がんの誘因となるたばこ、飲酒、刺激物の摂取をひかえて、口の中を清潔に保つことが大切です。


治験情報の検索:国立保健医療科学院
※外部のサイトに飛びます。
情報提供者
研究班名 先天性骨髄不全症の診断基準・重症度分類・診療ガイドラインの確立に関する研究班  
新規掲載日平成27年7月31日