循環器系疾患分野|早期再分極症候群(early repolarization syndromeまたはJ波症候群)(平成24年度)

そうきさいぶんきょくしょうこうぐん
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1. 概要

12誘導心電図で、Ⅱ,Ⅲ,aVF誘導(下壁誘導)とⅠ,aVL,V4-V6誘導(側壁誘導)のうち、2誘導以上で1mm以上のJ波増高(notchまたはslur波形を伴う)とそれに続くST上昇を認める疾患

2. 疫学

日本人のJ波の有病率は10%-24%、発症率は0.7%と報告されているが、短期予後、長期予後のいずれもが未解明である。欧米の研究では、一般人のJ波の有病率は2%-12%であるが、運動選手では30~40%に達するとされ、下壁誘導で2mm以上のJ波がある群の年間心臓死率は1.5~2%と報告されている。また、過去に心室細動(VF)を起こした症例の短期予後も不良とされている。

3. 原因

J波の機序は不明で、心室細動の発症機序も不明である。ただしBrugada症候群に類似した早期再分極症候群症例では、J波機序が心室心外膜側に生じる一過性外向き電流に基づく再分極異常として説明され、原因遺伝子も報告されている。

4. 症状

一部の例ではVF、多形性心室頻拍により突然死を生じる。VF既往例では、約30%の症例がBrugada症候群と類似した臨床症状(VFを繰り返す、イソプロテレノロール、キニジンが有効、プロプラノロールでJ波増高など)を示すため、Brugada症候群との関連が指摘されている。

5. 合併症

Brugada症候群またはQT短縮症候群の他、心筋虚血、左室偽腱索との合併が報告されている。

6. 治療法

VF発症例ではICD植込み。また一部の例ではVF予防にキニジンが有効との報告がある。

7. 研究班