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ハンチントン病(公費対象)

ハンチントンびょう

■概念・定義

常染色体優性遺伝様式をとり、舞踏病運動を主体とする不随意運動と精神症状、認知症を主症状とする慢性進行性神経変性疾患であ る。浸透率は100%とされる。主として成人に発症するが、発症年齢は小児から老齢期にまで分布する。ハンチントン病は、病因遺伝子のエクソン内に不安定 な三塩基配列CAGの異常伸長がある。CAGはグルタミンをコードしており、グルタミンが異常に長く繰り返し発現する疾患群をポリグルタミン病と総称して いる。このため、ハンチントン病はポリグルタミン病の一つである。ハンチントン病の病因遺伝子産物はhuntingtinとよばれ、第4染色体短腕 4p16.3のIT15(interesting transcript 15)領域にある。臨床症状とhuntingtinのCAGリピート数との間には、関連があることが知られており、リピート数が多いほうが若年に発症し、 かつ重篤であるとされる。罹病期間は一般に10~20年である。

約10%の症例は20歳以下で発症し、若年型ハンチントン病と呼ぶ。

■疫学

厚生省特定疾患受給者証から調査した我が国の有病率は、人口10万人あたり0.5人で、欧米のコーカソイドの約1/10である。

■病因

定義で述べたようにハンチントン病はポリグルタミン病の一つである。第4染色体短腕4p16.3の IT15(interesting transcript 15)領域の不安定な三塩基配列CAGの異常伸長が病因遺伝子である。遺伝子産物であるhuntingtinのCAG繰り返し回数は健常人では12~30 回であるが、HD発症者では36~121回に伸長している。繰り返し数と臨床像との関係では、繰り返し数が多いほど発症年齢が若く、かつ重症である。すな わち、若年型HDでは成人発症群よりも繰り返し数が多い。また、世代を経るごとに繰り返し数は増加する傾向があり(表現促進現 象:anticipation)、病因遺伝子が父親由来の際に著しい。この父親由来での繰り返し数の増大の要因として、精母細胞での繰り返し数がより不安 定であることが推定されている。huntingtinは様々な組織で発現されているが、現時点ではhuntingtinの機能は不明である。

人種差と遺伝子変異との関係では、コーカソイドでは繰り返し数29~35回の中間型を示す頻度が健常人で1%と高頻度であることが、中間型の頻度がハンチントン病の有病率と関連していると推定されている。その他の人種での中間型の頻度は明らかとされていない。

■症状

多くの症例で運動障害と共に、舞踏運動を中心とする不随意運動、精神症状を様々な程度で認める。臨床像は家系内でも一定ではな い。発症早期には巧緻運動障害と軽微な不随意運動、遂行運動の障害、うつ状態もしくは易刺激性などを認める。やや進行すると舞踏運動が明らかとなり、随意運動も障害される。不随意運動はジストニアやアテトーゼ、ミオクローヌス、振戦であることもある。さらに進行すると構音、構語障害が目立つようになり、人格の障害や認知障害が明らかとなる。最終的には日常生活全てに要介助、次いで失外套状態となる。

・舞踏運動など不随意運動および随意運動症状:

舞踏運動などの不随意運動は、随意運動や精神的緊張により誘発、増悪する傾向がある。発症早期には不随意運動は神経質な印象や “くせ”とみなされることも少なくない。四肢の舞踏運動と同時に、口唇を中心とした歪め運動grimaceが見られることが多い。病像の増悪に伴い、舞踏運動が明らかとなる。舌および、口唇にも舞踏運動はみられ、これにより嚥下運動、構音、構語が障害される。進行すると不随意運動は強くなるが、末期には目立たなくなることも少なくない。深部反射は1/3の症例で亢進する。

・精神症状、認知障害:

