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左心低形成症候群(指定難病211)

さしんていけいせいしょうこうぐん

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

1.左心低形成症候群とは

 正常な心臓は、図1のように、血液は、上下の大静脈、右房、右室、肺動脈、肺、肺静脈、左房、左室、大動脈の順に流れていきます。左房と左室の間にある弁を僧帽弁、左室と大動脈の間にある弁を大動脈弁と称します。

図1:正常な心臓構造(金子幸裕、平田康隆、木村充利、阿知和郁也.先天性心疾患の血行動態:治療へのアプローチ.3p. 文光堂、2013. より転載)
 
左心低形成症候群は、生まれた時の心臓が、僧帽弁、大動脈弁の重症な狭窄または閉鎖となっている病気です。その結果、生まれたばかりの赤ちゃんでは、卵円孔(時に心房中隔欠損)という穴を介して左房から右房へ血液が流れていきます。また左房から左室へ血液が流入しないために左室は非常に小さくなって、時には、スリット状に見えるほどです。加えて、左室から大動脈への血液の流れがほとんどなくなるため、上行大動脈(左室から流れ出る血液が通る大動脈)は非常に細くなり、その中を通る血液は、肺動脈と大動脈をつなぐ動脈管を介して肺動脈から大動脈へ流れて逆行してきた血液となります。上行大動脈が始まる場所から心臓の筋肉に酸素を送る血液が流れる冠動脈が起始します。ということは、肺動脈から逆行性に上行大動脈内を流れてきた酸素の少ない静脈血が冠動脈内を流れるということを意味します。左心低形成症候群は、構造として僧帽弁閉鎖または重度狭窄、小さい左室、大動脈弁閉鎖または重度狭窄、細い上行大動脈があり、肺動脈から逆行性に流れてきた静脈血が冠動脈内を還流するということを診断の根拠とします。左心低形成症候群の赤ちゃんには、動脈管、卵円孔開存(もしくは心房中隔欠損)が必ず合併しています(図2)。

図2:左心低形成症候群(金子幸裕、平田康隆、木村充利、阿知和郁也.先天性心疾患の血行動態:治療へのアプローチ.156p. 文光堂、2013. より転載)

2.この病気の患者さんはどのくらいいるのですか

 先天性心疾患は約100人の赤ちゃんがいれば1人に発生するとされています。この先天性心疾患の内、1.2〜1.6%を占めています。成人になった左心低形成症候群の患者さんがどのくらいいるかは、まだ明らかではありません。

3.この病気はどのような人に多いですか

 いくつかの論文は出ているのですが、現時点で、「このような時に左心低形成症候群の赤ちゃんが生まれることが多い」と断定できる環境、要因はなさそうです。

4.この病気の原因はわかっているのですか

 原因は不明です。

5.この病気は遺伝するのですか

 左心低形成症候群に特異的な遺伝子異常は発見されていません。ただ、左心低形成症候群の患者さんの兄弟に同じ病気の兄弟が生まれる率は約0.5〜2%と言われています。遺伝はほんの少し関係する可能性があります。

6.この病気ではどのような症状がでますか

 生後まもなくして、顔色が悪くなり(チアノーゼといいます)、呼吸が荒くなり、泣き声も小さくなります。脈も早くなり、低血圧で、ショック状態となります。普通、呼吸管理、血圧維持のための治療を行わなければ、生存は困難となります。

7.この病気にはどのような治療法がありますか

 治療法は手術のみです。最終手術はフォンタン型手術(図3)となります。

図3:フォンタン型手術(金子幸裕、平田康隆、木村充利、阿知和郁也.先天性心疾患の血行動態:治療へのアプローチ.165p. 文光堂、2013. より転載)

この手術を行うことで、右室のみで肺動脈、大動脈の循環を維持していくこととなります。フォンタン型手術を行うためには、幾つかの段階的手術を経なくてはなりません。左心低形成症候群と診断された場合、まずはノーウッド手術を行います。この手術の特徴は、右室からでる肺動脈と細い上行大動脈を繋げて新たな上行大動脈を作ることです。ノーウッド手術(図4)は、昔と比べれば成功率は大分よくなりましたが、それでも、先天性心疾患の術式の中では成功率の最も低い部類に入ります。ノーウッド手術後、数ヶ月から1年前経過してから両方向性グレン手術を行い、その後に、フォンタン型手術を行うスクジュールとなります。施設によっては、ノーウッド手術前に両側肺動脈絞扼術といって左右の肺動脈を絞り込む手術を行う場合もあります。

図4:ノーウッド手術(ブラロック-トージック手術も同時に施行)(金子幸裕、平田康隆、木村充利、阿知和郁也.先天性心疾患の血行動態:治療へのアプローチ.159p. 文光堂、2013. より転載)

