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アレキサンダー病(指定難病131)

あれきさんだーびょう

(概要、臨床調査個人票の一覧は、こちらにあります。)

1. 「アレキサンダー病」とはどのような病気ですか。

アレキサンダー病は1949年にAlexander WSにより報告された疾患です。当初は乳児期に発症するけいれん、頭囲拡大、精神運動発達の遅れを中核症状とし、10歳に満たずなくなってしまう非常に生命予後の悪い疾患と考えられていました。診断はもっぱら脳の病理組織で行われ、生前の確定診断は難しい状態でした。しかし、2001年にBrennerらがアレキサンダー病患者さんの90%以上にGFAP遺伝子に異常が存在することを報告してから、遺伝子検査により診断が可能になりました。以後、成人以降に発症し、進行も比較的緩やかなアレキサンダー病が存在することが明らかになりました。現在、アレキサンダー病は主に乳児期に発症し、けいれん、頭囲拡大、精神運動発達の遅れの3つを主な症状とする「大脳優位型」、学童期あるいは成人期以降に発症し、嚥下機能障害、手足の運動機能障害、立ちくらみや排尿困難などの自律神経機能障害などの症状を主な症状とする「延髄・脊髄優位型」、両型の特徴をみとめる「中間型」に分類できます。診断はこれらの症状と頭部MRI検査にてアレキサンダー病を疑い、遺伝子検査にて確定します。

2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか。

日本では約50名と推測されています。

3. この病気はどのような人に多いのですか。

新生児から60-70歳の年配者まであらゆる年齢で発症する可能性があります。特に発症に関連する体質や食事、環境は知られていません。

4. この病気の原因はわかっているのですか。

GFAP遺伝子という遺伝子の異常が原因と考えられています。GFAPは脳のアストロサイトという細胞を機械的に安定させるための骨組みの1つです。アストロサイトは脳の神経細胞や血管系とさまざまな物質を介して積極的に情報伝達を行うことにより、脳機能を制御しています。GFAP遺伝子に変異がみられると、異常なGFAPが作られます。これがアストロサイトの機能を障害することにより、アレキサンダー病が発症すると考えられています。ただし、詳細なメカニズムはまだ不明です。

5. この病気は遺伝するのですか。

アレキサンダー病の遺伝様式は常染色体優性遺伝(両親のどちらかに症状があって、約50%の確率でお子さんに遺伝するもの)です。つまり、GFAP遺伝子異常をもつ患者さんのお子さんは約50%の確率で変異遺伝子を保有することになります。一方、「大脳優位型」のほとんどすべての患者さんと「延髄・脊髄優位型」の約半数の患者さんのご両親はGFAP遺伝子異常を保有していません(患者さんは突然変異により変異遺伝子を獲得したと考えられます)。この場合は次のお子さん(患者さんの兄弟姉妹)がアレキサンダー病になる確率は極めて低いと考えられます。

6. この病気ではどのような症状がおきますか。

アレキサンダー病では多彩な神経症状がみられますが、大きく「大脳優位型」、「延髄・脊髄優位型」、「中間型」の3つの型に分類できます。
大脳優位型:主に乳幼児期に発症し、けいれん、頭囲拡大、精神運動発達の遅れの3つの症状を特徴とします。けいれんのコントロールが機能予後、生命予後に関係します。新生児期発症の患者さんでは難治性のけいれんに水頭症を伴い、ほとんどが数か月以内に死亡します。3つの特徴的症状に加えて話しにくさ、飲み込みにくさ、手足の力の動かしにくさ、ふらつき、歩きにくさなどの嚥下機能や運動機能の障害、尿が出にくい、立ちくらみ、睡眠時無呼吸などの自律神経障害が出現、徐々に進行し、以下に記載する中間型の症状を示します。なお、出現する症状、経過には個人差がみられます。
延髄・脊髄優位型:学童期あるいは成人期以降に発症し、嚥下機能、運動機能、自律神経の障害を示す型です。学童期の繰り返す嘔吐やしゃっくりをきたし、それをきっかけに診断に至る患者さんもおられます。けいれん、頭位拡大、精神運動発達の遅れは通常みられません。「大脳優位型」に比べると進行は緩やかですが、時に急激な進行がみられる場合があります。症状の程度には個人差がみられます。
中間型:「大脳優位型」と「延髄・脊髄優位型」の両者の特徴をもつ型で、多くは学童期以降に診断されます。嚥下機能、運動機能、自律神経の障害の進行が主な症状ですが、「延髄・脊髄優位型」よりも進行は早い傾向にあります。けいれん、頭囲拡大を伴いませんが、乳幼児期に数回のけいれん発作を経験した患者さんが比較的多くみられます。多くは精神遅滞あるいは学童期の成績低下を伴います。また、学童期に繰り返す嘔吐と体重減少を認めることがあります。出現する症状、経過には大きな個人差がみられます。

7. この病気にはどのような治療法がありますか。

現時点では確立した治療法はありません。けいれん発作を生じる場合には抗てんかん薬による治療を行います。手足がつっぱる場合には抗痙縮薬を用いることがありますが、筋力の低下を伴う場合には脱力が増悪する場合がありますので注意が必要です。嘔吐を繰り返すときには栄養管理が重要となります。

8. この病気はどういう経過をたどるのですか。

けいれんのコントロールがうまくいかない場合は寿命が短い傾向にあります。特に新生児期にコントロール困難なけいれんが続く症例は水頭症を伴うなどして早期に亡くなることが多い傾向にあります。一方で、学童期以降になってけいれんがほとんどみられなくなる患者さんの生命予後は比較的良好な傾向があります。
嚥下機能、運動機能、自律神経機能の障害は出現する年齢が高いほどゆっくりと進行する傾向にありますが、急激に症状が悪化する場合があります。悪化を誘発する原因はよくわかっておりません。寿命は乳幼児で発症する型で14年くらい、成人以降で発症する型で発症から25年くらいとされていますが、個人差が大きくみられます。

9. この病気は日常生活でどのような注意が必要ですか。

運動機能障害には力が入らない、つっぱる、バランスが取りにくいなどの症状が個人差をもってみられます。適切な評価にもとづくリハビリテーション、必要に応じて適切な補助具の使用が日常生活機能を保つために有効とおもわれます。むせなどの嚥下障害がある場合は、誤嚥性肺炎を防止するために食事にとろみをつけるなど食事形態の工夫が必要です。乳幼児、学童期のお子さんに対しては周囲の理解と適切な療育が必要です。


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情報提供者
研究班名 遺伝性白質疾患の診断・治療・研究システムの構築研究班  
新規掲載日平成27年7月9日