中核症状は人格の変化と認知障害である。人格の変化はより早期に認められる。感情面では情動の不安定さ、短気、易刺激性、不機嫌さが目立ち、精神面での抑制困難とされる。若年型でより著しい。バランスを欠き、社会的良識を欠いた行動を示すこともある。その他、易疲労性、不眠、うつ状態も頻度の高い症状である。自殺企図も少なくなく、発症早期に見られることが多く、注意が必要である。進行期には頻度は低いがけいれん発作を示すこともある。
知的機能低下については記銘力低下、判断力低下、学習機能低下などを主体とする。思考の柔軟性、思考の構築障害、注意力の低下、論理性の低下もみられる。病状が進行すると、失外套状態となる。

・若年型ハンチントン病:

20歳以下で発症した群を若年型ハンチントン病、別名Westphal variantと称する。
成人期以降に発症する群よりも、臨床像が多彩で精神症状としてけいれん発作、知的機能障害が目立ち、不随意運動では舞踏運動の他に振戦、ミオクローヌス、ジストニアを示し、筋トーヌスは固縮を示す症例の頻度が高い。構語障害も著明で、次第にmutismを呈する。けいれん発作は1/3の症例で認められる。
固縮型は若年型の1/3を占める。

■診断

家族歴、臨床像により臨床診断は可能であるが、遺伝子診断により確定診断が得られる。画像所見では、MRIなどで尾状核の萎縮、側脳室の拡大が見られ、病気の進行とともに脳萎縮が高度となる。

未発症者では、原則として遺伝子診断は行わない。遺伝子診断を実施する場合には、倫理的配慮および診断確定後のケアーが不可欠で、日本神経学会遺伝子診断のガイドラインを参照されたい。

代表的な鑑別すべき疾患を列挙する。

1) 脳血管障害(多発性脳梗塞、脳出血、硬膜下血腫、もやもや病、脳動静脈奇形など)に伴う舞踏運動

2) 薬物性舞踏運動(抗精神病薬、抗てんかん薬、抗パーキンソン病薬など)

3) 中毒性疾患(一酸化炭素中毒、有機水銀中毒、無酸素脳症、タリウム中毒、有機溶剤中毒など)

4) 脳腫瘍に伴う舞踏運動

5) 老人性舞踏病

6) 神経変性疾患に伴う舞踏運動

   (1) ハンチントン病類症型Huntington disease-like2

   (2) neuroacanthocytosis

   (3) DRPLA

   (4) SCA17

   (5)neuronal ceroid lipofuscinoses

   (6) 捻転ジストニア

   (7) ミオクローヌスてんかんを来たす疾患群

   (8) その他

7) 不随意運動を主症状とする代謝性疾患

   (1) Lesch-Nyhan症候群

   (2) Wilson病

   (3) ライソゾーム病

   (4) ポルフィリア

   (5) その他

8) 顔面・舌ジスキネジア

9) 全身性エリテマトーデス

10) 妊娠性舞踏病

11) 電解質異常にともなう舞踏病

12) 多血症

■治療

現時点では原因療法はない。舞踏運動など不随意運動および精神症状に対して対症療法を行う。主としてドパミン受容体遮断作用を示す抗精神病薬を使用する。最近、海外でテトラベナジンがハンチントン病で使用されるようになり、わが国でも臨床試験が行われる予定である。その他、クレアチン、Co Q10、リルゾール、胆汁酸誘導体、多糖体などの投与が試みられているが、現在のところ有効性は確立されていない。

■予後

慢性進行性に増悪し、罹病期間は10~20年である。死因は低栄養、感染症、窒息などである。

神経変性疾患に関する調査研究班から


ハンチントン病 研究成果(pdf 27KB)

この疾患に関する調査研究の進捗状況につき、主任研究者よりご回答いただいたものを掲載いたします。

この疾患に関する関連リンク


神経変性疾患に関する調査研究班ホームページ

情報提供者
研究班名 神経・筋疾患調査研究班(神経変性疾患)
情報見直し日平成23年6月23日