8.この病気はどのような経過をたどるのですか

 特に積極的な治療を行わない場合、大半は生後1ヶ月以内に死亡します。施設によって手術方針は異なります。ある施設では、最初に両側肺動脈絞扼術を施行し、後にノーウッド手術+両方向性グレン手術を行い、一旦退院し、お家で経過観察します。約1年前後経過して、フォンタン型手術を行います。また、別の施設では、最初にノーウッド手術を行い、順に、両方向性グレン手術、フォンタン型手術を行います。日本では、ノーウッド手術の成功率は70〜75%です。フォンタン型手術は95%以上の成功率です。なお、両方向性グレン手術とは上大静脈と肺動脈を吻合する手術です。主治医が適応という判断のもと手術していれば、手術の危険性は非常に小さいです。大凡ですが、フォンタン型手術は3歳以前に終了する場合がほとんどです。
ただ、フォンタン型手術は、患者さん全員で施行できるという手術ではありません。正常な心臓なら2つの心房、2つの心室で循環が回っているところを、フォンタン型手術の後は、1つの心房、1つの心室で回すことになりますので、フォンタン型手術を施行するには、肺動脈の太さ、肺血管抵抗、心室機能、弁の状態などのいくつかの条件をクリアする必要があります。そのため、ある割合で、フォンタン型手術を行えずに、ノーウッド手術のみ、またはノーウッド手術+両方向性グレン手術で手術は終了となる患者さんもいます。これらの患者さん達は、動脈血の酸素飽和度が低下したままとなります。この状態を低酸素血症と称します。フォンタン型手術後の動脈血液の酸素飽和度は原則として正常かごく軽度の低下となります。
まず、フォンタン型手術を受けた患者さんについて概説します。フォンタン型手術は低酸素状態にあった循環動態を正常酸素濃度にするための手術です。決して、病気自体を治す手術ではありません。長期間、1つの心房、1つの心室で人間の体の循環を回すことは、やはり、どこかで無理が生じます。多くの患者さん方が、成人期になってきましたので、最近、いろいろな問題がでることが次第に分かってきました。それら問題というのは、1)弁逆流、2)不整脈、3)低酸素血症の再発、4)蛋白漏出性胃腸症、5)血栓、6)肝障害などです。
現在、フォンタン型手術後の患者さん達が成人となり、40歳以上の方もいらっしゃいます。ただ、既述したように、もともとの心臓の病気が完治したということではないため、定期的に専門医によるフォローが必須となります。
フォンタン型手術に至らなかった患者さんは、残念ながら、慢性低酸素血症が続くことになります。成人になっている患者さんもいらっしゃいます。ただ、左心低形成症候群では、心不全状態になっている方もあり、個人個人でその重症度は大きく異なります。専門医の主治医と相談しながら、様子をみていくことになります。

9.この病気は日常生活でどのような注意が必要ですか

 左心低形成症候群は、現在でも、先天性心疾患の中では最も重症度の高い疾患です。手術成績も他の疾患と比べて良好とは残念ながら言えません。手術を計画している段階は勿論のこと、最終手術終了後も、定期的なフォローが必要です。フォンタン型手術後は、一見、正常のように見える患者さんもいらっしゃいます。しかし、このような患者さんでも本来右室である心室には負荷がかかっていますし、肺動脈内への血流は、心室のポンプ機能で送り出しているわけではないので、激しい運動は困難なことが多く、無理はできません。動悸、今までにはない息切れ感、足・顔のむくみには注意しておく必要があります。
女性の場合は、どうしても妊娠のことが問題となります。アスピリンを服薬していることが多いのですが、それだけでなく、フォンタン型手術後の場合は、妊娠中に心臓に負担がかかってきます。高校生以降の女性は、主治医の先生ときちんと相談しておくことが必要です。もし、ワルファリンも服薬していたら、妊娠は禁忌ですので、主治医に確認してください。
フォンタン型手術に至らなかった患者さん、フォンタン型手術後でも低酸素血症を残存した患者さんは、自分で可能な範囲の生活、運動を心がけて下さい。ここで言う運動とは、階段の上り下り、歩く速さなどを指します。低酸素血症があっても働いている方も多くいらっしゃいます。社会福祉として幾つかの助成制度がありますので、就労については、最寄りの地方自治体、ハローワークの窓口で相談してください。

関連ホームページのご紹介

1)国立成育医療研究センターHP.
http://www.ncchd.go.jp/hospital/about/section/kikan-byotai/junkanki_naika_geka.html
2)静岡県立こども病院HP.
http://www.shizuoka-pho.jp/kodomo/department/cardiova/operation/hlhs/index.html
3)小児慢性特定疾病情報センターHP.
http://www.shouman.jp/details/4_28_35.html


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情報提供者
研究班名 単心室循環症候群の予後に関する研究班  
新規掲載日平成27年7月21日