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先天性無痛無汗症(指定難病130)

せんてんせいむつうむかんしょう

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

1. 「先天性無痛無汗症」とはどのような病気ですか

先天性無痛無汗症は遺伝性感覚・自律神経ニューロパチー(HSAN)に属する疾患で、このうち4型を先天性無痛無汗症と呼んでいます。HSANの5型は無汗を伴わない先天性無痛症とされていますが、4型と5型の間には、臨床所見や遺伝子の変化に共通点もあります。いずれも全身の温度覚(熱い冷たいを感じる)と痛覚(痛みの感覚)が消失しています。4型では全身の発汗が低下し、種々の程度の知的障害や発達障害を合併することがあります。

2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか

4型はイスラエルと日本からの報告が多いという特徴があります。日本における患者さんの正確な数は不明ですが、研究班の調査から、日本における患者数を130~210名と推計しています。5型の患者さんはより少なく、日本における患者数は30~60名と推計しています。4型、5型とも、男女の患者数に明らかな差はありません。

3. この病気はどのような人に多いのですか

この病気は、4型、5型とも常染色体劣性遺伝という遺伝形式を取ります。従って他の常染色体劣性遺伝の病気と同様に、両親が遺伝学的に近い(血族結婚など)場合に子どもがなりやすい、と考えられます。また4型では、イスラエルと日本に患者さんの報告が多いという特徴があります。またこの病気になりやすいという特別な体質などはないと考えられています。

4. この病気の原因はわかっているのですか

4型の原因は、NTRK1と呼ばれる遺伝子の一部が正常と異なることであることが分かっています。NTRK1は神経成長因子というものと関係しています。また4型では末梢神経の中の無髄線維と小径有髄線維が欠損して、痛みや発汗の低下を生じるとされています。一方5型では、NGFと呼ばれる遺伝子に異常を認めます。NGFの異常は臨床症状から4型と考える患者さんでも見つかっており、また5型ではNGFではなくSCN9Aという遺伝子の変化を示す患者さんもいると考えられています。

5. この病気は遺伝するのですか

この病気は、常染色体劣性遺伝という形で遺伝することが分かっています。研究班の調査では、家族や親類に同じ病気のある患者は、4型で46名中15名、5型で14名中7名(いずれも家族数でなく患者数なので例えば兄弟で同じ病気であれば2名と数えます)でした。4型では内容不明の1名を除くと全て兄弟姉妹が7組(1組の双子を含む)、5型でも内容不明の1名を除くと全て兄弟姉妹が3組(1組の双子を含む)でした。

6. この病気ではどのような症状がおきますか

4型は、全身の温度や痛みの感覚が消失し、また発汗が低下します。また種々の程度の知的障害や発達障害を合併することがあります。温度や痛みの感覚が消失するため、骨折・脱臼などの外傷、熱傷や凍傷を繰り返し、骨折がうまく治らなかったり脱臼を繰り返すことを通じて、シャルコー関節と呼ばれる関節変形に至ることもあります。発汗の低下は温度の感覚障害とも相まって体温のコントロールに影響を及ぼし、高体温からけいれん、脳症を引き起こすこともあります。また、環境温度が低い時は、低体温になることもあります。自傷行為の合併も多く、特に指先、舌や口唇を噛むことが問題になります。これら以外に、皮膚科では乾燥肌や蜂窩織炎と呼ばれる感染症の合併、眼科では角膜の障害を合併することがあります。これらの他、てんかんの合併や、便秘、周期性嘔吐症や起立性低血圧などの自律神経症状の合併が知られています。
5型では発汗の低下がないため、高体温による問題や皮膚科の合併症は少ないようです。

7. この病気にはどのような治療法がありますか

この病気を完全に治してしまう治療法は現在ありません。原因となる遺伝子の変化は分かってきましたが、遺伝子治療は行われていません。
起きてしまった症状に対する対症療法と、外傷や体温異常を予防するための日常生活上でのケアが重要です。外傷の予防に装具や環境の整備、口唇や舌の損傷に対しては保護プレートが有効です。乾燥肌に対しては、保湿クリームが用いられます。また体温のコントロールが大事で、環境整備のほか、高体温を防ぐためのウエアも工夫されています。

8. この病気はどういう経過をたどるのですか

4型では、特に乳幼児期に体温コントロールの不良によりけいれんの治療に難渋したり、急性脳症などを発症し命にかかわることがあります。この時期を過ぎると命に係わることは少なくなり、50歳代の患者さんも報告されています。4型、5型とも、骨や関節の障害により移動機能の低下が問題になることがあります。個人差が大きいのですが、成人の患者さんの中には、シャルコー関節により体重を支えることが困難になり、車椅子を必要としている方もいらっしゃいます。

9. この病気は日常生活でどのような注意が必要ですか

4型、5型とも、外傷を防ぐこと、外傷を生じた際には早期に発見し適切な治療を受けることが大事です。外傷を防ぐためには、靴や装具の工夫の他、自宅内ではけがの元となるような環境を改善する、などの工夫が必要です。また4型では体温の管理が重要で、体温をこまめにチェックする、暑い時には水分を十分に摂るなどを心掛けます。
自分の体を守ることの大切さを、本人に教えていくことも大切です。特に4型で知的障害や発達障害を合併する場合には、分かり易い言葉で繰り返し教えていきましょう。
こういった様々な注意が必要であることを、周囲の人々にも理解してもらうことも重要です。一定の配慮の中で、できるだけ健常児・者と同じように生活できるように、環境を整えるのが望ましいです。

10. この病気に関する資料・リンク

総合的な診療・ケアのための指針(第1版)
厚生労働省科学研究費補助金 難治性疾患克服研究事業「先天性無痛症の診断・評価および治療・ケア指針作成のための研究」平成22年度~23年度総合研究報告書
 
先天性無痛無汗症-わたしたちのケアガイド
厚生労働省「先天性無痛症の実態把握および治療・ケア指針作成のための研究」班
 
ガイドライン 先天性無痛無汗症-難病の理解と生活支援のために-
NPO法人 無痛無汗症の会「トゥモロウ」 http://www.tomorrow.or.jp/


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情報提供者
研究班名 特発性後天性全身性無汗症の横断的発症因子、治療法、予後の追跡研究班
研究班名簿   
新規掲載日平成27年7月14日