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結節性硬化症(指定難病158)

けっせつせいこうかしょう

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

○ 概要
 
1.概要
結節性硬化症(tuberous sclerosis complex:TSC)は、原因遺伝子TSC1TSC2の産生タンパクであるハマルチン、チュベリンの複合体の機能不全により、下流のmTORC1の抑制がとれるために、てんかんや精神発達遅滞、自閉症などの行動異常や、上衣下巨細胞性星細胞腫(SEGA)、腎血管筋脂肪腫、リンパ脈管筋腫症(lymphangioleiomyomatosis:LAM)、顔面の血管線維腫などの過誤腫を全身に生じる疾患である。
 
2.原因
結節性硬化症は9番の染色体上にあるTSC1遺伝子か16番の染色体状にあるTSC2遺伝子の異常によっておこる遺伝病で、常染色体優性遺伝と呼ばれる遺伝形式をとる。
TSC1遺伝子、TSC2遺伝子はそれぞれハマルチン、チュベリンと呼ばれるタンパク質をつくる。ハマルチン、チュベリンはそれぞれの作用と同時に共同でその下流にあるmTORC1を抑制している。したがってTSC1遺伝子、TSC2遺伝子の異常によりそれぞれがつくるタンパク質が異常になるとmTORC1の抑制がうまくいかずに、mTORC1が活性化される結果次に示すような種々の症状が出現すると考えられている。
 
3.症状
結節性硬化症の症状はほぼ全身にわたり、各症状の発症時期、程度も種々である。胎生期から乳児期に出現する心臓の横紋筋腫、出生時より認められる皮膚の白斑、乳幼児期から出現するてんかん、自閉症、精神発達遅滞、顔面の血管線維腫、乳児期から幼児期にかけて問題になることの多い脳腫瘍、眼底の過誤腫、小児期から思春期に著明になる腎の血管筋脂肪腫や嚢腫。20歳以上の特に女性に問題となる肺LAMや肺のMultifocal micronodular pneumocyte hyperplasia(MMPH)、さらに40代以降に増加する消化管の腫瘍や子宮の病変などがある。その他爪囲線維腫やシャグリンパッチ、歯のエナメルピッティングや骨硬化像、肝の腫瘍や卵巣膿腫などもしばしば認められる。合併症として、脳の腫瘍、特にモンロー孔付近の腫瘍が急速に増大し(SEGA)モンロー孔をふさいで水頭症を呈することがある。血管成分の多い腎の血管筋脂肪腫が増大すると、時に破裂を引き起こすことがある。また、腫瘍が増大してくると、時に悪性化が生ずることもある。肺LAMのために気胸を繰り返すことがある。
 
4.治療法
現在確立されている治療法はほとんどが対症療法である。てんかんに対しては抗てんかん薬や時に病巣の外科的切除が行われる。腎の血管筋脂肪腫に対してはTAE(経動脈塞栓術)、や外科手術による切除、皮膚の腫瘍に対してはレーザー、液体窒素を用いた冷凍凝固術や外科手術を行う。脳腫瘍に対しては手術又は薬物療法(mTORC1阻害剤)、腎腫瘍に対しては薬物療法(mTORC1阻害剤)、カテーテル治療(動脈塞栓術)又は手術が行われる。肺LAMに対してはホルモン療法などが試みられるが確立された方法はない。
 
 
5.予後
神経症状は社会生活を送るのに大きな問題となる。腎腫瘍や肺LAMは重度になると生命予後に関与することが多い。何れの症状に対する治療法も対症療法であり現時点では根本的な治療がないため、生涯にわたる加療が必要となる。
 
○ 要件の判定に必要な事項
1.  患者数
約4,000~12,000人
2.  発病の機構
不明(遺伝子異常によるが、各症状の発症のメカニズムは不明である。)
3.  効果的な治療方法
未確立(腫瘍の外科的切除や薬物による対症療法はあるが、根本的な治療方法は未確立である。)
4.  長期の療養
必要(遺伝子異常で発症し、治療法が無いため、生涯疾患が持続する。)
5.  診断基準
あり(学会承認の診断基準あり。)
6.  重症度分類
研究班で作成した重症度分類を用いていずれかの1項目についてグレード3又は2項目についてグレード2以上を対象とする。
 
○ 情報提供元
「神経皮膚症候群に関する診療科横断的検討による科学的根拠に基づいた診療指針の確立」
研究代表者 神戸大学大学院医学研究科内科系講座皮膚科学分野 教授 錦織千佳子
 
 
<診断基準>
Definiteを対象とする。
 
結節性硬化症の診断基準
TSC Clinical Consensus Guideline for Diagnosis(2012)
 
(1) 遺伝学的診断基準
TSC1又はTSC2遺伝子の病因となる変異が正常組織からのDNAで同定されれば、結節性硬化症の確定診断に十分である。病因となる変異は、TSC1又はTSC2タンパクの機能を不活化したり(例えばout-of-frame挿入・欠失変異やナンセンス変異)、タンパク産生を妨げる(例えば大きなゲノム欠失)ことが明らかな変異あるいはタンパク機能に及ぼす影響が機能解析により確立しているミスセンス変異と定義される。それ以外のTSC1又はTSC2遺伝子の変化で機能への影響がさほど確実でないものは、上記の基準を満たさず、結節性硬化症と確定診断するには不十分である。結節性硬化症患者の10~25%では一般的な遺伝子検査で変異が同定されず、正常な検査結果が結節性硬化症を否定する訳ではなく、結節性硬化症の診断に臨床的診断基準を用いることに何ら影響を及ぼさない事に留意すべきである。
 
遺伝子診断を受けていないものもしくは検査を受けたが変異が見つからなかった場合
(2) 臨床的診断基準
A.大症状
1.脱色素斑(長径5mm以上の白班3つ以上)
2.顔面血管線維腫(3つ以上)又は前額線維性局面
3.爪線維腫(2つ以上)
4.シャグリンパッチ(粒起革様皮)
5.多発性網膜過誤腫
6.皮質結節又は放射状大脳白質神経細胞移動線*1
7.上衣下結節
8.上衣下巨細胞性星細胞腫
9.心横紋筋腫
10.肺リンパ脈管筋腫症*2
11.血管筋脂肪腫(2つ以上)*2
 
B.小症状
1.金平糖様白斑
2.歯エナメル小窩(3つ以上)
3.口腔内線維腫(2つ以上)
4.網膜無色素斑
5.多発性腎嚢胞
6.腎以外の過誤腫
 
C.注釈
*1 皮質結節と放射状大脳白質神経細胞移動線の両症状を同時に認めるときは1つと考える。
*2 肺リンパ脈管筋腫症と血管筋脂肪腫の両症状がある場合は確定診断するには他の症状を認める必要がある。
 
 
<診断のカテゴリー>
Definite:臨床的診断基準のうち大症状2つ又は大症状1つと2つ以上の小症状のいずれかを満たす。
Probable:大症状1つ又は小症状2つ以上のいずれかが認められる。
小症状1つだけの場合は、遺伝学的診断基準を満たすこと。
 

 
 
<重症度分類>
重症度分類を用いていずれかの1項目についてグレード3又は2項目についてグレード2以上を対象とする。

 

 

グレード

症状

 

神経症状

SEN/SEGA

なし

SENあり

SEGAあり(単発かつ径1cm未満)

SEGAあり(多発又は径1cm以上)

てんかん

なし

あり(経過観察)

あり(抗てんかん薬内服治療)

あり(注射、食事、手術療法)

知的障害

なし

境界知能

軽度~中等度

重度~最重度

自閉症・発達障害

なし

ボーダー

軽度~中等度

重度~最重度

皮膚症状

顔面血管線維腫

なし

皮膚症状はあるが社会生活が可能

社会生活に支障をきたす(治療が必要)

社会生活に著しい支障をきたす(治療が必要)

爪囲線維腫

シャーグリン

白班

心症状

心横紋筋種

なし

あり(経過観察)

あり(心臓脈管薬内服治療)

あり(注射、カテーテル、手術療法)

腎血管筋脂肪腫

なし

あり(単発かつ径3cm未満)

あり(多発又は径3cm以上)

あり(多発又は径3cm以上で、過去1年以内に破裂や出血の既往がある。)

腎嚢胞

あり(治療の必要なし)

あり(多発又は治療の必要あり)

 

腎悪性腫瘍

なし

 

 

あり

LAM

なし

検査で病変は認めるが、自覚症状がなく、進行がないもしくはきわめてゆっくりである。(経過観察)

自覚症状が有り治療が必要(酸素療法、ホルモン薬・抗腫瘍薬内服療法)

自覚症状があり、肺移植などの外科的治療が必要

MMPH

なし

あり

 

 

その他

肺外LAM

なし

あり(経過観察)

あり(治療が必要)

あり(治療に抵抗性)

肝臓、卵巣などの腎以外の臓器の嚢腫、過誤腫、PEComa

なし

あり(経過観察)

あり(治療が必要)

悪性化

眼底の過誤腫

なし

あり(経過観察)

あり(治療が必要)

機能障害を残す

歯のエナメルピッテイング

なし

あり(経過観察)

 

あり(治療が必要)。機能障害を残す

 
 
 
 
※診断基準及び重症度分類の適応における留意事項
1.病名診断に用いる臨床症状、検査所見等に関して、診断基準上に特段の規定がない場合には、いずれの時期のものを用いても差し支えない(ただし、当該疾病の経過を示す臨床症状等であって、確認可能なものに限る。)。
2.治療開始後における重症度分類については、適切な医学的管理の下で治療が行われている状態であって、直近6か月間で最も悪い状態を医師が判断することとする。
3.なお、症状の程度が上記の重症度分類等で一定以上に該当しない者であるが、高額な医療を継続することが必要なものについては、医療費助成の対象とする。
 

■関連資料・リンク

日本結節性硬化症学会HP
http://jstsc.kenkyuukai.jp/information/

国際的なTSC診断基準
Northrup H, Krueger DA; International Tuberous Sclerosis Complex Consensus Group. Tuberous sclerosis complex diagnostic criteria update: recommendations of the 2012 Iinternational Tuberous Sclerosis Complex Consensus Conference. Pediatr Neurol. 2013; 49(4): 243-254. doi: 10.1016/j.pediatrneurol.2013.08.001.

国際的なTSC経過観察・管理ガイドライン
Krueger DA, Northrup H; International Tuberous Sclerosis Complex Consensus Group. Tuberous sclerosis complex surveillance and management: recommendations of the 2012 International Tuberous Sclerosis Complex Consensus Conference. Pediatr Neurol. 2013t; 49(4): 255-265. doi: 10.1016/j.pediatrneurol.2013.08.002

国際的なSEGA管理指針
Jóźwiak S, Nabbout R, Curatolo P; participants of the TSC Consensus Meeting for SEGA and Epilepsy Management. Management of subependymal giant cell astrocytoma (SEGA) associated with tuberous sclerosis complex (TSC): Clinical recommendations. Eur J Paediatr Neurol. 2013; 17(4): 348-352. doi: 10.1016/j.ejpn.2012.12.008.

国際的なSEGA/てんかん管理指針
Curatolo P, Jóźwiak S, Nabbout R; TSC Consensus Meeting for SEGA and Epilepsy Management. Management of epilepsy associated with tuberous sclerosis complex (TSC): clinical recommendations. Eur J Paediatr Neurol. 2012; 16(6): 582-586. doi: 10.1016/j.ejpn.2012.05.004.


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情報提供者
研究班名 神経皮膚症候群に関する診療科横断的な診療体制の確立研究班
研究班名簿   
情報更新日平成29年4月24日